39 / 50
39
しおりを挟む
今から向かうとメッセージを送って、待ち合わせのデリカテッセンに行くと、小野塚くんはデリの紙袋をぶら下げて入口の前に立っていた。筋肉のラインがうっすらわかる七分袖のカットソーにサルエルパンツ、昨日と一転してラフなのに、色気が染み出してきてる。生地が薄いせい? 鎖骨? 私に気づくと、空いてる方の手を挙げてニッと笑った。
「ごめんね、お待たせ」
「ううん。はい、鍵。忘れないうちに返しとくね」
と、ピンクのメタリックな鈴のキーホルダーがついた鍵を見せ、差し出した私の手のひらに置いた。
「帰ろうか」
私がいうと、小野塚くんは頷いた。
「でも、今夜はおれんちにしよ」
そういえば、お隣さんから苦情きてたんだった。
「……ごめんね。私のせいで」
思い返すと恥ずかしくて茹だりそうだ。
「えー。そこはおれのせいでしょ」
意味ありげにどこか得意気に微笑む。
「そういうの、いいって! いらないから!」
頭の中で肌色のあれこれが自動再生される。ぶわわーっと顔が熱くなった。
一度素肌を見てしまったら、服を着てるほうがいかがわしいのではないかと思える。もちろん、公然で全裸を推奨、という意味ではない。世のカップルたちは、互いの服の下を知りながら何食わぬ顔で歩いてるのか。そんなのいやらしくない?
「いこ」
と、私の手を取って指を絡める。見た目よりずっとゴツゴツしてる。ふわりと小野塚くんの香水が香って、ドキッとした。今日は甘めで深い温かみのあるウッド系の香り。うわ。なんか撫でられた指に照れる。
「小野塚くんの部屋何年ぶりだろう」
「前のとこから引っ越したよ。今麻布」
「え? 実家?」
「違うよ。実家は松濤だもん。え。おれの親に挨拶してくれる?」
私は思いっきりもげるくらい首を左右に振る。違う。そうじゃない。
「引っ越したっていうから、実家に戻ったのかと思ったの。そもそも実家だったらこんな格好でこんな時間から行けるわけないから」
「大丈夫。おれしかいないし、防音も完璧だから安心していいよ」
「そういうこと言わないでよ」
ひと睨みしても、小野塚くんの頬は緩んだまま。
「あはは、ごめんって」
「やっぱり一旦家戻っていい? 服とか取りに行きたい」
「うん。そうだね。どうせならもうおれんち住めば? 立ち退きしなきゃいけないんでしょ?」
あ。やば。大家さんの対応までしてもらってたんだ。
「大丈夫だよ。何とか期日までに探すし、最悪、会社に相談してみるし。ごめんね、変に気遣わせちゃって」
「気遣っていってると思ってる? 本気で?」
「だって、小野塚くん優しいから……、え? 同情してくれてるんじゃないの?」
「そんなわけないじゃん」
意地悪な笑みを浮かべて私の手をにぎにぎと握る。
「そこまで言い切られると逆に気遣っててほしい!」
「まあまあ。とりあえずお試しで何日かルームシェアしよう」
「でも……」
「交際0日で結婚する例もあるんだし、交際一日で同棲もありなんじゃない?」
「ありかな?」
「ありあり。やっぱ願望は口にすると成就するね。さあ、急げ」
大股で歩き出したので、私は小走りになる。通りでタクシーを拾い、私のアパートに寄る。そのまま小野塚くんをタクシーに待たせて、とりあえず一週間分の荷造りをする。メイク道具は持ってこなくても大丈夫だと言われたけれど、スキンケアとメイクアップの最低限のものと、下着と衣類と必要な日用品をボストンバッグに詰める。なんだか非現実的で、ただただドキドキしてきた。
「ごめんね、お待たせ」
「ううん。はい、鍵。忘れないうちに返しとくね」
と、ピンクのメタリックな鈴のキーホルダーがついた鍵を見せ、差し出した私の手のひらに置いた。
「帰ろうか」
私がいうと、小野塚くんは頷いた。
「でも、今夜はおれんちにしよ」
そういえば、お隣さんから苦情きてたんだった。
「……ごめんね。私のせいで」
思い返すと恥ずかしくて茹だりそうだ。
「えー。そこはおれのせいでしょ」
意味ありげにどこか得意気に微笑む。
「そういうの、いいって! いらないから!」
頭の中で肌色のあれこれが自動再生される。ぶわわーっと顔が熱くなった。
一度素肌を見てしまったら、服を着てるほうがいかがわしいのではないかと思える。もちろん、公然で全裸を推奨、という意味ではない。世のカップルたちは、互いの服の下を知りながら何食わぬ顔で歩いてるのか。そんなのいやらしくない?
「いこ」
と、私の手を取って指を絡める。見た目よりずっとゴツゴツしてる。ふわりと小野塚くんの香水が香って、ドキッとした。今日は甘めで深い温かみのあるウッド系の香り。うわ。なんか撫でられた指に照れる。
「小野塚くんの部屋何年ぶりだろう」
「前のとこから引っ越したよ。今麻布」
「え? 実家?」
「違うよ。実家は松濤だもん。え。おれの親に挨拶してくれる?」
私は思いっきりもげるくらい首を左右に振る。違う。そうじゃない。
「引っ越したっていうから、実家に戻ったのかと思ったの。そもそも実家だったらこんな格好でこんな時間から行けるわけないから」
「大丈夫。おれしかいないし、防音も完璧だから安心していいよ」
「そういうこと言わないでよ」
ひと睨みしても、小野塚くんの頬は緩んだまま。
「あはは、ごめんって」
「やっぱり一旦家戻っていい? 服とか取りに行きたい」
「うん。そうだね。どうせならもうおれんち住めば? 立ち退きしなきゃいけないんでしょ?」
あ。やば。大家さんの対応までしてもらってたんだ。
「大丈夫だよ。何とか期日までに探すし、最悪、会社に相談してみるし。ごめんね、変に気遣わせちゃって」
「気遣っていってると思ってる? 本気で?」
「だって、小野塚くん優しいから……、え? 同情してくれてるんじゃないの?」
「そんなわけないじゃん」
意地悪な笑みを浮かべて私の手をにぎにぎと握る。
「そこまで言い切られると逆に気遣っててほしい!」
「まあまあ。とりあえずお試しで何日かルームシェアしよう」
「でも……」
「交際0日で結婚する例もあるんだし、交際一日で同棲もありなんじゃない?」
「ありかな?」
「ありあり。やっぱ願望は口にすると成就するね。さあ、急げ」
大股で歩き出したので、私は小走りになる。通りでタクシーを拾い、私のアパートに寄る。そのまま小野塚くんをタクシーに待たせて、とりあえず一週間分の荷造りをする。メイク道具は持ってこなくても大丈夫だと言われたけれど、スキンケアとメイクアップの最低限のものと、下着と衣類と必要な日用品をボストンバッグに詰める。なんだか非現実的で、ただただドキドキしてきた。
5
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメンエリートは愛妻の下僕になりたがる(イケメンエリートシリーズ第四弾)
便葉
恋愛
国内有数の豪華複合オフィスビルの27階にある
IT関連会社“EARTHonCIRCLE”略して“EOC”
謎多き噂の飛び交う外資系一流企業
日本内外のイケメンエリートが
集まる男のみの会社
そのイケメンエリート軍団のキャップ的存在
唯一の既婚者、中山トオルの意外なお話
中山加恋(20歳)
二十歳でトオルの妻になる
何不自由ない新婚生活だが若さゆえ好奇心旺盛
中山トオル(32歳)
17歳の加恋に一目ぼれ
加恋の二十歳の誕生日に強引に結婚する
加恋を愛し過ぎるあまりたまに壊れる
会社では群を抜くほどの超エリートが、
愛してやまない加恋ちゃんに
振り回されたり落ち込まされたり…
そんなイケメンエリートの
ちょっと切なくて笑えるお話
異世界は『一妻多夫制』!?溺愛にすら免疫がない私にたくさんの夫は無理です!?
すずなり。
恋愛
ひょんなことから異世界で赤ちゃんに生まれ変わった私。
一人の男の人に拾われて育ててもらうけど・・・成人するくらいから回りがなんだかおかしなことに・・・。
「俺とデートしない?」
「僕と一緒にいようよ。」
「俺だけがお前を守れる。」
(なんでそんなことを私にばっかり言うの!?)
そんなことを思ってる時、父親である『シャガ』が口を開いた。
「何言ってんだ?この世界は男が多くて女が少ない。たくさん子供を産んでもらうために、何人とでも結婚していいんだぞ?」
「・・・・へ!?」
『一妻多夫制』の世界で私はどうなるの!?
※お話は全て想像の世界になります。現実世界とはなんの関係もありません。
※誤字脱字・表現不足は重々承知しております。日々精進いたしますのでご容赦ください。
ただただ暇つぶしに楽しんでいただけると幸いです。すずなり。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。
下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。
またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。
あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。
ご都合主義の多分ハッピーエンド?
小説家になろう様でも投稿しています。
【完結】モブのメイドが腹黒公爵様に捕まりました
ベル
恋愛
皆さまお久しぶりです。メイドAです。
名前をつけられもしなかった私が主人公になるなんて誰が思ったでしょうか。
ええ。私は今非常に困惑しております。
私はザーグ公爵家に仕えるメイド。そして奥様のソフィア様のもと、楽しく時に生温かい微笑みを浮かべながら日々仕事に励んでおり、平和な生活を送らせていただいておりました。
...あの腹黒が現れるまでは。
『無口な旦那様は妻が可愛くて仕方ない』のサイドストーリーです。
個人的に好きだった二人を今回は主役にしてみました。
黒瀬部長は部下を溺愛したい
桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。
人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど!
好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。
部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。
スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる