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81 秘密の村
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テレシアさんに案内されて、道を歩く。キノコの形をした家にはドアがない。気になって聞くと、個人の家ではなく誰もが自由に使えるのだそうだ。そもそも、個人の家などというものはなく、空いていたら誰でも使えるとのこと。「家に住む」という感覚も、あまりないらしい。
「えーっと、個人の財産を置いておくとか、食事をしたり寝たりする場所は…」
「個人の財産なんて、身に着けるお守りぐらいですよ?日用品や魔道具は、みんなが好き勝手に作って、決められた建物に置いておくのです。そしてみんながそれぞれ勝手に好きなものを使う。食事は、その辺の木から適当に果物を取れば良いし、寝るのだって、その辺のお花畑や草の上でも良いでしょ?」
「えーっと、そうするとお店みたいなものは?」
「ないですね。たまに来る人間の商人と、物々交換では賄えない物を買うために村の共有財産としてちょっとお金があるけど、村の中ではお金無しに物が手に入りますから。色々なものを飾っている建物はあるけど、お店とは言えないですね」
「…」
さっきから色々なお店があると思って見ていたけど、勝手に持って行っても良いという、展示場みたいなものだったのか…。共産主義的なユートピアね。うーん、人間なら色々な問題が出て、とても無理だと思うけど、エルフならうまく行くのかしら。
「服や魔道具に興味があったら、ちょっと見てみますか?」
「うーん、それは後で皆が揃った時に一緒に見せてもらうわ」
さっき見た、やたら数の揃ったぬいぐるみには興味があるけど、それは後で良いわね。
「…それにしても、歌ったり踊ったりしている集団が多いのね」
「エルフらしいでしょう?」
確かにねえ。今見ている集団は、割と人数が多く、楽器を演奏しているエルフと歌を歌っているエルフが半数ぐらいで、その輪の中で二人ほどのエルフが立ち上がって踊っている。歌詞がないのがちょっと物足りないが、歌詞があると魔歌になってしまうからだろう。
楽器は竪琴と笛が中心で、笛は縦笛と横笛がある。さすがに喇叭の類がないのがエルフらしい。
竪琴は片手で持てるリラのようなもので、アニメなんかで吟遊詩人が持っていそうなやつだ。しかし、それこそアニメなどで現在のハープのような演奏をする場面があるが、それは構造的にも無理。数本の弦しかない竪琴では、せいぜい一オクターブの簡単な旋律や和音を出すのが限界で、実際は分散和音などで雰囲気を出しつつ、歌の方がメインだったに違いない。
私は、しばらくその演奏を見ていたが、軽く首を振った。
「そろそろ、テレシアさんの行きたい所に行ったほうが良いのでは?」
「…やっぱり気付いていました?」
テレシアさんに案内されたのは、村の外れで、それより先には深い森が広がっているばかりだ。
「…ここ?」
「はい。…『アンヴォカシオン・ド・ドリアード』」
テレシアさんが何かの呪文を唱えると、小さな旋風が起こった。旋風は落ち葉を巻き上げ、一瞬視界を遮る。旋風が収まり、落ち葉が地面に落ちると、そこに「妙齢の美女」としか形容出来ない女性が、微笑みながら立っていた。薄緑色の裸体に、葉をわずかに伴った草の蔓が撒きついている。髪の毛も体より僅かに濃いけど緑色だ。
「ドリュアス?」
「あら~、良く分かったわねん。モレアよ、よろしくねん」
くねくねと体を動かして、やたら馴れ馴れしい。黙っていれば超絶美人な森の精なのに、ものすごく残念だ。ドリュアスは、『森の乙女』と称される、木の精霊だ。ドライアド、ドリアードとも呼ばれる。そういえば、さっきのテレシアさんの呪文も『何とかかんとか・ドリアード』と聞こえた。
「ドリアード、いいから『道』を繋げて。あと、他の人は通さないようにしてね」
「テレシアちゃん、相変わらず名前で呼んでくれないのねん。私悲しい~」
「あなたたち、区別付かないのよ」
「ひどいのねん。ここをくぐってねん」
なおもくねくねしながら、ドリュアス、いやモレアさん?が手を振ると、木の枝と蔓で囲まれた門が現れた。門の中は光っていて、向こうは見えない。
またね~、というモレアさんの声を背中で聞きながら門をくぐると、まったく違った光景が広がっていた。
ちょっと花畑が多いけど、ごく普通の村。人間の村とさほど変わらない、というのがぱっと見たところの感想。大きく違うのは、村の中央と思われる場所に、大きな木が立っていることだ。何か淡い光を放っている。
「…ここが本当の村?」
「ええ、気付かれていたようですね。ここがエルフの住む本当の村です。先ほどまでいたのは、外部の方にお見せする、表向きの作り物ですね」
やっぱりね。『如何にも』感が酷すぎたのよ。どうみてもテーマパークにしか見えなかった。
「…で、あの中央の木は?」
「それもご存知でしたか?ええ、あれがこの『空間』を支えている大樹です」
パターンね。
テレシアさんに案内されたのは、ちょっと大きめの円形の建物だった、集会所のような物らしい。中に入ると、数人のエルフがいた。中年~老年に見えるということは、数百歳ぐらいだろうか。
「おや、もう連れて来たのかい?」
「ええ、うまい具合に、上の村に興味を持って別れてくれたので」
やはり最初から私だけを連れてくるつもりだったようだ。
「儂は、この村のエルフの中でも長老と呼ばれる者でな。上に残されたお仲間さん達には礼を逸しておるが、エルフにも秘密があって許して欲しい」
一番年寄りっぽいエルフが頭を下げると、他のエルフたちも同時に頭を下げて来た。
「それと…、うむ、確かに尋常ではない魔力量であるな。『前回の女神』以上かもしれん」
「前の女神をご存じなのですか!?」
「うむ、それほど親しいわけでもないが、話をしたこともある。二百年はエルフにとっても短い年月とは言えんが、それほど長いわけでもない」
「後でお話を聞かせていただいても…」
「もちろんだ」
結構役に立つ情報が手に入りそうだ。でも、その前に依頼を片付けないといけないわね。
「まず、依頼を片付けてしまいましょう。何かに魔力を込めて欲しいとしか伺っていないのですが…」
「うむ、エルフの秘密に関わること故、詳しい話が出来なくて申し訳なかった。ここの村の中心にある大きな木を見たかの?」
「ええ、この空間を支えている大樹とか。淡く光っていましたね」
「うむ、本当はもっと眩しいほどに輝いているものなのだ。弱っているのだな」
ああ、やっぱりパターンね。エルフのために世界樹とか神聖樹とかに魔力を分け与えるってのはお約束な話だ。
「…あ、いやいや、その通りではあるのだが、無理やり大樹に直接魔力を与えても却って良くないのだ。一時的には回復するが、却って弱ってしまうだろう」
無理なドーピングは良くないと。じゃあどうしたら。
「大樹が弱っているのは、ここの大地が弱っているのが原因でな。まず大地に力を与えて欲しい」
大地に力を与えるって、どうやったら良いのかしら。結構無理筋なのでは?私がちょっと考え込むと、入り口から声がした。
「お、ここかな」
「そうみたいですね」
「おーい、ユーカ無事かぁ」
「胡散臭い目に遭ってない?」
ああ、みんな来ちゃったのか。それにしてもスピカ、『胡散臭い目』ってどんなのよ。
「あ、あなたたち、上の村に夢中になって、うまく巻いたと思ったのに」
いや、テレシアさん、私と離れた時のみんなの態度は、あまりにもわざとらしかったと思うけど。
「そ、それに、どうやってここに…あー、他の人は通さないでって言ったのに!」
「知らないわん。そんなの聞いてないわん」
「嘘つきなさい…」
「…テレシアさん、違うわよ。えっとドリュアスさん、さっきのモレアさんじゃないですよね?」
「えっ?」
テレシアさんは驚くが、見た目はそっくりだけど明らかに違うでしょ。
「分かるなんてすごいわん。私はカリュアっていうんだわん。よろしくだわん」
「何で区別出来るの…。いや、それにしても勝手に道を繋げちゃ駄目でしょ!」
「…まあ、待てテレシア。彼女がいるのではしょうがない」
長老はフレアの方を見て言った。フレアが?
「え?あ、えっと、スピカがいるのではしょうがないと思いますよ」
「あ、うん、あたしがいればね。ドリュアスの作る道は、妖精の環と似たようなものだし」
「お、おお、そうじゃな」
何か無理矢理フレアがスピカのせいにしているような感じだけど、長老さんも頷いているし、そうなのかな。イルダは「そうだっけ?」とか言ってるけど。
「ふ、ふーん、あたしたちが席を外せば、すぐに胡散臭い尻尾を出すと思ったけど、狙い通りだったわね」
「ぐぬぬ…」
スピカ、煽るのは止めなさいよ。
「まあまあ、儂らが悪かった。この村は上のと違って秘密なのでな。隠したかったのだ、出来たら秘密を守ってもらうとありがたい。この通りだ」
長老が頭を下げる。
「ま、まあ良いんじゃないか」
「エルフのためというか、エルフに対して夢を持っている人のためにも内緒にした方が良いような気がするし」
アルスとイルダがそう言う。私達はちょっと苦笑いで頷いた。
「それでは改めて、依頼の件だが…」
「…なるほど、ユーカの魔力を大樹に与えて欲しい、しかし、直接与えるのではなく、大地を通して与えて欲しいと」
「大地自体が弱ってるからの」
「でも、そもそも大地が弱った原因は何なんだ?」
「それが良く分からん。何かが力を吸い取っているかのようだ」
イルダの疑問に長老が答える。
「とすると、その原因を取り除かないと、一時しのぎなのではないでしょうか」
フレアの意見はもっともだ。
「…せっかくみんながこっちに来ちゃったんだから、まずはそれを探ってみない?」
「そうだな」
私が言うと、アルスが頷いた。みんなも異論はないようだ。
「…で、これがその大樹ね…」
みんなで大樹のところにやって来た。樹はまるでガラスで出来ているようで、ツルツルの上に、向こうが透けて見える。青みを帯びた光を僅かに放っているようで、夜にはすごく綺麗かもしれない。
「滑々だな」
イルダも不思議そうに樹を撫でている。
しかし、樹に直接魔力を込められないとすると、どうしたら良いのだろうか。私がそう考えながら幹に手を伸ばすと、大樹が一瞬明るく光ると、地響きがした。
「地震?」
「…いや、違う!」
アルスが地面を指して声を上げる。地割れが起こったと思うと、そこから何かが姿を現す。
「んげっ!」
思わずおかしな声を上げた私の前に姿を現したのは、とてつもなく大きな『ミミズ』だった。
「えーっと、個人の財産を置いておくとか、食事をしたり寝たりする場所は…」
「個人の財産なんて、身に着けるお守りぐらいですよ?日用品や魔道具は、みんなが好き勝手に作って、決められた建物に置いておくのです。そしてみんながそれぞれ勝手に好きなものを使う。食事は、その辺の木から適当に果物を取れば良いし、寝るのだって、その辺のお花畑や草の上でも良いでしょ?」
「えーっと、そうするとお店みたいなものは?」
「ないですね。たまに来る人間の商人と、物々交換では賄えない物を買うために村の共有財産としてちょっとお金があるけど、村の中ではお金無しに物が手に入りますから。色々なものを飾っている建物はあるけど、お店とは言えないですね」
「…」
さっきから色々なお店があると思って見ていたけど、勝手に持って行っても良いという、展示場みたいなものだったのか…。共産主義的なユートピアね。うーん、人間なら色々な問題が出て、とても無理だと思うけど、エルフならうまく行くのかしら。
「服や魔道具に興味があったら、ちょっと見てみますか?」
「うーん、それは後で皆が揃った時に一緒に見せてもらうわ」
さっき見た、やたら数の揃ったぬいぐるみには興味があるけど、それは後で良いわね。
「…それにしても、歌ったり踊ったりしている集団が多いのね」
「エルフらしいでしょう?」
確かにねえ。今見ている集団は、割と人数が多く、楽器を演奏しているエルフと歌を歌っているエルフが半数ぐらいで、その輪の中で二人ほどのエルフが立ち上がって踊っている。歌詞がないのがちょっと物足りないが、歌詞があると魔歌になってしまうからだろう。
楽器は竪琴と笛が中心で、笛は縦笛と横笛がある。さすがに喇叭の類がないのがエルフらしい。
竪琴は片手で持てるリラのようなもので、アニメなんかで吟遊詩人が持っていそうなやつだ。しかし、それこそアニメなどで現在のハープのような演奏をする場面があるが、それは構造的にも無理。数本の弦しかない竪琴では、せいぜい一オクターブの簡単な旋律や和音を出すのが限界で、実際は分散和音などで雰囲気を出しつつ、歌の方がメインだったに違いない。
私は、しばらくその演奏を見ていたが、軽く首を振った。
「そろそろ、テレシアさんの行きたい所に行ったほうが良いのでは?」
「…やっぱり気付いていました?」
テレシアさんに案内されたのは、村の外れで、それより先には深い森が広がっているばかりだ。
「…ここ?」
「はい。…『アンヴォカシオン・ド・ドリアード』」
テレシアさんが何かの呪文を唱えると、小さな旋風が起こった。旋風は落ち葉を巻き上げ、一瞬視界を遮る。旋風が収まり、落ち葉が地面に落ちると、そこに「妙齢の美女」としか形容出来ない女性が、微笑みながら立っていた。薄緑色の裸体に、葉をわずかに伴った草の蔓が撒きついている。髪の毛も体より僅かに濃いけど緑色だ。
「ドリュアス?」
「あら~、良く分かったわねん。モレアよ、よろしくねん」
くねくねと体を動かして、やたら馴れ馴れしい。黙っていれば超絶美人な森の精なのに、ものすごく残念だ。ドリュアスは、『森の乙女』と称される、木の精霊だ。ドライアド、ドリアードとも呼ばれる。そういえば、さっきのテレシアさんの呪文も『何とかかんとか・ドリアード』と聞こえた。
「ドリアード、いいから『道』を繋げて。あと、他の人は通さないようにしてね」
「テレシアちゃん、相変わらず名前で呼んでくれないのねん。私悲しい~」
「あなたたち、区別付かないのよ」
「ひどいのねん。ここをくぐってねん」
なおもくねくねしながら、ドリュアス、いやモレアさん?が手を振ると、木の枝と蔓で囲まれた門が現れた。門の中は光っていて、向こうは見えない。
またね~、というモレアさんの声を背中で聞きながら門をくぐると、まったく違った光景が広がっていた。
ちょっと花畑が多いけど、ごく普通の村。人間の村とさほど変わらない、というのがぱっと見たところの感想。大きく違うのは、村の中央と思われる場所に、大きな木が立っていることだ。何か淡い光を放っている。
「…ここが本当の村?」
「ええ、気付かれていたようですね。ここがエルフの住む本当の村です。先ほどまでいたのは、外部の方にお見せする、表向きの作り物ですね」
やっぱりね。『如何にも』感が酷すぎたのよ。どうみてもテーマパークにしか見えなかった。
「…で、あの中央の木は?」
「それもご存知でしたか?ええ、あれがこの『空間』を支えている大樹です」
パターンね。
テレシアさんに案内されたのは、ちょっと大きめの円形の建物だった、集会所のような物らしい。中に入ると、数人のエルフがいた。中年~老年に見えるということは、数百歳ぐらいだろうか。
「おや、もう連れて来たのかい?」
「ええ、うまい具合に、上の村に興味を持って別れてくれたので」
やはり最初から私だけを連れてくるつもりだったようだ。
「儂は、この村のエルフの中でも長老と呼ばれる者でな。上に残されたお仲間さん達には礼を逸しておるが、エルフにも秘密があって許して欲しい」
一番年寄りっぽいエルフが頭を下げると、他のエルフたちも同時に頭を下げて来た。
「それと…、うむ、確かに尋常ではない魔力量であるな。『前回の女神』以上かもしれん」
「前の女神をご存じなのですか!?」
「うむ、それほど親しいわけでもないが、話をしたこともある。二百年はエルフにとっても短い年月とは言えんが、それほど長いわけでもない」
「後でお話を聞かせていただいても…」
「もちろんだ」
結構役に立つ情報が手に入りそうだ。でも、その前に依頼を片付けないといけないわね。
「まず、依頼を片付けてしまいましょう。何かに魔力を込めて欲しいとしか伺っていないのですが…」
「うむ、エルフの秘密に関わること故、詳しい話が出来なくて申し訳なかった。ここの村の中心にある大きな木を見たかの?」
「ええ、この空間を支えている大樹とか。淡く光っていましたね」
「うむ、本当はもっと眩しいほどに輝いているものなのだ。弱っているのだな」
ああ、やっぱりパターンね。エルフのために世界樹とか神聖樹とかに魔力を分け与えるってのはお約束な話だ。
「…あ、いやいや、その通りではあるのだが、無理やり大樹に直接魔力を与えても却って良くないのだ。一時的には回復するが、却って弱ってしまうだろう」
無理なドーピングは良くないと。じゃあどうしたら。
「大樹が弱っているのは、ここの大地が弱っているのが原因でな。まず大地に力を与えて欲しい」
大地に力を与えるって、どうやったら良いのかしら。結構無理筋なのでは?私がちょっと考え込むと、入り口から声がした。
「お、ここかな」
「そうみたいですね」
「おーい、ユーカ無事かぁ」
「胡散臭い目に遭ってない?」
ああ、みんな来ちゃったのか。それにしてもスピカ、『胡散臭い目』ってどんなのよ。
「あ、あなたたち、上の村に夢中になって、うまく巻いたと思ったのに」
いや、テレシアさん、私と離れた時のみんなの態度は、あまりにもわざとらしかったと思うけど。
「そ、それに、どうやってここに…あー、他の人は通さないでって言ったのに!」
「知らないわん。そんなの聞いてないわん」
「嘘つきなさい…」
「…テレシアさん、違うわよ。えっとドリュアスさん、さっきのモレアさんじゃないですよね?」
「えっ?」
テレシアさんは驚くが、見た目はそっくりだけど明らかに違うでしょ。
「分かるなんてすごいわん。私はカリュアっていうんだわん。よろしくだわん」
「何で区別出来るの…。いや、それにしても勝手に道を繋げちゃ駄目でしょ!」
「…まあ、待てテレシア。彼女がいるのではしょうがない」
長老はフレアの方を見て言った。フレアが?
「え?あ、えっと、スピカがいるのではしょうがないと思いますよ」
「あ、うん、あたしがいればね。ドリュアスの作る道は、妖精の環と似たようなものだし」
「お、おお、そうじゃな」
何か無理矢理フレアがスピカのせいにしているような感じだけど、長老さんも頷いているし、そうなのかな。イルダは「そうだっけ?」とか言ってるけど。
「ふ、ふーん、あたしたちが席を外せば、すぐに胡散臭い尻尾を出すと思ったけど、狙い通りだったわね」
「ぐぬぬ…」
スピカ、煽るのは止めなさいよ。
「まあまあ、儂らが悪かった。この村は上のと違って秘密なのでな。隠したかったのだ、出来たら秘密を守ってもらうとありがたい。この通りだ」
長老が頭を下げる。
「ま、まあ良いんじゃないか」
「エルフのためというか、エルフに対して夢を持っている人のためにも内緒にした方が良いような気がするし」
アルスとイルダがそう言う。私達はちょっと苦笑いで頷いた。
「それでは改めて、依頼の件だが…」
「…なるほど、ユーカの魔力を大樹に与えて欲しい、しかし、直接与えるのではなく、大地を通して与えて欲しいと」
「大地自体が弱ってるからの」
「でも、そもそも大地が弱った原因は何なんだ?」
「それが良く分からん。何かが力を吸い取っているかのようだ」
イルダの疑問に長老が答える。
「とすると、その原因を取り除かないと、一時しのぎなのではないでしょうか」
フレアの意見はもっともだ。
「…せっかくみんながこっちに来ちゃったんだから、まずはそれを探ってみない?」
「そうだな」
私が言うと、アルスが頷いた。みんなも異論はないようだ。
「…で、これがその大樹ね…」
みんなで大樹のところにやって来た。樹はまるでガラスで出来ているようで、ツルツルの上に、向こうが透けて見える。青みを帯びた光を僅かに放っているようで、夜にはすごく綺麗かもしれない。
「滑々だな」
イルダも不思議そうに樹を撫でている。
しかし、樹に直接魔力を込められないとすると、どうしたら良いのだろうか。私がそう考えながら幹に手を伸ばすと、大樹が一瞬明るく光ると、地響きがした。
「地震?」
「…いや、違う!」
アルスが地面を指して声を上げる。地割れが起こったと思うと、そこから何かが姿を現す。
「んげっ!」
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