勇者ライフ!

わかばひいらぎ

文字の大きさ
39 / 133
日常編(単発)

復活のテレビレポーター

しおりを挟む
 ある日、クライブがいつもの様に稽古休みの時間を使ってニュース番組を見ていた。
『……というわけで、以上″足の小指特集″でした』
「俺が観る前に何やってたんだよ」
『続いては、帰ってきましたあのコーナー。今回は、事故なくおわれるのでしょうか』
 クライブは、この一文に一抹の不安を抱いた。『帰ってきた』と『事故』という言葉からあのコーナーしか連想できない。
『帰ってきた、″素人レポーター、町を歩くver 2″!今回は頭のおかしい奴は迎えていないと思っているのでご安心を』
「フーリの奴頭おかしい判定食らってやんの」
 今思えば、なぜ公共の電波で一般人のことを馬鹿にしているのか気になってしょうがない。
『そして、第一回放送に選ばれた栄えある人物は……ドコドコドコ……デープ国のお金持ち、マルセルさんです!』
『どうもー!』
 そこには、いつも近くで見ているあのマルセルがいた。
「えー!流れ的になんか想像出来てたけどマジか」
 前回と同じようにクライブはテレビに釘付けになる。
『さて、今回もデープ国最長の歴史を持つ『虎胃伝ドライデン』に訪れたようです。前回と同じ過ちを繰り返さないようにスタッフは細心の注意を払っております』
「めっちゃトラウマになってるじゃん」
 そして、スタジオのコールに合わせてVTRが映し出される。前と同じ虎胃伝だ。しかし、頑張って挨拶しているマルセルの周りに怖い顔したスーツのゴリゴリマッチョマンが二人いる。恐らく変なことが出来ないようにと監視役でも付けられたのだろう。
「ここまでするならやらなきゃいいのに」
 思わず本音がこぼれた。
(スタッフ)『ではマルセルさん。行きましょう』
 マルセルがドアを開けた先には前と同じボロい店内が映し出される。しかし、店主だけは前と同じ人ではなくもっと若い男性になっている。
『あれ?この前のおじいちゃんじゃないの?』
『実は、マスターは……旅行先のファリア国で側溝にハマってしまって帰ってこられないのです』
(スタッフ)『それで今は息子さんのあなたが?』
『あ、僕虎胃伝の常連の息子の甥です』
「初っ端から複雑すぎだろ色々」
 複雑な家族(?)関係だ。ちなみに臨時マスターは虎胃伝に行ったことが無いらしい。もう訳が分からないよ。
『じゃあ料理の方は?』
『マニュアル通りに具材を混ぜてるだけですね』
『味は?』
『最低ですね』
『じゃあ不味いってこと?』
『端的に言えば』
『わぁー!めっちゃ食べたくない!スタッフさん食べて!』
(スタッフ)『そういうのは嫌だなぁ……。もし食べられなかったら黒服にあげてください』
『いいの?』
『御意』
『やったー!』
「黒服そのためにいるの?」
(スタッフ)『それでは注文の方を……』
『じゃあ白米のメロンソーダ漬けで』
(スタッフ)『待ってください!こんなきしょい料理頼まないでくださいよ!』
『だってなんか面白そうなんだもん』
(スタッフ)『ええい黙れ!行け黒服A、この白髪野郎を殴って黙らせるのだ』
『御意』
「どんな世界観だよ」
 黒服の存在が敵なのか味方なのかいまいち理解できない。そして黒服はスタッフに命令されたように殴ろうとした。しかし、周知の通りマルセルは魔法使いなので一瞬のうちに黒服は服だけを燃やされた。
『あはは!これじゃあ黒服じゃなくて黒焦げだね』
「なに上手いこと言ってんだよ」
 服をの脱がされた黒服は別の覆面スタッフによって退場させられた。その方向からは「この役立たずが!」と罵声が聞こえてくる。
「だからどんな世界観なんだよ」
 多分このテレビ局ヤクザと繋がってる。
 そんなことはさておき、カメラは厨房を写している。前回と違い少し小汚くなった感じだ。
『えっと、メロンソーダ漬けですよね』
『うん』
『それじゃあメロンソーダをご飯にかけるだけでできますよ』
『温めないの?』
『温めたければ』
『じゃあ温めて!』
『わかりまし……あっ、コンロ壊れてんじゃんやる気失くしたわ。あー仕事やりたくね』
「意思弱っ!」
『じゃあ魔法で温めるから店員さん休んでていいよ』
『ありがとうございます』
 そう言って臨時マスターは冷蔵庫の中へと入っていった。
「バイトテロかよ」
 そしてマルセルは自分で鍋を温め、盛り付け、自分の席へと運んで行った。まるでセルフサービスだ。
『よーし、準備完了!』
 マルセルの目の前にはグツグツの煮えたぎった深緑色のご飯がある。パッと見は苔の生えたリゾットだ。
『それじゃあいただきます!』
 マルセルはスプーンで掬えるだけ米を掬った。そしてそれを口に運ぶ。何回か咀嚼したが特に変わった様子を見せない。
「こりゃひょっとして実は美味いとかか?」
(スタッフ)『お味の方は……?』
 スタッフが聞きたいことを聞いてくれた。
『味?くそ不味いよ?』
『え?』
『だってメロンソーダとご飯だよ?合うわけないじゃん馬鹿なの?』
『……』
『……』
『それでは、これにて第一回″素人レポーター、町を歩くver 2″は終了です。また次をお楽しみに~!』
 残念ながら第一回″素人レポーター、町を歩くver 2″は不穏な空気のまま終わった。当然クライブは今「観なきゃよかった」という念に駆られている。
『それではさっきまでのクソコーナーとはなんも関係ない臨時ニュースをお伝えします』
「早速クソコーナーって呼ばれてるし」
『先程、虎胃伝が放火されているという情報が入りました』
「関係なくねーじゃねぇか!因果関係丸出しだよ!」
 こうして、″素人レポーター、町を歩くver 2″は第三回で三十路OLの幽霊が写り込むという放送事故の末お蔵入りとなった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

巻き込まれた薬師の日常

白髭
ファンタジー
神に選ばれ、魔素の循環する界へと送り込まれたのは――現代の薬師。 剣も魔法も扱えない彼が憑依したのは、戦闘力ゼロの商人見習いの少年だった。 彼の武器は、知識と経験。商品を生み出し、人脈を築き、産業を広げていく。 「居場所を見つけたい」その願いが、やがて世界を変える力となる。 これは、一人の薬師が紡ぐ研究と開発、そして成長の物語。 【カクヨムでも掲載しています】 表紙は紹介文をもとに、ai【adobe firefly】で作成したものです。(参考程度に……)

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ダークファンタジー成り上がり譚。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

マカロニ
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

処理中です...