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14、【ある男から見た天使】
しおりを挟む最近の殿下はずいぶんと変わられた。
それと言うのも、神官であるラルが契約した魔人の影響だろう。
「わ~今日も高いとこ飛んでんなぁ…」
今日も殿下の護衛の為執務室に向かっていると、横に居た新人のソルが空を見上げながら呟く。
同じ方向に視線を向ければ、朝日を背に優雅に羽ばたくレヴィウスの姿があった。
「いやー本当、あれが魔人だなんて信じられないッス。ほら魔人って乱暴で厳ついイメージじゃないッスか、それなのにレヴィウスと来たらまんま天使なんですもん。いっそ天界から来ましたって言われた方がしっくり来るッス。」
ソルの話を聞きながら、私もその通りだと思う。
白い肌に真珠色の輝く髪。
黄金の瞳は誰と話す時も決して逸らされる事無く、常に相手を射抜く。
おまけに人間など足元にも及ばないであろう美貌の持ち主だ。
「ただ、全ッ然笑わないんスよねぇ…。あれだけ美人ならずっと無表情なのもいいんスけど、笑ったら更に美人になると思うんですよ!」
「…。」
ソルの言葉に、私は何も答えなかった。
実は一度だけレヴィウスが微笑んでいるのを見た事がある。
それは殿下がレヴィウスに会いに神殿に行った時で、その時はちょうどラルがレヴィウスに紅茶を淹れて貰っていた所だった。
しかしまだレヴィウスは加減が分からなかったのだろう。
とんでもない熱湯で紅茶を淹れてしまったらしく、それを飲んだラルは盛大に舌を火傷した。
それを見て、レヴィウスが軽く噴き出しながら微笑んだのだ。
その可憐さに、部屋の中は一瞬で花が咲いたような空気になった。
あまりの可憐さに殿下はその場に倒れ、私も暫くその表情に見惚れ惚けていた。
唯一平常を保っていたのはラルだけだったが、それでも多少は動揺していた様なので、やはり普段から微笑む姿を見る機会は少ないのだろう。
「しかし、あれは毒だ。あんな笑みを見せられては、老若男女問わず惚れない奴は居ないだろう…。」
ボソリと呟いた言葉にソルが「ん?何か言ったっスか?」と問い掛けてきたが、私は黙って首を横に振った。
こんな早朝にレヴィウスを使いに出すのも、それを殿下が許可したのも、間違いなくレヴィウスを多くの人間に晒さない為だろう。
一度あの笑顔を見せられてしまえば、誰にも見せたくないと独占したくなる気持ちも分かる。
部屋に近づくにつれ、執務室からはいつも通りの殿下の声が聞こえてきた。
「駄目か?どうしても何とかならないのか?」
「なりませんってば。先日ラルが説明してたじゃないですか。もういい加減諦めて下さい。」
扉をノックして中に入れば、そこには先程まで空で羽ばたいていたレヴィウスがウンザリした様な顔で殿下の対応をしている。
そんな姿でさえ美しく、後ろに居たソルはぽーっと頬を染めじっとレヴィウスに魅入っていた。
「あ、ザルド。丁度良かった。もう、この人どうにかしてよ、全然話が通じないんだけど。」
他の者よりいくらか親しげに私に話し掛けてくるレヴィウスに、殿下とソルは目を剥く。
「なっ…ザルド!お前、いつからレヴィウスと親しくなったんだ!ずっと私の側にいたくせに!」
その殿下の付き添いのせいで挨拶をする顔見知り程度の関係になっただけなのだが、それを説明しても殿下は納得してくれなかった。
「もう、僕の人間関係にまで口を出すのは止めてください。本当、何なんですか。正直今ドン引きしてますからね。」
「なっ、なっ、ドン引き!?」
落ち込む殿下をそのままにさっさと窓から飛び去って行くレヴィウスを見送っていると、ソルが横から小声で囁く。
「副団長ってば凄いッス!あの天使と親しげに会話する仲だなんて知ったら、騎士団の団員は皆大騒ぎッスよ!」
そこまでの関係ではないのだが、まぁ誤解させて置いてもいいだろう。
どうせこの想いは敵わないのだから、せめて少しの間だけでも特別な関係で居たいと思った。
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