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53 スキュラとの戦い
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砂浜に着くと、私たちは急いで船から飛び降りた。
「うん、それほど足が捕られるような砂じゃないな」
アルスが足場を確かめて言った。
「来ました!」
フレアの声に前を向くと、スキュラがやってくるのが見えた。正面の岩の上で留まり、こちらを見下ろしている。岩の上にいるせいで余計に大きく見える。
もう少し近づいたら…いや、その前に聞かなければいけないことがある。
「待って!女神が憎いって何故?人間があなたをそんな姿にしたってどういう意味なの!?」
「ウルサイ!ニクイニクイ、コロス…コロス!」
「ユーカ、駄目だ!戦うしかない…何っ!」
イルダが言った瞬間、スキュラの蛇がすごい勢いで伸びてきて私たちを襲った。アルス、イルダ、私は何とか剣で対応し、フレアはシールドで防いだ。浜に上がりかけていたアマティアさんは海に飛び込んで逃れたようだ。一人、三叉槍を構えていたベルホルトさんは、受け止めきれず、後ろに飛ばされた。
「ベルホルトさん!」
「あ、ああ…」
「っ、ああ゛ー!」
ポンという音と共に姿を現したスピカが、ベルホルトさんを追撃しようとしていた蛇に向かって、普段では考えられないような声を出した。蛇はその衝撃にのた打ち回ったが、すぐに回復したようで、目のない顔をスピカに向けて、大きな口でにやりと笑った。ものすごく気持ちが悪い。スピカも「んげっ」というような声を上げている。
「くっ、切れない」
「この『ぬめり』のせいか!」
アルスとイルダが声を上げる。私も気付いたが、蛇の表面がぬるぬるしていて、剣で傷付ける事が出来ない。刃が滑ってしまうのだ。フレアもシールドで蛇を切ろうとしているが同じように切れないようだ。
「ラーマドアクア!」
アマティアさんが海の中から顔を出して、聞いたことのない言葉で魔法を唱えると、海から三日月状の水の塊が飛び出し、蛇に向かった。水で出来た刃?しかし、打撃は与えられているが、やはりぬめりに邪魔をされて威力が落ちている感じだ。
本体なのかは分からないが、攻撃が効きそうなのは上半身の部分だ。アマティアさんは、今度は大きめの水の刃を上半身に向けて放ったが、素早く移動する蛇がその攻撃を防御した。
「ウインドカッター!」
見えない刃なら蛇に邪魔されないだろうと考えた私は、空気の刃を飛ばしたが、あっさりと蛇に阻まれた。ウインドカッターの当たった蛇はぶるぶると震えるが、まったく効いていないようだ。
「嘘っ、見えるの?」
「目がないのにな」
「にしても、何でこんなに伸びるんだよ」
蛇は自由に動くだけでなく、伸び縮みも自在だ。本体の攻撃のときは縮んで防御するし、攻撃のときは10mは離れている私たちのところまで伸びてくる。どんな構造なんだか。
蛇の一体に私たち一人ずつが対応する形になってしまっているが、誰も有効な攻撃を与える事ができていない。ちなみにベルホルトさんは戦線を離脱して、端の蛇の一体はスピカ担当になっている。
「ユーカ、ファイアーだ、ファイアー!」
イルダが叫ぶ。もうそれしかないか。相手が蛸や海蛇の類なら、効果があるはずだ。本当なら、弱らせて話をしたいと思っていたのだけど。私は、隙を見てFの音に魔力を共鳴させ、左手を前に出した。
「ファイアー」
炎の勢いに、初めて見るアマティアさんとスピカが目を丸くする。その炎がスキュラに向かってまっすぐ伸びる。その瞬間、蛇が二匹間に割って入ると、その口から水を勢いよく噴き出した。
「げ」
アルスが間抜けな声を出した。炎は、水のような質量はないし、相性からいって不利だが、私の魔力のせいか拮抗している。よし、もうちょっと威力を上げれば…。
「アチッ、アチチ、待った、待った、ユーカ!」
アルスの声に、私は慌ててファイアーを止めた。水と炎がぶつかって、熱湯となって降りかかってきたのだ。相手よりも低い所にいた私達だけに被害が来てしまった。
「便利な蛇だなー」
アルスが呆れたように言った。しかしこれ、どうしたら良いの。
「こりゃあ埒が明かないな」
「しかし、決め手がないのは向こうも同じだぞ。蛇の体当たりと放水ぐらいしか攻撃してこないじゃないか」
アルスの溜め息混じりのセリフにイルダが返す。確かにイルダの言う通りだ。体当たりも放水も避けられなくはない。
「船を襲うことに特化しているのかもしれません」
右手に纏わせたシールドで蛇を牽制しながら、左手で展開させた別のシールドを拡大させるという器用な事をしながら、フレアが言った。
「船なら避けられませんし、体当たりで船底に穴を開けたり、放水で乗員を海に落としたりは出来るでしょう。そうすれば、後はあのカリュブディスが止めを刺してくれるというわけです」
「なるほど、でもどうする?このままじゃあ体力が削られるだけだぞ」
「スキュラの胸を見てください」
「…あれは?」
「魔石だと思います」
「魔石?そうか、魔石を攻撃すれば…」
「何とか隙を作って、ユーカの攻撃に期待するしかないな」
シールドの陰に入ったり出たりして、攻撃の傍らこそこそと話す。
「しかし、どんな攻撃を?魔石って硬いんだろ?」
「色々あると思いますが、スキュラほどの魔石なら硬いでしょうね」
「ウインドカッターじゃ無理かしら」
「空気を固めるのが駄目なら、水ならどうだ?さっきのアマティアさんの攻撃は結構効いていたみたいだけど、もっと固めれば…」
「うーん、水を固めるイメージが湧かないのよね…」
「またユーカの想像力不足が…」
空気なら圧縮出来るイメージがあるけど、水はねえ。圧縮圧縮…、あ。
「うーん、うまく行くかどうか分からないけど、以前考えたのがあるの。やった事ないけど」
「思いついたときに試しとけよ!」
アルスが文句を言う。
「それに賭けるしかないか…。とにかく、蛇を牽制してユーカの攻撃の隙を作るぞ」
「最後の隙はあたしが作るわ。任せておいて」
話を聞いて、ふよふよと飛んできたスピカは、ポンという音と共に姿を消した。海からこっちの話を聞いていたアマティアさんも頷く。
「よし!」
再び皆が散開し、蛇に攻撃を加える。私は目立たないようにゆっくりと魔力を練り始めた。音は…C。
蛇が私の攻撃の防御に回れないように、アマティアさんがスキュラの横方向から水の刃を飛ばす。アルスやイルダも前に進み、蛸の足を攻撃するそぶりを見せて蛇が戻れないようにする。
圧縮しきれない光が私の両手の間から漏れ出す。私は両手の指で銃のような形を作り、ゆっくりと構えた。知らない人が見たら子供のままごとのように見えるかもしれない。
蛇は皆の攻撃を防ぐので精一杯だったが、私の構えを見て上半身を庇うように動こうとしたが、止められた。フレアのシールドだ。さらに動こうとしたスキュラの顔の前に、ポンという音と共にスピカが現れた。スキュラの動きが思わず止まる。
「ウフフ…、ラ、ラ↑ラ→ラ↓ラ゛ーッ!」
スキュラが耳を押さえる。動きが完全に止まった。今がチャンスだ。
「くっ」
指の先から光が走り、私は反動に顔を顰めた。ブォンという音に続いてパシッという高い音。溜め息を吐いて痺れた手を振る。
皆が動かない中、蛇が力を失って垂れ下がる。スキュラが穴の開いた自分の胸を、驚いた顔で見つめる。その胸から砕けた魔石が零れ落ちた。
「…レーザー[léɪzə]」
「フ、フ、感謝スルぞ、女神達。コレデやっと…」
蛸の足が力を失い、海に向かってよろめくと、スキュラはそのまま落ちていった。
「うん、それほど足が捕られるような砂じゃないな」
アルスが足場を確かめて言った。
「来ました!」
フレアの声に前を向くと、スキュラがやってくるのが見えた。正面の岩の上で留まり、こちらを見下ろしている。岩の上にいるせいで余計に大きく見える。
もう少し近づいたら…いや、その前に聞かなければいけないことがある。
「待って!女神が憎いって何故?人間があなたをそんな姿にしたってどういう意味なの!?」
「ウルサイ!ニクイニクイ、コロス…コロス!」
「ユーカ、駄目だ!戦うしかない…何っ!」
イルダが言った瞬間、スキュラの蛇がすごい勢いで伸びてきて私たちを襲った。アルス、イルダ、私は何とか剣で対応し、フレアはシールドで防いだ。浜に上がりかけていたアマティアさんは海に飛び込んで逃れたようだ。一人、三叉槍を構えていたベルホルトさんは、受け止めきれず、後ろに飛ばされた。
「ベルホルトさん!」
「あ、ああ…」
「っ、ああ゛ー!」
ポンという音と共に姿を現したスピカが、ベルホルトさんを追撃しようとしていた蛇に向かって、普段では考えられないような声を出した。蛇はその衝撃にのた打ち回ったが、すぐに回復したようで、目のない顔をスピカに向けて、大きな口でにやりと笑った。ものすごく気持ちが悪い。スピカも「んげっ」というような声を上げている。
「くっ、切れない」
「この『ぬめり』のせいか!」
アルスとイルダが声を上げる。私も気付いたが、蛇の表面がぬるぬるしていて、剣で傷付ける事が出来ない。刃が滑ってしまうのだ。フレアもシールドで蛇を切ろうとしているが同じように切れないようだ。
「ラーマドアクア!」
アマティアさんが海の中から顔を出して、聞いたことのない言葉で魔法を唱えると、海から三日月状の水の塊が飛び出し、蛇に向かった。水で出来た刃?しかし、打撃は与えられているが、やはりぬめりに邪魔をされて威力が落ちている感じだ。
本体なのかは分からないが、攻撃が効きそうなのは上半身の部分だ。アマティアさんは、今度は大きめの水の刃を上半身に向けて放ったが、素早く移動する蛇がその攻撃を防御した。
「ウインドカッター!」
見えない刃なら蛇に邪魔されないだろうと考えた私は、空気の刃を飛ばしたが、あっさりと蛇に阻まれた。ウインドカッターの当たった蛇はぶるぶると震えるが、まったく効いていないようだ。
「嘘っ、見えるの?」
「目がないのにな」
「にしても、何でこんなに伸びるんだよ」
蛇は自由に動くだけでなく、伸び縮みも自在だ。本体の攻撃のときは縮んで防御するし、攻撃のときは10mは離れている私たちのところまで伸びてくる。どんな構造なんだか。
蛇の一体に私たち一人ずつが対応する形になってしまっているが、誰も有効な攻撃を与える事ができていない。ちなみにベルホルトさんは戦線を離脱して、端の蛇の一体はスピカ担当になっている。
「ユーカ、ファイアーだ、ファイアー!」
イルダが叫ぶ。もうそれしかないか。相手が蛸や海蛇の類なら、効果があるはずだ。本当なら、弱らせて話をしたいと思っていたのだけど。私は、隙を見てFの音に魔力を共鳴させ、左手を前に出した。
「ファイアー」
炎の勢いに、初めて見るアマティアさんとスピカが目を丸くする。その炎がスキュラに向かってまっすぐ伸びる。その瞬間、蛇が二匹間に割って入ると、その口から水を勢いよく噴き出した。
「げ」
アルスが間抜けな声を出した。炎は、水のような質量はないし、相性からいって不利だが、私の魔力のせいか拮抗している。よし、もうちょっと威力を上げれば…。
「アチッ、アチチ、待った、待った、ユーカ!」
アルスの声に、私は慌ててファイアーを止めた。水と炎がぶつかって、熱湯となって降りかかってきたのだ。相手よりも低い所にいた私達だけに被害が来てしまった。
「便利な蛇だなー」
アルスが呆れたように言った。しかしこれ、どうしたら良いの。
「こりゃあ埒が明かないな」
「しかし、決め手がないのは向こうも同じだぞ。蛇の体当たりと放水ぐらいしか攻撃してこないじゃないか」
アルスの溜め息混じりのセリフにイルダが返す。確かにイルダの言う通りだ。体当たりも放水も避けられなくはない。
「船を襲うことに特化しているのかもしれません」
右手に纏わせたシールドで蛇を牽制しながら、左手で展開させた別のシールドを拡大させるという器用な事をしながら、フレアが言った。
「船なら避けられませんし、体当たりで船底に穴を開けたり、放水で乗員を海に落としたりは出来るでしょう。そうすれば、後はあのカリュブディスが止めを刺してくれるというわけです」
「なるほど、でもどうする?このままじゃあ体力が削られるだけだぞ」
「スキュラの胸を見てください」
「…あれは?」
「魔石だと思います」
「魔石?そうか、魔石を攻撃すれば…」
「何とか隙を作って、ユーカの攻撃に期待するしかないな」
シールドの陰に入ったり出たりして、攻撃の傍らこそこそと話す。
「しかし、どんな攻撃を?魔石って硬いんだろ?」
「色々あると思いますが、スキュラほどの魔石なら硬いでしょうね」
「ウインドカッターじゃ無理かしら」
「空気を固めるのが駄目なら、水ならどうだ?さっきのアマティアさんの攻撃は結構効いていたみたいだけど、もっと固めれば…」
「うーん、水を固めるイメージが湧かないのよね…」
「またユーカの想像力不足が…」
空気なら圧縮出来るイメージがあるけど、水はねえ。圧縮圧縮…、あ。
「うーん、うまく行くかどうか分からないけど、以前考えたのがあるの。やった事ないけど」
「思いついたときに試しとけよ!」
アルスが文句を言う。
「それに賭けるしかないか…。とにかく、蛇を牽制してユーカの攻撃の隙を作るぞ」
「最後の隙はあたしが作るわ。任せておいて」
話を聞いて、ふよふよと飛んできたスピカは、ポンという音と共に姿を消した。海からこっちの話を聞いていたアマティアさんも頷く。
「よし!」
再び皆が散開し、蛇に攻撃を加える。私は目立たないようにゆっくりと魔力を練り始めた。音は…C。
蛇が私の攻撃の防御に回れないように、アマティアさんがスキュラの横方向から水の刃を飛ばす。アルスやイルダも前に進み、蛸の足を攻撃するそぶりを見せて蛇が戻れないようにする。
圧縮しきれない光が私の両手の間から漏れ出す。私は両手の指で銃のような形を作り、ゆっくりと構えた。知らない人が見たら子供のままごとのように見えるかもしれない。
蛇は皆の攻撃を防ぐので精一杯だったが、私の構えを見て上半身を庇うように動こうとしたが、止められた。フレアのシールドだ。さらに動こうとしたスキュラの顔の前に、ポンという音と共にスピカが現れた。スキュラの動きが思わず止まる。
「ウフフ…、ラ、ラ↑ラ→ラ↓ラ゛ーッ!」
スキュラが耳を押さえる。動きが完全に止まった。今がチャンスだ。
「くっ」
指の先から光が走り、私は反動に顔を顰めた。ブォンという音に続いてパシッという高い音。溜め息を吐いて痺れた手を振る。
皆が動かない中、蛇が力を失って垂れ下がる。スキュラが穴の開いた自分の胸を、驚いた顔で見つめる。その胸から砕けた魔石が零れ落ちた。
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