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後悔先に立たず
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規則的な電子音が心地よい眠りの邪魔をする。冴子は半覚醒の思考回路で目覚まし時計を探そうと手を伸ばしかけて、思い出した。ここは、自宅ではない。そして、あの音はうちのアラームではない。アラーム音と思っていたがどうやら着信音だったようだ。
「はいもしもし」
腕枕が遠慮がちに抜かれようとしているので顔を上げると、亮がギョッとした顔をして、耳に当てていたスマートフォンを腹の辺りに押し当てた。
「ごめん、起こした?」
「あ、ううん。大丈夫……」
『ちょっと!! もしもし!? 聞こえてる!? あなたいつこっち帰ってくるの!? リオも待ってるのよ!?』『ママ、リオにもかわって~~! あ、パパ~』『あ、こら、リオだめ返して!! って、亮ちゃん!?』
スピーカーフォンなのか、遠いが女性の声と小さな女の子の声が漏れてきた。亮が画面をタップする。
「悪い。ちょっと待ってて」
青い顔をして慌てふためいてベッドから出ていく。
「聞こえてるって。デカい声出すなよ。あとちゃん付けやめろ」
と不満げに言いながら玄関から出て行った。
女性と女の子の声。冴子は頭の中で反芻する。パパ……? 頭の中がサァッと冷えていく。
冴子は部屋の明かりをつけると、亮のスエットを脱いで、脱衣所に置きっぱなしにしていた自分の服に着替えた。
最低。最低。最低。最低。半自動的に頭の中でくり返される呪詛。知らなかったとはいえ不倫じゃないか。最低。最低。最低。最低。自分への呪いも重なっていく。
幸い玄関のところに持ってきていた荷物もあった。バッグからスマートフォンを探し、時間を確認する。午前六時を回ったところだ。靴を履き、ドアノブに手をかけた。
「うん。うん。わかった、すぐ帰る。じゃあ、兄貴たちとお義姉さんにもよろしく。はい。はーい、じゃね」
ガチャリとドアが開く。通話を終えた亮がスマートフォンをスエットパンツのポケットに入れたところだった。
「うわ! ビビった。そんなとこにいたの、って、着替えたんだ? あ、今の聞こえてた? ごめん、実は急で悪いんだけど、」
「言われなくても帰りますから、どうぞご心配なく」
「あ、いや。おれとしては帰ってほしくないんだけど……」
「は? こんな時に、よくそんなこと言えますね」
「あ……。そうだよね、ごめん。不謹慎だよね」
「不謹慎にもほどがあります」
「……すいません。そうだ、じゃあ、連絡先交換しよう。また会いたいし」
「嫌よ! そんなことしてる場合じゃないでしょ!? 早く帰りなさいよ!!」
「え、ええ? 何いきなり……」
冴子は進路をふさぐ男を押し退け、部屋を飛び出した。
「ま、待って待ってさえちゃん」
「来ないでよ! ろくでなし!!」
「はァ!? なんだよ突然!! おれが何したっていうんだよ」
「大声出してたら近所迷惑でしょ! ご近所さんに聞かれるわよ! さよなら!!」
駆け足で階段を降りる。悔しくて、腹立たしい。一発くらい殴っておけばよかったと後悔した。
「はいもしもし」
腕枕が遠慮がちに抜かれようとしているので顔を上げると、亮がギョッとした顔をして、耳に当てていたスマートフォンを腹の辺りに押し当てた。
「ごめん、起こした?」
「あ、ううん。大丈夫……」
『ちょっと!! もしもし!? 聞こえてる!? あなたいつこっち帰ってくるの!? リオも待ってるのよ!?』『ママ、リオにもかわって~~! あ、パパ~』『あ、こら、リオだめ返して!! って、亮ちゃん!?』
スピーカーフォンなのか、遠いが女性の声と小さな女の子の声が漏れてきた。亮が画面をタップする。
「悪い。ちょっと待ってて」
青い顔をして慌てふためいてベッドから出ていく。
「聞こえてるって。デカい声出すなよ。あとちゃん付けやめろ」
と不満げに言いながら玄関から出て行った。
女性と女の子の声。冴子は頭の中で反芻する。パパ……? 頭の中がサァッと冷えていく。
冴子は部屋の明かりをつけると、亮のスエットを脱いで、脱衣所に置きっぱなしにしていた自分の服に着替えた。
最低。最低。最低。最低。半自動的に頭の中でくり返される呪詛。知らなかったとはいえ不倫じゃないか。最低。最低。最低。最低。自分への呪いも重なっていく。
幸い玄関のところに持ってきていた荷物もあった。バッグからスマートフォンを探し、時間を確認する。午前六時を回ったところだ。靴を履き、ドアノブに手をかけた。
「うん。うん。わかった、すぐ帰る。じゃあ、兄貴たちとお義姉さんにもよろしく。はい。はーい、じゃね」
ガチャリとドアが開く。通話を終えた亮がスマートフォンをスエットパンツのポケットに入れたところだった。
「うわ! ビビった。そんなとこにいたの、って、着替えたんだ? あ、今の聞こえてた? ごめん、実は急で悪いんだけど、」
「言われなくても帰りますから、どうぞご心配なく」
「あ、いや。おれとしては帰ってほしくないんだけど……」
「は? こんな時に、よくそんなこと言えますね」
「あ……。そうだよね、ごめん。不謹慎だよね」
「不謹慎にもほどがあります」
「……すいません。そうだ、じゃあ、連絡先交換しよう。また会いたいし」
「嫌よ! そんなことしてる場合じゃないでしょ!? 早く帰りなさいよ!!」
「え、ええ? 何いきなり……」
冴子は進路をふさぐ男を押し退け、部屋を飛び出した。
「ま、待って待ってさえちゃん」
「来ないでよ! ろくでなし!!」
「はァ!? なんだよ突然!! おれが何したっていうんだよ」
「大声出してたら近所迷惑でしょ! ご近所さんに聞かれるわよ! さよなら!!」
駆け足で階段を降りる。悔しくて、腹立たしい。一発くらい殴っておけばよかったと後悔した。
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