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新たな日々
新しい毎日
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「いてて」
机の上で寝てしまったので、最悪の寝覚めだった。
あれほど最悪な寝覚めはないと僕は思う。
頭痛いし、腕は痺れてるし、なんかフラフラするし、辛かった。
「あ、やっと起きた?
全く、昨日ここで寝ちゃうもんだからさ、さすがに君を運べるほどの力はないからね。
とりあえず毛布かけといたんだけどさ。
せっかく君に勝てるかと思ったのに
まあ、楽しかったからいいけどね」
「いやぁ、唐突に睡魔が来るもんだからさ、抗えなかっんだよね」
「そういう時もあるよ
はい、朝ごはん」
「あ、ありがとう」
「今日は、いつものトーストに、ベーコンとスクランブルエッグね
色々と栄養も取れて、ちょうどいいでしょ」
「うん
すごく美味しい」
「良かった
朝起きてから、急いで作ったからね。
君と将棋してたせいで寝坊しそうになったんだよ」
「寝落ちしてごめん」
「もういいよ
それよりも、朝ごはん食べちゃおうよ。
せっかくだし、一緒に食べよ」
「もちろん」
そう答えたら、彼女は手際よく調理道具を片づけ、席に着いた。
「いただきます」
ようやく、二人で食べ始めた。
「そう言えばさ
登校時間どうする?」
「どうするって?」
なんか登校時間に問題たかあったっけ?」
「2人で1緒に登校したらカップルみたいに思われそうじゃん。
だからさ、時間ずらさないとまずくない?」
「確かにそうだね。
そうなったら、僕が先に家を出るよ」
「そうしてくれるならいいけどさ
そういえば、薬とか飲まなくていいの?」
「食後にあるよ」
「そう
まあ、退院してすぐに薬がなくなるなんてことないしね。」
「そりゃあね
まあ、病気によってはそういうこともあるみたいだけど」
「そうなんだ」
「白血病とかは、ドナーと骨髄移植済ませちゃえば、終わりだからね」
「なるほどね
確かに、臓器移植とかはそれで済みそう」
「ご馳走様」
「はい、ご馳走様でした」
ご飯が食べ終わったので、カバンを2階から取ってきて、薬を飲んだ。
ずっと点滴だったので、薬の味なんて正直忘れていたが、なんか甘い感じだった。
鎮痛剤だからか、よくわからない甘さがあった。
キッチンでは、彼女が皿洗いをしてくれていた。
彼女に家事を全部任せてしまうのもあれだが、キッチンの作業類は下手くそだった。
皿洗いから、料理まで、何1つできないのだ。
だから、なるべく早く学校の支度を整えた。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい
また後でね」
家を出てから、学校に行くのが、とても久しぶりな気がした。
昨日はあんなふうに病院を抜け出してたので、家から出た訳では無いのだ。
家から登校するというのは、とても清々しいんだなと、感慨にひたっていた。
色々な考え事をしていると、、すぐに駅に着いてしまった。
やはり、彼女の家から駅までの距離は、近い気がする。
これぐらいが普通なのだと言われてしまえばそれまでなのだが。
通勤ラッシュの時間帯はやはり混んでいて、電車に乗るのも、大変なくらいだった。
人とドアに挟まれながら、電車に揺られていると、僕の学校の駅に直ぐに着いてしまった。
たったの一駅なので、歩いて行ける距離ではあるが、やはり電車の方が圧倒的に楽だ。
駅から学校までの間には、たくさんの同じ中学の人がいるが、僕の友達はそこにはいなかった。
そもそもとして、僕の友達のほとんどは、僕の家と反対方向にあるので、登下校は一緒には出来ないのだ。
数少ない、登下校が一緒に出来る友達は、行きはすごい遅いので、滅多に会うことは無かった。
だから、僕は自分の持っていた問題集を片手に、問題をときながら登校した。
暇というのは、人に変なことをさせてしまうものだな、と思った。
学校につくと、一二年生がたくさん登校していた。
しかし、その中に僕のクラスの人はほとんど居なかった。
教室に入っても見たが、過疎化が半端なかった。
たった数人しか教室にはいなくて、毎日不思議に思っていた。
だいたいみんな五分前から教室にかけこんできて、間に合わせているので、ほんとに困ったものだ。
ただ、5分前に駆け込んでくる人達の中には、僕の友達は含まれていない。
というのも、僕は朝に友達と話したかったので、朝早くに来ている人しか友達にしなかったのだ。
だから、今朝も友達とだべっていた。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムがなった。
と言っても、これは予鈴なので、まだホームルームは始まらない。
それに、朝の支度を完璧に済ませている僕と友達には、一切関係がない。
そろそろ人が来るかな、と思ってドアの方をむくと、ちょうど暁さんが入ってくるところだった。
この時間差なら、僕と暁さんが同じ家に住んでいることがバレることもないだろうな。
そろそろ人が沢山入ってきて、混雑するだろうと思って、僕は友達と別れ、自分の席に着いた。
数十秒後、僕の予想通り、20人ほどが、流れ込んできた。
みんな、リュックをロッカーに入れて、ホームルーム前には着席していた。
ホームルームは、実際のところどうだっていいので、半分寝ながら聞いていた。
そういえば、僕がほとんど学校に来れなかったせいか、僕の席は1番窓際の後ろの席で、隣がいなかった。
受験期には、隣に誰かがいないと辛いだろうからという配慮なのだろうか。
まあ、とにかく隣がいないというのはつまらないのだ。
ぼくのクラスでは、男女が交互に座るような席配置になっているので、僕の前には女子が座っていた。
ただ、そいつとは一切話した覚えがないほどに、話せない人なので、完全に孤独だった。
窓際だし空でも見るか、と思いずっと空を眺めていようと思ったら、
「今日の日課は、国語、体育、数学、美術、英語、学活です」
ハッとした。
なんせ、体育をしてもいいのかについて、一切知らないのだ。
体育は、今は卓球なので、ほとんど動かずには済むが、何が起こるかわからない。
とは言っても、ドクターストップの証明書的なものも持っていないので、やらざるを得ないだろうか。
しかも、うちの学校は教科担任制なので、担任と体育の先生に話を通さなくてはいけない。
担任にも、ほとんどどんな病気なのか伝えていないわけだし、体育の先生なんて以ての外だ。
体育科の教師は、かなり忌み嫌われている。
テストの度に足し算が出来ないから、得点もろくにつけられない。
成績や選択授業の編成は女子を優先している。
嘘つくなとか言っておきながら、自分で決めた期限内に仕事を終わらせられない。
とかなんとかと言って、相当嫌われているのだ。
もちろん僕もその1人で、相手を嫌い、相手から嫌われている。
なるべくなら口も聞きたくないような相手なので、どうしたものかと迷っていると、ホームルームが終わってしまった。
気がつけば1時間目が始まっていた。
ただの入試対策の授業しかしていないので、聞いても無駄だと思いながら聞いていると、意外と直ぐに授業が終わってしまった。
ほんとにどうしたものかな、と迷いながらも、とりあえずみんなに合わせて体操服に着替えておいた。
私立でもないのに、うちの学校の には、体育館の下にスペースがある。
プレイホールと呼ばれていて、卓球や柔道、剣道場として使われている。
授業の卓球でも、そこの場を使うらしい。
どこで卓球をやるのかについては、卓球を選択していた友達に教えてもらった。
その友達と一緒にプレイホールに向かうと、先に先生がたっていて、早く並べと言った雰囲気を醸し出していた。
まだ、僕らの他には数人しか来ていないので、もう少しリラックスすればいいのに、って思ってしまった。
荷物を置いて、来ていた上着を脱ぐと、ものすごく寒かった。
降圧剤のせいで、冷え性が進化した番みたいだった。
ずっとブルブルしたまま、取り敢えず整列の場所にたっておいた。
早く始まんないかな、って思うと、長く感じるもんで、1秒1秒がすごく長く感じた。
寒さのせいで集中出来ずに、ブルブルしながら準備体操をして、先生の話を聞いて、やっと授業が始まった。
この時だけは自分の運を信じて授業に出てよかったと思う。
グループ学習が中心で、しかも、グループが友達ばかりで、僕を気遣ってくれて、色々教えてくれた。
友達達が上手く先生をごまかしてくれたので、ほとんど運動という運動をせずに済んだ。
おかげで、症状の悪化もなく、楽しく授業を受けられた。
そのあとは、普通の授業を受け、ホームルームが始まろうとしていた。
いやぁ、隣がいない席は、ほんとにつまらないものだった。
まあ、僕にはこれから暁さんのために何をしようか考える時間になって、少し楽しかった。
周りの人達は、ホームルームなんか気にせず、過去問を解いていたり、塾の課題などを進めていた。
暁さんは、将棋が好きらしいので、将棋の勝ち方なんかを教えてあげたら喜びそうだな。
あとは、やっぱり女子だし、買い物とかについてくのが一番いいのかな。
荷物を持ってあげたり、写真を一緒に撮ったりするだけで良さそうだし。
まあ、そんな所で、もしもあの子に何かがあった時は、少しでも励ましてあげられればと思う。
口には出さないが、きっと暁さんは、あの子を溺愛しているだろうから、相当メンタルがやられてしまうだろう。
そこを頑張るのが僕の役目なのだ。
そんなことを考えていたら、みんながいっせいに動き出したので、何が起きたかと思えば、ホームルームが終わったらしい。
今日もまた、教室で勉強したり、図書室に行ったり、塾に行ったりする人で別れていた。
今日は教師から呼び出されていないので、自由だが、特にすることも無い。
暁さんがいないとどうしようもないのは確定なので、取り敢えず図書室に行くことにした。
昨日暁さんがいた席の隣に座って、この2日間を思い出していた。
ほんとに濃厚な2日間だったなあと思う。
病院を抜け出して、学校に登校し、知らない女子と将棋をした。
挙句の果てに、その子の家に泊まらせてもらって、一日を終えた。
ほんと、運はなかなかにいいのか悪いのか、わからない。
こんな病気になっている時点で運はなさそうだが、こうも女子と一瞬で仲良くなれたのは運の賜物かもしれない。
運良く図書室で出会えて、共通の趣味があって、なんて、こんなことそうそうないだろう。
しかもそれが、関係の無い女子ではなくて、頼まれていた人だったのがすごいと思う。
あの子がそれを知っていたんじゃないかと言うぐらいに、仲が深まるようなペアだった。
しかも、その勢いで家にまで泊まらせてもらい、部屋まで貰ってしまった。
ほんとに運が意外といいのかもしれないなぁ。
「隣座るね」
「ふぇっ!?」
「もしかして私に気づかなかったの?」
「ごめん、完全に気づけなかった」
「そんなに音を立てなかったのか、君が深く考え事をしてたのか
まあ、君に逢えてよかったよ
今日ばどうする?
勉強するか将棋するか帰るか」
「ここでやる必要も無いし、一緒に帰ろうよ」
「それじゃ、そうしよっか」
そう言うと、彼女は椅子の下においていたリュックを背負った。
いやほんと、暁さんは忍者なのかなって思うほどに無音だった。
一切気づけなくて、焦ってしまった。
とにかく、置いていかれるわけには行かないので、急いで荷物を取って暁さんを追いかけた。
急いで暁さんを追いかけると、まだ階段のところにいた。
「やっほー」
「やっほー
そういえばさ、朝は別れて登校しているのに、帰りはいいの?
めんどくさくならないかな?」
言われてみればそうだ。
今の僕たちがいちばん恐れていることの一つとして、あらぬ噂を立てられることだ。
非常に厄介なことになる。
確かに、今の僕達は、傍から見れば同棲している。
一緒に住んでいるのは事実なのだが、恋愛関係を持っているわけじゃない。
そこが微妙なところだ。
完全に僕が向こうに居候させてもらっているのだが、そんなことは、噂がたった後に言っても無駄な事だ。
だが、一人で登校していて思ったのが、なにか考え事しているしかなくて、とにかく悲しくなる。
まあ、暁さんに迷惑をかけないのが当然の理なのだが、どうしても1人での登下校は嫌だった。
一方だけならまだしも、行きも帰りもとなると、さぴしくなるので、嫌だった。
そんな感じで僕が答えかねていると、
「まあ、一人で帰るのも寂しいし、2人で帰ろっか」
「そうだね」
彼女がそう言ってくれて助かった。
「もしかして昨日と同じ制服着てた?」
「うん
1着しか持ってないからね」
「じゃあさ、今度の週末に買い物に行かなくちゃね」
「予定はいいの?」
「今週は何もないんだ
八雲くんはスマホも持ってないみたいだし
夜に来てたパジャマもあんまり似合ってなかったし
色々買いたいものがあるから行こうよ」
「そんなに似合ってなかったかな」
「あれは吹き出しそうなぐらいだったよ」
「そんなだったなら買いに行かないとね
でもスマホはちょっとあれじゃないかな」
「そう?
スマホとか持ってないと連絡できなくて困るんだよ
だって君はまだ退院してちょっとなんでしょ
何かあった時に対処できないじゃん
1人で救急車も呼べないのは危ないと思うよ」
言われてみればそうかもしれない。
いつ倒れれるかわからないような人が、救急車さえ呼べないのは困る。
だが、他人に買ってもらった携帯を使うのは気が引ける。
そう思ったのだが、
よくよく考えてみると、相当な貯金があるんだ。
元々は入院費になる予定だったから、ものすごい額で溜まっているだろう。
しかも、家も住まわせてもらっていて、使い道がないお金になってしまう。
「それじゃあ、スマホも買うよ
でも、スマホ代ぐらいは自分で払うからいいよ」
「そう?
もしもの為にお金は貯めておいた方がいいと思うけどね」
「他人に買ってもらったスマホってなんかやだからさ」
「確かに、その気持ちはわかるかも
それはそうということで、明日は買うものがいっぱいあるから、ちゃんと朝起きてよ」
「大丈夫でしょ
今日だってなんとかなったんだし」
「今日はよくやったと思うよ
もう家に着いちゃうね
やっぱこの距離感いいね」
「ほんと、家が近いっていいね」
「家が近いのもあるけど、やっぱ二人で話してるからじゃないかな?
1人じゃこんなに早く感じることは無いと思うよ」
「確かにそうだね」
「八雲くんに鍵渡してなかったっけ」
「貰ってないね」
「それじゃ鍵開けてくるね」
と言って、彼女は先に行ってしまった。
と言っても、すぐそこなので、距離感的には近いが、彼女の言う通り、1人だと少しの距離も遠く感じる。
彼女が鍵を開けて入っていったので、少し駆け寄るぐらいの速さで家に向かった。
どうしてなのだろうか。
出会ってまだ間もないというのに、すごい親近感があって、親しみやすい。
元々暁さんがそんな性格なのかもしれないが、依存している感がすごい。
たった2日なのに、暁さんがいなければ、まともな生活が送れなかったと断言できるほどだ。
あと、何故か暁さんとは、なんとなくあった覚えがあった。
いつどこでなのかは思い出せないが、暁さんの声は耳に染み付いていた。
謎の気持ちを振り払うように、僕は家に入った。
暁さんは、先に手を洗いに行っていたので、荷物を置いたら、僕も向かうことにした。
阿吽の呼吸で、僕が洗面所に入ると同時に、暁さんが洗面所を出ていった。
学校でこんなことされたら、嫌われてると錯覚してしまいそうなぐらいだ
暁さんだからそんなことは無いと思うが。
そうして、僕は手を洗って、洗面所を出た。
すると、暁さんに、風呂に入るように勧められたので、早速準備して入ることにした。
やっぱり暁さんちの風呂は大きかった。
この身長の僕でも、軽く入ってしまうぐらいの大きさだ。
その風呂を横目に見ながら、せかせかとからだや顔や髪の毛をあらった。
地味にこの作業は時間がかかるので、少しだけ体が冷えてしまった。
その寒さなんて軽く吹き飛ばすような、最高の心地の風呂が用意されていたから、なんら問題はないが。
「ふぁー」
風呂に入るなり、そんなも気の抜けるような声が出た。
ちょうどいい温度に設定されていて、いくら足を伸ばしても問題ない。
ほんとに最高の空間だ。
こんな時には、物思いにふけるのがベストだろう。
やっぱり、1番に思うのは、暁さんに依存しちゃってるってこと。
生活に必要なものが全て揃えて渡してくれて、しかもフレンドリーな人だった。
お陰様で、特になんの手伝いもすることなく、ご飯や風呂が出てくる。
こんな生活に慣れてしまったら、もう抜け出せなさそうだ。
それぐらい、僕はこの生活に依存していた。
自分でも意外な程だった。
きっと、僕がこんなことを考えている間にも、暁さんが料理をしていてくれる。
本当は立場が逆になるはずだったのに、いつの間にか僕が依存していた。
もう、相互依存関係になってしまおうかと思った。
そっちの方が信頼関係的にもいいかなとも思った。
でも、今の僕に暁さんが依存しているとはとうてい思えない。
やはり、何かしら動いた方がいいのだろうか。
なんて考えていたら、風呂の戸がノックされた。
「そろそろ出ないと、ご飯出来上がっちゃうよ」
「今でます」
もうそんなに時間が経ってしまっていたのか。
急いで出る支度をして、風呂場を後にした。
リビングに戻ると、既に完璧な夕飯が仕上がっていた。
今日は、魚とサラダだった。
「ほら、さっさと席に着いて
今日は骨抜きにしんと、レタスね」
「にしんか
美味しい魚だね
それじゃあ」
「いただきます」
昨日とは違って、2人の声が重なって、ちょっと面白かった。
美味しい魚と口で入っているが、あまり好きではない。
そもそも魚が嫌いになってしまったのだ。
どうしても病院食を思い出してしまうからだ。
あれはとにかく美味しくなかった。
薄味で、栄養を調整されているような感じだ。
しかし、暁家の魚は別格だった。
骨がないので、パクパク食べられるし、とにかく脂が乗ってる。
味も濃い訳では無いが、圧倒的に病院食よりも味付けがされている。
パクパク食べていると、
にしんもご飯もなくなっていた。
「にしんってまだある?」
「にしんは1人1本しかないからね
もうごちそうさましたら?」
「ごちそうさま」
そして、自分の食器を全てカウンターに置いた。
「今日は将棋やる?
それとも勉強する?」
「今日は数学の過去問やったら寝るよ
お互い昨日はちゃんと寝れなかったしね」
「それじゃあ、のんびり待ってるよ」
そう言って、僕は部屋に戻って、薬を飲んだ。
体がとにかく疲れていたので、少し布団に寝転んだ。
程なくして、下から
「過去問解くから来て」
という声がしたので、下に降りた。
「とりあえずこの問題任せてもいい?」
「分かった」
そう言って、その問題を僕は解き始めた。
解けたら彼女に答えを伝え、その解き方を教える。
するとまた新しい問題が出てくる。
そんな感じで、ずっと問題を解いていた。
すると、既にもう10時を回っていた。
「今日はこれでもういいかな
ありがとう」
「いやいや、少しでも手伝えたならいいよ」
「少しなんてもんじゃないよ
正答率が低そうな問題全部やって貰ったからね
すごい楽になったよ」
「そういえばさ、もうお風呂はいったの?」
「もちろん
君が寝ている間に入ってきちゃったよ」
「そうだったんだ」
まさかあのまま寝てしまっていたとは。
まあ、寝なければこんな時間になってもいないか
「それじゃあおやすみ」
「おやすみ」
そう言って、僕らは別れて各々の部屋に入っていった。
布団に入ると、ものすごい睡魔が来たので、考え事をするまでもなく寝てしまった。
そんな感じに、僕の新しい毎日が始まろうとしていた
机の上で寝てしまったので、最悪の寝覚めだった。
あれほど最悪な寝覚めはないと僕は思う。
頭痛いし、腕は痺れてるし、なんかフラフラするし、辛かった。
「あ、やっと起きた?
全く、昨日ここで寝ちゃうもんだからさ、さすがに君を運べるほどの力はないからね。
とりあえず毛布かけといたんだけどさ。
せっかく君に勝てるかと思ったのに
まあ、楽しかったからいいけどね」
「いやぁ、唐突に睡魔が来るもんだからさ、抗えなかっんだよね」
「そういう時もあるよ
はい、朝ごはん」
「あ、ありがとう」
「今日は、いつものトーストに、ベーコンとスクランブルエッグね
色々と栄養も取れて、ちょうどいいでしょ」
「うん
すごく美味しい」
「良かった
朝起きてから、急いで作ったからね。
君と将棋してたせいで寝坊しそうになったんだよ」
「寝落ちしてごめん」
「もういいよ
それよりも、朝ごはん食べちゃおうよ。
せっかくだし、一緒に食べよ」
「もちろん」
そう答えたら、彼女は手際よく調理道具を片づけ、席に着いた。
「いただきます」
ようやく、二人で食べ始めた。
「そう言えばさ
登校時間どうする?」
「どうするって?」
なんか登校時間に問題たかあったっけ?」
「2人で1緒に登校したらカップルみたいに思われそうじゃん。
だからさ、時間ずらさないとまずくない?」
「確かにそうだね。
そうなったら、僕が先に家を出るよ」
「そうしてくれるならいいけどさ
そういえば、薬とか飲まなくていいの?」
「食後にあるよ」
「そう
まあ、退院してすぐに薬がなくなるなんてことないしね。」
「そりゃあね
まあ、病気によってはそういうこともあるみたいだけど」
「そうなんだ」
「白血病とかは、ドナーと骨髄移植済ませちゃえば、終わりだからね」
「なるほどね
確かに、臓器移植とかはそれで済みそう」
「ご馳走様」
「はい、ご馳走様でした」
ご飯が食べ終わったので、カバンを2階から取ってきて、薬を飲んだ。
ずっと点滴だったので、薬の味なんて正直忘れていたが、なんか甘い感じだった。
鎮痛剤だからか、よくわからない甘さがあった。
キッチンでは、彼女が皿洗いをしてくれていた。
彼女に家事を全部任せてしまうのもあれだが、キッチンの作業類は下手くそだった。
皿洗いから、料理まで、何1つできないのだ。
だから、なるべく早く学校の支度を整えた。
「それじゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい
また後でね」
家を出てから、学校に行くのが、とても久しぶりな気がした。
昨日はあんなふうに病院を抜け出してたので、家から出た訳では無いのだ。
家から登校するというのは、とても清々しいんだなと、感慨にひたっていた。
色々な考え事をしていると、、すぐに駅に着いてしまった。
やはり、彼女の家から駅までの距離は、近い気がする。
これぐらいが普通なのだと言われてしまえばそれまでなのだが。
通勤ラッシュの時間帯はやはり混んでいて、電車に乗るのも、大変なくらいだった。
人とドアに挟まれながら、電車に揺られていると、僕の学校の駅に直ぐに着いてしまった。
たったの一駅なので、歩いて行ける距離ではあるが、やはり電車の方が圧倒的に楽だ。
駅から学校までの間には、たくさんの同じ中学の人がいるが、僕の友達はそこにはいなかった。
そもそもとして、僕の友達のほとんどは、僕の家と反対方向にあるので、登下校は一緒には出来ないのだ。
数少ない、登下校が一緒に出来る友達は、行きはすごい遅いので、滅多に会うことは無かった。
だから、僕は自分の持っていた問題集を片手に、問題をときながら登校した。
暇というのは、人に変なことをさせてしまうものだな、と思った。
学校につくと、一二年生がたくさん登校していた。
しかし、その中に僕のクラスの人はほとんど居なかった。
教室に入っても見たが、過疎化が半端なかった。
たった数人しか教室にはいなくて、毎日不思議に思っていた。
だいたいみんな五分前から教室にかけこんできて、間に合わせているので、ほんとに困ったものだ。
ただ、5分前に駆け込んでくる人達の中には、僕の友達は含まれていない。
というのも、僕は朝に友達と話したかったので、朝早くに来ている人しか友達にしなかったのだ。
だから、今朝も友達とだべっていた。
「キーンコーンカーンコーン」
チャイムがなった。
と言っても、これは予鈴なので、まだホームルームは始まらない。
それに、朝の支度を完璧に済ませている僕と友達には、一切関係がない。
そろそろ人が来るかな、と思ってドアの方をむくと、ちょうど暁さんが入ってくるところだった。
この時間差なら、僕と暁さんが同じ家に住んでいることがバレることもないだろうな。
そろそろ人が沢山入ってきて、混雑するだろうと思って、僕は友達と別れ、自分の席に着いた。
数十秒後、僕の予想通り、20人ほどが、流れ込んできた。
みんな、リュックをロッカーに入れて、ホームルーム前には着席していた。
ホームルームは、実際のところどうだっていいので、半分寝ながら聞いていた。
そういえば、僕がほとんど学校に来れなかったせいか、僕の席は1番窓際の後ろの席で、隣がいなかった。
受験期には、隣に誰かがいないと辛いだろうからという配慮なのだろうか。
まあ、とにかく隣がいないというのはつまらないのだ。
ぼくのクラスでは、男女が交互に座るような席配置になっているので、僕の前には女子が座っていた。
ただ、そいつとは一切話した覚えがないほどに、話せない人なので、完全に孤独だった。
窓際だし空でも見るか、と思いずっと空を眺めていようと思ったら、
「今日の日課は、国語、体育、数学、美術、英語、学活です」
ハッとした。
なんせ、体育をしてもいいのかについて、一切知らないのだ。
体育は、今は卓球なので、ほとんど動かずには済むが、何が起こるかわからない。
とは言っても、ドクターストップの証明書的なものも持っていないので、やらざるを得ないだろうか。
しかも、うちの学校は教科担任制なので、担任と体育の先生に話を通さなくてはいけない。
担任にも、ほとんどどんな病気なのか伝えていないわけだし、体育の先生なんて以ての外だ。
体育科の教師は、かなり忌み嫌われている。
テストの度に足し算が出来ないから、得点もろくにつけられない。
成績や選択授業の編成は女子を優先している。
嘘つくなとか言っておきながら、自分で決めた期限内に仕事を終わらせられない。
とかなんとかと言って、相当嫌われているのだ。
もちろん僕もその1人で、相手を嫌い、相手から嫌われている。
なるべくなら口も聞きたくないような相手なので、どうしたものかと迷っていると、ホームルームが終わってしまった。
気がつけば1時間目が始まっていた。
ただの入試対策の授業しかしていないので、聞いても無駄だと思いながら聞いていると、意外と直ぐに授業が終わってしまった。
ほんとにどうしたものかな、と迷いながらも、とりあえずみんなに合わせて体操服に着替えておいた。
私立でもないのに、うちの学校の には、体育館の下にスペースがある。
プレイホールと呼ばれていて、卓球や柔道、剣道場として使われている。
授業の卓球でも、そこの場を使うらしい。
どこで卓球をやるのかについては、卓球を選択していた友達に教えてもらった。
その友達と一緒にプレイホールに向かうと、先に先生がたっていて、早く並べと言った雰囲気を醸し出していた。
まだ、僕らの他には数人しか来ていないので、もう少しリラックスすればいいのに、って思ってしまった。
荷物を置いて、来ていた上着を脱ぐと、ものすごく寒かった。
降圧剤のせいで、冷え性が進化した番みたいだった。
ずっとブルブルしたまま、取り敢えず整列の場所にたっておいた。
早く始まんないかな、って思うと、長く感じるもんで、1秒1秒がすごく長く感じた。
寒さのせいで集中出来ずに、ブルブルしながら準備体操をして、先生の話を聞いて、やっと授業が始まった。
この時だけは自分の運を信じて授業に出てよかったと思う。
グループ学習が中心で、しかも、グループが友達ばかりで、僕を気遣ってくれて、色々教えてくれた。
友達達が上手く先生をごまかしてくれたので、ほとんど運動という運動をせずに済んだ。
おかげで、症状の悪化もなく、楽しく授業を受けられた。
そのあとは、普通の授業を受け、ホームルームが始まろうとしていた。
いやぁ、隣がいない席は、ほんとにつまらないものだった。
まあ、僕にはこれから暁さんのために何をしようか考える時間になって、少し楽しかった。
周りの人達は、ホームルームなんか気にせず、過去問を解いていたり、塾の課題などを進めていた。
暁さんは、将棋が好きらしいので、将棋の勝ち方なんかを教えてあげたら喜びそうだな。
あとは、やっぱり女子だし、買い物とかについてくのが一番いいのかな。
荷物を持ってあげたり、写真を一緒に撮ったりするだけで良さそうだし。
まあ、そんな所で、もしもあの子に何かがあった時は、少しでも励ましてあげられればと思う。
口には出さないが、きっと暁さんは、あの子を溺愛しているだろうから、相当メンタルがやられてしまうだろう。
そこを頑張るのが僕の役目なのだ。
そんなことを考えていたら、みんながいっせいに動き出したので、何が起きたかと思えば、ホームルームが終わったらしい。
今日もまた、教室で勉強したり、図書室に行ったり、塾に行ったりする人で別れていた。
今日は教師から呼び出されていないので、自由だが、特にすることも無い。
暁さんがいないとどうしようもないのは確定なので、取り敢えず図書室に行くことにした。
昨日暁さんがいた席の隣に座って、この2日間を思い出していた。
ほんとに濃厚な2日間だったなあと思う。
病院を抜け出して、学校に登校し、知らない女子と将棋をした。
挙句の果てに、その子の家に泊まらせてもらって、一日を終えた。
ほんと、運はなかなかにいいのか悪いのか、わからない。
こんな病気になっている時点で運はなさそうだが、こうも女子と一瞬で仲良くなれたのは運の賜物かもしれない。
運良く図書室で出会えて、共通の趣味があって、なんて、こんなことそうそうないだろう。
しかもそれが、関係の無い女子ではなくて、頼まれていた人だったのがすごいと思う。
あの子がそれを知っていたんじゃないかと言うぐらいに、仲が深まるようなペアだった。
しかも、その勢いで家にまで泊まらせてもらい、部屋まで貰ってしまった。
ほんとに運が意外といいのかもしれないなぁ。
「隣座るね」
「ふぇっ!?」
「もしかして私に気づかなかったの?」
「ごめん、完全に気づけなかった」
「そんなに音を立てなかったのか、君が深く考え事をしてたのか
まあ、君に逢えてよかったよ
今日ばどうする?
勉強するか将棋するか帰るか」
「ここでやる必要も無いし、一緒に帰ろうよ」
「それじゃ、そうしよっか」
そう言うと、彼女は椅子の下においていたリュックを背負った。
いやほんと、暁さんは忍者なのかなって思うほどに無音だった。
一切気づけなくて、焦ってしまった。
とにかく、置いていかれるわけには行かないので、急いで荷物を取って暁さんを追いかけた。
急いで暁さんを追いかけると、まだ階段のところにいた。
「やっほー」
「やっほー
そういえばさ、朝は別れて登校しているのに、帰りはいいの?
めんどくさくならないかな?」
言われてみればそうだ。
今の僕たちがいちばん恐れていることの一つとして、あらぬ噂を立てられることだ。
非常に厄介なことになる。
確かに、今の僕達は、傍から見れば同棲している。
一緒に住んでいるのは事実なのだが、恋愛関係を持っているわけじゃない。
そこが微妙なところだ。
完全に僕が向こうに居候させてもらっているのだが、そんなことは、噂がたった後に言っても無駄な事だ。
だが、一人で登校していて思ったのが、なにか考え事しているしかなくて、とにかく悲しくなる。
まあ、暁さんに迷惑をかけないのが当然の理なのだが、どうしても1人での登下校は嫌だった。
一方だけならまだしも、行きも帰りもとなると、さぴしくなるので、嫌だった。
そんな感じで僕が答えかねていると、
「まあ、一人で帰るのも寂しいし、2人で帰ろっか」
「そうだね」
彼女がそう言ってくれて助かった。
「もしかして昨日と同じ制服着てた?」
「うん
1着しか持ってないからね」
「じゃあさ、今度の週末に買い物に行かなくちゃね」
「予定はいいの?」
「今週は何もないんだ
八雲くんはスマホも持ってないみたいだし
夜に来てたパジャマもあんまり似合ってなかったし
色々買いたいものがあるから行こうよ」
「そんなに似合ってなかったかな」
「あれは吹き出しそうなぐらいだったよ」
「そんなだったなら買いに行かないとね
でもスマホはちょっとあれじゃないかな」
「そう?
スマホとか持ってないと連絡できなくて困るんだよ
だって君はまだ退院してちょっとなんでしょ
何かあった時に対処できないじゃん
1人で救急車も呼べないのは危ないと思うよ」
言われてみればそうかもしれない。
いつ倒れれるかわからないような人が、救急車さえ呼べないのは困る。
だが、他人に買ってもらった携帯を使うのは気が引ける。
そう思ったのだが、
よくよく考えてみると、相当な貯金があるんだ。
元々は入院費になる予定だったから、ものすごい額で溜まっているだろう。
しかも、家も住まわせてもらっていて、使い道がないお金になってしまう。
「それじゃあ、スマホも買うよ
でも、スマホ代ぐらいは自分で払うからいいよ」
「そう?
もしもの為にお金は貯めておいた方がいいと思うけどね」
「他人に買ってもらったスマホってなんかやだからさ」
「確かに、その気持ちはわかるかも
それはそうということで、明日は買うものがいっぱいあるから、ちゃんと朝起きてよ」
「大丈夫でしょ
今日だってなんとかなったんだし」
「今日はよくやったと思うよ
もう家に着いちゃうね
やっぱこの距離感いいね」
「ほんと、家が近いっていいね」
「家が近いのもあるけど、やっぱ二人で話してるからじゃないかな?
1人じゃこんなに早く感じることは無いと思うよ」
「確かにそうだね」
「八雲くんに鍵渡してなかったっけ」
「貰ってないね」
「それじゃ鍵開けてくるね」
と言って、彼女は先に行ってしまった。
と言っても、すぐそこなので、距離感的には近いが、彼女の言う通り、1人だと少しの距離も遠く感じる。
彼女が鍵を開けて入っていったので、少し駆け寄るぐらいの速さで家に向かった。
どうしてなのだろうか。
出会ってまだ間もないというのに、すごい親近感があって、親しみやすい。
元々暁さんがそんな性格なのかもしれないが、依存している感がすごい。
たった2日なのに、暁さんがいなければ、まともな生活が送れなかったと断言できるほどだ。
あと、何故か暁さんとは、なんとなくあった覚えがあった。
いつどこでなのかは思い出せないが、暁さんの声は耳に染み付いていた。
謎の気持ちを振り払うように、僕は家に入った。
暁さんは、先に手を洗いに行っていたので、荷物を置いたら、僕も向かうことにした。
阿吽の呼吸で、僕が洗面所に入ると同時に、暁さんが洗面所を出ていった。
学校でこんなことされたら、嫌われてると錯覚してしまいそうなぐらいだ
暁さんだからそんなことは無いと思うが。
そうして、僕は手を洗って、洗面所を出た。
すると、暁さんに、風呂に入るように勧められたので、早速準備して入ることにした。
やっぱり暁さんちの風呂は大きかった。
この身長の僕でも、軽く入ってしまうぐらいの大きさだ。
その風呂を横目に見ながら、せかせかとからだや顔や髪の毛をあらった。
地味にこの作業は時間がかかるので、少しだけ体が冷えてしまった。
その寒さなんて軽く吹き飛ばすような、最高の心地の風呂が用意されていたから、なんら問題はないが。
「ふぁー」
風呂に入るなり、そんなも気の抜けるような声が出た。
ちょうどいい温度に設定されていて、いくら足を伸ばしても問題ない。
ほんとに最高の空間だ。
こんな時には、物思いにふけるのがベストだろう。
やっぱり、1番に思うのは、暁さんに依存しちゃってるってこと。
生活に必要なものが全て揃えて渡してくれて、しかもフレンドリーな人だった。
お陰様で、特になんの手伝いもすることなく、ご飯や風呂が出てくる。
こんな生活に慣れてしまったら、もう抜け出せなさそうだ。
それぐらい、僕はこの生活に依存していた。
自分でも意外な程だった。
きっと、僕がこんなことを考えている間にも、暁さんが料理をしていてくれる。
本当は立場が逆になるはずだったのに、いつの間にか僕が依存していた。
もう、相互依存関係になってしまおうかと思った。
そっちの方が信頼関係的にもいいかなとも思った。
でも、今の僕に暁さんが依存しているとはとうてい思えない。
やはり、何かしら動いた方がいいのだろうか。
なんて考えていたら、風呂の戸がノックされた。
「そろそろ出ないと、ご飯出来上がっちゃうよ」
「今でます」
もうそんなに時間が経ってしまっていたのか。
急いで出る支度をして、風呂場を後にした。
リビングに戻ると、既に完璧な夕飯が仕上がっていた。
今日は、魚とサラダだった。
「ほら、さっさと席に着いて
今日は骨抜きにしんと、レタスね」
「にしんか
美味しい魚だね
それじゃあ」
「いただきます」
昨日とは違って、2人の声が重なって、ちょっと面白かった。
美味しい魚と口で入っているが、あまり好きではない。
そもそも魚が嫌いになってしまったのだ。
どうしても病院食を思い出してしまうからだ。
あれはとにかく美味しくなかった。
薄味で、栄養を調整されているような感じだ。
しかし、暁家の魚は別格だった。
骨がないので、パクパク食べられるし、とにかく脂が乗ってる。
味も濃い訳では無いが、圧倒的に病院食よりも味付けがされている。
パクパク食べていると、
にしんもご飯もなくなっていた。
「にしんってまだある?」
「にしんは1人1本しかないからね
もうごちそうさましたら?」
「ごちそうさま」
そして、自分の食器を全てカウンターに置いた。
「今日は将棋やる?
それとも勉強する?」
「今日は数学の過去問やったら寝るよ
お互い昨日はちゃんと寝れなかったしね」
「それじゃあ、のんびり待ってるよ」
そう言って、僕は部屋に戻って、薬を飲んだ。
体がとにかく疲れていたので、少し布団に寝転んだ。
程なくして、下から
「過去問解くから来て」
という声がしたので、下に降りた。
「とりあえずこの問題任せてもいい?」
「分かった」
そう言って、その問題を僕は解き始めた。
解けたら彼女に答えを伝え、その解き方を教える。
するとまた新しい問題が出てくる。
そんな感じで、ずっと問題を解いていた。
すると、既にもう10時を回っていた。
「今日はこれでもういいかな
ありがとう」
「いやいや、少しでも手伝えたならいいよ」
「少しなんてもんじゃないよ
正答率が低そうな問題全部やって貰ったからね
すごい楽になったよ」
「そういえばさ、もうお風呂はいったの?」
「もちろん
君が寝ている間に入ってきちゃったよ」
「そうだったんだ」
まさかあのまま寝てしまっていたとは。
まあ、寝なければこんな時間になってもいないか
「それじゃあおやすみ」
「おやすみ」
そう言って、僕らは別れて各々の部屋に入っていった。
布団に入ると、ものすごい睡魔が来たので、考え事をするまでもなく寝てしまった。
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