君は、アイドル。

日本での新たな生活。

君には、ビタミンが足りない

　明くる朝になり、オレンジを食べた。しかし何か足りない、友人のミオからは連絡はない。彼女もユーザーの一人だ。夏美は、今ロンドンで対戦中らしい。男の子の友達、皆仕事に出払っている。アメリカ製のパーカーに身を包み、街をうろうろする。今日の獲物は、鎌に薙刀。未鏡のミラ、嘘つきセーラ、たまゆらに舞うミカ、セリオスの王子シンディー、タイガーラッシュのオーレン、このメンバーだ。勝てる見込みは五分五分だ、勝てばチャレンジに勝利、よって賞金が25ドル、銀行通帳に振り込まれる。来週は、イベント「ウリエルの宝物」に出場。勝てば、レインセイバーを手に出来る。
　でも条件があり、上位百名のユーザーのみが参加可能、そして特別枠二名である。
　今、順位は二十七位、楽勝だ。しかし優奈は日本には不慣れな為か、行く先々でパニックになっている。
　昨日も、バスの出入口が、後前逆さまであることに気が付かず、乗り損ねたのだ。
　日本とアメリカでは、色々と違いがあるのは仕方ないのだが、両国の違いから結構間違いを起こしてしまうのだ。
　でもだんだんと慣れてゆく。
　ご飯は、ハンバガーで済ましているが、鳩豆のスープが飲みたい、でも日本では難しいみたいだ。
　所持金が少ないので、頑張ってゲームに勝たないと、日本で干上がってしまう。とにかく、今日の対戦で20ドルは勝ち取らないと。
　相手は、数が少ない。合計で世界で、３００人しかいない。そのうち日本に百五十名がいる。
　そしてモンスターレーダーによると、どこに対戦相手がいるか分かるのだ。
　この辺には、誰もいない。一番近くて、3キロ先の地下鉄の駅だ。しかも移動している。どこかに向かっている様だ。
　相手のプロフィールを見ると、会社員で物産展勤務らしい。おそらく商品を運んでいる最中なのだろう。
　パパも、トラックに人参を乗せて隣町までよく出掛けていた。あの頃は幸せだった。
　ママはわがままな人で、毎日旅行に出かけたりしていた。
　アメリカでの暮らしは決して楽では無いが、幸せだったといえる。でもパパが事故で、人を轢いたのが運命の分かれ道だった。
　補償のために、持ち家を売却、それだけでは済まなくて、さまざまな物を手放した。
　その結果、働きすぎでパパは死んだ。ママはその後、苦労の連続で施設で暮らしている。
　結果的に、私は一人で生きてゆくことになった。
　だから稼がねばならない。生きてゆくためにゲームを選んだ。この選択が正しいかどうかは分からないけれども。
　今日は、相手を探してやっと見つけた。3キロ先にいる、しかも賞金首ユニットを、メンバーにしている。勝てば20ドルは硬い。急いで向かう。
　レーダーによると、さらに近づいている。もう少しだ、エンカウントした。
　相手は、賞金首バライドにムカルニア、メイア、サラド、レンディア。火力ゴリ押しだ。
　それに対し、こちらはウリエルの従者ムーガ、サラドニア、タスケ、デッカー、エンポス。こちらも火力ゴリ押しだ。
　相手に近づく間に、途中で、ユニットは入れ替えている。
　二分後結果が出たのだ。結果はダブルノックアウト、引き分けだ。ルールによると、引き分け時には、10ドルずつ支給される。
　かかる費用を、引くと2ドルしか儲けがない。これではやっていけない。
　もう一人探さないと、レーダーによると近くには誰もいない。
　まだ時間はある。とにかく、編成を変える。
　今度は、バリアーメインの反射で攻める事にした。ヒーラー役に、セメラル。バリアーにタイラー、反射にウルド、もう一人反射に、リア。最後にクリティカルで、アキラ。
　これで今度は、勝てるそう確信した。
　賞金首を探して、街を歩く。レーダーにはボーナスマークが表示された。結構近くだ。
　時間は後二時間以内、しかも東に移動している。かなりの速度だ。距離に直して、20キロ。車で移動しているみたいだ。歩いていては追いつかない。
　タクシーは掛かり過ぎる。バスは路線がわからない。
　諦めるしかない、このままだと宿も取れない上に、ご飯も怪しい。ピンチだ。
　諦めて野宿か。しかし親切な人もいるものだ。初老のおじさんで、車に乗せてくれた。
　賞金首に追いついた。戦闘が始まる。相手は、バラバラで、まとまりがない。楽勝と思ったのだが、甘かった、相手は不死で固めていたのだ。生き返りを繰り返すタイプで、厄介だ。
　しかし激戦の上、勝利を収めた。結果35ドルを手に入れた。
　初老のおじさんは、孫がゲームに一生懸命なので、同じようにゲームに入れ込んでいる子を放って置けなかったそうである。