天才テイマーは魔物にチヤホヤされて過ごしたい!そのために厄介事を解決します!

蛇ノ眼

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第四章『使い魔に恋するお嬢様はトラブルしか起こさない!』

第42話「獣人の寿命」

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 人魚の騒ぎから5日が経っていた。
 その間、ウィンの機嫌はいつも以上に良かった。


「リーダさん!おっはようございますぅぅぅぅぅ~!」

 ウィンは、ウサギのごとくリビングにピョーンと飛び跳ねながら入った。

「ちっ……毎朝最低だな」

 リビングのソファーではリーダが新聞を読んでいた。
 リーダは一瞬だけウィンに視線を向けたが、すぐに新聞に戻す。
 
 リーダの怪我は、セディユの治癒魔法によりすっかり回復していた。
 しかし、回復後もリーダがカレットの元に戻る事をしなかった。ウィンの機嫌がいいのはそのためだ。

「おい変態。コーヒーが飲みたい」
「濃い目のブラックですね」
「……なぜ好みを知っているんだ?」
「そりゃ知っていますよ?だってストーカーしてた時期ありましたから」

 リーダは汚物を見るような目でウィンを見るが、ウィンにとってはご褒美だ。

 
「おはようございます」

 セディユがリビングに現れる。
 するとそれまで足を組んでソファに座っていたリーダがサッと立ち上がった。

「セディユさん、おはようございます」

 リーダは胸に手を当て執事モードでセディユに挨拶をした。

「リーダさん、体はどうですか?」
「はい、セディユさんのお陰ですっかり……素晴らしい治癒魔法ですね。さすが天使様です」
「ふふ、そんなにかしこまらないで下さい」

 2人の間にだけキラキラとしたエフェクトが漂っていた。
 ウィンも入ってみるが、その周辺だけ変なモアレが漂った(ように見えた)ので、ウィンは仕方なくコーヒーを入れに行った。


 ――――――


「リーダさん、もう治療は終了しています。いつ戻っても問題ないですよ」

 セディユの言葉にリーダの耳がピクリと動く。

「セディユ!いらない事を言ってはいけません。リーダさん、どうぞどうぞいつまでもここにいて下さっていいんですよぉ~ウフフ♡」
「お前さえ居なければ、まぁまぁ居心地はいいんだがな」
「私のお家なのにぃ……」

 セディユは紅茶を一口飲むとフゥっと溜息を吐いた。

「大体の流れはシャープから聞いています。元の主と『喧嘩中』なんですよね」

 セディユの解釈にウィンは笑う。

「喧嘩ですかぁ。では私はカレットかリーダさん、どちらかが謝って仲直りするまではリーダさんと契約しててもいいって事ですね」

 リーダはしばらくコーヒーの表面を見つめる。そして、顔を上げてウィンを見た。

「シャープとその弟と契約しているな?」
「チルダは訳あって契約していませんが……大切なニャンニャンですよ」

 『それが何か?』という顔でウィンはリーダを見た。

「私は、お前の魔物に対するふざけた感情は、ふざけているが本物だと思っている……ソレは間違いないか?」
 
 ウィンは返事の代わりに、唇の端を軽く上げる。
 
「ならば……寿命に関しての研究を進めているのだろう?」
「無論です」

 その強い即答に、リーダは始めて満足げに笑う。

「寿命の研究?」

 セディユが問う。

「セディユにしてみれば五十歩百歩のお話です」

 セディユは腑に落ちない顔をしたが、空気を読んでそれ以上は何も言わなかった。

「知っているだろう?カレットの夢はその研究の達成だ」
「ええ、在学中それなりに見てきましたからね」
「そういう生涯をかけてするような事……カレットには荷が重過ぎる」
「だから、私に託すと?」
「お前なら多少の前進を望めるかもしれない……その経過に手を貸そう」
「だから、このまま私と契約をするという決断ですか?」

 リーダは何も返さなかったが、その態度こそ「それが答えだと」告げている。

「しかし、リーダさんは知っていて言ってるんですよね?カレットの夢は結果がそうなだけで、獣人では無く『あなた』と共に同じ時間を歩みたいという事を」

 リーダは意外そうにウィンを見た。

「ただの頭のいい変態かと思っていたが……人間らしい考えも出来るんだな」
「お褒めに預かり光栄です」
「ウィン、全然褒められていませんよ」

 リーダはフンッと鼻を鳴らし続けた。
 
「そうだな……私が手元を離れた所で、私が生きている限り、カレットは足掻くのだろうな」
「ならば一緒に足掻いてみてはどうですか?」
「!?」
 
 リーダはウィンから返された言葉がに驚いた顔を見せた。
 『一緒に足掻く』という選択肢がそれまで無かったからだ。
 
「しかし……そんな事をしたら……」
「深い関係になれば別れが一層辛くなる。カレットとリーダさんの場合は、高い確率で残されるのはカレットですからね、残された方はより辛いでしょう。リーダさんはそれを恐れているのですね?」
「少なくとも、私が『使い魔』という存在で終われば時間が解決するだろう……カレットだっていつかは私の事を忘れて普通の生活を送る」
 
 リーダはコーヒーカップに両手を添える。力が入って、水面が小さく揺れていた。

「果たして本当にそうでしょうか?」

 ウィンの返しにリーダは顔を上げる。
 
「カレットの事です、今度は『再生の魔術』でも会得しようと必死になるのでは?」
 
 ウィンは意地悪く笑う。
 
「有り得ない話じゃないな……」
 
 リーダも想像して、ヤレヤレとため息を吐いた。

「しかし……今の所カレットは『一方的な押し付け』だと考えている。そこは利用すべきだ」

 ウィンとセディユはリーダを見つめた後、ニタァと笑みを見せる。

「なんだ!その顔は!!セディユさんまで……」
「チエ~何ですか~、つまり実際は両想いって事なんですね?いいなーいいなー」

 ウィンは唇を尖らせて、ブリブリとキッショイ動きをする。

「!……わ……私は真剣に話してるんだぞ!」

 リーダは顔を赤くして、長い耳をピーンと伸ばして怒る。

「リーダさんは、自分がカレットの側を離れれば、彼女もいずれは普通の女性として生活をしてくれる……と思っているのですね?」
「カレットは……バカがつくくらい純粋なんだ……可愛いし、いい子だ。いずれ彼女の傷を塞いでくれる存在が現れる……」

 ウィンとセディユは口に手を当てて「あらあら」と顔を見合わせる。

「おい……」

 リーダは真っ赤な顔で、ウィンだけを睨みつける。
 その顔を見てウィンが言う。

「本来は子どもっポイんですね」
「!?」
 
 シゲシゲと言われた言葉に、リーダはギョッとした表情を見せた。

「別にいいじゃないですか?というか、ソッチのが年相応ですよ」
「な……」
「じゃああれですよね!?リーダさんはカレットとずっといた訳ですし!キスすら未経験って事ですよねぇ!」
「!?」

 唐突なウィンの言葉に、リーダは明らかにうろたえてしまう。
 セディユは『また始まった』という顔で紅茶を一口飲む。

「じゃあ、私の使い魔になったんですしぃ~早速♡」

 ウィンはリーダにピョンピョンと身を寄せる。
 
「お前……噂は本当だったのか……契約した魔物と……その」
「そりゃ、私の夢は可愛い魔物ちゃんのハーレムですし。ねぇ?」
「……くっ」

 リーダは心底軽蔑するようにウィンを見る。が、諦めたように言う。

「私は……決断したんだ。それが条件だと言うのなら……」

 ウィンにしてみれば、いつも通りのキッショイノリで遊んだだけだった。
 だが、そこに予期しない事が起こってしまう。

 
「リーダっ!」

 甲高い声がリビングに響いた。声の主はカレットだ。
 ウィンとリーダを見るその顔は、この世の終わりみたいな顔をしていた……
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