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一章

ことの始まり

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私は中学の時、「いじめられる側」というより「いじめる側」のイメージの方が強かったらしい。
もちろん、"いじめ"なんて大っ嫌いだし、やりたいだなんて思った事は1度もない。
ただ、大人しい子とか、どちらかと言うと静かで、クラスの端っこから中心を見てる子達なんかからしたら私は結構怖い存在だったみたい。
多分、綺麗事だって言われるかも知れないけど、私はそういう子達とも仲がいい子達とも、平等に絡みたいと思ってた。
   でも、そんなイメージが私についてる時に事件は起きた。
クラスのいじめられてる子が、いじめに耐えきれず自殺したこと。
私は、みんなと仲良くしたいと思ってたからいじめられてると知ってたその子にも、よく話かけることが多かった。
それが他人の目から見たら悪印象だったらしく、自殺した本人である茜ちゃんを自殺に追い込んだのは私だ。と、濡れ衣を着させられてしまった。
  最初、どうして話しかけてた私が犯人になるの?と思って、濡れ衣を着せられた後でも私の友達を続けてくれた遥香に聞いてみた。
そうしたら、
「梨花が話しかけてた内容が、茜ちゃんに「死ね」とか、「お前なんか消えろ」って言ってた。と思われてるんだよ。だからみたい。」
「なにそれ!!」
叫んでいたことは、自分でも無意識だった。
周囲から浴びせられる目線、遥香の目。
その怖いと目で訴えて来るかの様な目で我に帰った。
「ご、ごめん...」
「大丈夫、大丈夫だよ..!  茜ちゃんを励ますために話しかけてたのにあんな風に思われたら、怒るのも当然だよ」
「そう、だよね。」
友達を続けてくれてる、って言っても、やっぱり遥香も怖いんだ。
そりゃあそうだよね。
口で人を殺してしまう様な友達、怖いに決まってる。
その時から私は、人を信用するのはもう辞めよう。そう決意してた。 


それから数日後のこと。
「ね、ねえ...、梨花ちゃん。」
「ん?」
声のした方を見ると、茜ちゃんと一緒にいた真里ちゃん、結友ちゃんがいた。
「ちょっと、話があるんだ。 
放課後、屋上に来てもらえないかな?」
「あ、うん。分かった。」
「ごめんね、ありがとう。」
それだけ言うと2人は行ってしまった。
「(なんだろう。 やっぱり茜ちゃんのことかな...。)」
何を言われるのか不安に思いつつ、取り敢えず放課後になるまで待った。

放課後、屋上に行くと2人はもう既に来ていた。
「あ、梨花ちゃん。」
「ごめんね、遅くなっちゃって。」
「ううん。 大丈夫だよ。」
「それで、話って何?」
2人は顔を見合わせてから、何かを決意したかの様な顔で言った。
「茜ちゃんのこと。 
本当に梨花ちゃんが茜ちゃんのことを自殺まで追い込んだんだって言うなら、私達は貴方のこと、絶対に許さないから。」
「...」
何も言えなかった。
それは、私がしたからとかじゃなくて、
2人の目があまりにも真剣で私を疑い意外の感情で見てなかったから。
「何も言わないんだね..。 
じゃあ、貴方は私達の敵だし私達は貴方を絶対に許さない。」
「え、あ、ちょっと待っ...!!」
2人は私のその言葉に一瞬だけ振り返ったものの、私を鋭い視線で睨みつけてそのまま行ってしまった。
「えぇ...私じゃないのに...」
私は、暗くなり始めているけれどどこまでも綺麗に澄んだ色の空を睨みつけて、
どんよりとした私の心とは正反対だなぁと思いながら屋上をあとにした。


それから月日は流れて卒業の日。
結局あの2人の誤解を解くことは出来なかった。
それどころか、2人は前と物凄く変わっていた。
クラスの端っこにいた2人は、今はクラスの中心で明るい友達と接するようになっていた。
あの数ヶ月で良くここまで変われる方も変われる方だけど...。
それから高校に入学し、高校に入ったら最悪なことに、真里、結友と同じクラスになってしまった。
そして、神様は私に嫌がらせするかの様に一学年の問題児まで私と同じクラスになった。
その問題児って言うのが、入学式の日に悪絡みして来た先輩2人をフルボッコにしたとか、とにかく好印象は今のない。
そんなやつが、真里と結友と手を組んだなんて言う、私にとって死ぬほど最悪な情報が耳に届く。




「......っ」
そこでようやくはっ。と我に帰る。
「(いじめが始まったのはここからかなぁ。)」
しばらくぼーっとしていたけど、何分くらい経ったんだろう。
なんでも良いから取り敢えず、この地獄すぎる休み時間が終わってほしい。
そんなことを思いながら時計を見る。
まだまだ時間があったから、
少しでも"可哀想な人"に見えないように、訳もなく筆箱の中を漁ったり、訳もなく机の中を見たりして時間を潰した。
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