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茉莉花-マツリカ-(上)
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私は茉莉花(まりか)と言います。小学五年生です。友達はいません。てんこうしてきたからです。
お母さんが茉莉花とつけました。名前の意味はしりません。でもお母さんがつけた名前が可愛くて私は大好きです。
学校でお昼休みに、クラスの子が私に言いました。
「お前の家はびんぼう」
私は“びんぼう”の意味がわからなかったので、お母さんに聞きました。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「びんぼうって言われた。どーゆー意味?」
お母さんは、おせんたくを、たたむのをやめて、少し考えて私を見て言いました。
「いっしょうけんめい
がんばっている人のことよ」
私はうれしくなりました。だって私は毎日がんばっているから。お母さんも毎日がんばっています。
次の日、学校でクラスの男子が私に言いました。答えをまちがえた時です。
「茉莉花のバカ、あほ!」
みんなも私に言いました。
「バーカ、バーカ!茉莉花はバーカ」
私は泣いてしまいました。たくさん泣いて帰りました。お母さんはおしごとに行っていました。お母さんは毎日たいへんです。なぜなら、お父さんがいないからです。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「クラスのみんなに悪口言われた」
お母さんはごはんをつくっていましたが、すこしやめて考えました。それから、私を見て言いました。
「だいじょうぶよ…お母さんは茉莉花の良い所、100個言えるよ」
私はうれしくなりました。そんなたくさん私は良い所があるんだと思いました。
お母さんは何でも知っていて、えらいと思いました。
私は中学生になった。友達もできて、学校に行くのが楽しくなった。お母さんは毎日昼と夜も仕事をしていて、あまり家にいなかった。
私は家にはあまりおらず、友達と夜遅くまで遊んだ。
「茉莉花、帰らなくて大丈夫そ?」
「大丈夫大丈夫、お母さん、夜も仕事だからさ。家に誰もいないし、もう少し遊ぼ」
私が家に帰ったのは夜中の二時、狭い台所のテーブルにはご飯が用意されていた。
「もう食べたから、いらないな…」
私はその日、お母さんが作ったご飯は食べずに寝てしまった。
ある日、お母さんが久しぶりにお休みだったので、二人で出かけた。行き先は…近くの公園。
「茉莉花見て!見て!ジャスミンが咲いてる」
「ジャスミン?あーあの白いやつ?」
「そう、お母さん…あの花が好きだから、あなたの名前にしたのよ」
「へー…そうなんだ」
「和訳でジャスミンは茉莉花(マツリカ)って言うの、温和で優しい子に育って欲しいって願いを込めて決めたのよ」
「そうなんだ…」
私は初めて名前の意味を知った。私は優しい子になっているだろうか?何度も自分の胸に問いかけた。
お母さんは大きなエコバッグから、お弁当を出した。二人だけなのに、四人分くらいあるお弁当だった。
「ちょっと…多くない?お弁当」
「お母さん、茉莉花と出かけるのが嬉しくて、沢山作っちゃって…お料理が止まらなかったの」
お母さんが子供みたいに恥ずかしそうにしていたのを見て、私はプッと笑った。
「もう、お母さんやめてよ…ふふふふ」
春の終わりの柔らかい風は暖かく、まるでお母さんの優しさの様だった。私もお母さんみたいに優しくなろうと決めた。
「茉莉花…手を繋ご」
「えー何か恥ずいけど」
「いいじゃん」
「お母さんね…茉莉花の手が好きなの、この小さい手をギュッて握るとね…お母さん嫌な事を全部忘れて幸せになるのよ」
私は自分の手を見た、そんな力が私の手にあるのか疑問だった。
「いいよ…繋ごう、お母さん」
私達は手を繋いで家まで歩いた。ちょっと照れ臭かったけど、お母さんの手は私より大きく、暖かかった。
私は高校生になった。相変わらず家は貧乏でお母さんは昼は工場、夜はスナックで毎日働いていた。私と公園に行った日以来、お母さんと出かける事は無かった。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「これ…あげるよ」
私は学校の授業で作ったブローチを渡した。それはジャスミンの形に作った白いブローチだった。
「ありがとう茉莉花…大事にするね」
「…うん」
お母さんの嬉しそうな笑顔を見て、私は初めて親孝行をした気がした。早く私も仕事をして、もっと沢山お母さんを助けてあげたいと、この時思った。
ブローチを優しく持つお母さんの手は、ボロボロだった。いつの間にこんな風になっていたのか、私は全然気付かなかった。
「お母さん、仕事行ってくるね」
「はい、これ持って行きなさい」
お母さんはクシャクシャの5000円札を私に渡した。
「え?良いよ、お金なんて…お金無いでしょ?家は」
「良いのよ、お母さん少し給料アップしたから」
「たまにはデパートで服でも買って来なさい」
「デパートって…」
私は一応出かけたが、公園に行っただけで、この5000円は綺麗に残ったまま家に帰って来た。
あの日、公園でお母さんと見たジャスミンの花はまだ咲いていなかった。
ある日の夜…私達は布団を並べて、寝ながら話をしていた。
「茉莉花…もしお母さんがいなくなったらどうする?」
「私死ぬかも」
「茉莉花、やめてよー悲しい事言うの」
「冗談」
「親戚のおじさんがね、私がお父さんの借金を返すまで、茉莉花は家に来なさいって言ってくれたわ…」
「うん…」
「お金も出してくれるって」
「うん…でも私はお母さんと一緒が良い」
「そうね、茉莉花が結婚するまではお母さん頑張るから」
「ふふふっやめてよ、お母さん…私まだ結婚だいぶ先だよ?お母さんめっちゃ頑張らないとダメじゃん」
私達は沢山笑った。
次の日、私は学校の先生から職員室に呼ばれた。
「茉莉花ー何か悪い事したの?」
「何にもしてないし」
友達にからかわれながら私は職員室に入った。
「お母さんの職場から学校に連絡が入った」
「君のお母さんが工場で倒れたらしい」
茉莉花-マツリカ-(上)終
お母さんが茉莉花とつけました。名前の意味はしりません。でもお母さんがつけた名前が可愛くて私は大好きです。
学校でお昼休みに、クラスの子が私に言いました。
「お前の家はびんぼう」
私は“びんぼう”の意味がわからなかったので、お母さんに聞きました。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「びんぼうって言われた。どーゆー意味?」
お母さんは、おせんたくを、たたむのをやめて、少し考えて私を見て言いました。
「いっしょうけんめい
がんばっている人のことよ」
私はうれしくなりました。だって私は毎日がんばっているから。お母さんも毎日がんばっています。
次の日、学校でクラスの男子が私に言いました。答えをまちがえた時です。
「茉莉花のバカ、あほ!」
みんなも私に言いました。
「バーカ、バーカ!茉莉花はバーカ」
私は泣いてしまいました。たくさん泣いて帰りました。お母さんはおしごとに行っていました。お母さんは毎日たいへんです。なぜなら、お父さんがいないからです。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「クラスのみんなに悪口言われた」
お母さんはごはんをつくっていましたが、すこしやめて考えました。それから、私を見て言いました。
「だいじょうぶよ…お母さんは茉莉花の良い所、100個言えるよ」
私はうれしくなりました。そんなたくさん私は良い所があるんだと思いました。
お母さんは何でも知っていて、えらいと思いました。
私は中学生になった。友達もできて、学校に行くのが楽しくなった。お母さんは毎日昼と夜も仕事をしていて、あまり家にいなかった。
私は家にはあまりおらず、友達と夜遅くまで遊んだ。
「茉莉花、帰らなくて大丈夫そ?」
「大丈夫大丈夫、お母さん、夜も仕事だからさ。家に誰もいないし、もう少し遊ぼ」
私が家に帰ったのは夜中の二時、狭い台所のテーブルにはご飯が用意されていた。
「もう食べたから、いらないな…」
私はその日、お母さんが作ったご飯は食べずに寝てしまった。
ある日、お母さんが久しぶりにお休みだったので、二人で出かけた。行き先は…近くの公園。
「茉莉花見て!見て!ジャスミンが咲いてる」
「ジャスミン?あーあの白いやつ?」
「そう、お母さん…あの花が好きだから、あなたの名前にしたのよ」
「へー…そうなんだ」
「和訳でジャスミンは茉莉花(マツリカ)って言うの、温和で優しい子に育って欲しいって願いを込めて決めたのよ」
「そうなんだ…」
私は初めて名前の意味を知った。私は優しい子になっているだろうか?何度も自分の胸に問いかけた。
お母さんは大きなエコバッグから、お弁当を出した。二人だけなのに、四人分くらいあるお弁当だった。
「ちょっと…多くない?お弁当」
「お母さん、茉莉花と出かけるのが嬉しくて、沢山作っちゃって…お料理が止まらなかったの」
お母さんが子供みたいに恥ずかしそうにしていたのを見て、私はプッと笑った。
「もう、お母さんやめてよ…ふふふふ」
春の終わりの柔らかい風は暖かく、まるでお母さんの優しさの様だった。私もお母さんみたいに優しくなろうと決めた。
「茉莉花…手を繋ご」
「えー何か恥ずいけど」
「いいじゃん」
「お母さんね…茉莉花の手が好きなの、この小さい手をギュッて握るとね…お母さん嫌な事を全部忘れて幸せになるのよ」
私は自分の手を見た、そんな力が私の手にあるのか疑問だった。
「いいよ…繋ごう、お母さん」
私達は手を繋いで家まで歩いた。ちょっと照れ臭かったけど、お母さんの手は私より大きく、暖かかった。
私は高校生になった。相変わらず家は貧乏でお母さんは昼は工場、夜はスナックで毎日働いていた。私と公園に行った日以来、お母さんと出かける事は無かった。
「お母さん、お母さん」
「なあに?茉莉花」
「これ…あげるよ」
私は学校の授業で作ったブローチを渡した。それはジャスミンの形に作った白いブローチだった。
「ありがとう茉莉花…大事にするね」
「…うん」
お母さんの嬉しそうな笑顔を見て、私は初めて親孝行をした気がした。早く私も仕事をして、もっと沢山お母さんを助けてあげたいと、この時思った。
ブローチを優しく持つお母さんの手は、ボロボロだった。いつの間にこんな風になっていたのか、私は全然気付かなかった。
「お母さん、仕事行ってくるね」
「はい、これ持って行きなさい」
お母さんはクシャクシャの5000円札を私に渡した。
「え?良いよ、お金なんて…お金無いでしょ?家は」
「良いのよ、お母さん少し給料アップしたから」
「たまにはデパートで服でも買って来なさい」
「デパートって…」
私は一応出かけたが、公園に行っただけで、この5000円は綺麗に残ったまま家に帰って来た。
あの日、公園でお母さんと見たジャスミンの花はまだ咲いていなかった。
ある日の夜…私達は布団を並べて、寝ながら話をしていた。
「茉莉花…もしお母さんがいなくなったらどうする?」
「私死ぬかも」
「茉莉花、やめてよー悲しい事言うの」
「冗談」
「親戚のおじさんがね、私がお父さんの借金を返すまで、茉莉花は家に来なさいって言ってくれたわ…」
「うん…」
「お金も出してくれるって」
「うん…でも私はお母さんと一緒が良い」
「そうね、茉莉花が結婚するまではお母さん頑張るから」
「ふふふっやめてよ、お母さん…私まだ結婚だいぶ先だよ?お母さんめっちゃ頑張らないとダメじゃん」
私達は沢山笑った。
次の日、私は学校の先生から職員室に呼ばれた。
「茉莉花ー何か悪い事したの?」
「何にもしてないし」
友達にからかわれながら私は職員室に入った。
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茉莉花-マツリカ-(上)終
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