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ダークるいくん降臨

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昨日、リーダーのとおる君から連絡があって、今日は、メンバー4人全員での配信ということを聞かされていた。
夜中まで漫画を読んでて、少しだけ寝坊してしまった俺は、駆け足になっていた…
すると、俺のリュックに付けられた、るい君のぬいキーがリズミカルに揺れている振動を背中に感じて…
つい、意識がそっちにいってしまう。
メンバーに見られる可能性があるので、外した方が良いのかな…少し悩んだが、せっかくるい君が付けてくれた物だから…と、羞恥心と勿体無さを天秤に、かけたが…
結局外せなかった。
とりあえず、スタジオへと急いだ。


配信の内容は、ゲームの実況って事らしいんだけど…
ギリギリの時間になった俺は、額の汗を手の甲で拭き、息を整えながら…
そっと、スタジオの扉を開けた。
既に3人のメンバーは、揃っているのが目に入って来た。

ゲームが得意な2人…るい君ととおる君は、今日の配信について、熱心に話し込んでるみたいだったので
「ギリギリになって、ごめんねぇ~」
と俺は小さく言うと、1人でソファに座って、ボーッとしてるミナミ君の横にスっと腰を降ろす。

るい君は、いつもの柔らかな表情とは違い、少しだけ眉間に皺を寄せていて…
腕を組み、真剣な表情でとおる君と話す姿は、気高く凛々しくて…思わず、見蕩れていた。
目はそちらを見たまま…横のとおる君に声をかける。
「今日、何のゲームやるのかなぁ?」
「さぁ~何だろ…少しは負けないヤツが良いんだけどな~バトル系は、俺とリヒト、だいたい、いつも負けるじゃん(笑)」
クククッと笑いながら、俺の肩をポンポンと叩いてくる。

「まぁ、ボチボチがんばろうぜっ!」
俺は、やっとるい君から目線を外し、笑いながら、ミナミ君の肩を叩き返し、ゲーム苦手組の俺らは、互いを励ましあっていた。

そろそろと、目を上げ、再びるい君を見ると…
瞬間、るい君とバチりと目が合った。
ヤバっ、見てたのがバレたかも…と思い、俺は焦ったが、るい君は、いつも通りニコニコと俺の方に近付いてきた。
するといきなり
「ハイハイ~どもども~」
と座っている俺とミナミ君の間に割り込み、グイグイと俺達を左右へ押し、無理やり真ん中に陣取り、ドンと座った。

「ちょっ、なんっ!割り込みっ!?るい君~なんなんだよぉ~」
と、講義の声をミナミ君が上げている。
「いや、今日はね!ペア組んで、対戦なんでね!俺とリヒト、ミナミ君ととおる君ね。その方が力量の差が公平でしょ?」
「ま、まぁ、そりゃ…俺とリヒトだと…負け確だからな…それにしても…」
とブツブツ言うミナミ君とは対照的に、でしょでしょ~と嬉しそうに頷くるい君を見て…
なんか可愛いな…と思ったのも束の間、ぐりんと俺の方を向いて、俺の右手を両手でギュッと囲みこんだ…
俺の心臓は、ビクンと跳ねる
「絶対負けれないから!これ!晩御飯かかってるからっ」
と可愛くウインクされる。

さすが、金の亡者…るい君…
なるほど…
さっきの、るい君の真剣な表情は…
多分…晩御飯を賭けるという密談で…そういう事か…

「普通にやったらつまんないから、負けた方が、買った方に、オゴリだからな~!」
とおる君からも、宣言される。
まぁ、良いでしょ~その方が盛り上がるしなぁ~と、俺もミナミ君も納得する。


配信がスタートする。
「はい!どうも、こんにちは~今日は!ペアに別れて~マリオテニスやります!負けた方は、勝った方に晩御飯オゴリです!」
おおおー!と言うミナミ君とるい君に合わせて、俺も、おおっ!と続く。
そうか、テニスかぁ~
まぁ、対戦ゲームよりかは、なんとかなるかなぁ…
足でまといにならないようにしなきゃなぁ。

一方のミナミ君は、ゲームが苦手な割に、ノリが良いので…
「絶対勝つ!俺は、負けない!」と叫んでは、とおる君からの失笑を買っている。

俺の手の甲を…指先で、トントンと、るい君が叩いて来た。
んっ?と、顔を向けると…
俺の耳に顔を寄せてくる。
「がんばろうねっ!僕に任せていてくれたら大丈夫だからねっ!安心して!」
ボソボソと耳元で囁かれるのは、普通の言葉なのに、俺には異様に甘く感じられる言葉に…
必死でコクコクと返事をする。

「なんだよ~2人してコソコソ話かぁ~なんか作戦でもあんのか?」
とおる君がニヤニヤしながら言ってくる…
なんか、若干…とおる君には、俺のるい君への想いを気付かれてるんじゃないか…と思う時がある。
みんなを良く見ていて、しかも人一倍観察力のある、とおる君には、隠せて無いような…気もしてる。
かと言って、自分から言う訳にもいかないので…まぁ、現状このままなんだけど…


試合開始~!
弾むようなメロディと共に、ゲームが開始される。 
ボールが右、左に、やってくると…どうしても身体は動いてしまうので…
度々…るい君の腕に触れてしまう…
不意の接触にドキドキしてしまう俺は、全然ゲームに集中出来ていない。
しかも、なぜか…
点が入りリプレイが流される度に…るい君が、俺の腰を抱き寄せたりするもんだから。
ギョッとして、るい君を見るんだけど…「ん?」って、逆に聞かれてしまい。
何で、腰抱きしてくるの?とは聞けなくて。
真っ赤になりながら…
「何でもないっ」
て答える。
さらに、勝利のハイタッチは、ゲームが進む事に、ギュウッと抱き締められる行為へと進した。
たまに、耳元で「リヒト、がんばったね…」などと、言われるもんだから…
俺のドキドキは、最高潮に達する。

こんなにスキンシップ好きだったかなぁ…と疑問も一瞬出てくるが、繰り返される触れ合いに、俺は、平常心を保つ事で精一杯になる。
ゲームの勝敗なんかよりも、スキンシップに対する自分の反応に、疲弊してくる。
あと1つ決めれば…
俺達の勝ちってとこまできていて。
るい君の瞳は……かなりマジだ。晩御飯がかかっているから、瞳には、勝利!って、2文字が書いてある。
ここは…勝たないと…後で恨まれそうだ。

「るい~勝ったら、リヒトが、チュウしてくれるって~」
と、イキナリ、とおる君が言ってきた。
は?絶対、コレ動揺させる作戦だ!
「そんなの!しないよ!なんの褒美にもならないしっ!」
とおる君を睨み、強く反論すると…
「え?くれないの?僕、それ目当てに、めっちゃがんばるよ?」
るい君はニコニコと答える
「ほらほらぁ~るいは欲しいって~」
ミナミ君まで乗ってくる。

「そんなゲームじゃなかったでしょ?負けた方が、オゴリでしょ?なんで、俺だけ罰ゲームなん?」
俺は猛反対する
「罰ゲーム…?なるほど…。いや!だって、負けた方は、オゴリだぜ?良し!勝利者は、チュウをしてもろう!決定!リーダーの決定!異論は認めない!もちろん、俺らが勝ったら、俺がぶちゅって、ミナミにしたるし~!なぁ~ミナミ~」
「もちのろんだぜ!なぁ~とおる君っ!」
勝ったらチュウしないといけなくて、負けたら晩御飯おごりって、よく考えたら、どっちもどっちな、おかしな話なんだけど、なんか妙なテンションで、ノリノリの2人に怖くて異論出来ない。
負けそうだから、とおる君は、ヤケッパチの…展開に変えてきたのか?相変わらず読めない人だ。
るい君は、そもそも、勝利しか見えてないし…
えーどうしよ~と、焦りウネくね考えてるのは…俺だけか。


そして…
るい君が、バシッと決めてしまった。
そう、勝利です。
るい君へのチュウ決定…
晩御飯ゴチは、マジ嬉しいけど…

しかも、俺からチュウだろ…勘弁してくれよ…
えーと、うーんと…と唸っていると。
「イエーイ!勝利者へ、チュウを!勝利のチュウを!」
奢らないといけな2人は、もう、そっちも何かヤレ的な拍手と共に、とおる君とミナミ君が、ガンガンに、はやし立ててくる。

その上…
るい君は、すでに…目を瞑り…俺を待ってる。
え?ヤバっ…このキス顔を…写メ撮りたい!なんて思ったけど、そんな事考えてる場合じゃない!と、考えを打ち消した俺。
こんな綺麗な顔にチュウかぁ。…と思うと、更に…感情が昂って、なかなか行動に移せない…
モジモジしてる俺に、
「もう!ホッペでいいから!ハイハイ!サクッとやって、ご飯行こうぜ!」
とおる君が言う。
それを聞いて、るい君は、少し斜めになり、ホッペを差し出してきた。

まぁ、ホッペなら…ライブとかで…
パフォーマンスとして、何度かやってるし…と、少しだけホッとすると、一気に心を決め、ギュッと目を閉じると、るい君の頬へと近付いた…
あと数cmで…ホッペに…

ムニッ。
ムニッ?んん?え?
なんか…、柔らかい?
そろそろと目を開くと…瞼を薄く開き俺を見ている、るい君の2つの瞳と視線がカチ合う。
なんと、るい君は…向きを正面に戻していた…
真っ直ぐに進んでいた俺の唇と、るい君の唇は…見事にくっ付いていた。

「おおおおーーーー!良いね!最高!ではっ!じゃ、みんな、またね~バイバイ~」
「バイバイ~」
と、後ろで、とおる君とミナミ君の配信の終わりを告げる声が聞こえた。


ドンッと、るい君を両手で押す。口を手で覆いながら…真っ赤な顔を少しでも隠したい衝動に駆られ、俯く俺。

「やった!!僕っ、最高っの!ご褒美のキス頂きましたっ!!」
俺が、ワナワナと震えているのに、
満面の笑みで、可愛く言い放って来る、るい君。
「どうすんのっ!?唇にキスなんてっ!俺、るい君のファンから殺されるよぅ…」
キス…そう、キスだよ!しかも、配信で…沢山のファンが観てる…
駆け巡る考えに、一瞬で、事の重大さに…冷静になり、スっと火照りが消えると…逆にガクガクと震えがくる。

「大丈夫じゃない?多分。むしろ…喜んでる子が大多数だよ?」
るい君は、顔を傾げてニコッと笑顔で言ってくる。

「そうそう!これは、最高バズるわ~むしろ、顔の角度変えて唇を奪ったのは、るい君だからねぇ~罪人は…るい君の方だよ…なー?逆にリヒトファンにシバかれるぞ」
うんうんと、他の2人も頷いてて…

そういう事では…無い。
やってしまった感しか無く、頭を抱える俺に…トントンと肩を叩かれる。
ん?と、振り向くと、るい君が…暗く笑ってて…
俺の耳元に、るい君にしては、かなり珍しい低音ボイスで、ボソッと呟く
「リヒトさ…さっき、ミナミとイチャイチャしてたでしょ…なんか腹立ったからさぁ…唇にしてやったんだよ。でも、僕は、もっと濃厚なヤツでも良かったんだよ?この間…したような…さぁ。フフッ」
え?やっ、やっぱり!覚えてたんだ!酔ってキスした…あの事を!あの…濃厚なキスを!
てか、俺…ミナミ君と…イチャイチャなんてしてないし?
あ?…え、もしかして、さっき、励まし合いの肩を叩きあってた…ヤツ?

ひぃーーーっと、逃げ腰になる俺に、近付いてきて、手首をグッと掴まれる。
るい君は、先程の低音ボイスとは、打って変わって…可愛い…いつもの声で
「とおるくーん、んじゃ、リヒトと、ちょっとカバン取ってくるからねっ!待っててねぇ~」
と、俺の手をギュッと握ると…
そのまま部屋から連れ出された。
なんだか、急くようにグイグイと引かれる手。離れないように、歩幅が大きなるい君に、必死で着いて行こうと、脚をパタパタと動かす。

早くご飯に行きたいのかなぁ?
そんなにお腹空いてる?
単純な俺は、目の前の行動にすぐ振り回される。
部屋に入ると、バタン…と扉の閉まる音が部屋に響いた。
「そんなにお腹減ってるの?」
と、俺はクスクスと笑いながら、荷物を取りに、リュックを置いてある方へ向かいながら、握られている手を離そうとしたが…全く離して貰えず…
急にグイッと引かれたので、バランスを崩した俺は、そのまま、両手をバンザイするように、ソファに倒れた。
何が起きたか、一瞬分からず…
目をパチパチとさせていると…
俺の上から被さるように…るい君が…ソファにドサッと片膝をつきながら、俺の両手はバンザイしたまま、るい君の両手で抑えられ…
完全に、ソファに縫い止められていた。

またもや…低音ボイスで
「ファンサ…欲しいでしょ?君、僕のぬいキー付けてるし…僕のファンでしょ?」
と呟かれて…
「えっ?いや…え?」
状況が上手く飲み込めない俺に、
「唇と口…どっちがいい?」
ん?ファンサ?
唇と?口??
急に聞かれた問いに、頭の回転が完全に停止してる俺の反応は鈍く。テンポ遅れで脳が動く…あれ?それって、同じ場所じゃね??と、慌てて答えようと
「同じ…んん!」
俺が言い終わらない内に、
るい君は、ニヤリと笑うと、イキナリ…俺の唇をペロリと舐めてきた。
俺は、唇をギュッと、一文字に閉じたけど、もう既に…俺の口は…るい君の口でガッツリ塞がれてしまっていて
「んんっ!」
ギュッと閉じた俺の唇が、尖らせた舌の先でツンツンとつつかれる…
これ、開けろ…って合図なのか?

涙目になる俺の反応を愉しむように…
口端からは彼の指が侵入すると…いとも簡単に、薄く…唇は開いてしまった。
舌が挿れられると…シュッと指は引き抜かれ…舌を噛むことなんて出来ない俺は、閉じる事の出来なくなった唇を開いたまま…
追われる舌から逃げていた…
身体をズラそうと、身を捩ったけど、完全に抑えられていて、全く身動きが取れない。

ジリジリと動いていると、縫い止められていた手からは重みが消え、ふっと軽くなったと思ったら、今度は、彼のその両手で両方の耳を塞がれた。
するとどうだ……
口腔内を滑る舌…クチュクチュという卑猥な音が、脳内に止めどなく…こだましている。
音の抜ける場所が塞がれただけで、こんな事になるんだ…と発見すると共に…
その音に、一層羞恥心が煽られ…
溺れてしまいそうになる。

「あっ…んっ、んぅっ」
自分から発したとは思えない程の甘く響く声に…頭の芯が痺れる。
気付いたら…俺の方から舌を差し出し…るい君の甘い舌を必死に追い…
ジュルジュルと響く脳内の音に…どこまでも惚けてしまっていた。
懸命に俺が追いかけ始めた途端に…
唇は、突然離れ、意地悪く、スっと逃げられた…

「リヒト、上手だよ…」
俺の口端から零れる唾液を人差し指ですくうと、るい君はそのまま、その指を舌で舐め上げる。
満足気に呟かれた言葉。
苦く笑うその姿は…今まで見てきた、るい君とは、全く違っていて…
ダークるい君が…降臨してしまった…と頭の片隅で思った。

キスからの熱が収まらないまま…
るい君の唇から目が離せずに…完全に惚けている俺に
「なんて顔してるの?煽ってるわけ?」
顔を歪めながら言うと、イキナリ、俺の襟元をグイと開く…
「いつも…ここ、開きすぎだから……ダメだな…もう、お仕置だね」
と、そのまま…首筋に舌を這わせてきて…
俺は、もう、抵抗する気は全く失せてしまっていて…
少しだけ…ほんとに少しだけ…
実は、もっとして欲しくなってて…
首筋に執拗に這う舌と、時々…鈍く走る痛みに…身体がビクビク跳ねた。
甘い痛みが走る度…欲望の淵へと、引き摺られそうになりながら、口から零れそうになる声を辛うじて抑え込んでていたけど…
堪えきれず「あ、んんっ!」と出てしまった声と、ドンドン!と、部屋の扉が叩かれる音が重なった。

驚きに、2人の動きが一瞬止まった。

「まだかぁ?おーい!もう行くぞ?」
とおる君の声だ。
チッって…るい君が舌打ちした。
え?舌打ちっ?るい君が?って、驚きながらも…

「いっ、今出る!」
俺は、口元に残る唾液の跡を、グイッと拭うと…
リュックを手に持ち、急いで扉を開けた。
ものすごく驚いた顔のとおる君と目が合う…
あれ?珍しいな…こんな顔、初めてかも。
しかも、その直後、若干、顔を赤らめながら…早口に言ってきた
「リヒト…ちょ、あっ!ちょっと、ボタン閉めなっ!…なっ?」
と、顔を手で覆いながら、俺の胸元を指差す…
ん?と下を向いてみる…と。
え?鎖骨の下あたりに…クッキリと、内出血の…痕。
これは、赤い華とも言われる…、キ、キスマーク?
慌てて、ボタンを1番上まで留める。

「遅いよぅ~行こうよ~」
と、ミナミ君が駆けてくる。
良かった…
ミナト君には見られず済んだ…けど。
俺は振り向いて、キッと、るい君を睨むと…
「何?なにぃ?どうして、ボタン閉めたのぉ?熱くない?」
なんて、いつもの可愛い~ぃ声で、ボタンに手を掛けてくる。
分かってる癖に!!
「ちょっ!もう、イイからっ!ごはん行くよ!」
慌てる俺を見て…ニヤニヤしてる…
絶対!確信犯!楽しんでる。

明日には、消えるのかなぁ…これ。
とか思いながら…
とおる君とミナミ君の後を追った。
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