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本編9話(体育祭編 休憩〜玉入れ)
高瀬くんの体育祭②
そんな親切な僕の厚意で中庭まで向かった僕と尾形であったが、探し始めてものの数分で「ジャージのポケットに入ってた」だのと言い出したときには、ほとほと呆れ果てた。
「お前なぁ……」
「見つかってよかった。結んで、瑞葵」
「ちょっとは申し訳なさそうな顔ぐらいしろよ!」
「ごめんって」
「ったく、世話の焼ける……将来お前のお嫁さんになる子はさぞかし苦労するんだろうな!」
ベンチに腰掛けさせた尾形の真後ろに立ってハチマキを結んでやりながら何の気なしに僕は言ったけれど、俄かに訪れた沈黙に、余計なことを口走ったと悟る。花壇や校舎を隔てた向こうのグラウンドでは耳が割れんばかりの歓声が轟いているのに、此処だけ異空間のように静かだ。ハチマキを結う手が汗ばんでくる。
「……ほら、できたぞ」
「……どうも」
嫌がらせのつもりで丹羽とお揃いのリボン結びにしてやったが、何も知らない尾形は嬉しげに横髪に触れてハチマキの感触を確かめており、次第にぶんぶんと忙しなく振られる尻尾の幻覚まで見えてきた。座れと言わんばかりに膝の上をぽんぽんしながら見上げてくるのを、誰がそんなところに座るか、と刃向かうように無視してベンチの隣のスペースに腰を下ろす。僕がわざわざ握り拳三つ分ほどは距離を保って座ったのに、秒で肩が触れるほどに詰めてきた尾形は、おやつを待つ犬のような面持ちでこちらを見つめてきた。
「……なあ、さっきのって、僕は苦労してもいいよ♡っていう逆プロポーズ?」
「っ、んなわけないだろ!蒸し返すな!」
「けど、俺の気持ち知ってて言ったわけじゃん」
「おっ……まえのきもちとか、わすれてたし……」
「はぁ!?」
「そもそも真に受けてないからな!最初から!」
慣れない話題に熱くなってきた頬をぷいと逸らす。修学旅行での告白のことだけれど、考えた結果、あまり気に留めないことにした。否定するつもりはないし、嘘ではないのかもしれないとは思っている、尾形が僕を好きだってこと。だけど、人の気持ちなんてのは移ろうものだし、気まぐれな尾形の言うことだ、気にするだけ馬鹿らしかったと思う日がきっと来るだろう。そんなわけで僕なりに考えた末の結論ではあるのだが、お気に召さなかったのか、尾形は無言で僕のジャージに手を掛けてファスナーを一気に下ろした。
「なっ、なにするんだっ!!」
「俺の気持ち、瑞葵が全然分かってないから分からせようと思って」
「西田に言われたばっかだろ!このレイパー!」
「レイプはしないよ?どうせ瑞葵がすぐちんぽに負けて最後は自分からおねだりして和姦になるし」
「っ、やだぁっ!分かった!分かったからっ!」
「……なにが分かったんだよ。俺と二人きりなのに、こんな丹羽の名前書かれたジャージなんか着て」
「丹羽に着ろって言われたんだから仕方ないだろ!」
「じゃあ、俺に脱げって言われたら脱いで?早く」
「ううっ……脱げばいいんだろ、脱げば……」
気圧された僕はおずおずとジャージを脱いで、尾形に向き直った。不思議と秋風が肌寒く感じないのは、陽が出ているからか、これから起こりうることを予感しているからか。大人しく言う事を聞く僕に気をよくしたらしい、据わっていた尾形の目には仄かな光が灯り、だらしない目線は真っ直ぐ胸元へと向けらける。
「お前なぁ……」
「見つかってよかった。結んで、瑞葵」
「ちょっとは申し訳なさそうな顔ぐらいしろよ!」
「ごめんって」
「ったく、世話の焼ける……将来お前のお嫁さんになる子はさぞかし苦労するんだろうな!」
ベンチに腰掛けさせた尾形の真後ろに立ってハチマキを結んでやりながら何の気なしに僕は言ったけれど、俄かに訪れた沈黙に、余計なことを口走ったと悟る。花壇や校舎を隔てた向こうのグラウンドでは耳が割れんばかりの歓声が轟いているのに、此処だけ異空間のように静かだ。ハチマキを結う手が汗ばんでくる。
「……ほら、できたぞ」
「……どうも」
嫌がらせのつもりで丹羽とお揃いのリボン結びにしてやったが、何も知らない尾形は嬉しげに横髪に触れてハチマキの感触を確かめており、次第にぶんぶんと忙しなく振られる尻尾の幻覚まで見えてきた。座れと言わんばかりに膝の上をぽんぽんしながら見上げてくるのを、誰がそんなところに座るか、と刃向かうように無視してベンチの隣のスペースに腰を下ろす。僕がわざわざ握り拳三つ分ほどは距離を保って座ったのに、秒で肩が触れるほどに詰めてきた尾形は、おやつを待つ犬のような面持ちでこちらを見つめてきた。
「……なあ、さっきのって、僕は苦労してもいいよ♡っていう逆プロポーズ?」
「っ、んなわけないだろ!蒸し返すな!」
「けど、俺の気持ち知ってて言ったわけじゃん」
「おっ……まえのきもちとか、わすれてたし……」
「はぁ!?」
「そもそも真に受けてないからな!最初から!」
慣れない話題に熱くなってきた頬をぷいと逸らす。修学旅行での告白のことだけれど、考えた結果、あまり気に留めないことにした。否定するつもりはないし、嘘ではないのかもしれないとは思っている、尾形が僕を好きだってこと。だけど、人の気持ちなんてのは移ろうものだし、気まぐれな尾形の言うことだ、気にするだけ馬鹿らしかったと思う日がきっと来るだろう。そんなわけで僕なりに考えた末の結論ではあるのだが、お気に召さなかったのか、尾形は無言で僕のジャージに手を掛けてファスナーを一気に下ろした。
「なっ、なにするんだっ!!」
「俺の気持ち、瑞葵が全然分かってないから分からせようと思って」
「西田に言われたばっかだろ!このレイパー!」
「レイプはしないよ?どうせ瑞葵がすぐちんぽに負けて最後は自分からおねだりして和姦になるし」
「っ、やだぁっ!分かった!分かったからっ!」
「……なにが分かったんだよ。俺と二人きりなのに、こんな丹羽の名前書かれたジャージなんか着て」
「丹羽に着ろって言われたんだから仕方ないだろ!」
「じゃあ、俺に脱げって言われたら脱いで?早く」
「ううっ……脱げばいいんだろ、脱げば……」
気圧された僕はおずおずとジャージを脱いで、尾形に向き直った。不思議と秋風が肌寒く感じないのは、陽が出ているからか、これから起こりうることを予感しているからか。大人しく言う事を聞く僕に気をよくしたらしい、据わっていた尾形の目には仄かな光が灯り、だらしない目線は真っ直ぐ胸元へと向けらける。
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