悔しくて

萬田

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裏切り

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それは、放課後。
その日ワタシは宿題のレポートのために借り出していた本を返すのを忘れてて、図書館に向かっていた。
しかし、着いてみれば司書の先生は留守らしく、中に先生の姿はない。
恐る恐る静かにとびらを開けて、中に入った時、ワタシはとんでもないことを目にすることになる。

侑斗と、女の子のキスシーン。
深く深く長いキスシーン。

ワタシはおもわず見つからないように本棚の影に身を潜めた。

「侑斗っ、」
「なに?キスだけでそんなによかったわけ?」

侑斗の声は驚くほどに冷たい。

「ほら、早くいれて欲しいなら、僕のこと興奮させてよ。」

侑斗がそう言えば、女の子は侑斗のズボンのベルトを外して、あろうことが侑斗の咥え始めた。

信じられない光景に、ワタシは目を逸らすことができない。
そんな女の子を見下ろす侑斗はこの世のものとは思えないほど冷酷な顔をしていた。


「ねぇ、彼女いるんでしょう?
いいの?
こんなことして?」

女の子は侑斗に問いかける。

「関係ないでしょ。
あんなの抱いても全然気持ち良くないし。
それに、ブスだし。
バカだし。」


よく、小説とか、少女漫画のモノグローグで、"心が壊れる音がした"ってのがあるけど、ワタシはこのとき確かに自分の心が音を立てて壊れる音を聞いた。

「あはは、酷いこというね。」

「余計なこと喋ってる暇があるならもう犯してあげるよ。」

女の子の髪の毛をつかんで、立ち上がらせたところに、侑斗は乱雑に女の子のパンツを下げて突き込んだ。

「ああっ、」

快楽の悲鳴を上げる女の子と、無表情の侑斗。

それはこの世でもっとも見たくない光景だ。

なんで、こんなことになっのだろうか。

「順は僕の彼女でしょ?
僕はこんなこと順にしかしないよ。」

侑斗のこの言葉は真っ赤な嘘だったらしい。

もうどこから突っ込めば良いのやら。

だけど、ここまでバカにされて黙っているほどワタシだってヤワな女じゃなかった。

「侑ちゃん、」

本棚の影から身をおこして、無表情にワタシじゃない誰かを犯す侑斗に話しかける。

「今の本当?」

少し、驚いた顔の侑斗に、ワタシは言葉を続ける。

「ワタシって、侑ちゃんからみたら、バカでブスだったんだね。
うわ、すごいショック。」

このとき泣かなかったことをワタシのことをワタシは本当に褒めてあげたい。

「さっきから見てたんだ。
すごい趣味だね、順、」

冷たく笑う侑斗に負けないようにワタシも虚勢を張った。

「もう、いいから。
ワタシもう侑ちゃんの彼女じゃないから綺麗で頭いい女の子とたくさんセックスすればいいよ。

じゃあね。」

が、泣かなかったワタシは褒められるが、ここでもっと暴れなかったワタシには往復ビンタもしても足りない。

どうせならあのバカ男のアレを踏んづけて一生使い物にならないくらいにしてやりゃよかった、と今のワタシは非常に後悔している。
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