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トライアウト 1
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日出る国。忍びの者、凌ぎを削る興行あり。名を『不忍リーグ』という。
PM 17:00
ランスはトライアウト会場に向かうバスに揺られながら、散々見返したPVをもう一度、携帯で眺めていた。
『古長忍士団
強く 清く 逞しく
皆んなおいでよ 古長へ』
アメコミ調のアニメーションではあるが、明らかに金の掛かってない仕上がり。それには理由がある。この古長は毎年春先に行われるドラフト会議にて、指名されたにも関わらず、その場で入団を拒否されてしまうパターンが、もはや風物詩となっている人気も実力もない万年最下位のチームなのだ。それが祟り祟って、最低六人の定員を割ってしまい、急遽トライアウトを開催するという、何とも情けないニュースがネットを中心に拡散されたのである。
(ラストチャンス……だな)
しかし、ランスにとって世間の評判など、よもやどうだってよかった。どんな形であれ、この国でプロの忍者になる事こそが、唯一の本懐なのだから。
時は戦国。大名や領主が己に仕えている忍者同士を武術で競わせ、家臣に勝敗を賭けさせた裏賭博を『不忍の戯』と呼んでいた。徳川の世になると次第に大衆娯楽へと発展。幕府が正式に興行として認める事となる。日本各地に忍士団(※忍者のチーム)が作られ、その数は十。これこそが現在まで続く『不忍リーグ』の始まりである。
世界的に知名度も高く、複数の大企業がスポンサーとなっているため、実力者は潤沢な報奨金を手に入れる事が出来た。その魅力に惹かれ、各国から志願者が続出し、今では国際色豊かなリーグとなっている。かくいうランスも一攫千金を夢見る男の一人なのだ。
バスが会場近くの停車場に着き、ゆっくりとドアが開く。無論、確固たる自信を引っ提げ此処へやって来たわけだが、視界に入ってきた人間の多さに、思わずランスは面食らってしまった。
(これが全てプロ志望なのか)
個性的な見た目な者もいれば、至極無個性な者もいる。大柄で筋骨隆々な女、視線が定まらない男。大道芸人や雑技団員のような人間までチラホラと。思わず飲んだ生唾の音が体内で反響する。皆一様に強者、曲者に見えて仕方がない。
「……あのう」
背後から薄ら聴こえた声で、彼はようやく我にかえり、自分がバスの降車口で立ち止まっている事に気付いた。
「後ろがつかえてるんで、早く降りて下さい」
「あ、ああ。すまない」
謝罪の為に振り返ったランスは目を疑う。そこに居たのは、忍び装束を纏った小柄で華奢な少女だった。
「君もトライアウトを?」
驚きのあまり上ずった声の問いに、
少女は「そうですけど」と一言答えた。
PM 17:00
ランスはトライアウト会場に向かうバスに揺られながら、散々見返したPVをもう一度、携帯で眺めていた。
『古長忍士団
強く 清く 逞しく
皆んなおいでよ 古長へ』
アメコミ調のアニメーションではあるが、明らかに金の掛かってない仕上がり。それには理由がある。この古長は毎年春先に行われるドラフト会議にて、指名されたにも関わらず、その場で入団を拒否されてしまうパターンが、もはや風物詩となっている人気も実力もない万年最下位のチームなのだ。それが祟り祟って、最低六人の定員を割ってしまい、急遽トライアウトを開催するという、何とも情けないニュースがネットを中心に拡散されたのである。
(ラストチャンス……だな)
しかし、ランスにとって世間の評判など、よもやどうだってよかった。どんな形であれ、この国でプロの忍者になる事こそが、唯一の本懐なのだから。
時は戦国。大名や領主が己に仕えている忍者同士を武術で競わせ、家臣に勝敗を賭けさせた裏賭博を『不忍の戯』と呼んでいた。徳川の世になると次第に大衆娯楽へと発展。幕府が正式に興行として認める事となる。日本各地に忍士団(※忍者のチーム)が作られ、その数は十。これこそが現在まで続く『不忍リーグ』の始まりである。
世界的に知名度も高く、複数の大企業がスポンサーとなっているため、実力者は潤沢な報奨金を手に入れる事が出来た。その魅力に惹かれ、各国から志願者が続出し、今では国際色豊かなリーグとなっている。かくいうランスも一攫千金を夢見る男の一人なのだ。
バスが会場近くの停車場に着き、ゆっくりとドアが開く。無論、確固たる自信を引っ提げ此処へやって来たわけだが、視界に入ってきた人間の多さに、思わずランスは面食らってしまった。
(これが全てプロ志望なのか)
個性的な見た目な者もいれば、至極無個性な者もいる。大柄で筋骨隆々な女、視線が定まらない男。大道芸人や雑技団員のような人間までチラホラと。思わず飲んだ生唾の音が体内で反響する。皆一様に強者、曲者に見えて仕方がない。
「……あのう」
背後から薄ら聴こえた声で、彼はようやく我にかえり、自分がバスの降車口で立ち止まっている事に気付いた。
「後ろがつかえてるんで、早く降りて下さい」
「あ、ああ。すまない」
謝罪の為に振り返ったランスは目を疑う。そこに居たのは、忍び装束を纏った小柄で華奢な少女だった。
「君もトライアウトを?」
驚きのあまり上ずった声の問いに、
少女は「そうですけど」と一言答えた。
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