私は女神ではない。…と思う。

山口 慶佳

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57 雷魔法

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 「ス、スターレイン[stάɚ réɪn]!」

 空から『キラララ…』というような擬音を発しながら、色々な鮮やかな色をした星が次々に地面に落ちてくる。落ちた後しばらくすると消えてしまうところが魔法っぽい。星は7,8センチメートルの大きさで、ちゃんと五角形の星型をしている。横から見ても星型に見えるのか、ちょっと気になる所だ。

 「…面白いわね。でも昨日の『めておしゃわー』とどう違うのよ」
 「見た目も違うけど、こっちの方が威力を抑えやすいのよ。星が尖ってるから、小さいけど当たると痛いし」
 「めておしゃわーが広範囲の殲滅魔法とすると、こっちのは広範囲の嫌がらせか…」

 毎日とは行かないけど、それなりの日課になっている、新しい魔法の開発。町からちょっと離れた荒地で、スピカと色々話しながらやっている。最初は大変だったけど、慣れてきたら結構楽しくなってきた。ただ、段々漫画やゲームっぽくなってきたような気がする。

 「あとは、他の系統がないかも調べなければいけないわね…」

 魔法の系統がC,D,E,F,Gの音と対応しているとなれば、Gと上のCの間に何かないかと思うのは当然だ。
 基音があって、最も協和する一度、四度、五度、八度の間を、協和音で埋めていく自然な七音階だとすると、Gと上のCの間には二音入る。しかし、その音がAとH(基音がC)なのか、AとB(基音がF)なのかは決まらない。
 今まで、魔法の系統である水とか風とかを魔法で動かすイメージを思い浮かべる事で、その系統に対応する音を感じる事が出来たが、逆に音から魔法の系統は分からないのだ。しかし、光・土・水・火・風以外の系統なんてあるのだろうか?


 「それは雷かもしれませんね」

 屋敷に戻ってフレアに聞いてみると、あっさりとそんな答えが返ってきた。

 「五系統以外の魔法なんてあったのか」

 アルスがびっくりして言う。イルダも驚いているようだ。

 「雷の魔法は女神様か勇者しか使えないと聞いたことがあるな。でも、光魔法の一種かと思ってたよ」

 イルダが言う。そう、私もそう思っていた。実は雷のような魔法も考えていたのだが、どうしても光のCとイメージが共鳴しなかったのだ。

 「系統が違うから女神か勇者じゃないと使えないのか…ユーカなら使える?」
 「分からないわ。けど後でやってみる」


 午後からは、ケヴェスンさんの所で魔工の手伝いをする約束だったので、先に寄って断りを入れたら、雷魔法が見られるかも、ということでセリアさんも含め皆付いてきた。ぞろぞろと町の外の荒地に向かう。

 「ギルドマスターの仕事は良いのかよ」
 「最近は副長のアズノールさんに任せてますよ。魔工通信の開発の方が優先順位が高いですから」

 アルスの突っ込みに、ケヴェスンさんはすまし顔で返す。実際は魔工の方が楽しいからだと思うけど。

 「しかし、雷魔法が見られるかもしれないとはー。すごいですねー」

 セリアさんも喜んでいるみたいだけど、まだ出来るかどうか分からないんだけど。

 「まあ、出来なかったら他の魔法を見せてもらえば良いんじゃないか?最近、色々やってるみたいだし。ゴーレムに期待だな」

 イルダが言う。そういえば、ゴーレム系はあまり考えてなかったかも。


 「いつもはこの辺で…じゃあ、ちょっとやってみるわね。目標はあの岩ぐらいで」

 皆にそう言うと、雷をイメージする。…これは、やっぱりAか。Eと同じで、私の記憶よりほんの少し低い音。イメージと音を共鳴させて…。

 「…ううっ」

 制御が難しい。どこまでも大きくなりそうな共鳴を無理やり抑える。周囲の空気がピンク色に変わり、不快な臭いが漂う。このままでは、雷が所構わず落ちかねない。私は、左手を上げて魔力を上空に集めるイメージを作り、それを前方にある岩にぶつけた。
 瞬間、空中から岩へ強烈な閃光が走った。岩を飲み込むほどに太い稲妻の光。地面を震わせる爆音に皆が耳を塞ぐ。

 「ふぇぇ…」

 自分でやったことながら、思わず間抜けな声が出てしまった。魔力が体から抜けたような感覚があり、わずかな疲労を感じる。今まで魔法を使ったときにはなかった、初めての感覚だ。

 「…えっと、サンダー!…ボルトォ[θʌndɚbɔlt]」

 サンダー!と言って雷を落す漫画かゲームがあったと思うけど、本当はピカッ、ゴロゴロのピカッがライトニング、ゴロゴロがサンダーだという話を思い出し、慌ててボルトを付け足した。サンダーボルトなら落雷ってことで良いだろう。でも「ライトニングなんとか」の方がカッコ良かったかも。

 振り返ると、皆が口を大きく開けていた。フレアだけが口を押さえ、目をウルウルさせて、女神様がどうこうと呟いているが、無視しよう。

 「…いや、マジですげーよ!」

 やっと我に返ったアルスが興奮して言う。

 「こりゃあ、ある程度の魔物なら一発なんじゃないか?」
 「うーん、でも制御が難しい感じなの。今も、所構わず落ちそうだったわ」
 「やめてよね」

 ショックで地面に落ちていたスピカが、復活して突っ込む。確かにもっと練習が必要だ。威力の少ないものをたくさん作れるようにした方が、便利かもしれない。

 「ケヴェスンさん、これ」
 「おお、これは!…ああ、こっちも!皆さん見てください」

 ケヴェスンさんは、セリアさんの差し出した魔石を見て、自分でも持っていた鞄の中から魔石を取り出して確認後、皆に声を掛けた。

 「これは…」
 「綺麗な紫色だな…これが?」

 スピカとアルスが声を上げる。

 「もしかして雷魔法があるなら魔力を込めてもらおうと思って持ってきた、魔力の込められていない無色の魔石でした…さっきまでは」
 「さっきのユーカの魔法で魔力が込められたってこと?」
 「確かに、魔力が周りにかなり漏れていましたからね」

 フレアがイルダに答えて言う。確かに周りが帯電したのか空気がピンクになっていた気がしたし。

 「光が黄、土が橙、水が青、火が赤、風が緑。今まで知られていた魔石の発色はそれだけでしたが、雷が紫だということが分かりましたね。これは大発見ですよ!」

 魔力の込められていない魔石は無色だが、魔力を込めると発色する。小さな魔石はその辺に普通に転がっているので、石英かと思ったのだけど、そうでもなく、透明で結晶性の良い石はみんな魔石になるようだ。
 宝石や石の色なんて、不純物か構造欠陥だと思うけど、魔力によって変わるのはどんな原理なのか気になるところね。まさかアメジストに雷の魔力が入っているわけじゃないだろうし。

 「私の感じた音はAだったわ。魔力自体の音も確かめたい所ね」
 「すぐに実験してみましょー」

 セリアさんが言う。あとはHかBか。
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