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始 - ハードモードな異世界で生き抜いてたら敵国の将軍に捕まったのですが
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気がついたら異世界にいた。
高校の帰り道、あと通りを一つ曲がれば家というところで、いきなり視界が真っ白になっていて、周りの景色が一瞬にして変わっていた。
チュニックやロングスカートを身に着けた人たち。
通りには商店がびっしり並んでいて、笑い声、子供の声、怒鳴る声が、あっちこっちから聞こえてきた。
全く知らない建物の様子に、商店に並ぶよく分からないものたち。
言葉は通じた。
けれど、彼らが話す『魔法』とか『魔物』とかという言葉から、ここは別の世界かもしれないと思いはじめ、そして車も、携帯も、見知った機械もないその世界が、異世界であることをなんとなく受け入れた。
身を寄せる場所もないままに途方に暮れて、路地裏にしゃがみこんでいると、次第に夜になった。
夜空に浮かんだ真っ赤な大きな満月が、明らかにこの世界は異世界だと伝えていて、私はその夜泣きじゃくった。
異世界だと分かっても、私にはこの世界での常識がなかった。
異世界の人は、普通の世界と変わらない。
良い人もいれば、悪人もいる。当たり前のことだった。
騙され、助けられ、また騙されと、何とか逃げ続けた結果、三年経った今でも、私はどうにかこの世界で生きている。
「ルリ! ここにいたのね! 師がみんなを呼んでいるわよ」
「あいつが? また面倒なことでなければいいけれど」
「もう、文句を言わないの。怒られたら、余計に働かないといけなくなっちゃうの、分かってるでしょ?」
聖堂の治癒師として一緒に働いているエレナに、私は肩をすくめてみせた。
この聖堂にやってきたのは、ちょうど一年前のことだ。
色々厳しすぎる異世界での日々から逃げるように森に逃げて、人が住んでいたと思われる朽ちた山小屋を拠点に、その日暮らしを始めたのだ。
生きることができたのは奇跡に近かった。
獣の仕留め方も分からなければ、食べられる木の実なのか、草なのかさえ分からない。
それでも私を突き動かしたのは、生きたいという衝動だった。
いきなり訳の分からない世界にいて、人に騙されて、傷ついて、それでも逃げ出して、森に来た。
こんなところで死んでやるものか。
こんな風に惨めに一人死にたくない。
温かい家で、お腹一杯にご飯を食べたい。
神様、どうかお助けください!
なんて祈ったって、目の前の現実は変わらない。
山小屋にあった道具を試行錯誤しながら使って、罠を仕掛け、獣が掛かるのを待つ。
二週間以上何も捕まらなくて、ひたすら水と草を食べ続けたことだってある。
寒さに震えながらいるかどうかさえ分からない神様に祈り続けた。
何とかその日々をしのいでいたが、それも冬が来て、終わりを迎えた。
木の実は取れなくなり、小屋にあった道具も壊れ、食べ物を手に入れることは不可能になった。
ひもじい。寒い。苦しい。
ぶるぶると震える体を包むように傷だらけの手足を折り曲げて、山小屋の藁の中に横たわった。
ここで終わるんだ。
いやだ、死にたくない。
でも、仕方ないじゃない。
いやだ。
誰も助けなんてこない。
いやだ、いやだ、いやだ。
諦めろ。
――こんなふうに死にたくない! 私は生きたい!
死が訪れようとしていた時、体から光が溢れた。その光はとてもあたたかくて、傷ついた体の傷を治していく。
ぽかぽかとしていて、温かい。
苦しくない。心地いい。優しい光。
きらきらした光が、私の体をぐるっと取り囲んでいた。
それから私は光を自由に扱えるようになった。
それがどういう意味なのか分からなかったけれど、これが最後のチャンスだと分かっていた私は、森を出て、街に行った。
お金が手に入ればもう何でもよかった。
傷を癒やすことができるというのを謳って私は街で治療を始め、それがすぐにアーク教の目を引いた。
光は聖力と呼ばれるものだったらしい。
聖力は傷ついた体を癒やすことができる。
聖力を持つ者は貴族に多いが、時折平民にも生まれ、そうした平民は聖堂で治癒師として働くことが一般的だった。
白いローブに豪華な刺繍が施されたローブを纏った神官は、私をデルダ聖堂という街の外れにある聖堂に連れていき、そこで働くようにと告げた。
私は有頂天になった。嬉しくて、嬉しくて、幸運を噛み締めた。
ご飯が食べられて、死の危険がなければもうなんでも良かった。
聖堂での生活は快適そのものだ。
聖堂の中は、魔法でいつも温度が調節されているし、温かい食事が食べられる。
やることといえば、聖堂を訪れる人の体を癒やすだけ。
これで人生安泰だ! なんて、私は信じ込んでいた。
けれど異世界はどこまでも、異世界であり、厳しすぎる現実を突きつけてくる。
異世界は私に優しくない。
「――そんな、せ、戦争ですか?」
「ああ、知っての通り、我が王国は帝国に宣戦布告した。すでに第一陣の兵士たちは出立している」
アーク教の宗主国として、神の威光を知らしめる戦いだと、師は厳かに告げる。
聖堂にいる治癒師は、師の部屋に一同に集められていた。
デルダ聖堂は平民からなる治癒師が勤める聖堂だ。
その聖堂の長たるエブタ師ははっきり言って、金にがめつい男だった。
どんなに真剣な顔をしようとも、師が纏うじめっとした雰囲気が師の欲望を露わにしている。
この男のどこに信心があるのかとみんな思っているが、エブタ師はこの小さな街を治める男爵家の三男であり、平民が逆らうなんて到底不可能。
「そんな、帝国と戦争なんて!」
悲鳴と驚きが混じった声が、部屋に響く。治癒師は私も含めて不安を隠せない。
師が治癒師を集め、戦争の話をする。それが何を意味するのか。
――そして不安は現実となる。
「威光を知らしめるからこそ、騎士団にすべてを任せることはできない。アーク教の教主国である王国が、アーク教を軽んじる帝国と戦うのだ。我々も見過ごすことはできない」
師は当然のように告げた。
「そこで、我がデルダ聖堂からも、治癒師を派遣することになった」
今度こそ、大きな悲鳴が部屋に響き渡った。
「――みんな、行ってくれるね」
目をきょろきょろさせながらも、師の顔には嫌な笑みが浮かんでいる。
この男、私達を売りやがった!
どうせこの聖堂には平民出身の治癒師しかいない。街の外れにある聖堂だし、ここの治癒師がいなくなっても、街の人間は中心部にある貴族出の治癒師がいる聖堂やさらに格が上の大聖堂に行けば、少し高くはつくが治療を受けられる。
私達が戦争に行けば、師は王国に恩を売れるし、師とデルダ聖堂の名声も高まる。
誤魔化すように笑みを浮かべる男の頭の中の損得勘定が手に取るようにわかった。
分かっていようと、私たちには選択肢がない。
聖堂を出ても、行く当てがないのだ。
平民出身の治癒師を受け入れてくれる聖堂は多くなく、行く当てもない治癒師はいづれはこの聖堂に流れ着くのだと知ったのは、拾われてしばらく経ってからのことだった。
さらに、治癒師の出国は厳しく管理されているため、他国に行くこともできない。
私も他の治癒師も、師の決定に頷くしかなかった。
騎士団でもないのに、こうして私は戦争に行くことになり、荷物をまとめ、後方拠点に向かう騎士団と共に出立した。
落として、あげて、また落とす。あまりにハードモードすぎる異世界生活。
異世界で生きることは、そんなに難しいことなのでしょうか?
と、神様を罵りながらも、私は仲間とともに馬車に乗り、騎士団の後ろについていく。
そう、馬車!
聖堂から派遣された治癒師は女性が多いということもあって、そして向かう先も後方支援が中心となっている拠点なので、馬車に乗れた。
もし、馬車もないまま、兵士と同じように歩けと言われていたら、私は潔く逃げ出していただろう。
また、今回一緒に移動しているのは治癒師だけではない。聖堂の奉仕者もあのがめつい師は一緒に派遣していた。
平民出身だが聖力をわずかでも持っていたら、いづれはデルダ聖堂に流れつく。
悪竜がはびこり魔物が跋扈した時代、わずかな聖力持ちであることは、却って周りからの搾取を生み、彼らは聖堂に庇護を求めた。
後から知ったことだが、ちょうど私がこの世界にやってきた頃は、魔物がそれはもう、物凄い勢いで猛威を振るっていた時代だったそうだ。
そんな時代だったならば、そりゃ死にかけるわ、騙されるわ、感情なんてものは消し炭になって当然だとある種納得したものでもあった。
しかも、私が聖堂に拾われたのと同じぐらいに魔物跋扈は落ち着き、なんともまあ色んな意味でタイミングが良いのか悪いのかという具合だ。
とはいえ、魔物の活動が落ち着いている今となっても、わずかな聖力を持つ子供が平民の間に交じっているといらぬ騒動を生みかねない。
なので子供を守るためにも、治癒師ほど強くなくとも、聖力を持った子供が平民に生まれると、聖堂に奉仕者として預けることが一般的になっていた。
まさか、その両親も良かれと思って預けた子供が、戦地に派遣されるとは思っていなかっただろうにと、私は師の顔を思い出しては顔をしかめた。
もろもろ思うところはあるが、なんだかんだ気ままに私は馬車に乗っていた。
けれど、楽観できたのはエレナとおしゃべりしながら乗った馬車での移動が最後だった。
私は後方拠点で、治療に当たり始めた。
拠点には物資補給のための人員のほか、負傷した兵士、治癒師がいる。
デルダ神殿から派遣された治癒師は、各後方支援拠点にばらばらに配属されたため、私は一人も知り合いがいないまま、その場所で働いていた。
危ないことはしない。危険が近づけばなんとしてでも逃げる。私が固く決めていたことだ。
異世界に来て、散々な目にあって、ようやく平穏を掴んだと思ったら、戦争に送られる。
このまま死ぬなんて絶対に嫌だ。
戦況は決して良いとは言えなかった。帝国と戦っているのだ。いくら教主国である王国といえども帝国と戦うなんて無茶だとさえ感じていた。
それを示すように、前線は後退し続けていて、後方拠点も何度も場所を移した。
「本当に勝てるのか?」
「馬鹿言うんじゃない。聞かれたらどうするんだ!」
警備にあたっている兵士のぼやくような声を聞きながら、私はため息を吐いた。
水浴びのため川に向かいながら、色々と考えが浮かんでは消えていく。
兵士の言うことはもっともだ。これは負け戦。みんな感じつつも、どうすることもできない。脱走兵には重い処罰がくだされる。逃げて捕まったことを考えると、そんな行動に移るものも少なかった。
――大丈夫。私は大丈夫。
根拠なく、ただそう信じて日々を過ごすしかなかった。
無事に帰れば報奨金を国から貰える。あのがめつい聖堂の師にではなく、個人に対して与えられる。
だから、無事に生き残ることだけを考えればいい。
けれど、思いとは裏腹に、戦況は悪くなる一方だった。国境付近の最後の砦が落とされたという知らせが入り、後方拠点の指揮官の顔色も流石に悪くなった。
来る日も来る日も重傷者が運ばれてきた。
帝国の力は圧倒的だ。強大な魔法を扱える兵士が多くいる。普通なら王国など消し炭のように滅ぼされそうなものだが、曲がりなりにもアーク教の教主国。
その確固たる立場があるからこそ、周辺の同じ聖教を信仰する国々から支援を受けていた。
とにかく無事に帰るためにも怪我人を治療すればいい。聖堂にいた時と同じようにやればいいだけだ。
来る日も来る日もそう言い聞かせ、ひたすら聖力を使い続けた。
だが、そう簡単にはいかなかった。
「もう、無理いいいいっ」
私は力尽きていた。
はっきりいって治癒師は酷使されすぎている。
運ばれてくる怪我人はどんどん増えているし、兵士は治療はまだかと治癒師をにらみつけてくる。
私たちが治療しなかったら、あんたたちは死ぬんだからと心の中で罵っても、治癒しなければ命令違反として牢行きだ。
加えて治癒が行き届かなければ文句だけでは済まず、食事の配給が抜かれることだってある。
まあ、所詮私達は平民出身の治癒師。食事だって兵士優先だし、いくら治癒師が無事でも、兵士が動けなければ戦いはできない。
この過酷な状況から抜け出せるように、戦いが早く終わることを願うしかなかった。
ああ、神様、お助けください!
なんて信じていない神様に祈りを捧げながら、私は川辺に向かう。
もう日は落ちかけている。ようやく回ってきた今日の休憩時間だ。
ほとんど這いずるように私は川に近づいて、そのままばさりと両腕をつける。
気持ちいい。
ああ、ずっとこうしていたなあ。
さらさらと流れる川の音に、木々が揺れる音。
戦争なんて感じさせないほどの平穏だ。
つかの間の平穏だと分かっている。
不安を抑えるように私は顔を洗った。
ほっと一息ついた時、後ろから地面を踏みしめる音が聞こえ、私はうんざりした。
まだ休憩時間はあるはずなのに、誰かが呼び戻しに来たのか。
はあっとため息を隠さないまま振り向いて――呆気に取られた。
「……こんにちは?」
「あなた! また抜け出したの?」
「ほら、あそこは窮屈だから……」
「それでは、治るものも治らないですよ」
先日の砦での戦闘で負傷した兵士だ。
その日、なんと無茶苦茶な指揮によって私は前線のすぐ後ろで治療をする羽目に陥っていた。
一面死体だらけの地面の上に、まだ息をしているこの男を見つけ、がむしゃらに男の体を後方にまで引きずり続けて、助けたのだ。
男の怪我は腹部と手足を中心に広がっていて、なんと魔道銃を自分に誤射してしまったという阿呆みたいな理由で、戦場に倒れていた。
まさに、私のように親切な治癒師が居なかったら、男は死んでいただろう。
本当の目当ては男が着ていた高そうな外套だったことや、あまりに重くて、引きずるときに男の頭をあちこちにぶつけたことも秘密だったが、ちゃんと治療したのだから私はそのことを黙っていた。
もちろん、外套はこっそりいただいた。後方といえども暖を取るのも容易じゃないのだ。夜になると冷え込む地で、支給されたものは、とっくの昔に別の兵士に奪われていた。
ただ、この男の傷の治りは完全ではなかった。だから、休むようにと言っているのに、動き回ったり、気がついたら治療テントからいなくなっていたりと、その勝手さに呆れてもいた。
「ほら、血が出ているじゃないですか」
男の腕をまくりあげ、包帯を取ると手をかざす。
男の怪我は魔力を使った魔道銃によってできた傷だ。聖力を使ってもなかなか治りにくかった。
疲れ切っていて、もうこれ以上聖力など残っていないに等しいが、後方拠点が襲われてきたときに戦うのは、結局後方拠点にいる兵士であり、この男も含まれている。
少しでも自分の命の危険をなくしたい。
今の頑張りは未来の私の明るい生活!
という自己保身極まりない思いから男を治療する。
抜け出した男の手当をするのはもう十回目だろうか。
茶色の髪に茶色の瞳。印象に残りにくい顔立ちだが、優しく笑う男の姿は戦いとは無縁のようで、どこか落ち着くものだった。
「ありがとう……あなたの聖力はとても温かいです」
「それは、神様が与えてくださった祝福だからですよ」
と私は営業スマイルを浮かべた。
「聖力はアーク神が与えしもの。だから温かく感じるのですよ。ほら、もう出歩かないで、休んでくださいね」
神様なんて信じていない。聖力なんて呼ばれているけれど、魔力と似たようなものだと思っていた。
でも、治癒師はアーク教に属している。兵士はいわばアーク教のお客様だ。
兵士から変な噂が聖堂や教会の耳に入れば、割を食うのは自分だ。
「でも、私を救ってくれたのはあなたです。あなたはとても優しい人です」
「……あなたの神への祈りが通じたのでしょう」
私は神の信徒らしく真面目に言った。
「……いいえ、こんなにも温かいのはきっと……特別だからです」
男は私の手をぎゅっと握りしめた。
「あっ!」
そのまま腕を強く引かれ、男の胸に飛び込んでしまう。
「あなたは感じないのですか? こんなにも胸がぎゅっとなって苦しいのに、あなたは何も思わないのですか?」
「えっ?」
なんだこの状況は。
「どれだけ夢見たことか。あなたと一緒にいる日々を」
男の言っていることは理解不能だったが、それ以上に、普通でない状況に気づき、私は慌てた。
男の背後の木々が大きく揺れ、ぬっと人影が現れたのだ。
黒いマントに竜の紋章がついた兵服を着た複数人の兵士の姿。
さあっと血の気が引くのが自分でも分かる。
「てっ、帝国兵!」
嘘でしょう。嘘と言ってくれ。
どこまでもハードモードな日々。
ようやく休めると思ったら、帝国兵と鉢あうなんて!
どうしてここまでついていないのか。
体をすぐに起こそうとするけれど、足が震えて力が入らない。
「っ、ひっ」
すぐに逃げようと男の腕を引っ張るが、男は私を抱きしめたまま動かない。
「っ、早くっ、早くっ、逃げないと!」
もうパニックだった。
「……っ」
男たちが近づいてくる音が聞こえる。
もう無理だ。
「……ルリ、大丈夫ですよ」
頭を優しく撫でられた。
「……えっ?」
どうしてこの男はここまで落ち着いていられるのか。
はっと顔を上げると信じがたい光景が広がっていた。
「将軍、制圧が完了しました」
帝国兵は膝をついて頭を下げていた。
「ああ、把握した。各自、手はず通りに」
「はっ!」
帝国兵たちの姿はさっと消えてしまう。
私は、恐る恐る自分を抱きしめる男を見上げた。
「あなたは……?」
男は微笑んで手を顔にかざす。
茶髪に優しげな顔立ちの男の姿が、黒髪の金色の瞳を持った姿に変わっていった。
筋の通った顔立ちは人形めいた美しさを持っているが、鋭い眼光が男を獣めいた存在に見せている。
「っ……ひっ」
全身の体の震えが止まらない。
「そんな、嘘っ……」
黒髪に、金の瞳の美しい男。
「どうか許してほしい」
申し訳なさそうに男は私の手を取り、口づけた。
美しい男の姿に、王都にいたならば夢中になっていただろう。
だが、その特徴は戦場に置いて全く違う意味を持つ。
帝国将軍、ダーリオ・エヴレ。
古き魔の一族の血を引き、圧倒的な力をもった男の存在は、周辺国に知れ渡っていた。
そもそも王国が戦争を起こした決定的要因は、男が竜討伐の世界の最果てに向かったという確かな情報があったためだ。
討伐に向かった男の行方は知れず、王国内では死亡説とともに、王国の勝利を期待する声が高まっていた。
「ルリ……騙していてすまない。ここは危険すぎるから、早く君を安全なところに連れていきたい一心だったんだ」
そう言って優しく微笑む敵国の男を前に、一体何が言えようか。
ダーリオ以外にも多くの兵士がすでに紛れ込んでいて、襲撃が起きても、騎士団の武器は壊されていて、魔法使いが使う宝珠も壊されていた。
こうして後方拠点にいた治癒師は全員捕虜となった。
治癒師たちも例外になく、こうして私たちは帝国へと連れて行かれたのだ。
帝国の土地は、魔力が強い土地が占めていて、聖力を持った子供が生まれにくかった。
私たち治癒師の扱われ方は、丁重なもので、牢屋に入れられることもなければ、拷問されることもなく、客人としてもてなされた。
もちろん、その対応は帝国に協力してくれますよね、という無言の圧力だ。
だが、もともと後方拠点に駆り出されていた治癒師は聖堂に売られるように派遣された平民出身の者たちで、王国への忠誠心など持ち合わせていない。
長いものには巻かれろ精神で、私たちは帝国に協力した。
帝国に連れてこられてからも、ダーリオは当然のように私の身を預かる保護官として名乗り出て、私はダーリオの邸宅に連れてこられた。
そのまま邸宅にいたら色々とまずい気がして、他の治癒師に会わせてくれるように頼み込み、帝国でも他の仲間と治癒師と一緒に働けるようにしてもらった。
けれど、それはある意味無駄な試みだったのだ。
ダーリオが望み、私も受け入れた。多分最初からそうなる道しかなかったのだろう。
帝国に来てから半年が過ぎ、その日、私は聖堂の中にいた。
王国ではない。帝国の聖堂だ。
豪華絢爛ともいうように壁一面に装飾が施されていて、急ごしらえで建てられた聖堂とはとても思えない。
敵国だった帝国の首都に作られた聖堂の中で、私は白いヴェールを纏い、男の前に立っていた。
そう、これは結婚式! まごうことなき結婚式だ!
「ルリ、私が君を守る。君に助けられたのは運命だった。ずっとずっと一緒にいような」
守る! 私が白いヴェールを被っていなければ、なんと心強い響きだっただろうか。
でも、それでも私は男の口づけを受け入れた。
私は馬鹿じゃない。異世界に突然やってきて、それでもここまで生き抜いてきたのだ。
保護官となったダーリオの思いは手にとるように分かった。
そして、私の思いは変わらない。
死にたくない。お腹が空くのは嫌だし、戦争には行きたくない。
だからこそ、私を守ろうとするダーリオと一緒にいる日々は悪くないものだった。
「ほら、これは栄養がたくさんあるから食べるんだ」
「もうたくさん食べたよ。もうお腹いっぱい」
「たくさん? たったそれだけじゃないか」
ダーリオはいつも治癒師がいる診療所に迎えに来る。そのまま促されるまま邸宅に戻り、一緒に食事を取る。
慣れた生活の一部だが、どうしても慣れないこともある。
私が座る席の横にはぴたりとダーリオが座っていて、にこにこと微笑みながら、スプーンを私の口元に運ぶ。
虚無感に包まれながら私はそれをぱくりと含む。
傍に控えている使用人たちが微笑ましげに口元を緩めている様子が、余計に心に来る。
どんな羞恥プレイなのかと思うが、使用人たちは何も変なことなんてありませんよと、ただ微笑むだけ。
「ルリ、他の男に笑いかけるなよ」
「……うん。私にはダーリオだけだよ」
「ああ、本当に可愛いなあ」
ひたすら甘い言葉を言い続ける男に私はげっそりしながら頷いた。
「ルリが私を助けてくれた。あの日王国に行ったから、ルリを見つけられたんだ。あのまま一緒にいようと思ったのに、忌々しい聖堂に拉致されるなんて、本当に可哀想だったな、ルリ。でも、もう今もこれからも一緒だからな」
「うーん、そうだね。ダーリオ」
ダーリオは愛を囁くが、愛とか恋とか正直分からなかった。
そういう情緒は異世界でのハードすぎる日々で自分の中から消し炭のようになくなっていた。
でも、敵国の真っ只中で、敵国の将軍に逆らうほど馬鹿ではない。
私の行動を決定づけていたものは、生きたいというただその思いだけだ。
長いものに巻かれる。なんと素敵な言葉だろうか。
生き残るためには長いものに巻かれることも必要なのだ。
そう、確かに最初はそれだけの始まりだった。
「ダーリオの方が全然食べてないじゃない。ほら、たくさんあるんだから、ダーリオも食べないと」
「っ……ルリ!」
テーブルの上の料理にさらりと視線を送り、フォークで取ると、そのままダーリオの口元に運ぶ。
彫刻のような顔に喜色を滲ませて、ダーリオが感極まったように私を見つめた。
長いものに巻かれろの精神でい続けた結果、気がつけばダーリオと結婚することになっていて、そのまま流されるままダーリオと一緒にいる。
なんだかんだ一緒に過ごし続けると、いつしか情のようなものを感じるようになっていた。ダーリオが喜ぶと、胸の奥がむずがゆかった。
「なあ、ルリ。君が可愛らしすぎるから、もう……我慢できないっ」
ダーリオが私の手を取り、そのまま手のひらに頬をこすりつけた。
甘えるように頬を押し付ける姿は、帝国の剣として恐れられた軍人の姿とは到底見えないけれど、それでもこの男のこうした姿を見ると、心の奥底がくすぐられるような感じがする。
「……いいよ、ダーリオ」
そのまま部屋に行き、寝台に押し倒される。
がっつくように私の胸元を舐める男の姿に、体が熱くなっていく。
「ルリっ、ルリっ、中、ああっ、とっても可愛いなあ」
「っ、あっ」
熱く膨らんだ男性器を腹の上に擦り当てられて、顔がかっと火照った。
男の指が中に入れられて、快楽を引き出すように何度も擦られた。
「ひうっ、ダーリオ」
ダーリオの背中にぎゅっと抱きしめるように腕を回す。
「愛してる愛してる愛してる愛してる」
「あっ、ちょっとっ」
ぬめったそこに男のものを挿れられて、圧迫感に体に力が入る。
「ずっとずっと一緒にいるよな? なあ、ルリ。離れていた時が長すぎた。だから、これからはずっと一緒にいないとなあ?」
「っ、またそんなこと言ってる」
「だって、ルリは私がいないと不安だろう?」
にやりと男が笑い、ぐっと下腹部を押し付けた。
そのまま貪るように口付けられて、まるで全身が男のものと一つになっていくような感覚に襲われた。
男はいつも優しい姿しか見せようとしないのに、本当に時折、獣のような本性を覗かせる。
ダーリオは鋭い男だ。私の生存本能から来る欲望が入り混じった想いに気づいているのだろうか?
気づいていても、気づいていなくても、私には関係なかった。ただ、私は生きたいのだ。
「はっ、うっ」
「ルリっ、ルリっ」
ぱんぱんと押し当てられて、そのまま中に突き挿れられる。
熱くて、熱くて、一つに溶けていきそうな感覚にひたすら溺れ続ける。
体をぎゅうぎゅうと抱きしめながら、男が私の頬に舌を這わした。
獣のような鋭い輝きを持った金の瞳と視線が交錯し、太腿にぎゅっと力が入った。
「ひあっ……ああっ」
男のものを締め付けてしまって、圧迫感と快楽の渦に体が痙攣したように震えた。同時に中にどくどくと精を注がれて、私はそのまま寝台に倒れ込んだ。
全く記憶になかったが、ダーリオは私がいた王国を訪れたことがあるらしい。訪れたといっても事故的なものだ。
竜討伐に行ったダーリオは、悪竜を倒すことに成功したものの、竜が最後に放った魔法の威力は凄まじく、それから逃れるために転移魔法を使用した。
その際、座標を指定する間もなく、ダーリオは王国に転移してしまったらしい。
その時、まだ聖堂に拾われていない、街の外れではぐれ治癒師まがいのことをしていた私が助けたのだと、ダーリオは言った。
「君が助けた命なんだ」
正直、あの頃は、毎日生きるのに必死で、記憶は曖昧だ。そんな男を助けたような気もするが、日々を必死に過ごしていたころの記憶はぐちゃぐちゃで、ぴんと来てはいなかった。
だから、ダーリオの部下に同情したように挨拶をされることも、そもそもダーリオがどうして前線の戦場で倒れていたのかも、生きるためには知る必要のないことなのだ。
「……まったく、生きるって大変だ」
私の頬に手をのばす男の髪を撫でた。
「ルリ、愛している愛してる愛してる愛してる……っ」
「うんっ、うんっ……これからもダーリオと一緒にいるよ」
ともかく、私はダーリオのことは嫌いじゃない。一緒にいて、むずむずした気持ちにもなるし、毎日暖かい家で、ご飯を食べられるのだ。
私は笑いながら男の頬に口づけた。
高校の帰り道、あと通りを一つ曲がれば家というところで、いきなり視界が真っ白になっていて、周りの景色が一瞬にして変わっていた。
チュニックやロングスカートを身に着けた人たち。
通りには商店がびっしり並んでいて、笑い声、子供の声、怒鳴る声が、あっちこっちから聞こえてきた。
全く知らない建物の様子に、商店に並ぶよく分からないものたち。
言葉は通じた。
けれど、彼らが話す『魔法』とか『魔物』とかという言葉から、ここは別の世界かもしれないと思いはじめ、そして車も、携帯も、見知った機械もないその世界が、異世界であることをなんとなく受け入れた。
身を寄せる場所もないままに途方に暮れて、路地裏にしゃがみこんでいると、次第に夜になった。
夜空に浮かんだ真っ赤な大きな満月が、明らかにこの世界は異世界だと伝えていて、私はその夜泣きじゃくった。
異世界だと分かっても、私にはこの世界での常識がなかった。
異世界の人は、普通の世界と変わらない。
良い人もいれば、悪人もいる。当たり前のことだった。
騙され、助けられ、また騙されと、何とか逃げ続けた結果、三年経った今でも、私はどうにかこの世界で生きている。
「ルリ! ここにいたのね! 師がみんなを呼んでいるわよ」
「あいつが? また面倒なことでなければいいけれど」
「もう、文句を言わないの。怒られたら、余計に働かないといけなくなっちゃうの、分かってるでしょ?」
聖堂の治癒師として一緒に働いているエレナに、私は肩をすくめてみせた。
この聖堂にやってきたのは、ちょうど一年前のことだ。
色々厳しすぎる異世界での日々から逃げるように森に逃げて、人が住んでいたと思われる朽ちた山小屋を拠点に、その日暮らしを始めたのだ。
生きることができたのは奇跡に近かった。
獣の仕留め方も分からなければ、食べられる木の実なのか、草なのかさえ分からない。
それでも私を突き動かしたのは、生きたいという衝動だった。
いきなり訳の分からない世界にいて、人に騙されて、傷ついて、それでも逃げ出して、森に来た。
こんなところで死んでやるものか。
こんな風に惨めに一人死にたくない。
温かい家で、お腹一杯にご飯を食べたい。
神様、どうかお助けください!
なんて祈ったって、目の前の現実は変わらない。
山小屋にあった道具を試行錯誤しながら使って、罠を仕掛け、獣が掛かるのを待つ。
二週間以上何も捕まらなくて、ひたすら水と草を食べ続けたことだってある。
寒さに震えながらいるかどうかさえ分からない神様に祈り続けた。
何とかその日々をしのいでいたが、それも冬が来て、終わりを迎えた。
木の実は取れなくなり、小屋にあった道具も壊れ、食べ物を手に入れることは不可能になった。
ひもじい。寒い。苦しい。
ぶるぶると震える体を包むように傷だらけの手足を折り曲げて、山小屋の藁の中に横たわった。
ここで終わるんだ。
いやだ、死にたくない。
でも、仕方ないじゃない。
いやだ。
誰も助けなんてこない。
いやだ、いやだ、いやだ。
諦めろ。
――こんなふうに死にたくない! 私は生きたい!
死が訪れようとしていた時、体から光が溢れた。その光はとてもあたたかくて、傷ついた体の傷を治していく。
ぽかぽかとしていて、温かい。
苦しくない。心地いい。優しい光。
きらきらした光が、私の体をぐるっと取り囲んでいた。
それから私は光を自由に扱えるようになった。
それがどういう意味なのか分からなかったけれど、これが最後のチャンスだと分かっていた私は、森を出て、街に行った。
お金が手に入ればもう何でもよかった。
傷を癒やすことができるというのを謳って私は街で治療を始め、それがすぐにアーク教の目を引いた。
光は聖力と呼ばれるものだったらしい。
聖力は傷ついた体を癒やすことができる。
聖力を持つ者は貴族に多いが、時折平民にも生まれ、そうした平民は聖堂で治癒師として働くことが一般的だった。
白いローブに豪華な刺繍が施されたローブを纏った神官は、私をデルダ聖堂という街の外れにある聖堂に連れていき、そこで働くようにと告げた。
私は有頂天になった。嬉しくて、嬉しくて、幸運を噛み締めた。
ご飯が食べられて、死の危険がなければもうなんでも良かった。
聖堂での生活は快適そのものだ。
聖堂の中は、魔法でいつも温度が調節されているし、温かい食事が食べられる。
やることといえば、聖堂を訪れる人の体を癒やすだけ。
これで人生安泰だ! なんて、私は信じ込んでいた。
けれど異世界はどこまでも、異世界であり、厳しすぎる現実を突きつけてくる。
異世界は私に優しくない。
「――そんな、せ、戦争ですか?」
「ああ、知っての通り、我が王国は帝国に宣戦布告した。すでに第一陣の兵士たちは出立している」
アーク教の宗主国として、神の威光を知らしめる戦いだと、師は厳かに告げる。
聖堂にいる治癒師は、師の部屋に一同に集められていた。
デルダ聖堂は平民からなる治癒師が勤める聖堂だ。
その聖堂の長たるエブタ師ははっきり言って、金にがめつい男だった。
どんなに真剣な顔をしようとも、師が纏うじめっとした雰囲気が師の欲望を露わにしている。
この男のどこに信心があるのかとみんな思っているが、エブタ師はこの小さな街を治める男爵家の三男であり、平民が逆らうなんて到底不可能。
「そんな、帝国と戦争なんて!」
悲鳴と驚きが混じった声が、部屋に響く。治癒師は私も含めて不安を隠せない。
師が治癒師を集め、戦争の話をする。それが何を意味するのか。
――そして不安は現実となる。
「威光を知らしめるからこそ、騎士団にすべてを任せることはできない。アーク教の教主国である王国が、アーク教を軽んじる帝国と戦うのだ。我々も見過ごすことはできない」
師は当然のように告げた。
「そこで、我がデルダ聖堂からも、治癒師を派遣することになった」
今度こそ、大きな悲鳴が部屋に響き渡った。
「――みんな、行ってくれるね」
目をきょろきょろさせながらも、師の顔には嫌な笑みが浮かんでいる。
この男、私達を売りやがった!
どうせこの聖堂には平民出身の治癒師しかいない。街の外れにある聖堂だし、ここの治癒師がいなくなっても、街の人間は中心部にある貴族出の治癒師がいる聖堂やさらに格が上の大聖堂に行けば、少し高くはつくが治療を受けられる。
私達が戦争に行けば、師は王国に恩を売れるし、師とデルダ聖堂の名声も高まる。
誤魔化すように笑みを浮かべる男の頭の中の損得勘定が手に取るようにわかった。
分かっていようと、私たちには選択肢がない。
聖堂を出ても、行く当てがないのだ。
平民出身の治癒師を受け入れてくれる聖堂は多くなく、行く当てもない治癒師はいづれはこの聖堂に流れ着くのだと知ったのは、拾われてしばらく経ってからのことだった。
さらに、治癒師の出国は厳しく管理されているため、他国に行くこともできない。
私も他の治癒師も、師の決定に頷くしかなかった。
騎士団でもないのに、こうして私は戦争に行くことになり、荷物をまとめ、後方拠点に向かう騎士団と共に出立した。
落として、あげて、また落とす。あまりにハードモードすぎる異世界生活。
異世界で生きることは、そんなに難しいことなのでしょうか?
と、神様を罵りながらも、私は仲間とともに馬車に乗り、騎士団の後ろについていく。
そう、馬車!
聖堂から派遣された治癒師は女性が多いということもあって、そして向かう先も後方支援が中心となっている拠点なので、馬車に乗れた。
もし、馬車もないまま、兵士と同じように歩けと言われていたら、私は潔く逃げ出していただろう。
また、今回一緒に移動しているのは治癒師だけではない。聖堂の奉仕者もあのがめつい師は一緒に派遣していた。
平民出身だが聖力をわずかでも持っていたら、いづれはデルダ聖堂に流れつく。
悪竜がはびこり魔物が跋扈した時代、わずかな聖力持ちであることは、却って周りからの搾取を生み、彼らは聖堂に庇護を求めた。
後から知ったことだが、ちょうど私がこの世界にやってきた頃は、魔物がそれはもう、物凄い勢いで猛威を振るっていた時代だったそうだ。
そんな時代だったならば、そりゃ死にかけるわ、騙されるわ、感情なんてものは消し炭になって当然だとある種納得したものでもあった。
しかも、私が聖堂に拾われたのと同じぐらいに魔物跋扈は落ち着き、なんともまあ色んな意味でタイミングが良いのか悪いのかという具合だ。
とはいえ、魔物の活動が落ち着いている今となっても、わずかな聖力を持つ子供が平民の間に交じっているといらぬ騒動を生みかねない。
なので子供を守るためにも、治癒師ほど強くなくとも、聖力を持った子供が平民に生まれると、聖堂に奉仕者として預けることが一般的になっていた。
まさか、その両親も良かれと思って預けた子供が、戦地に派遣されるとは思っていなかっただろうにと、私は師の顔を思い出しては顔をしかめた。
もろもろ思うところはあるが、なんだかんだ気ままに私は馬車に乗っていた。
けれど、楽観できたのはエレナとおしゃべりしながら乗った馬車での移動が最後だった。
私は後方拠点で、治療に当たり始めた。
拠点には物資補給のための人員のほか、負傷した兵士、治癒師がいる。
デルダ神殿から派遣された治癒師は、各後方支援拠点にばらばらに配属されたため、私は一人も知り合いがいないまま、その場所で働いていた。
危ないことはしない。危険が近づけばなんとしてでも逃げる。私が固く決めていたことだ。
異世界に来て、散々な目にあって、ようやく平穏を掴んだと思ったら、戦争に送られる。
このまま死ぬなんて絶対に嫌だ。
戦況は決して良いとは言えなかった。帝国と戦っているのだ。いくら教主国である王国といえども帝国と戦うなんて無茶だとさえ感じていた。
それを示すように、前線は後退し続けていて、後方拠点も何度も場所を移した。
「本当に勝てるのか?」
「馬鹿言うんじゃない。聞かれたらどうするんだ!」
警備にあたっている兵士のぼやくような声を聞きながら、私はため息を吐いた。
水浴びのため川に向かいながら、色々と考えが浮かんでは消えていく。
兵士の言うことはもっともだ。これは負け戦。みんな感じつつも、どうすることもできない。脱走兵には重い処罰がくだされる。逃げて捕まったことを考えると、そんな行動に移るものも少なかった。
――大丈夫。私は大丈夫。
根拠なく、ただそう信じて日々を過ごすしかなかった。
無事に帰れば報奨金を国から貰える。あのがめつい聖堂の師にではなく、個人に対して与えられる。
だから、無事に生き残ることだけを考えればいい。
けれど、思いとは裏腹に、戦況は悪くなる一方だった。国境付近の最後の砦が落とされたという知らせが入り、後方拠点の指揮官の顔色も流石に悪くなった。
来る日も来る日も重傷者が運ばれてきた。
帝国の力は圧倒的だ。強大な魔法を扱える兵士が多くいる。普通なら王国など消し炭のように滅ぼされそうなものだが、曲がりなりにもアーク教の教主国。
その確固たる立場があるからこそ、周辺の同じ聖教を信仰する国々から支援を受けていた。
とにかく無事に帰るためにも怪我人を治療すればいい。聖堂にいた時と同じようにやればいいだけだ。
来る日も来る日もそう言い聞かせ、ひたすら聖力を使い続けた。
だが、そう簡単にはいかなかった。
「もう、無理いいいいっ」
私は力尽きていた。
はっきりいって治癒師は酷使されすぎている。
運ばれてくる怪我人はどんどん増えているし、兵士は治療はまだかと治癒師をにらみつけてくる。
私たちが治療しなかったら、あんたたちは死ぬんだからと心の中で罵っても、治癒しなければ命令違反として牢行きだ。
加えて治癒が行き届かなければ文句だけでは済まず、食事の配給が抜かれることだってある。
まあ、所詮私達は平民出身の治癒師。食事だって兵士優先だし、いくら治癒師が無事でも、兵士が動けなければ戦いはできない。
この過酷な状況から抜け出せるように、戦いが早く終わることを願うしかなかった。
ああ、神様、お助けください!
なんて信じていない神様に祈りを捧げながら、私は川辺に向かう。
もう日は落ちかけている。ようやく回ってきた今日の休憩時間だ。
ほとんど這いずるように私は川に近づいて、そのままばさりと両腕をつける。
気持ちいい。
ああ、ずっとこうしていたなあ。
さらさらと流れる川の音に、木々が揺れる音。
戦争なんて感じさせないほどの平穏だ。
つかの間の平穏だと分かっている。
不安を抑えるように私は顔を洗った。
ほっと一息ついた時、後ろから地面を踏みしめる音が聞こえ、私はうんざりした。
まだ休憩時間はあるはずなのに、誰かが呼び戻しに来たのか。
はあっとため息を隠さないまま振り向いて――呆気に取られた。
「……こんにちは?」
「あなた! また抜け出したの?」
「ほら、あそこは窮屈だから……」
「それでは、治るものも治らないですよ」
先日の砦での戦闘で負傷した兵士だ。
その日、なんと無茶苦茶な指揮によって私は前線のすぐ後ろで治療をする羽目に陥っていた。
一面死体だらけの地面の上に、まだ息をしているこの男を見つけ、がむしゃらに男の体を後方にまで引きずり続けて、助けたのだ。
男の怪我は腹部と手足を中心に広がっていて、なんと魔道銃を自分に誤射してしまったという阿呆みたいな理由で、戦場に倒れていた。
まさに、私のように親切な治癒師が居なかったら、男は死んでいただろう。
本当の目当ては男が着ていた高そうな外套だったことや、あまりに重くて、引きずるときに男の頭をあちこちにぶつけたことも秘密だったが、ちゃんと治療したのだから私はそのことを黙っていた。
もちろん、外套はこっそりいただいた。後方といえども暖を取るのも容易じゃないのだ。夜になると冷え込む地で、支給されたものは、とっくの昔に別の兵士に奪われていた。
ただ、この男の傷の治りは完全ではなかった。だから、休むようにと言っているのに、動き回ったり、気がついたら治療テントからいなくなっていたりと、その勝手さに呆れてもいた。
「ほら、血が出ているじゃないですか」
男の腕をまくりあげ、包帯を取ると手をかざす。
男の怪我は魔力を使った魔道銃によってできた傷だ。聖力を使ってもなかなか治りにくかった。
疲れ切っていて、もうこれ以上聖力など残っていないに等しいが、後方拠点が襲われてきたときに戦うのは、結局後方拠点にいる兵士であり、この男も含まれている。
少しでも自分の命の危険をなくしたい。
今の頑張りは未来の私の明るい生活!
という自己保身極まりない思いから男を治療する。
抜け出した男の手当をするのはもう十回目だろうか。
茶色の髪に茶色の瞳。印象に残りにくい顔立ちだが、優しく笑う男の姿は戦いとは無縁のようで、どこか落ち着くものだった。
「ありがとう……あなたの聖力はとても温かいです」
「それは、神様が与えてくださった祝福だからですよ」
と私は営業スマイルを浮かべた。
「聖力はアーク神が与えしもの。だから温かく感じるのですよ。ほら、もう出歩かないで、休んでくださいね」
神様なんて信じていない。聖力なんて呼ばれているけれど、魔力と似たようなものだと思っていた。
でも、治癒師はアーク教に属している。兵士はいわばアーク教のお客様だ。
兵士から変な噂が聖堂や教会の耳に入れば、割を食うのは自分だ。
「でも、私を救ってくれたのはあなたです。あなたはとても優しい人です」
「……あなたの神への祈りが通じたのでしょう」
私は神の信徒らしく真面目に言った。
「……いいえ、こんなにも温かいのはきっと……特別だからです」
男は私の手をぎゅっと握りしめた。
「あっ!」
そのまま腕を強く引かれ、男の胸に飛び込んでしまう。
「あなたは感じないのですか? こんなにも胸がぎゅっとなって苦しいのに、あなたは何も思わないのですか?」
「えっ?」
なんだこの状況は。
「どれだけ夢見たことか。あなたと一緒にいる日々を」
男の言っていることは理解不能だったが、それ以上に、普通でない状況に気づき、私は慌てた。
男の背後の木々が大きく揺れ、ぬっと人影が現れたのだ。
黒いマントに竜の紋章がついた兵服を着た複数人の兵士の姿。
さあっと血の気が引くのが自分でも分かる。
「てっ、帝国兵!」
嘘でしょう。嘘と言ってくれ。
どこまでもハードモードな日々。
ようやく休めると思ったら、帝国兵と鉢あうなんて!
どうしてここまでついていないのか。
体をすぐに起こそうとするけれど、足が震えて力が入らない。
「っ、ひっ」
すぐに逃げようと男の腕を引っ張るが、男は私を抱きしめたまま動かない。
「っ、早くっ、早くっ、逃げないと!」
もうパニックだった。
「……っ」
男たちが近づいてくる音が聞こえる。
もう無理だ。
「……ルリ、大丈夫ですよ」
頭を優しく撫でられた。
「……えっ?」
どうしてこの男はここまで落ち着いていられるのか。
はっと顔を上げると信じがたい光景が広がっていた。
「将軍、制圧が完了しました」
帝国兵は膝をついて頭を下げていた。
「ああ、把握した。各自、手はず通りに」
「はっ!」
帝国兵たちの姿はさっと消えてしまう。
私は、恐る恐る自分を抱きしめる男を見上げた。
「あなたは……?」
男は微笑んで手を顔にかざす。
茶髪に優しげな顔立ちの男の姿が、黒髪の金色の瞳を持った姿に変わっていった。
筋の通った顔立ちは人形めいた美しさを持っているが、鋭い眼光が男を獣めいた存在に見せている。
「っ……ひっ」
全身の体の震えが止まらない。
「そんな、嘘っ……」
黒髪に、金の瞳の美しい男。
「どうか許してほしい」
申し訳なさそうに男は私の手を取り、口づけた。
美しい男の姿に、王都にいたならば夢中になっていただろう。
だが、その特徴は戦場に置いて全く違う意味を持つ。
帝国将軍、ダーリオ・エヴレ。
古き魔の一族の血を引き、圧倒的な力をもった男の存在は、周辺国に知れ渡っていた。
そもそも王国が戦争を起こした決定的要因は、男が竜討伐の世界の最果てに向かったという確かな情報があったためだ。
討伐に向かった男の行方は知れず、王国内では死亡説とともに、王国の勝利を期待する声が高まっていた。
「ルリ……騙していてすまない。ここは危険すぎるから、早く君を安全なところに連れていきたい一心だったんだ」
そう言って優しく微笑む敵国の男を前に、一体何が言えようか。
ダーリオ以外にも多くの兵士がすでに紛れ込んでいて、襲撃が起きても、騎士団の武器は壊されていて、魔法使いが使う宝珠も壊されていた。
こうして後方拠点にいた治癒師は全員捕虜となった。
治癒師たちも例外になく、こうして私たちは帝国へと連れて行かれたのだ。
帝国の土地は、魔力が強い土地が占めていて、聖力を持った子供が生まれにくかった。
私たち治癒師の扱われ方は、丁重なもので、牢屋に入れられることもなければ、拷問されることもなく、客人としてもてなされた。
もちろん、その対応は帝国に協力してくれますよね、という無言の圧力だ。
だが、もともと後方拠点に駆り出されていた治癒師は聖堂に売られるように派遣された平民出身の者たちで、王国への忠誠心など持ち合わせていない。
長いものには巻かれろ精神で、私たちは帝国に協力した。
帝国に連れてこられてからも、ダーリオは当然のように私の身を預かる保護官として名乗り出て、私はダーリオの邸宅に連れてこられた。
そのまま邸宅にいたら色々とまずい気がして、他の治癒師に会わせてくれるように頼み込み、帝国でも他の仲間と治癒師と一緒に働けるようにしてもらった。
けれど、それはある意味無駄な試みだったのだ。
ダーリオが望み、私も受け入れた。多分最初からそうなる道しかなかったのだろう。
帝国に来てから半年が過ぎ、その日、私は聖堂の中にいた。
王国ではない。帝国の聖堂だ。
豪華絢爛ともいうように壁一面に装飾が施されていて、急ごしらえで建てられた聖堂とはとても思えない。
敵国だった帝国の首都に作られた聖堂の中で、私は白いヴェールを纏い、男の前に立っていた。
そう、これは結婚式! まごうことなき結婚式だ!
「ルリ、私が君を守る。君に助けられたのは運命だった。ずっとずっと一緒にいような」
守る! 私が白いヴェールを被っていなければ、なんと心強い響きだっただろうか。
でも、それでも私は男の口づけを受け入れた。
私は馬鹿じゃない。異世界に突然やってきて、それでもここまで生き抜いてきたのだ。
保護官となったダーリオの思いは手にとるように分かった。
そして、私の思いは変わらない。
死にたくない。お腹が空くのは嫌だし、戦争には行きたくない。
だからこそ、私を守ろうとするダーリオと一緒にいる日々は悪くないものだった。
「ほら、これは栄養がたくさんあるから食べるんだ」
「もうたくさん食べたよ。もうお腹いっぱい」
「たくさん? たったそれだけじゃないか」
ダーリオはいつも治癒師がいる診療所に迎えに来る。そのまま促されるまま邸宅に戻り、一緒に食事を取る。
慣れた生活の一部だが、どうしても慣れないこともある。
私が座る席の横にはぴたりとダーリオが座っていて、にこにこと微笑みながら、スプーンを私の口元に運ぶ。
虚無感に包まれながら私はそれをぱくりと含む。
傍に控えている使用人たちが微笑ましげに口元を緩めている様子が、余計に心に来る。
どんな羞恥プレイなのかと思うが、使用人たちは何も変なことなんてありませんよと、ただ微笑むだけ。
「ルリ、他の男に笑いかけるなよ」
「……うん。私にはダーリオだけだよ」
「ああ、本当に可愛いなあ」
ひたすら甘い言葉を言い続ける男に私はげっそりしながら頷いた。
「ルリが私を助けてくれた。あの日王国に行ったから、ルリを見つけられたんだ。あのまま一緒にいようと思ったのに、忌々しい聖堂に拉致されるなんて、本当に可哀想だったな、ルリ。でも、もう今もこれからも一緒だからな」
「うーん、そうだね。ダーリオ」
ダーリオは愛を囁くが、愛とか恋とか正直分からなかった。
そういう情緒は異世界でのハードすぎる日々で自分の中から消し炭のようになくなっていた。
でも、敵国の真っ只中で、敵国の将軍に逆らうほど馬鹿ではない。
私の行動を決定づけていたものは、生きたいというただその思いだけだ。
長いものに巻かれる。なんと素敵な言葉だろうか。
生き残るためには長いものに巻かれることも必要なのだ。
そう、確かに最初はそれだけの始まりだった。
「ダーリオの方が全然食べてないじゃない。ほら、たくさんあるんだから、ダーリオも食べないと」
「っ……ルリ!」
テーブルの上の料理にさらりと視線を送り、フォークで取ると、そのままダーリオの口元に運ぶ。
彫刻のような顔に喜色を滲ませて、ダーリオが感極まったように私を見つめた。
長いものに巻かれろの精神でい続けた結果、気がつけばダーリオと結婚することになっていて、そのまま流されるままダーリオと一緒にいる。
なんだかんだ一緒に過ごし続けると、いつしか情のようなものを感じるようになっていた。ダーリオが喜ぶと、胸の奥がむずがゆかった。
「なあ、ルリ。君が可愛らしすぎるから、もう……我慢できないっ」
ダーリオが私の手を取り、そのまま手のひらに頬をこすりつけた。
甘えるように頬を押し付ける姿は、帝国の剣として恐れられた軍人の姿とは到底見えないけれど、それでもこの男のこうした姿を見ると、心の奥底がくすぐられるような感じがする。
「……いいよ、ダーリオ」
そのまま部屋に行き、寝台に押し倒される。
がっつくように私の胸元を舐める男の姿に、体が熱くなっていく。
「ルリっ、ルリっ、中、ああっ、とっても可愛いなあ」
「っ、あっ」
熱く膨らんだ男性器を腹の上に擦り当てられて、顔がかっと火照った。
男の指が中に入れられて、快楽を引き出すように何度も擦られた。
「ひうっ、ダーリオ」
ダーリオの背中にぎゅっと抱きしめるように腕を回す。
「愛してる愛してる愛してる愛してる」
「あっ、ちょっとっ」
ぬめったそこに男のものを挿れられて、圧迫感に体に力が入る。
「ずっとずっと一緒にいるよな? なあ、ルリ。離れていた時が長すぎた。だから、これからはずっと一緒にいないとなあ?」
「っ、またそんなこと言ってる」
「だって、ルリは私がいないと不安だろう?」
にやりと男が笑い、ぐっと下腹部を押し付けた。
そのまま貪るように口付けられて、まるで全身が男のものと一つになっていくような感覚に襲われた。
男はいつも優しい姿しか見せようとしないのに、本当に時折、獣のような本性を覗かせる。
ダーリオは鋭い男だ。私の生存本能から来る欲望が入り混じった想いに気づいているのだろうか?
気づいていても、気づいていなくても、私には関係なかった。ただ、私は生きたいのだ。
「はっ、うっ」
「ルリっ、ルリっ」
ぱんぱんと押し当てられて、そのまま中に突き挿れられる。
熱くて、熱くて、一つに溶けていきそうな感覚にひたすら溺れ続ける。
体をぎゅうぎゅうと抱きしめながら、男が私の頬に舌を這わした。
獣のような鋭い輝きを持った金の瞳と視線が交錯し、太腿にぎゅっと力が入った。
「ひあっ……ああっ」
男のものを締め付けてしまって、圧迫感と快楽の渦に体が痙攣したように震えた。同時に中にどくどくと精を注がれて、私はそのまま寝台に倒れ込んだ。
全く記憶になかったが、ダーリオは私がいた王国を訪れたことがあるらしい。訪れたといっても事故的なものだ。
竜討伐に行ったダーリオは、悪竜を倒すことに成功したものの、竜が最後に放った魔法の威力は凄まじく、それから逃れるために転移魔法を使用した。
その際、座標を指定する間もなく、ダーリオは王国に転移してしまったらしい。
その時、まだ聖堂に拾われていない、街の外れではぐれ治癒師まがいのことをしていた私が助けたのだと、ダーリオは言った。
「君が助けた命なんだ」
正直、あの頃は、毎日生きるのに必死で、記憶は曖昧だ。そんな男を助けたような気もするが、日々を必死に過ごしていたころの記憶はぐちゃぐちゃで、ぴんと来てはいなかった。
だから、ダーリオの部下に同情したように挨拶をされることも、そもそもダーリオがどうして前線の戦場で倒れていたのかも、生きるためには知る必要のないことなのだ。
「……まったく、生きるって大変だ」
私の頬に手をのばす男の髪を撫でた。
「ルリ、愛している愛してる愛してる愛してる……っ」
「うんっ、うんっ……これからもダーリオと一緒にいるよ」
ともかく、私はダーリオのことは嫌いじゃない。一緒にいて、むずむずした気持ちにもなるし、毎日暖かい家で、ご飯を食べられるのだ。
私は笑いながら男の頬に口づけた。
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