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ライブ最終日、まさかの!

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ライブ最終日まで、SNS上を席巻したのはもちろん…
楽曲の振り付けにキスシーンが入った…あのバラード曲。
すでにSOLD OUTだったチケットは、正にプレミアムチケットだと、ファンの間で言われたようだ。
ファンからクレームが来るどころか、今回のライブツアーは、異様な盛り上がりを見せていた。

とおる君とミナミ君は、大人っぽいキス、俺とるい君とは爽やかなキス。
ライブは、もちろん写メ禁止だから、皆が目に焼き付けようと、曲のイントロがかかるとライブ会場とは思えない程、物凄く静まり返る会場。
そして、いざキスが行われると、泣き叫ぶような黄色い歓声が会場を大きく揺らす。
他のグループでは、そこまでの事はしないから、ハグはあっても…
唇にキスなどしない。

変わり者の社長からは
「体を張って良くやった!」
と芸人みたいな褒められ方をされ、金一封のボーナスが出たくらいだ。

「ミナミ君は嫌じゃないの?」
一応、聞いてみる。
とおる君とミナミ君は、確かに仲良しだけど、それと唇を合わせるのは、また意味が違うから…
「俺?ん~、ちょっと新しい扉が開いちゃったかもしんない…とおる君、めっちゃキス上手いよ?今度交代してみる?」
いや、それはいいよ…と断る前に、グイッ後ろから抱きしめられた
「ダメ!リヒトの相手は僕って決まってんの!」 
るい君が、猛反対してくる。
それは、ちょっと嬉しいけど、やっぱり、みんなの前でキスするのは、すごく緊張する。

振り付けだと思い込もうとするけど、いざ、その場面が来ると、俺はガチガチだ。
それがまた、可愛い…とか、ファンの子達からは言われてるらしいけど、情けない。
るい君は、普段は俺と同様の可愛いいキャラなのに、キスを決める時だけは、めちゃくちゃ王子様感を出していて、それもまたファンからはギャップ萌えだと…かなり話題になっていた。

しかもだ!
昨日の最終日、なんとるい君は、深いヤツをしてきたのだ。
今思い出しても、ドキドキしてしまう。

毎回、キスの場面は、観客へと見せつけるようにしていたのに、昨日だけは、観客席に背を向けたるい君から
「最終日だから…」
とボソリと耳元で低く言われ、最終日だから、なんだ?と思っていた、その直後だった…
唇が重なり、直ぐに離れる予定が、ニュルと入ってきた柔らかなモノ、その甘い舌を突然味わう事になった。
まさかの、ステージ上でだ!

拍手と共に「見えないーーー!」とあちらこちらから、声がかかると、スルリと引き抜かれた舌。
正面に向き直ったるい君は、客席へと投げキッスした後、俺の身体を横向きにした。
その後、ファンに見せつけるように、俺にチュッと軽いキス。
拍手と歓声が起こると、唖然とした俺を置いて、るい君が歌い始めた。
シレッとしてるのが、最高に腹が立った。
全てが、るい君の思いのままなのだから…

もちろんライブ直後にクレームを入れたけど
「ん?僕~?舌なんか入れたっけ?えー、必死だったから、全く覚えてないなぁ」
なんて言いやがる。絶対に確信犯だ。
ステージ上で、アイドル同士が、ディープキスなんて、聞いた事無い。
事故も事故、大事故だ…
隣で聞いていたとおる君は
「ほら、言ったろ?るいは、ムッツリだからって…」
おつかれ…って、肩をポンと叩かれた。ニヤけたその顔は、横から俺らの行為を見てたんだと分かった。
それなら、止めてくれよリーダー!と思ったのに。
極めつけの、とおる君の言葉が
「グループ内恋愛は、禁止じゃないから(笑)」
「とおる君まで?それ言う?!」
「え、誰に言われたの?」
若干分かってて聞いてくるリーダーに、逆に、スキャンダルとか心配じゃないのかと思って聞いてみる
「いや、それはもう、良いとしてさ。でもさ!週刊誌とかで変な事を書かれて叩かれたら!俺ら終わりだよ?」
「あー、それは、るいがさせないと思う、アイツ、ただの可愛いキャラじゃない。あー見えて、かなり賢い男よ?社長も、食わせもんだし…まぁ大丈夫!心配すんな!」 
いやいや、心配しか無いんですけど…
ていうか、もう、とおる君の中では、俺とるい君が、恋人関係だと思ってるし…
そんな事は無いのに。

まだ、確実な告白も受けて無ければ、答えても無い…
もちろん、身体の関係も無い。
そもそも、男同士って…どうやってやんだよ?
高校生になってすぐ、この芸能界に入った俺も、一応は彼女と呼ばれる人は居たし、付き合った人数は合計二人。
とにかく売れる事に必死だったし、おざなりにされた彼女は、すぐに去っていった。
それをさして寂しいとも思わなかったのは、今思うと、いつもそばに…るい君が居たから。
アイドルの活動は、部活動の延長みたいな感じで楽しくて充実していたし、るい君の顔が、異次元レベルに綺麗過ぎて…彼女よりも美しい彼を見てしまい、申し訳ないが、彼女への興味が減ってしまったのは事実。
そもそも、あんまり性欲が無いというか…エッチな事がしたい!とかならなくて、数回の性行為は、義務感に駆られた物で…自分で言うのもなんだけど…所謂、草食男子だと思う。
るい君は、一見すると草食に見えるが、ちょっと違うのかも…って最近は思う。
見え隠れする雄の匂いは、とおる君やミナミ君と同じ分類かもしれない。


次のツアーまでは、また期間が空くし、そもそも、あのバラード曲をライブの構成に入れるかどうかは、まだ未定だし。
そう思うと…ちょっぴりだけ、残念な気がした…俺。
みんなの前でキスするのは恥ずかしいのに、困ったことに、心の奥底では、るい君と俺の仲良しぶりをみんなにアピールしたい…なんて思ってしまってるんだよなぁ。
自分を戒めたいのに、本心が漏れ出そうになる…悶々とする俺だった。


今日は、ツアーお疲れ様兼、反省会という名の…ただの呑み会。
るい君の家に集まったメンバーの俺達。
ミナミ君ととおる君は、大きなテレビ画面に映る先日のライブ映像を観ながら、ぐびぐびとお酒のペースを上げている。
表には出さないが、見直しとか、次回の為に録画はされてるから、その画像を借りてきたらしい。

俺はあんまりお酒は得意じゃないから…持ってきた炭酸ジュースを飲んでいた。
テーブルには、持ち寄った食べ物と、るい君お手製の唐揚げが乗っている。
この唐揚げが、めちゃくちゃ美味い、店出した方が良いんじゃないかって程。
料理好きだと言う彼は、時々、色んな食べ物をもてなしてくれるが、本当に何でも出来てしまうのは、尊敬しかない。

バラード曲が流れ始める…これも観るのかよ…と思っていると、とおる君とミナミ君のキスシーンが流れてくる。
歌とダンスの流れのまま、サラリと行われたキスは、不自然無く決まってて、大きな歓声は当然だった。
一方の俺達のターンは、ガチガチの俺が固まっていて、イマイチ…歓声は、当然、前の二人より劣る。
ちょっぴり悔しい。

「リヒト…めっちゃ硬いなぁ…可愛いけどさぁ。さすがは、チェリーだな」
ミナミ君がディスってくる。
ムカッとなった俺は思わず反論した
「はぁ?俺、チェリー違うし!」
「「ウソ!!!」」
驚き顔の、とおる君とミナミ君がハモる。
るい君は、綺麗な顔を歪ませ、若干怒ってるみたいにも見えた
「本当なの?リヒト…」
るい君からの圧力がかかった声に、言ってしまった事を後悔した
「え?あ…まぁ、もちろん、あるよ…彼女だって居たし」
俯きつつ答えた俺。何故か、るい君の方を見れない。

「マジかぁ~やんなぁ~見直したぜ!リヒト!」
完全沈黙のるい君とは違い、ほろ酔いのミナミ君が笑いながら俺の肩を叩いてくる
「俺も、未経験だと決め込んでたわ…」
とおる君まで、そんな事言ってくる
「もう!この話は終わり!!ほら、ライブの反省しよ?」
俺は無理やりに話を終結させた。

一通り映像を観て、ここは…変えようとか、色々意見を出し合った。
ただ、かなりお酒が入ってるので、これをちゃんと明日まで覚えているのか、怪しいのは、ミナミ君andとおる君。
大人組二人と変わらず呑んでるのに、全く酔った感じのしないるい君。
やっぱり、お酒に強い…っていうのは、本当だったんだ。

「先にお風呂入っておいでよ」
るい君は、さっきまで、怖い顔をしていたけど、やっと機嫌が戻ったのか、ニコリとしてパジャマを渡してくる。
「俺ら呑んでるから~お構いなくぅ~」
なんて、ミナミ君が言うので、俺は、パジャマを受け取ると…バスルームへと向かった。

俺が風呂から出てくると…
カーペットの上には、泥酔したとおる君にミナミ君が、身体を絡めるようにして、寝てしまっていた。
床暖房が効いている上、毛足の長いフカフカ絨毯に、眠りの世界へと誘われ、撃沈した様子。
るい君が、二人にそっと布団を掛けてあげているところだった。

「リヒト、髪乾かしたげる、座って」
声がかかり、いつものように、ソファにちょこりと座ると、るい君がドライヤーを持って来て、スイッチを入れる。
「お願いしま~す」と言いながら、ふと顔を上げ、テレビ画面へと視線を移したら…
画面いっぱいに俺とるい君のキスシーンが、しかも静止画で映されていた。
え?は?何これ?
思わず、寝ている二人を見た。
ドライヤーの音でも起きないので、ホッとする。
こんな大画面で…このシーン。
たまたま録画を止めたのがここなのか、どうかなんて聞けず…
チラチラとテレビ画面と下に広がるフワフワ絨毯を交互に見る。
ドライヤーの音が止まる。

「ねぇ、練習しない?大人組に声援で負けたの悔しくない?」
後ろから、低い声が落ちる。
何の事かは、聞かなくても分かった。
目の前にある、この場面についてだろう。
これって…拒否出来ない流れ?
俺は良いよとも、ダメとも言わずに、いたら…テーブルに三脚とスマホをセットされ、ギョッとして聞いた
「え、撮るの?」  
「撮らないと、どう見えてるか、分からないだろ?」 
なんて、ごもっともな事を言われ…
始まってしまった…キスの練習。
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