二度目は清く、正しく

かなり柘榴

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誘い

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今日はいつにもましてぼこぼこにされたような気がする。
毎回寸止めなので痛みはないが、やはり負けっぱなしというのは精神的にくるものがある。

そろそろ気晴らしもかねて一泡吹かせてやりたいところだ。

いったいどうしたものか…

こういう時はまずは相手の能力の分析から始めよう。

ソリオとの対格差は40~50センチ程。俺の身長が140程度だから低く見積もっても180センチだ。

そのため基本的には下からの攻撃で攻め崩すことになってくる。
しかしこれまで試したほとんどの手はあっさりと破られてしまった。
今日試した二段攻撃に一撃特化で全力の突き、それらの全てははじく、逸らすも正攻法で凌がれてしまい即切り返された。

既存の手ではダメだ。何か意表を突く一手が必要になってくる。


「エリオ坊ちゃま。」


いっそのこと剣をぶん投げてみるか?いや、雑にはじかれて終わるだけだ。


「エリオ坊ちゃま。」


足を生かすのはどうだろうか。なるべく相手の体に張り付いて周りで動き回る、そして基本的に腰より下の対処しづらいところを攻撃し続ける。いい案ではなかろうか。

と思うのも一瞬、体格差で弾き飛ばされるかそこまで近づく前に刈られるかの情景が浮かぶ。


「エリオお坊ちゃま!!」

「はい!?なんですか!?」


大声に驚いて振り向くとそこにはホルンが立っていた。


「お父様がお呼びです。執務室へお向かいください。」

「珍しいね。何の用だろう?」

「わたくしも詳細はお聞きしておりません。」


本当に珍しい。俺の父は家庭人である。夕食は基本的に毎日一緒に食卓を囲んでいる。そのため大体の話はその時にするのだが、今回は直接呼ばれている。何か大切な用事であることは確実だろう。











コンコンとノックの音が部屋に響く。


「入りなさい。」

「失礼します、父上。」


扉の向こうから響いた声は愛すべき一人息子のものだった。
背筋をピンと伸ばして礼儀正しいその姿は、いつも見ているはずなのに大人びて見える。


「少し背が伸びたか?」

「父上、それ昨日も聞いていましたよ。」


そうだったろうか。最近少々忙しいもので疲れてしまっているみたいだ。
ついこの間王妃が国王の第二子を産んだばかりで貴族全体が慌ただしくなってしまっているのだ。

そういえば、エリオと第一王子は同い年だったような気がする。


「エリオ、今年でいくつになった?」

「10です。」

「そうだな。ちょうど第一王子様と同じだ。」

「そうだったのですね。第一王子とはいったいどのような方なのでしょう。」

「ご年齢以上に聡く将来を期待されているお方だ。そして今年から王都の学院に通われる。」

「いつかお会いしたいです。」


ふむ、ここまで礼儀正しい態度を実の父に取れるならば問題はないだろう。


「その願い、案外早くかなうことになるかもしれないぞ?」

「というと?」

「エリオ、お前も第一王子様と同じ学院に入らないか?」
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