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第19話
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「リン、今日の戦でイコォーマは兵を15人喪った。彼らの冥福を祈ってやってくれ。」
港に着いて軍船を降りたときにリーネオさんが教えてくれた。今度の戦いはお互いに【戦巫女】が居て加護があったから亡くなった人はまだ少ない方なんだって・・・。私は安置所に並んで寝かされた兵隊さんたちに言葉を掛けに行った。その間、ティタルちゃんはリーネオさんに預かって貰ったよ。
「今日は頑張って下さって有り難うございました。貴方のことは忘れません。ご冥福をお祈りします。」
私は一人ずつに手を合わせて、出来るだけ丁寧に祈った。運悪く火矢に当たってしまった人、湖に落ちて溺れてしまった人、やはり戦いだから死んじゃう人は必ず出る。改めて現実を思い知らされたよ。戦なんて軽はずみに始めちゃいけないんだ、絶対。
「女神『ユマラタル』の名に置いてリン・サトウをイコォーマの【戦巫女】に任ずる!」
その日の深夜、日付が変わると教会の大神官さんが【戦巫女】の任命の儀式を執り行ってくれた。同時に私の視界の端に表示されていたステータスが変化する。
『佐藤 凛 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女所属:なし】』
↓
『佐藤 凛 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女所属:イコォーマ国】』
所属が「イコォーマ国」になった途端、色々なステータスも上昇する。体中に力が漲る。やる気もぐんぐん出て来たよ。ああ、再就職したって実感が湧いてくる。これからはイコォーマの国民のために頑張るぞ!まあ一ヶ月で再就職は「直ぐ」に入るよね。最初から内定してたんだし、今までは試用期間ってことで。
「漸く我がイコォーマの【戦巫女】になってくれたな。これから宜しく頼むぞ、リン。」
「はい、貴方。」
リーネオさんが私の肩に手を置いて語りかけてくる。ちょっと頬が熱くなるけど「貴方」って言い方も慣れて来たよ。もう夜遅いけど、これから軍議だって。ティタルちゃんは寝かしつけてから来たし、クアーエさんが見ていてくれるから安心だ。
「本日の戦いでの捕虜は100余名です。戦いの後半はプロージアの【戦巫女】の加護が失われていたようなので相手方の戦死傷者は恐らく捕虜の数倍になるかと。軍船1隻を拿捕、小櫂船も5隻沈めました。」
「漁師たちの見立てでは明日の天気も雨です。これなら明日は我がイコォーマが終始、有利に戦を進められるでしょう。」
「最早、我らイコォーマの勝利は動きませぬな。して和議の準備は如何いたしましょうか?」
その時、急に軍議の間の扉が勢い良く開いて伝令さんが入って来た。偉い軍人さんに何か耳打ちをしてる。その軍人さんの顔色が変わった。
「なんと! プロージアのマヴィン王太子が戦の決着を一対一の決闘で着けたいと申し入れて来たそうです。無論、決闘の相手はリーネオ様を名指しして来たとのこと・・・。」
「リーネオ様、なりませんぞ! イコォーマは決闘などせずとも勝てまする。これは挑発です、乗ってはなりませぬ。」
「そうです、明日は雨。相手の【戦巫女】は足元も悪く、動いて揺れる軍船の上で「舞」など出来ないでしょう。しかも、こちらの【戦巫女】は雷すら思い通りに落とせるリン様でございます。いつも通りに戦えば自ずと勝利は見えるはず。」
ん? 何か尾ひれが付いてるよ。私、天変地異も起こせる人になっちゃってるみたい。そうか~、「皆さん、今です!」とか言っちゃったもんね・・・。
「ふむ。それも悪くないな。第一、プロージアはあちこちに決闘を申し込んだことは触れ回っておるだろう。ここで断れば、俺は臆病者と謗られ馬鹿にされることになる。受けようじゃないか、その決闘。」
リーネオさんは自信満々で私の方を見る。片目を瞑りながらだよ。どうして、こんな場面で私に喋らせようとするの! 無茶振り反対!
「あの、リ、リーネオの武勇は皆さんの知るところ、あ、数多のはずです。そして、彼には私、【戦巫女】リンが付いています。信じて貰って良いと思います!」
もう私は一生懸命だった。結局、皆さんの前で「リーネオ」と呼び捨てで言わなきゃならなくなったんだよ。もう顔が真っ赤になりそうなのを必死に堪えながら言った。こんなの反対なんて出来ない。狡いよ。
「・・・。お二人の決意がそこまでならば、戦の行方をお任せ致しましょうか。」
「そうだな、何より稀代の【戦巫女】リン様のお力添えがあればリーネオ様が遅れを取るなど在り得まい。」
「そうだ、今日も我が部下が言っていたぞ。危ないと思った時に火矢が避けて行ったと・・・。これも【戦巫女】リン様のお力に違いない。リーネオ様の勝ちは決まったようなものだ。」
んんん? 本当のところ、今日はティタルちゃんが【戦巫女】だったから私の功績じゃないんだけどな。けど水は差さない様にしよう。否定しても良いことないし。
「そうか! そうと決まれば早馬を出せ! プロージアや遊覧船の港に知らせるのだ。この俺、リーネオ・フォン・インゼルが決闘を受けたとな。明日は面白くなるぞ! ははは!」
もうリーネオさんはノリノリだ。こっちの気も知らないで良い気なもんですね。安全に勝てるなら、そっちの方が良いのに。彼は悪戯っぽく微笑みながら私の方を見ている。そして夜が明けた。
港に着いて軍船を降りたときにリーネオさんが教えてくれた。今度の戦いはお互いに【戦巫女】が居て加護があったから亡くなった人はまだ少ない方なんだって・・・。私は安置所に並んで寝かされた兵隊さんたちに言葉を掛けに行った。その間、ティタルちゃんはリーネオさんに預かって貰ったよ。
「今日は頑張って下さって有り難うございました。貴方のことは忘れません。ご冥福をお祈りします。」
私は一人ずつに手を合わせて、出来るだけ丁寧に祈った。運悪く火矢に当たってしまった人、湖に落ちて溺れてしまった人、やはり戦いだから死んじゃう人は必ず出る。改めて現実を思い知らされたよ。戦なんて軽はずみに始めちゃいけないんだ、絶対。
「女神『ユマラタル』の名に置いてリン・サトウをイコォーマの【戦巫女】に任ずる!」
その日の深夜、日付が変わると教会の大神官さんが【戦巫女】の任命の儀式を執り行ってくれた。同時に私の視界の端に表示されていたステータスが変化する。
『佐藤 凛 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女所属:なし】』
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『佐藤 凛 性別:女性 年齢:17歳 職業:【戦巫女所属:イコォーマ国】』
所属が「イコォーマ国」になった途端、色々なステータスも上昇する。体中に力が漲る。やる気もぐんぐん出て来たよ。ああ、再就職したって実感が湧いてくる。これからはイコォーマの国民のために頑張るぞ!まあ一ヶ月で再就職は「直ぐ」に入るよね。最初から内定してたんだし、今までは試用期間ってことで。
「漸く我がイコォーマの【戦巫女】になってくれたな。これから宜しく頼むぞ、リン。」
「はい、貴方。」
リーネオさんが私の肩に手を置いて語りかけてくる。ちょっと頬が熱くなるけど「貴方」って言い方も慣れて来たよ。もう夜遅いけど、これから軍議だって。ティタルちゃんは寝かしつけてから来たし、クアーエさんが見ていてくれるから安心だ。
「本日の戦いでの捕虜は100余名です。戦いの後半はプロージアの【戦巫女】の加護が失われていたようなので相手方の戦死傷者は恐らく捕虜の数倍になるかと。軍船1隻を拿捕、小櫂船も5隻沈めました。」
「漁師たちの見立てでは明日の天気も雨です。これなら明日は我がイコォーマが終始、有利に戦を進められるでしょう。」
「最早、我らイコォーマの勝利は動きませぬな。して和議の準備は如何いたしましょうか?」
その時、急に軍議の間の扉が勢い良く開いて伝令さんが入って来た。偉い軍人さんに何か耳打ちをしてる。その軍人さんの顔色が変わった。
「なんと! プロージアのマヴィン王太子が戦の決着を一対一の決闘で着けたいと申し入れて来たそうです。無論、決闘の相手はリーネオ様を名指しして来たとのこと・・・。」
「リーネオ様、なりませんぞ! イコォーマは決闘などせずとも勝てまする。これは挑発です、乗ってはなりませぬ。」
「そうです、明日は雨。相手の【戦巫女】は足元も悪く、動いて揺れる軍船の上で「舞」など出来ないでしょう。しかも、こちらの【戦巫女】は雷すら思い通りに落とせるリン様でございます。いつも通りに戦えば自ずと勝利は見えるはず。」
ん? 何か尾ひれが付いてるよ。私、天変地異も起こせる人になっちゃってるみたい。そうか~、「皆さん、今です!」とか言っちゃったもんね・・・。
「ふむ。それも悪くないな。第一、プロージアはあちこちに決闘を申し込んだことは触れ回っておるだろう。ここで断れば、俺は臆病者と謗られ馬鹿にされることになる。受けようじゃないか、その決闘。」
リーネオさんは自信満々で私の方を見る。片目を瞑りながらだよ。どうして、こんな場面で私に喋らせようとするの! 無茶振り反対!
「あの、リ、リーネオの武勇は皆さんの知るところ、あ、数多のはずです。そして、彼には私、【戦巫女】リンが付いています。信じて貰って良いと思います!」
もう私は一生懸命だった。結局、皆さんの前で「リーネオ」と呼び捨てで言わなきゃならなくなったんだよ。もう顔が真っ赤になりそうなのを必死に堪えながら言った。こんなの反対なんて出来ない。狡いよ。
「・・・。お二人の決意がそこまでならば、戦の行方をお任せ致しましょうか。」
「そうだな、何より稀代の【戦巫女】リン様のお力添えがあればリーネオ様が遅れを取るなど在り得まい。」
「そうだ、今日も我が部下が言っていたぞ。危ないと思った時に火矢が避けて行ったと・・・。これも【戦巫女】リン様のお力に違いない。リーネオ様の勝ちは決まったようなものだ。」
んんん? 本当のところ、今日はティタルちゃんが【戦巫女】だったから私の功績じゃないんだけどな。けど水は差さない様にしよう。否定しても良いことないし。
「そうか! そうと決まれば早馬を出せ! プロージアや遊覧船の港に知らせるのだ。この俺、リーネオ・フォン・インゼルが決闘を受けたとな。明日は面白くなるぞ! ははは!」
もうリーネオさんはノリノリだ。こっちの気も知らないで良い気なもんですね。安全に勝てるなら、そっちの方が良いのに。彼は悪戯っぽく微笑みながら私の方を見ている。そして夜が明けた。
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