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幸せに戻ろうとして
彼女からの願い
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「お願い?」
「そう
私の最後の願いをあなたに託したいの」
彼女は、いつもよりも力の入った声でその先を告げた。
「多分私の体はもう持たないわ
あと一週間かそこらだと思うの
だからこそ、最後に散歩がしたいの」
予想に反した、驚きの頼みだった。
確かに、彼女は1人で散歩が出来ない状態とはいえ、まさか頼むほど好きとは思わなかった。
「本当に散歩するだけでいいんです?」
「もちろんよ
私が死ぬその日に、あなたに連絡するから、そしたら私を病院から連れ出して欲しいの
おんぶするか車椅子に乗せてね」
そういえば、病院から誘拐しなきゃ行けないことを忘れていた。
いや、この病院の警備、まあまあ硬そうだし、僕にできるか不安になった。
すると、僕の心を見透かしたように彼女が続けた。
「そこら辺は安心してもらっていいわよ
ここの警備は、夜はザルより酷いの
だから、簡単に連れされると思うわ
そしたら、後はあの山まで連れてってね」
なんで、そんなことまで知ってるんだろう。
と、一瞬疑問に思ってしまったが、彼女にとっては重要なことだから知っていたんだろう。
彼女の楽しみである散歩をするためには、この病院から抜け出す以外のすべはないから、効率的な散歩までの道のりを調べたんだろう。
「じゃあ、その時が来たら、連絡をもらえるように、電話番号だけ置いておきますね」
と言って、僕はポケットから携帯電話を取り出して、自分の電話番号を探す。
そして、近くにあったメモ用紙にその番号を書いて、彼女に手渡した。
「ここに連絡をくれれば、飛んできます」
「まあ、あなたなら飛べそうね
じゃあ、もしものことがあったら、ここに連絡するから、まっててね」
「はい」
そういうと、僕は思い出したように時計を見た。
すると、もう時間がかなり経っていて、そろそろ出なきゃいけなさそうだった。
「それじゃあ、僕はこれで帰らせてもらいます」
そういって、僕は荷物をつかんで、病室を後にした。
なんだか、重苦しい空気は、病室だけでなく、僕の肺まで満たしていたようだ。
身体から、あの重たい空気が抜けそうになかったから、引きずり回すように家まで持ち帰った。
それまでの呼吸で幾分かは軽くなったけど。
それから、僕はまたやることもなく、布団に入ると携帯をつつき始めた。
とはいっても、今日は何をするでもなく、連絡を待ち続けたのだ。
まあ、今日は連絡がなかったから安心したけど。
「そう
私の最後の願いをあなたに託したいの」
彼女は、いつもよりも力の入った声でその先を告げた。
「多分私の体はもう持たないわ
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予想に反した、驚きの頼みだった。
確かに、彼女は1人で散歩が出来ない状態とはいえ、まさか頼むほど好きとは思わなかった。
「本当に散歩するだけでいいんです?」
「もちろんよ
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すると、僕の心を見透かしたように彼女が続けた。
「そこら辺は安心してもらっていいわよ
ここの警備は、夜はザルより酷いの
だから、簡単に連れされると思うわ
そしたら、後はあの山まで連れてってね」
なんで、そんなことまで知ってるんだろう。
と、一瞬疑問に思ってしまったが、彼女にとっては重要なことだから知っていたんだろう。
彼女の楽しみである散歩をするためには、この病院から抜け出す以外のすべはないから、効率的な散歩までの道のりを調べたんだろう。
「じゃあ、その時が来たら、連絡をもらえるように、電話番号だけ置いておきますね」
と言って、僕はポケットから携帯電話を取り出して、自分の電話番号を探す。
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