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第18話
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「ふう、ひと暴れして来てやったわ。これで船の数は大体、釣り合っただろう。」
マントゥーリ君に乗ったリーネオさんが帰って来た。ディーナーさんも一緒だ。
戦場を見るとプロージアの小櫂船の10隻くらいが煙幕に包まれている。中には火矢に当たっちゃってる船も居る。プロージアの兵隊たちが大慌てで火を消しながら退却して行く。イコォーマの小櫂船の方が速いし、操船が巧だから有利みたいだね。
「てぃたる、ちゃんとおやくにたってる?」
「大丈夫だよ! ティタルちゃんのお陰でイコォーマの方が勝ってるよ。偉いね。」
ティタルちゃんが私を見上げて尋ねる。私は彼女の背中を軽く叩いた後で優しく抱き締めてあげた。ちょっと手元を見る。まだかぁ・・・。
「おい、あれを見ろ! プロージアの【戦巫女】が何か始めたぞ! 何をしているのだ?」
周りの兵隊さんたちが騒めき始めた。見てみるとお互いの軍船の距離も大分近くなってる。向こうの甲板の上の様子が判るようになってきたね。確かに【戦巫女】が何かやってる。良く見ると手に何か持ってるよ。あ、扇子だ!
「どうしたんだ、急に風が吹いて煙が晴れて行くぞ。」
「プロージアの小櫂船が急に速くなったぞ、何故だ?」
「こちらの火矢が全く当たらなくなった。どうしたんだ?」
「向こうの火矢がどんどん当たり出した。馬鹿な!」
周りの兵隊さんたちが慌て出した。私も戦場を見る。違うよ、向こうの船が速くなったんじゃないよ。イコォーマの船が遅くなってるんだ。これ絶対に相手の【戦巫女】のスキル効果だ。扇子を持って舞うということは【紅蓮の舞】だな。確か・・・。
思い出した。【紅蓮の舞】のスキル効果は「味方の回避アップ」「状態異常の解除」と「敵軍のスピードダウン」だよ。ティタルちゃんにも付いてるスキルだからちゃんと確認しといて良かった。けど、やっぱ強力だなあ。このままじゃ不味いな。
「ああ、また1隻に火が付いた! 下がらせろ、船団の後ろで消火するんだ!」
イコォーマの船団長さんが忙しく指示を出している。どんどん味方の小櫂船に被害が出ているみたい。リーネオさんも厳しい顔で戦況を見守ってる。ディーナーさんは困り顔だ。こりゃ間違いなく大ピンチだよ。
どうしよう、今更ティタルちゃんにやったこともない舞をさせる訳にも行かないし。そもそも揺れる船の上じゃ転んで怪我しちゃう。その時だった。雨粒が一つ、私のおでこに落ちて来たのは。途端に空が暗い雲に覆われ始めて雨が降って来た。もしかして・・・。
「やった、『既読』ついた!」
女神ユマさんから貰った水晶のプレートを確認すると返信のメッセージが表示されてる。最後に押されてるスタンプを見た瞬間、私はティタルちゃんの耳を塞ぎながら抱き寄せた。
「ゴロゴロ・・・。ビッシャアァァーン!」
突然、大きな雷がミスピエル湖に落ちた。眩しい稲光と殆ど同時にお腹に響く物凄い音が聞えたよ。その瞬間、ティタルちゃんの体がビクッてなったけど、泣き出したりはしなかった。私は彼女の目を見ながら微笑んで褒めてあげた。本当に偉いね。
向こうを見るとプロージアの【戦巫女】は扇子を取り落として蹲っている。仕方ないよ。予め心の準備をしてなかったら私でもビックリしただろうから・・・。
「皆さん、今ですよ! プロージアの【戦巫女】は明らかに動揺しています。」
「そうだ! 今こそ好機! 皆の者、押し返せ!」
私の声に気付いたリーネオさんが号令を出す。船団長さんも周りの兵隊さんも途端に活気付いて動き出した。プロージアの船団は混乱してるみたいだ。【戦巫女】の加護を失ったせいでイコォーマの船団にどんどん押されているよ。
とうとう支えきれなくなったのか、退却を始めちゃった。プロージアの船がどんどん向きを変えて逃げ出し始めた。
「よーし! 今日はここまでだ。深追いはするな。プロージアの撤退を確認したら我らも港に引き上げるぞ!」
リーネオさんの号令でイコォーマの船団が整然と船を並べて行く。ふう、なんとか初日は乗り切ったみたいだね。私はもう一度、女神ユマさんから貰った水晶でできたスマホを見る。
「メッセージ見ました。女神は中立なので【戦巫女】同士の戦いでどちらかに味方することは出来ません。けれど天気はどちらにも公平な条件と認めますので今から雨を降らせます。」
そのメッセージの後に例の虎縞柄の可愛い動物が電気を出してるスタンプが押してある。これのお陰で私は雷が落ちることを予想出来たんだ。有り難うね、ユマさん。ちょっぴり贔屓してくれたんだね。この後、プロージアの撤退を確認してから私たちも港に戻った。
マントゥーリ君に乗ったリーネオさんが帰って来た。ディーナーさんも一緒だ。
戦場を見るとプロージアの小櫂船の10隻くらいが煙幕に包まれている。中には火矢に当たっちゃってる船も居る。プロージアの兵隊たちが大慌てで火を消しながら退却して行く。イコォーマの小櫂船の方が速いし、操船が巧だから有利みたいだね。
「てぃたる、ちゃんとおやくにたってる?」
「大丈夫だよ! ティタルちゃんのお陰でイコォーマの方が勝ってるよ。偉いね。」
ティタルちゃんが私を見上げて尋ねる。私は彼女の背中を軽く叩いた後で優しく抱き締めてあげた。ちょっと手元を見る。まだかぁ・・・。
「おい、あれを見ろ! プロージアの【戦巫女】が何か始めたぞ! 何をしているのだ?」
周りの兵隊さんたちが騒めき始めた。見てみるとお互いの軍船の距離も大分近くなってる。向こうの甲板の上の様子が判るようになってきたね。確かに【戦巫女】が何かやってる。良く見ると手に何か持ってるよ。あ、扇子だ!
「どうしたんだ、急に風が吹いて煙が晴れて行くぞ。」
「プロージアの小櫂船が急に速くなったぞ、何故だ?」
「こちらの火矢が全く当たらなくなった。どうしたんだ?」
「向こうの火矢がどんどん当たり出した。馬鹿な!」
周りの兵隊さんたちが慌て出した。私も戦場を見る。違うよ、向こうの船が速くなったんじゃないよ。イコォーマの船が遅くなってるんだ。これ絶対に相手の【戦巫女】のスキル効果だ。扇子を持って舞うということは【紅蓮の舞】だな。確か・・・。
思い出した。【紅蓮の舞】のスキル効果は「味方の回避アップ」「状態異常の解除」と「敵軍のスピードダウン」だよ。ティタルちゃんにも付いてるスキルだからちゃんと確認しといて良かった。けど、やっぱ強力だなあ。このままじゃ不味いな。
「ああ、また1隻に火が付いた! 下がらせろ、船団の後ろで消火するんだ!」
イコォーマの船団長さんが忙しく指示を出している。どんどん味方の小櫂船に被害が出ているみたい。リーネオさんも厳しい顔で戦況を見守ってる。ディーナーさんは困り顔だ。こりゃ間違いなく大ピンチだよ。
どうしよう、今更ティタルちゃんにやったこともない舞をさせる訳にも行かないし。そもそも揺れる船の上じゃ転んで怪我しちゃう。その時だった。雨粒が一つ、私のおでこに落ちて来たのは。途端に空が暗い雲に覆われ始めて雨が降って来た。もしかして・・・。
「やった、『既読』ついた!」
女神ユマさんから貰った水晶のプレートを確認すると返信のメッセージが表示されてる。最後に押されてるスタンプを見た瞬間、私はティタルちゃんの耳を塞ぎながら抱き寄せた。
「ゴロゴロ・・・。ビッシャアァァーン!」
突然、大きな雷がミスピエル湖に落ちた。眩しい稲光と殆ど同時にお腹に響く物凄い音が聞えたよ。その瞬間、ティタルちゃんの体がビクッてなったけど、泣き出したりはしなかった。私は彼女の目を見ながら微笑んで褒めてあげた。本当に偉いね。
向こうを見るとプロージアの【戦巫女】は扇子を取り落として蹲っている。仕方ないよ。予め心の準備をしてなかったら私でもビックリしただろうから・・・。
「皆さん、今ですよ! プロージアの【戦巫女】は明らかに動揺しています。」
「そうだ! 今こそ好機! 皆の者、押し返せ!」
私の声に気付いたリーネオさんが号令を出す。船団長さんも周りの兵隊さんも途端に活気付いて動き出した。プロージアの船団は混乱してるみたいだ。【戦巫女】の加護を失ったせいでイコォーマの船団にどんどん押されているよ。
とうとう支えきれなくなったのか、退却を始めちゃった。プロージアの船がどんどん向きを変えて逃げ出し始めた。
「よーし! 今日はここまでだ。深追いはするな。プロージアの撤退を確認したら我らも港に引き上げるぞ!」
リーネオさんの号令でイコォーマの船団が整然と船を並べて行く。ふう、なんとか初日は乗り切ったみたいだね。私はもう一度、女神ユマさんから貰った水晶でできたスマホを見る。
「メッセージ見ました。女神は中立なので【戦巫女】同士の戦いでどちらかに味方することは出来ません。けれど天気はどちらにも公平な条件と認めますので今から雨を降らせます。」
そのメッセージの後に例の虎縞柄の可愛い動物が電気を出してるスタンプが押してある。これのお陰で私は雷が落ちることを予想出来たんだ。有り難うね、ユマさん。ちょっぴり贔屓してくれたんだね。この後、プロージアの撤退を確認してから私たちも港に戻った。
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