勇者ライフ!

わかばひいらぎ

文字の大きさ
71 / 133
日常編(単発)

浮気

しおりを挟む
 ある日、なんとヒナタは見てしまった。フーリが他の女と歩いている姿を!ということでなんか面白そうだから尾行することにした。

〈尾行開始から三十分〉
 近くの百均で鼻眼鏡を買い無事変装したヒナタがこそこそと尾行すると、二人はカフェに入っていった。ヒナタもそれとなく入店し店員の必死の案内を振り切ってフーリ達の横の席に座った。よりによって女の顔が見えないのが残念だが。耳を澄ますと横から会話が途切れ途切れに聞こえてくる。
「でさー、株がさー」
「僕のクローンがさー」
「答えは英語で言うとアンサー」
 よく聞くとこれは会話というよりフーリが謎の言動を繰り返しているだけのようだ。しかし、内容までは聞き取れないがそれに対して相手はちゃんと突っ込んでいるようだ。しばらく会話に耳をたてていると、フーリがコップと机にある結露してできた水を舐めようとしている。あれはそろそろ帰ろうという合図なのだ。それを見た相手はフーリの頭を鷲掴みして止め、台布巾で机を拭いた。どうやら気遣いのできる人らしい。
(この……私だって……)
 そう悔しがっている間に二人は会計を済ませて行ってしまった。ヒナタも急いで会計を済ませるため残っていたアイスコーヒーを無理やり飲み込むと完璧に気管に入ったが、ドタバタと咳き込みながら会計に行った。
「お、お客様……大丈夫ですか?」
「会計……会計を……」
「お会計……2FDフリードです……」
 それを聞きヒナタは乱雑に財布に手を突っ込みありったけの貨幣を突き出すと、「釣りはいらねぇ!」と豪快に言って出て行った。
「ご、ご利用ありがとうございました……」


〈尾行開始から一時間半〉
 ショッピングモールに入った二人を追いかけていたが、うねうねした構造に惑わされ見失ってしまった。
「もお……どこに行ったんだろ……!」
 ヒナタが焦りながら地図を見ていると突然後ろから誰かに話しかけられた。
「あれ?ヒナタ?何してるの?」
「リアン!あんたこそ何してんの!?」
「何って、僕はただ服買いに来ただけだよ。で、たまたまヒナタを見かけてさ。なんか焦ってたけどどうかしたの?」
「そう!フーリ見てない!?」
「フーリ?あぁ、さっき会ったよ。フードコートに居た」
「嘘!誰かと一緒に?」
「うん。水飲んでるだけだったから単なる休憩だろうけど」
「分かったありがと!行ってくる!」
「ちょっと待ってよ!話が全然見えなーーー」
「邪魔しないで……よ!」
「ぶっ!殴る癖治ってなーい!」
 話の全体像が見通せないリアンが話を聞くために引き止めたところ、そこは実力行使で押し通った。見事に仰向けに吹き飛ばされ鼻血を吹き出すリアンに目もくれずヒナタは走り去った。
 ぜいぜい言いながらフードコートに行くと、遠くにあるエスカレーターに乗って降りて行くフーリ達の姿が見えた。恐らく休憩を終えてしまったのだろう。
「あ!待て!」
 そうヒナタが急いで走ると、掃除をした後だった為床がツルツルになっており、案の定滑ってしまった。そして、滑って滑って行き着いた先は……。
「いらっしゃいませ~。ご注文はお決まりですか?」
 なんと、大手ハンバーガーショップだった。
「ポテトですかー?」
「まだ何も言ってない……っていうか、間違えて入っちゃって……」
「Sですかー?Mですかー?」
「だから!」
「お客様の胸はSサイズ見たいですねー」
「あぁん!?」
 ヒナタはまた拳で邪魔者を沈めると急いでエスカレーターに足を進めた。


〈尾行開始から二時間〉
 店の外に行くと、例の女と分かれたのか自販機を前に何を買おうか迷っているフーリの姿があった。いつもより少しだけ話しかけるのに躊躇ってしまったが、勇気をだして彼の肩を叩いた。
「ん?まさかアサシンの手先……んぐっ!?」
 意味不明なことを言いながら振り返ったフーリの胸ぐらをいつもより強く掴む。
「ヒ、ヒナタ!?」
「誰よあの女!何処の馬の骨よ!私という存在がありながら……何で……どうして……」
 思わず涙を浮かべながらフーリを問いただす。
「あぁあぁ待て待て。何かされてるみたいだな。ちゃんと説明してやるから胸ぐら掴んで前後にグワングワンするの止めてくんね?後頭部が壁に当たって痛いんだわ」
「説明ってなによ。言い訳なんて聞きたくないよ……」
「そもそもの話な、あいつはウィルバー容疑者って言うれっきとした男だ」
「待って、容疑者!?」
「被疑者でもいいぞ」
「そういう問題じゃないの!」
「まぁとにかく僕は一日女装癖男の逃走ルート確保に付き合っただけだ」
「よかった……よかった!浮気じゃなかった!」
「僕が浮気するわけないじゃん。とりあえずもう帰ろうぜ。家までなら送ってくよ」
 こうして、無事フーリの潔白が証明され二人は仲睦まじく帰るのであった。ちなみに逃走中であったウィルバー容疑者はフーリが暇つぶしに忍ばせた百個のGPSによって身柄を拘束された。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』 見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装… 俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。 突然の事で戸惑うクラスメート達… だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。 「またか…」 王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。 そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。 そして俺はというと…? 『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』 「それよりも不知火君は何を得たんだ?」 イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。 俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。 その場にいた者達は、俺の加護を見ると… 「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。 『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』 王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。 まぁ、その方が気楽で良い。 そして正義は、リーダーとして皆に言った。 「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」 正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。 「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」 「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」 「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」 「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」 「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」 「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」 「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」 俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。 「その…鎧と剣は?」 「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」 「今迄って…今回が2回目では無いのか?」 「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」 俺はうんざりしながら答えた。 そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。 いずれの世界も救って来た。 そして今度の世界は…? 6月22日 HOTランキングで6位になりました! 6月23日 HOTランキングで4位になりました! 昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°. 6月24日 HOTランキングで2位になりました! 皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m

俺は、こんな力を望んでいなかった‼︎

アノマロカリス
ファンタジー
俺の名は、グレン。 転移前の名は、紅 蓮(くれない 蓮)という。 年齢は26歳……だった筈なのだが、異世界に来たら若返っていた。 魔物を倒せばレベルが上がるという話だったのだが、どうみてもこれは…オーバーキルの様な気がする。 もう…チートとか、そういうレベルでは無い。 そもそも俺は、こんな力を望んではいなかった。 何処かの田舎で、ひっそりとスローライフを送りたかった。 だけど、俺の考えとは対照的に戦いの日々に駆り出される事に。 ………で、俺はこの世界で何をすれば良いんだ?

悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業

ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

処理中です...