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第五話 本能
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クリーチが大群を成してやって来たのだ。
地獄はまだ続いている。
襲撃に虚を突かれた仮面達は逃げ惑い異形を含め一斉に逃走を始めた。 ネンの首を持つ者も居る。 私達に仮面を撃退した余韻に浸る暇は無かった。こちらに向かって来ていた兵士達とクリーチとの戦闘がそのまま始まる。
仮面との対峙とは違う確固たる殺意の銃声が響く。
私とジンも照準を合わせてクリーチを狩っていく、クリーチが一頭こちらに襲いかかってきた。私達は一斉に銃撃する。絶命の声を上げクリーチが倒れる。 だがそれは陽動だった。背後から回り込んできた別のクリーチがジンの背後から襲いかかり左腕を鋭い歯で噛みついた。ジンが叫び声を上げながらそのまま反時計周りに勢いよく振り返るとクリーチの左目に右手の銃槍を突き刺した。クリーチは脳まで届いたであろう死の痛みに体勢を崩す。
そのままジンは口の中に銃を突っ込み引き金を引く。私はそのクリーチの脳天を狙い何度も銃を撃った。
撃ち抜かれたクリーチの身体から力が抜けジンは右足で口を蹴り上げ左手を抜いた。
千切れかけた腕の出血が酷い。私は小屋の陰にジンを連れて行き近くに落ちていた枝で腕を固定するときつく包帯を巻いた。
「ジン少し待っていてくれ、助けを呼んでくる。」
息も絶え絶えにジンが言う。
「すまない、下手打っちまった。クリーチに知能が無いってのは嘘だなハハハ…疲れた、少し休んでいるよ。」
そう言うとジンは目を閉じた。
すぐ戻ると呟き私は護り手達の方に駆けて行く。あいつらならクリーチを撃退しながらジンを保護室まで連れて行ってくれるだろうと思ったからだ。
いつしか雨が降り始めた。
逃げ惑う兵士達と仮面、漆黒の毛皮を纏い耳まで裂けた大きな口と鋭い爪で人間を襲うクリーチ、地獄があるというのならこの場所の事を言うのだろう。
そんな大混乱の中、咽せる様な一陣の風が吹いた。
赤目が人の目にも留まらぬ速さで暗闇と火炎の草原を跳ぶ様に翔ける。
荒れ狂う暴風の様に人間を擦り抜け赤目は人智を超えた畏怖の象徴の様に見えた。
赤目がニエの肩から脇腹にかけて大部分の肉と内臓を喰った。
私はその一部始終を見ていた。瞬きする間の一瞬の出来事だった。
不意を突かれニエのそばに居た護り手も若いクリーチに喰われている。
私は銃を向けて赤目を狙ったが頭を振り続け喰いちぎったニエの内臓を貪る赤目に当てる事が出来なかった。
その時ヨコが鬼の形相で赤目に走り寄り異質な短銃で赤目を撃ち抜いた。何度も、何度も何度も。
赤目が呻いている。
ニエが火傷を負っていなければ避けられたかもしれない、ヨコがもう少し早くニエの側に行けていれば、ただ全ては遅かった。
私は近くの家屋の陰に身を隠し、銃を撃つ。血の臭いと衝撃と恐怖の中、こう確信せざるを得なかった。
赤目は意志を持ってニエを狙った。
明らかに他のクリーチとは行動原理が違うのだ。
そうでなければあれだけ人間が居た中で脇目も振らずにじり寄りニエを狙った説明がつかない。
他のクリーチは逃げ惑う仮面や兵士を無差別に追いかけ喰っているではないか。
巨大な魔獣の赤い血で地面が染まる。あれだけの銃弾を受けてなお唸り声を上げてニエを見ている。何が赤目をそうまでさせるというのか私には分からなかった。
赤目は最後の力を振り絞る様に闇へと走り去った。
地獄はまだ続いている。
襲撃に虚を突かれた仮面達は逃げ惑い異形を含め一斉に逃走を始めた。 ネンの首を持つ者も居る。 私達に仮面を撃退した余韻に浸る暇は無かった。こちらに向かって来ていた兵士達とクリーチとの戦闘がそのまま始まる。
仮面との対峙とは違う確固たる殺意の銃声が響く。
私とジンも照準を合わせてクリーチを狩っていく、クリーチが一頭こちらに襲いかかってきた。私達は一斉に銃撃する。絶命の声を上げクリーチが倒れる。 だがそれは陽動だった。背後から回り込んできた別のクリーチがジンの背後から襲いかかり左腕を鋭い歯で噛みついた。ジンが叫び声を上げながらそのまま反時計周りに勢いよく振り返るとクリーチの左目に右手の銃槍を突き刺した。クリーチは脳まで届いたであろう死の痛みに体勢を崩す。
そのままジンは口の中に銃を突っ込み引き金を引く。私はそのクリーチの脳天を狙い何度も銃を撃った。
撃ち抜かれたクリーチの身体から力が抜けジンは右足で口を蹴り上げ左手を抜いた。
千切れかけた腕の出血が酷い。私は小屋の陰にジンを連れて行き近くに落ちていた枝で腕を固定するときつく包帯を巻いた。
「ジン少し待っていてくれ、助けを呼んでくる。」
息も絶え絶えにジンが言う。
「すまない、下手打っちまった。クリーチに知能が無いってのは嘘だなハハハ…疲れた、少し休んでいるよ。」
そう言うとジンは目を閉じた。
すぐ戻ると呟き私は護り手達の方に駆けて行く。あいつらならクリーチを撃退しながらジンを保護室まで連れて行ってくれるだろうと思ったからだ。
いつしか雨が降り始めた。
逃げ惑う兵士達と仮面、漆黒の毛皮を纏い耳まで裂けた大きな口と鋭い爪で人間を襲うクリーチ、地獄があるというのならこの場所の事を言うのだろう。
そんな大混乱の中、咽せる様な一陣の風が吹いた。
赤目が人の目にも留まらぬ速さで暗闇と火炎の草原を跳ぶ様に翔ける。
荒れ狂う暴風の様に人間を擦り抜け赤目は人智を超えた畏怖の象徴の様に見えた。
赤目がニエの肩から脇腹にかけて大部分の肉と内臓を喰った。
私はその一部始終を見ていた。瞬きする間の一瞬の出来事だった。
不意を突かれニエのそばに居た護り手も若いクリーチに喰われている。
私は銃を向けて赤目を狙ったが頭を振り続け喰いちぎったニエの内臓を貪る赤目に当てる事が出来なかった。
その時ヨコが鬼の形相で赤目に走り寄り異質な短銃で赤目を撃ち抜いた。何度も、何度も何度も。
赤目が呻いている。
ニエが火傷を負っていなければ避けられたかもしれない、ヨコがもう少し早くニエの側に行けていれば、ただ全ては遅かった。
私は近くの家屋の陰に身を隠し、銃を撃つ。血の臭いと衝撃と恐怖の中、こう確信せざるを得なかった。
赤目は意志を持ってニエを狙った。
明らかに他のクリーチとは行動原理が違うのだ。
そうでなければあれだけ人間が居た中で脇目も振らずにじり寄りニエを狙った説明がつかない。
他のクリーチは逃げ惑う仮面や兵士を無差別に追いかけ喰っているではないか。
巨大な魔獣の赤い血で地面が染まる。あれだけの銃弾を受けてなお唸り声を上げてニエを見ている。何が赤目をそうまでさせるというのか私には分からなかった。
赤目は最後の力を振り絞る様に闇へと走り去った。
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