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イセゴブ(中)
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「いや…食うな!俺を」
人間だと言った途端こいつらは俺を食おうとした。やはりゴブリンはゲームや小説通りの野蛮さだ。
「食べるのは冗談だ。いや、ニンゲンってのはもう何百年前に絶滅した。お前がこの場所にいる事自体がおかしい」
「そうなのか…一応人間はいたんだな。この世界に…」
「俺たちの洞窟に来い。我々のゴブリン長に報告しないといけない」
「食うなよ。俺を」
「ニンゲンは不味い、食う訳ないだろ」
「…良かったよ、お前らのお口に合わなくて」
俺達はゴブリン兄貴の馬に乗り、こいつらが住む洞窟に向かった。入口には門番が二人いて、ゴブリン兄貴は何やら腕の刺青を見せていた。
「ニンゲン、この腕の紋章が洞窟へ入る為の合言葉みたいなもんだ」
「種族によって紋章の形は違う、争いが起きた時はこの紋章が仲間の印だ。よく覚えておけ」
「へー他とは物騒な関係なんだな…」
俺は洞窟の奥まで案内され、ゴブリンの長に紹介される事になった。
「ニンゲン…これは珍しい客が来たものだ。話はゆっくり聞こう、まずは席に座りなさい」
「天王寺…ハヤトです。お招き頂き…ありがとうございます…」
俺は椅子を探しながらそう言った。しかし、椅子が見当たらない
「どうした?はよ座れ」
「いや、これ…ですかね?」
そこにあったのは間違い無くテレビだった。テレビに座れって事なのか…
「あのこれ…テレビっすけど」
「てれび?」
「今、コイツてれびって言ったか?」
「椅子だろこれ」
「ザワザワザワザワ…」
俺の言葉に反応する様に、辺りはザワついた。コイツらはテレビを椅子の様に使っていたのだ。
「へ?どゆこと?てか、何で異世界にテレビがあんの?」
「皆のもの静まれ!お前、ハヤトと言ったか?お前はこれの違う使い方を知っていると?」
「はい、これはテレビと言って、ニュースとかバラエティを見る物です」
「にうす?ばら…すまぬ、ワシらに分かるようにゴブリン語で話してくれんか?」
「いや、まずゴブリン語を教えてくれ」
俺は絵に描いてゴブリン達にテレビの説明をした。みんな興味深々だった。俺の話をこんなに真剣に聞いてくれる人は日本にいなかったので、俺は少し嬉しかった。
「ならば私が使うこれは本来はどの様に使うのですか?」
一人のメスゴブリンが保温ができる弁当箱を俺に渡した。
「これは長時間食べ物の温度を保つ事ができる“弁当箱”です」
「まぁ…そうなんですね!知らなかった」
「わたし、普段は糞便をここにして蓋をしていましたの」
「ある一部のマニアの使い方それ!」
その他にはパソコンやスマホ、炊飯ジャーや電子レンジ…俺は全部ゴブリン達に説明した。
しかし何故この世界にこの様な物があるのか不思議だった。絶滅した人間が使っていたものだろうか…とすると…。
「ゴブリン長!大変です!ドラゴンが攻めてきました!」
「何故じゃ!あの温厚なドラゴンが?」
「洞窟から狩に出ていたゴブリン長の娘が襲われています!」
「なんと!大変じゃ!兵を集めてすぐに助けに行くのじゃ!」
バタバタと洞窟の中が慌ただしくなり、鎧や剣を持ったゴブリン達が洞窟から流れ出て行った。俺はボケっとそれを見ているだけだった。
「ハヤト、お前はこっちに来い、見せたい物がある…」
洞窟の更に奥に連れていかれると、そこには真っ赤な剣が鉄の箱に刺さっていた。
「この剣は伝説の剣じゃ…数百年前にニンゲンが使っていた物じゃ」
「へー…ならこれをドラゴンに使えば良いじゃないですか」
「よく見てみろ、どうやっても抜けないのじゃ剣が」
俺は剣を思いっきり引っ張ったが、奥でロックされている様で、びくともしなかった。ふと鉄の箱を見ると文字が書いてある。
「何だこれ…何か書いてある、えーと、この剣は人間以外が使わない様に封印してある。近くにあるルービックキューブを完成させると、封印が解かれる仕組みになっている…」
「ゴブリン長!この剣の近くに、四角いルービックキューブ無かった?」
「るーび?」
「あ、いや良いや…自分で探すわ」
「四角い?色のついたやつかの?」
「そう!それ!今どこにある?」
ゴブリン長は自分の寝床に行って何やらゴソゴソしていた。
「この…枕のことかの…?」
「みんな人間の道具の使い方のクセが強いな!」
俺はルービックキューブを回し出した。昔からルービックキューブは得意だったので、あっと言う間に俺は四面の色を揃えた。
「ガチっ!」
鉄の箱から鈍い音がして、剣がグラっと揺れた。見事封印を解除できたみたいだ。
「おお!流石ニンゲン!やはりお前は神に選ばれたニンゲンなのだな」
「なるほど、神に選ばれたから俺はココに来たのか…」
「しかしこのゴブリン世界に来るには神に送る言葉があるはずじゃ…お主はその言葉を神から聞いたのではないのか?」
いや、そんな覚えはない…俺はスタバに入ろうとしたら体に電流が走って…
「いや…そんな言葉言った覚えもないし、聞いてもいない…ちなみに、どんな言葉なんだ?それ」
「ニホンツマラナイナ、オ、コンナトコロニスタバアルジャン、カワイイコバイトシテナイ、カナ…じゃ」
「言ったわ…思いっきり言ってたわ…」
終編に続く
人間だと言った途端こいつらは俺を食おうとした。やはりゴブリンはゲームや小説通りの野蛮さだ。
「食べるのは冗談だ。いや、ニンゲンってのはもう何百年前に絶滅した。お前がこの場所にいる事自体がおかしい」
「そうなのか…一応人間はいたんだな。この世界に…」
「俺たちの洞窟に来い。我々のゴブリン長に報告しないといけない」
「食うなよ。俺を」
「ニンゲンは不味い、食う訳ないだろ」
「…良かったよ、お前らのお口に合わなくて」
俺達はゴブリン兄貴の馬に乗り、こいつらが住む洞窟に向かった。入口には門番が二人いて、ゴブリン兄貴は何やら腕の刺青を見せていた。
「ニンゲン、この腕の紋章が洞窟へ入る為の合言葉みたいなもんだ」
「種族によって紋章の形は違う、争いが起きた時はこの紋章が仲間の印だ。よく覚えておけ」
「へー他とは物騒な関係なんだな…」
俺は洞窟の奥まで案内され、ゴブリンの長に紹介される事になった。
「ニンゲン…これは珍しい客が来たものだ。話はゆっくり聞こう、まずは席に座りなさい」
「天王寺…ハヤトです。お招き頂き…ありがとうございます…」
俺は椅子を探しながらそう言った。しかし、椅子が見当たらない
「どうした?はよ座れ」
「いや、これ…ですかね?」
そこにあったのは間違い無くテレビだった。テレビに座れって事なのか…
「あのこれ…テレビっすけど」
「てれび?」
「今、コイツてれびって言ったか?」
「椅子だろこれ」
「ザワザワザワザワ…」
俺の言葉に反応する様に、辺りはザワついた。コイツらはテレビを椅子の様に使っていたのだ。
「へ?どゆこと?てか、何で異世界にテレビがあんの?」
「皆のもの静まれ!お前、ハヤトと言ったか?お前はこれの違う使い方を知っていると?」
「はい、これはテレビと言って、ニュースとかバラエティを見る物です」
「にうす?ばら…すまぬ、ワシらに分かるようにゴブリン語で話してくれんか?」
「いや、まずゴブリン語を教えてくれ」
俺は絵に描いてゴブリン達にテレビの説明をした。みんな興味深々だった。俺の話をこんなに真剣に聞いてくれる人は日本にいなかったので、俺は少し嬉しかった。
「ならば私が使うこれは本来はどの様に使うのですか?」
一人のメスゴブリンが保温ができる弁当箱を俺に渡した。
「これは長時間食べ物の温度を保つ事ができる“弁当箱”です」
「まぁ…そうなんですね!知らなかった」
「わたし、普段は糞便をここにして蓋をしていましたの」
「ある一部のマニアの使い方それ!」
その他にはパソコンやスマホ、炊飯ジャーや電子レンジ…俺は全部ゴブリン達に説明した。
しかし何故この世界にこの様な物があるのか不思議だった。絶滅した人間が使っていたものだろうか…とすると…。
「ゴブリン長!大変です!ドラゴンが攻めてきました!」
「何故じゃ!あの温厚なドラゴンが?」
「洞窟から狩に出ていたゴブリン長の娘が襲われています!」
「なんと!大変じゃ!兵を集めてすぐに助けに行くのじゃ!」
バタバタと洞窟の中が慌ただしくなり、鎧や剣を持ったゴブリン達が洞窟から流れ出て行った。俺はボケっとそれを見ているだけだった。
「ハヤト、お前はこっちに来い、見せたい物がある…」
洞窟の更に奥に連れていかれると、そこには真っ赤な剣が鉄の箱に刺さっていた。
「この剣は伝説の剣じゃ…数百年前にニンゲンが使っていた物じゃ」
「へー…ならこれをドラゴンに使えば良いじゃないですか」
「よく見てみろ、どうやっても抜けないのじゃ剣が」
俺は剣を思いっきり引っ張ったが、奥でロックされている様で、びくともしなかった。ふと鉄の箱を見ると文字が書いてある。
「何だこれ…何か書いてある、えーと、この剣は人間以外が使わない様に封印してある。近くにあるルービックキューブを完成させると、封印が解かれる仕組みになっている…」
「ゴブリン長!この剣の近くに、四角いルービックキューブ無かった?」
「るーび?」
「あ、いや良いや…自分で探すわ」
「四角い?色のついたやつかの?」
「そう!それ!今どこにある?」
ゴブリン長は自分の寝床に行って何やらゴソゴソしていた。
「この…枕のことかの…?」
「みんな人間の道具の使い方のクセが強いな!」
俺はルービックキューブを回し出した。昔からルービックキューブは得意だったので、あっと言う間に俺は四面の色を揃えた。
「ガチっ!」
鉄の箱から鈍い音がして、剣がグラっと揺れた。見事封印を解除できたみたいだ。
「おお!流石ニンゲン!やはりお前は神に選ばれたニンゲンなのだな」
「なるほど、神に選ばれたから俺はココに来たのか…」
「しかしこのゴブリン世界に来るには神に送る言葉があるはずじゃ…お主はその言葉を神から聞いたのではないのか?」
いや、そんな覚えはない…俺はスタバに入ろうとしたら体に電流が走って…
「いや…そんな言葉言った覚えもないし、聞いてもいない…ちなみに、どんな言葉なんだ?それ」
「ニホンツマラナイナ、オ、コンナトコロニスタバアルジャン、カワイイコバイトシテナイ、カナ…じゃ」
「言ったわ…思いっきり言ってたわ…」
終編に続く
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