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第二章『魔物のハーレムを作りたい!』
第8話「公にならない事件」
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「ウィン……お前から会いに来るとは珍しい」
ウィン自身卒業してからこんなに早く学校に足を運ぶ事になるとは思っていなかった。しかも校内で最も顔を合わせたくないリビルド学長に自ら会いに来る事になるとは。
「最近はどうだ?」
「どうって特に何も」
「『研究』は進めているのか?」
「まぁ……」
「あまり進歩は無いようだな」
リビルドはウィンと顔を合わせると必ずその質問をした。ウィンにしてみればこれが会いたくない理由の一つだった。
「それで?お前が何の用もなく私に会いに来る訳が無い」
「はい、教えて欲しい情報があります」
「お前が?」
リビルドはさも珍しいと言うように目を細めた。
「テイマーが使い魔に命を奪われる……そういう事件についてです」
「……」
「まれな事件だと思います。テイマー関係の情報は小さな事でもすべてあなたの耳に真っ先に入る」
「……」
「その内容を公にするか、内密にするかはあなたが操作していると言っても過言ではない」
リビルドは鋭い視線をウィンに向けた。
「テイマーは世の中からまだまだ認められていない。粗を見せればそこから潰される事も十分にある」
「はいはい……すいません、解っていますよ」
ウィンは両の手を振った。
リビルドにはリビルドの信念がある、ウィンはそれを十分に理解していた。
「あなたを虐めに来た訳ではないのです」
「先ほどの話か……何かあったのか?」
「犯人、見つからないままなんですよね?」
リビルドは合点したようにウィンを見据えた。
「見つけたと言う事か、それは……獣人か?」
「だとしたら?」
リビルドの目がギラリと光った。
「処分する」
「……」
テイマー学校の創設者であり、獣人を生み出した研究者の末裔、それがリビルドだ。
どのような強い意志の元テイマーという地位を作り上げ成り立たせようとしているのか?ウィンにも計り知れない領域だ。
「事件の内容を話そう」
リビルドは白い顎髭を一つ撫でると重い口調で話し出した。
――――――
事件は5年ほど前に遡る……
小さな港街『ラルラ』で事は起こった。
ある日、街に住む男『バレディ』の遺体が発見された。
刃物で心臓を一突きだった、よほど強い恨みを持った者の犯行と推測された。だが、街の人々が言うにはバレディは穏やかな人格で金銭トラブルなども無し。むしろ、周囲に対して羽振りが良すぎるほどだった、恨みを買う事など無いというのが人々の意見だった。
バレディは街で唯一のテイマーでもあった。常に猫の獣人を2体連れていた。
2体は兄弟で、名を兄が『シャープ』弟を『チルダ』と言った。オッドアイを持つ2体の獣人をバレディは溺愛していたらしい。
特に兄の瞳の色は左がサファイアを思わせる青、右がアメジストも霞むような紫。そんな歩く宝石のような獣人と契約している事。それは何よりもバレディの自慢だった。
ある日事件が起こった。
街に突如凶暴な魔物が現れた。テイマーとして……だったのか、バレディは誰よりも早くその魔物の元に向かい無茶な契約を試みようとした。
その結果……魔物の攻撃を受け片目を失う大怪我を負った。
――――――
「バレディでは無く、主人を守った兄猫のシャープが……ですよね?」
「……その通りだ」
そこまで知っているのかと言うようにリビルドはウィンを見て目を細めた。
「ウィン……お前の言う通り、大怪我をしながらもシャープはバレディを守ったのだ」
「……」
「結果、バレディの命は 『その時』 は繋がった。だが、その後すぐに殺害されてしまう……バレディの命を命がけで守ったシャープによって」
「何かの間違いという事は?」
「間違いなくバレディを殺害したのは兄猫シャープだ」
リビルドは調べた結果、確固たる証拠を持っていた。
「では街の皆様にもバレディの死についてそのようにお話したと?」
「街の者達には公にはしてはいない……いまだ犯人は不明とされている」
「でしょうね。獣人が人間の命を奪ったなんて言えませんよね。だから、公になる前に秘かに捕らえて証拠隠滅ですか?」
リビルドは深く息をついた。
「ウィン……どのような理由があれど、人間の命……ましてや一度は信頼し契約を交わした主を殺めたのだ。それほどの闇を抱えたと言う事……この先、人間を憎み何をしでかすか解らない」
『お前も解っているだろう』と言う目でリビルドはウィンを見据えた。
「危険因子の獣人を排除する事がその他の獣人への生活安定に繋がる……と」
リビルドは解っているなら口を出すなという顔を見せた。
ウィンもリビルドの思想を頭から否定出来ない、それはテイマーである故によく解っているからだ。
「ですが……今回ばかりは口を挟みます」
「……」
「1ヶ月だけ猶予を下さい。その間に私がシャープと契約を交わす事が出来れば、今回の件は一旦終わりにして下さい」
「契約?」
「もちろんテイマーの規約に則って『合意の上で』です」
リビルドは首を振った。
「一度信頼を交わした主を自らの手で殺めた獣人だ。再び人と契約するなどありはしない……ウィン、たとえお前であってもだ」
その言葉にウィンは口の端を上げた。
「私にそれが出来るか?興味が湧きましたか?」
2人の間に沈黙が流れた。しばらくしてリビルドが口を開いた。
「……いいだろう。お前に任せてみよう」
リビルドとて本心では魔物の命を奪うなどしたくは無いのだ。
「それにお前には借りがあったしな」
「借り?」
「ルートの件だ」
「ルート?何がです?」
「お前に投げてみてうまくいった」
今度はリビルドが口の端を上げた。
「もしかして、ルートが子竜を隠している事を知っていたのですか!?」
「当たり前だ、学生の事は入学前にある程度調べるようにしている」
「悪趣味です」
「必要な事だ、でなくてはテイマーの力のみを得るため在学し、卒業後手をつけられなくなる者が出て来る」
「デリートさんの事ですか」
「奴が目立っているだけで、他にもいる」
「ですね……」
「ルートの事情は把握はしていた。が、対処は考えあぐねていた。竜族の生態はまだまだ不明、その竜を所持しているなど……学園側としてはむしろ育てたい逸材」
「しかし、デリートさんのお陰で世間の竜に対するイメージがマイナスになりすぎていましたからね。他の生徒の混乱も考えると気楽に『はいどうぞ』とは言い難かった訳ですね」
リビルドは頷いた。
「更に、ルート自身も竜と契約するという事に悩み迷いが大きかった。それらを上手く解決に導く方法が……」
「私に丸投げですかぁ~!?」
ウィン自身、自分と組ませる辺りで普通の生徒では無いだろうと予想はしていた。が、そこまで仕組まれていたとは思っていなかった。
「正直、上手く行くかは賭けのようなものだった。最悪、ルートは子竜を手放し学園を去るやもと」
「あなたって、深いのか浅いのか謎ですね」
「ふふ……ヤツにもそのように言われたな」
リビルドは懐かしい人物を見るようにウィンを見た。ウィンにとってこれもリビルドに会いたくない理由の一つだ。
ウィンは早々に話題を元に戻した。
「では、約束です1ヶ月でシャープと契約を成せれば……」
「うむ、一旦シャープの所存はお前に委ねよう」
――――――
ウィンは屋敷に戻って紅茶を淹れた。それを一口飲んで深いため息を吐いた。
ウィンにとって人間との会話はただでさえ疲れるのだ。その中でもリビルドとの会話は輪をかけて疲れる事だった。
「でもさー不思議ぞえ?」
角砂糖をボリボリ齧りながらピリオドが言った。
「確かテイマーと契約した魔物は主に危害を加えたら同じ形で自分に返って来るぞえ?シャープが主を殺したら、シャープも生きて無いぞえ!相打ちだぞえ!」
ピリオドの言う通りだった。
契約の石の魔力効果で、テイマーと魔物は一心同体となる。これにより、魔物が主を傷つける事があればそれは同じ形で魔物に返って来るのだ。
ただし、テイマーが使い魔に同じ事をしてもそうはならない。そもそもが、魔物と人間の力バランスを調整するための措置だからだ。
「ですから、その前にシャープは契約を解除されたのでしょう」
「なるほどぞえー!でもなんでぞえ?飼い主はシャープを溺愛していたぞえ?」
その辺りの事情について、ウィンはおおよそ想像がついていた。が、それだけにシャープと契約すると言うのはかなり困難だという事も解っていたのだ。
「リビルドを一旦止めるには大きく出ないとダメだったとは言え……さて、どう動くべきか?」
ウィンは紅茶を口にすると再び深くため息を吐いた。
その後、ウィンとシャープの間には何の進展も無いまま7日が過ぎていた。
今日も進展無く日が暮れようとしていた。
「あー!俺様もう飽きて来たぞえ!もう猫兄弟の隠れ家に突撃しちゃえばいいぞえ!!」
ピリオドの言う通りで、ウィンも悩んでいた。
(多少強引に行動すべきかもしれない。しかし尚更人間への信頼を失い状況を悪化させてしまう可能性もある……)
と。
(バーーーーンッ!!)
突然大きな音を立ててリビングのドアが開いた。
「!?」
「なんぞえー!?」
ウィンがドアの方を見ると、そこには息を切らしてシャープが立っていた。
「うわー!猫兄の方から突撃して来たぞえっ!」
シャープはウィンを睨みつけるとズカズカと歩み寄り胸ぐらを掴んだ。
「お前っ!チルダはどこや!?」
「チルダちゃん?ここには居ない……というかしばらくお会いしていませんが?」
「……」
シャープの瞳が揺らいだ。そしてウィンを掴んでいた手を静かに放した。
「チルダちゃんがどうかしたのですか?いないのですか?」
「……」
シャープは何も言わずフイッと踵を返し部屋を出て行こうとした。
「いきなり来てなんぞえっ!あいつ弟がいなくなったのをウィンのせいにしてたぞえっ!間違ったのに謝りもせんぞえー!最低ぞえっ!」
ピリオドの甲高い声にシャープはイラついたように足を止めた。
「謝る必要なんかないやろ!?俺らがコソコソ隠れて生活せなあかんのは人間のせいやねんから!」
シャープは猫のようにフーフー息をした。
「チルダになんかあったら人間全員殺したるっ!」
「その割には随分あっさり信じてくれるのですね」
「は?」
「私の言う事を」
「え?」
「私がウソをついてチルダちゃんを監禁していたら?」
「それは……」
シャープは視線を泳がせた。
「俺が何度言い聞かせてもチルダのやつ勝手に隠れ家を出て森で遊んどった……でもここん所ちゃんと家で留守番するようになって……」
シャープはしどろもどろに続けた。
「お前に言われたからやって言うとった……お前と約束したからって……」
「はぁ~チルダちゃん良い子でかわゆいですねぇ♡」
シャープはチッと舌打ちをした。
「ではなぜシャープはここに来たのでしょうね?」
「え?」
「ここにチルダちゃんがいる可能性は低いとお考えだったのに?」
「……」
「なるほどぞえー!じゃあ何で来たぞえ?時間の無駄ぞえ」
「チルダちゃんが消えた事を伝えれば私もチルダちゃんの捜索に自ずと手を貸す……そうお考えなんですよね?」
シャープは耳と尻尾をピンっと立てた。
「っ!そんな訳あるかっ!俺は人間なんか信じてへん!人間なんて全員クズやっ!!」
「ええその通り」
ウィンはシャープの前に立つとその顔を覗き込んだ。
「あ……」
勢いの良いシャープだったのに、蛇に睨まれた蛙のように体を固くした。
ウィン自身卒業してからこんなに早く学校に足を運ぶ事になるとは思っていなかった。しかも校内で最も顔を合わせたくないリビルド学長に自ら会いに来る事になるとは。
「最近はどうだ?」
「どうって特に何も」
「『研究』は進めているのか?」
「まぁ……」
「あまり進歩は無いようだな」
リビルドはウィンと顔を合わせると必ずその質問をした。ウィンにしてみればこれが会いたくない理由の一つだった。
「それで?お前が何の用もなく私に会いに来る訳が無い」
「はい、教えて欲しい情報があります」
「お前が?」
リビルドはさも珍しいと言うように目を細めた。
「テイマーが使い魔に命を奪われる……そういう事件についてです」
「……」
「まれな事件だと思います。テイマー関係の情報は小さな事でもすべてあなたの耳に真っ先に入る」
「……」
「その内容を公にするか、内密にするかはあなたが操作していると言っても過言ではない」
リビルドは鋭い視線をウィンに向けた。
「テイマーは世の中からまだまだ認められていない。粗を見せればそこから潰される事も十分にある」
「はいはい……すいません、解っていますよ」
ウィンは両の手を振った。
リビルドにはリビルドの信念がある、ウィンはそれを十分に理解していた。
「あなたを虐めに来た訳ではないのです」
「先ほどの話か……何かあったのか?」
「犯人、見つからないままなんですよね?」
リビルドは合点したようにウィンを見据えた。
「見つけたと言う事か、それは……獣人か?」
「だとしたら?」
リビルドの目がギラリと光った。
「処分する」
「……」
テイマー学校の創設者であり、獣人を生み出した研究者の末裔、それがリビルドだ。
どのような強い意志の元テイマーという地位を作り上げ成り立たせようとしているのか?ウィンにも計り知れない領域だ。
「事件の内容を話そう」
リビルドは白い顎髭を一つ撫でると重い口調で話し出した。
――――――
事件は5年ほど前に遡る……
小さな港街『ラルラ』で事は起こった。
ある日、街に住む男『バレディ』の遺体が発見された。
刃物で心臓を一突きだった、よほど強い恨みを持った者の犯行と推測された。だが、街の人々が言うにはバレディは穏やかな人格で金銭トラブルなども無し。むしろ、周囲に対して羽振りが良すぎるほどだった、恨みを買う事など無いというのが人々の意見だった。
バレディは街で唯一のテイマーでもあった。常に猫の獣人を2体連れていた。
2体は兄弟で、名を兄が『シャープ』弟を『チルダ』と言った。オッドアイを持つ2体の獣人をバレディは溺愛していたらしい。
特に兄の瞳の色は左がサファイアを思わせる青、右がアメジストも霞むような紫。そんな歩く宝石のような獣人と契約している事。それは何よりもバレディの自慢だった。
ある日事件が起こった。
街に突如凶暴な魔物が現れた。テイマーとして……だったのか、バレディは誰よりも早くその魔物の元に向かい無茶な契約を試みようとした。
その結果……魔物の攻撃を受け片目を失う大怪我を負った。
――――――
「バレディでは無く、主人を守った兄猫のシャープが……ですよね?」
「……その通りだ」
そこまで知っているのかと言うようにリビルドはウィンを見て目を細めた。
「ウィン……お前の言う通り、大怪我をしながらもシャープはバレディを守ったのだ」
「……」
「結果、バレディの命は 『その時』 は繋がった。だが、その後すぐに殺害されてしまう……バレディの命を命がけで守ったシャープによって」
「何かの間違いという事は?」
「間違いなくバレディを殺害したのは兄猫シャープだ」
リビルドは調べた結果、確固たる証拠を持っていた。
「では街の皆様にもバレディの死についてそのようにお話したと?」
「街の者達には公にはしてはいない……いまだ犯人は不明とされている」
「でしょうね。獣人が人間の命を奪ったなんて言えませんよね。だから、公になる前に秘かに捕らえて証拠隠滅ですか?」
リビルドは深く息をついた。
「ウィン……どのような理由があれど、人間の命……ましてや一度は信頼し契約を交わした主を殺めたのだ。それほどの闇を抱えたと言う事……この先、人間を憎み何をしでかすか解らない」
『お前も解っているだろう』と言う目でリビルドはウィンを見据えた。
「危険因子の獣人を排除する事がその他の獣人への生活安定に繋がる……と」
リビルドは解っているなら口を出すなという顔を見せた。
ウィンもリビルドの思想を頭から否定出来ない、それはテイマーである故によく解っているからだ。
「ですが……今回ばかりは口を挟みます」
「……」
「1ヶ月だけ猶予を下さい。その間に私がシャープと契約を交わす事が出来れば、今回の件は一旦終わりにして下さい」
「契約?」
「もちろんテイマーの規約に則って『合意の上で』です」
リビルドは首を振った。
「一度信頼を交わした主を自らの手で殺めた獣人だ。再び人と契約するなどありはしない……ウィン、たとえお前であってもだ」
その言葉にウィンは口の端を上げた。
「私にそれが出来るか?興味が湧きましたか?」
2人の間に沈黙が流れた。しばらくしてリビルドが口を開いた。
「……いいだろう。お前に任せてみよう」
リビルドとて本心では魔物の命を奪うなどしたくは無いのだ。
「それにお前には借りがあったしな」
「借り?」
「ルートの件だ」
「ルート?何がです?」
「お前に投げてみてうまくいった」
今度はリビルドが口の端を上げた。
「もしかして、ルートが子竜を隠している事を知っていたのですか!?」
「当たり前だ、学生の事は入学前にある程度調べるようにしている」
「悪趣味です」
「必要な事だ、でなくてはテイマーの力のみを得るため在学し、卒業後手をつけられなくなる者が出て来る」
「デリートさんの事ですか」
「奴が目立っているだけで、他にもいる」
「ですね……」
「ルートの事情は把握はしていた。が、対処は考えあぐねていた。竜族の生態はまだまだ不明、その竜を所持しているなど……学園側としてはむしろ育てたい逸材」
「しかし、デリートさんのお陰で世間の竜に対するイメージがマイナスになりすぎていましたからね。他の生徒の混乱も考えると気楽に『はいどうぞ』とは言い難かった訳ですね」
リビルドは頷いた。
「更に、ルート自身も竜と契約するという事に悩み迷いが大きかった。それらを上手く解決に導く方法が……」
「私に丸投げですかぁ~!?」
ウィン自身、自分と組ませる辺りで普通の生徒では無いだろうと予想はしていた。が、そこまで仕組まれていたとは思っていなかった。
「正直、上手く行くかは賭けのようなものだった。最悪、ルートは子竜を手放し学園を去るやもと」
「あなたって、深いのか浅いのか謎ですね」
「ふふ……ヤツにもそのように言われたな」
リビルドは懐かしい人物を見るようにウィンを見た。ウィンにとってこれもリビルドに会いたくない理由の一つだ。
ウィンは早々に話題を元に戻した。
「では、約束です1ヶ月でシャープと契約を成せれば……」
「うむ、一旦シャープの所存はお前に委ねよう」
――――――
ウィンは屋敷に戻って紅茶を淹れた。それを一口飲んで深いため息を吐いた。
ウィンにとって人間との会話はただでさえ疲れるのだ。その中でもリビルドとの会話は輪をかけて疲れる事だった。
「でもさー不思議ぞえ?」
角砂糖をボリボリ齧りながらピリオドが言った。
「確かテイマーと契約した魔物は主に危害を加えたら同じ形で自分に返って来るぞえ?シャープが主を殺したら、シャープも生きて無いぞえ!相打ちだぞえ!」
ピリオドの言う通りだった。
契約の石の魔力効果で、テイマーと魔物は一心同体となる。これにより、魔物が主を傷つける事があればそれは同じ形で魔物に返って来るのだ。
ただし、テイマーが使い魔に同じ事をしてもそうはならない。そもそもが、魔物と人間の力バランスを調整するための措置だからだ。
「ですから、その前にシャープは契約を解除されたのでしょう」
「なるほどぞえー!でもなんでぞえ?飼い主はシャープを溺愛していたぞえ?」
その辺りの事情について、ウィンはおおよそ想像がついていた。が、それだけにシャープと契約すると言うのはかなり困難だという事も解っていたのだ。
「リビルドを一旦止めるには大きく出ないとダメだったとは言え……さて、どう動くべきか?」
ウィンは紅茶を口にすると再び深くため息を吐いた。
その後、ウィンとシャープの間には何の進展も無いまま7日が過ぎていた。
今日も進展無く日が暮れようとしていた。
「あー!俺様もう飽きて来たぞえ!もう猫兄弟の隠れ家に突撃しちゃえばいいぞえ!!」
ピリオドの言う通りで、ウィンも悩んでいた。
(多少強引に行動すべきかもしれない。しかし尚更人間への信頼を失い状況を悪化させてしまう可能性もある……)
と。
(バーーーーンッ!!)
突然大きな音を立ててリビングのドアが開いた。
「!?」
「なんぞえー!?」
ウィンがドアの方を見ると、そこには息を切らしてシャープが立っていた。
「うわー!猫兄の方から突撃して来たぞえっ!」
シャープはウィンを睨みつけるとズカズカと歩み寄り胸ぐらを掴んだ。
「お前っ!チルダはどこや!?」
「チルダちゃん?ここには居ない……というかしばらくお会いしていませんが?」
「……」
シャープの瞳が揺らいだ。そしてウィンを掴んでいた手を静かに放した。
「チルダちゃんがどうかしたのですか?いないのですか?」
「……」
シャープは何も言わずフイッと踵を返し部屋を出て行こうとした。
「いきなり来てなんぞえっ!あいつ弟がいなくなったのをウィンのせいにしてたぞえっ!間違ったのに謝りもせんぞえー!最低ぞえっ!」
ピリオドの甲高い声にシャープはイラついたように足を止めた。
「謝る必要なんかないやろ!?俺らがコソコソ隠れて生活せなあかんのは人間のせいやねんから!」
シャープは猫のようにフーフー息をした。
「チルダになんかあったら人間全員殺したるっ!」
「その割には随分あっさり信じてくれるのですね」
「は?」
「私の言う事を」
「え?」
「私がウソをついてチルダちゃんを監禁していたら?」
「それは……」
シャープは視線を泳がせた。
「俺が何度言い聞かせてもチルダのやつ勝手に隠れ家を出て森で遊んどった……でもここん所ちゃんと家で留守番するようになって……」
シャープはしどろもどろに続けた。
「お前に言われたからやって言うとった……お前と約束したからって……」
「はぁ~チルダちゃん良い子でかわゆいですねぇ♡」
シャープはチッと舌打ちをした。
「ではなぜシャープはここに来たのでしょうね?」
「え?」
「ここにチルダちゃんがいる可能性は低いとお考えだったのに?」
「……」
「なるほどぞえー!じゃあ何で来たぞえ?時間の無駄ぞえ」
「チルダちゃんが消えた事を伝えれば私もチルダちゃんの捜索に自ずと手を貸す……そうお考えなんですよね?」
シャープは耳と尻尾をピンっと立てた。
「っ!そんな訳あるかっ!俺は人間なんか信じてへん!人間なんて全員クズやっ!!」
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ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
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