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消えゆく神様
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「もういいかい?」
「まーだだよ」
御堂の隙間に体を滑り込ませる。
「もういいかい?」
「もういいよ」
みんなもやった事あるでしょ
かくれんぼ
決められた範囲内ならどこに隠れてもいいから、鬼に見つからないようにする遊び
私は今、友達と1体1のかくれんぼをしています。
相手は仲のいい友達です。
いつもは私のことを直ぐに見つけます。
彼女に勝ったことはありません。
だから、私はいつもの境内の、1番バレないと思う御堂の中に隠れています。
きっとこれなら見つからないでしょう。
「見つからないなぁ」
近くで友達の声がしました。
しかし、バレる訳にはいかないので、息を潜めます。
…
…
「いないなぁ
足音でも聞こえたら楽なのに」
友達は御堂の前をとおりすぎていきました。
…
そのあとも、散々周りを探して、御堂が赤に焼かれる頃、
「もう諦めたから出てきていいよ~」
と、友達が負けを認めました。
ですが、まだ見つかりたくはありません。
このまま隠れてたらどうなるのか気になったからです。
ずっと探してくれるのかな。
それとも、親とかも探しにくるのかな。
どっちにしても、面白そうです。
しかし、
「もう帰っちゃったのかな~
まあ、これだけ探しても見つからないんだし、ここにはもういないよね」
と言って、友達が遠ざかっていく音が聞こえました。
まって
と言って、御堂を出ようとしましたが、やっぱり見つかりたくなくて、出られませんでした。
そして、御堂の周辺は閑散としてしまいました。
友達が完全に帰ってしまったので、私もそろそろ帰ろうと思い、御堂を出てみると
「どこ、ここ?」
見知らぬ場所にいました。
いや、神社の中は何も変化はありません。
変わったのは神社の外側でした。
鳥居の外には、先の見えない闇に星が一つ輝いていました。
そして、その星は一段と強く輝いて、急に光を失っていきました。
周囲が光のさす隙もない闇になったとき
「もう終わりだね」
と、知らない少年?の声が背後からしました。
振り返ると、見知らぬ謎の男の子が立ってました。
この子は普通の子じゃないと知りました。
最初は何が違和感が気が付きませんでした。
ただ、よくよく見ると透けていたのです。
微妙に奥の景色が彼の体を通して見えるのです。
「あ、まだ人がいたんだね
せっかくだし、こっちにおいでよ」
といって、御堂の中に誘われました。
半透明なこととか、御堂の中から出てきたこととか、怪しいところはたくさんあります。
ですが、何か優しいぬくもりを感じたのです。
だから、私は彼についていきました。
そして、少年は御堂の中にある、椅子に似た何かに座って
「今日時間ある?
少し話を聞いてくれない?」
と、少年に頼まれました。
そして、近くの少年が座っているのに似たものに指を指したので、
「失礼します」
と言って、腰をかけました。
「それじゃあ、聞いてくれるんだね」
「はい」
すると、嬉しそうな顔になり
「人と話すなんて久しぶりで嬉しくなっちゃった
まあ、多分君が最後だし、ちょっと寂しい気もするね」
1人で色々言っている少年に、勇気を出して言ってみた。
「えっと、さっきから色々話してますけど、そもそもあなた何者ですか?」
「あ、そもそも伝えてなかったね
僕はこの神社で祀られていた神様だよ」
神様?
この少年が神様とは思えないです。
だって、普通の小学生と見た目同じですから。
「まあ、最初聞いたら驚くよね
普通神様と言えば、大人なイメージだもんね」
と言うと、彼はちょっと目を逸らして一呼吸置いて、続けました。
「ここって、変なところにある神社でしょ?」
確かに、ここは街中の一角にあって、不思議な神社です。
だから、私は無言で頷きました。
「この神社はね、この地域のある問題を、神頼みで解決するために建てられたんだ」
すると、また彼は少し躊躇ってから、
「この地域の問題
それは、流産や死産の多さなんだ
この地域では、昔から流産が多くて、その子供たちを祀るために建てたのがこの神社の由来なんだ」
そんなこと、私は知りませんでした。
まあ、私もまだ子供だから、分からないことが多いですが、この地域で流産が多いなんて、聞きもしませんでした。
「それで、僕は流産等をした親の心から産まれたんだ
だから、僕の姿は『健康な子供』がイメージになっているんだ」
えーっと
まったく話についていけません。
すると、その表情が読み取れたのか
「普通の人からしたら、神様がどういうものかわかんないもんね
神様っていうのは、神話とかで書かれているだけじゃないんだ
僕みたいに、地域の願いを具現化させた神様もかなりいるんだよ
僕のような神様は、地域の人達が考えた姿形になるんだ
神話に書かれている神様は絶対消えないけど、僕等は地域の信仰心が無くなれば消えてしまうんだよ」
えーっと、すごい色々話されてわからないです。
神話に書かれていない神様もいるってことですよね。
しかも、目の前にいる少年もその1人ってことですし。
「まあ、きっと今色々話されて、混乱してるだろうから簡単に言うとね
僕のことを信仰していた最後の人が亡くなったんだ
だから、もうすぐ僕は消えてしまうの」
「消えちゃうの?」
自分でも意外で、思考よりも先に言葉が出ました。
「うん
僕を信じている人がいなくなったからね
ちょうどさっき見えたんじゃないかな
信仰者たちの星が消える瞬間を」
その言葉を聞いて、私ははっとしましまた。
ちょうど御堂の外にいた時、星が輝いて消えていったところを見ました。
「あの星はね
僕の最後の信仰者だったあの子の星だったんだよ
だから、僕はもうじき消えてしまう前に、君にひとつ頼みたいことがあるんだ」
「私に?」
「うん
僕はこの鳥居の外には出られないけど、君の体を借りて外に出たいんだ
最後の信仰者にお礼を伝えたいんだ」
「でも、亡くなってるのでは?」
「神様なら亡くなった人の魂とも話せるからね
神様と仏様の会話だよ」
神様と仏様の会話って、凄いとしか言えないです。
「それで、私は何をしたらいいんですか?」
「体を貸してくれる許可が欲しいんだ
僕が体を借りている間、代わりに君にここに居てもらうよ
多分今から行けば1時間もかからないと思うからさ」
体を貸すですか。
もう人間の私には分からないことだらけです
でも、この優しい神様ならいいと思えてしまうのでした。
「いいですよ
きっと早く行った方がいいでしょうし」
すると、神様はすごい喜んだ顔をして
「ありがとう
それじゃあ、悪いんだけど君の体を借りるね」
と言うと、私の何かを押しました。
体を押された気がしましたが、体は動いていません。
直接心を切り離された感じです。
すると、彼の姿は見えなくなっていて、代わりに私の体が見えました。
「それじゃあ、体は借りたから、急いで彼女にあってくるね
少しの間待ってて」
と言って彼は、私の体で急いで御堂を出ていきました。
「まーだだよ」
御堂の隙間に体を滑り込ませる。
「もういいかい?」
「もういいよ」
みんなもやった事あるでしょ
かくれんぼ
決められた範囲内ならどこに隠れてもいいから、鬼に見つからないようにする遊び
私は今、友達と1体1のかくれんぼをしています。
相手は仲のいい友達です。
いつもは私のことを直ぐに見つけます。
彼女に勝ったことはありません。
だから、私はいつもの境内の、1番バレないと思う御堂の中に隠れています。
きっとこれなら見つからないでしょう。
「見つからないなぁ」
近くで友達の声がしました。
しかし、バレる訳にはいかないので、息を潜めます。
…
…
「いないなぁ
足音でも聞こえたら楽なのに」
友達は御堂の前をとおりすぎていきました。
…
そのあとも、散々周りを探して、御堂が赤に焼かれる頃、
「もう諦めたから出てきていいよ~」
と、友達が負けを認めました。
ですが、まだ見つかりたくはありません。
このまま隠れてたらどうなるのか気になったからです。
ずっと探してくれるのかな。
それとも、親とかも探しにくるのかな。
どっちにしても、面白そうです。
しかし、
「もう帰っちゃったのかな~
まあ、これだけ探しても見つからないんだし、ここにはもういないよね」
と言って、友達が遠ざかっていく音が聞こえました。
まって
と言って、御堂を出ようとしましたが、やっぱり見つかりたくなくて、出られませんでした。
そして、御堂の周辺は閑散としてしまいました。
友達が完全に帰ってしまったので、私もそろそろ帰ろうと思い、御堂を出てみると
「どこ、ここ?」
見知らぬ場所にいました。
いや、神社の中は何も変化はありません。
変わったのは神社の外側でした。
鳥居の外には、先の見えない闇に星が一つ輝いていました。
そして、その星は一段と強く輝いて、急に光を失っていきました。
周囲が光のさす隙もない闇になったとき
「もう終わりだね」
と、知らない少年?の声が背後からしました。
振り返ると、見知らぬ謎の男の子が立ってました。
この子は普通の子じゃないと知りました。
最初は何が違和感が気が付きませんでした。
ただ、よくよく見ると透けていたのです。
微妙に奥の景色が彼の体を通して見えるのです。
「あ、まだ人がいたんだね
せっかくだし、こっちにおいでよ」
といって、御堂の中に誘われました。
半透明なこととか、御堂の中から出てきたこととか、怪しいところはたくさんあります。
ですが、何か優しいぬくもりを感じたのです。
だから、私は彼についていきました。
そして、少年は御堂の中にある、椅子に似た何かに座って
「今日時間ある?
少し話を聞いてくれない?」
と、少年に頼まれました。
そして、近くの少年が座っているのに似たものに指を指したので、
「失礼します」
と言って、腰をかけました。
「それじゃあ、聞いてくれるんだね」
「はい」
すると、嬉しそうな顔になり
「人と話すなんて久しぶりで嬉しくなっちゃった
まあ、多分君が最後だし、ちょっと寂しい気もするね」
1人で色々言っている少年に、勇気を出して言ってみた。
「えっと、さっきから色々話してますけど、そもそもあなた何者ですか?」
「あ、そもそも伝えてなかったね
僕はこの神社で祀られていた神様だよ」
神様?
この少年が神様とは思えないです。
だって、普通の小学生と見た目同じですから。
「まあ、最初聞いたら驚くよね
普通神様と言えば、大人なイメージだもんね」
と言うと、彼はちょっと目を逸らして一呼吸置いて、続けました。
「ここって、変なところにある神社でしょ?」
確かに、ここは街中の一角にあって、不思議な神社です。
だから、私は無言で頷きました。
「この神社はね、この地域のある問題を、神頼みで解決するために建てられたんだ」
すると、また彼は少し躊躇ってから、
「この地域の問題
それは、流産や死産の多さなんだ
この地域では、昔から流産が多くて、その子供たちを祀るために建てたのがこの神社の由来なんだ」
そんなこと、私は知りませんでした。
まあ、私もまだ子供だから、分からないことが多いですが、この地域で流産が多いなんて、聞きもしませんでした。
「それで、僕は流産等をした親の心から産まれたんだ
だから、僕の姿は『健康な子供』がイメージになっているんだ」
えーっと
まったく話についていけません。
すると、その表情が読み取れたのか
「普通の人からしたら、神様がどういうものかわかんないもんね
神様っていうのは、神話とかで書かれているだけじゃないんだ
僕みたいに、地域の願いを具現化させた神様もかなりいるんだよ
僕のような神様は、地域の人達が考えた姿形になるんだ
神話に書かれている神様は絶対消えないけど、僕等は地域の信仰心が無くなれば消えてしまうんだよ」
えーっと、すごい色々話されてわからないです。
神話に書かれていない神様もいるってことですよね。
しかも、目の前にいる少年もその1人ってことですし。
「まあ、きっと今色々話されて、混乱してるだろうから簡単に言うとね
僕のことを信仰していた最後の人が亡くなったんだ
だから、もうすぐ僕は消えてしまうの」
「消えちゃうの?」
自分でも意外で、思考よりも先に言葉が出ました。
「うん
僕を信じている人がいなくなったからね
ちょうどさっき見えたんじゃないかな
信仰者たちの星が消える瞬間を」
その言葉を聞いて、私ははっとしましまた。
ちょうど御堂の外にいた時、星が輝いて消えていったところを見ました。
「あの星はね
僕の最後の信仰者だったあの子の星だったんだよ
だから、僕はもうじき消えてしまう前に、君にひとつ頼みたいことがあるんだ」
「私に?」
「うん
僕はこの鳥居の外には出られないけど、君の体を借りて外に出たいんだ
最後の信仰者にお礼を伝えたいんだ」
「でも、亡くなってるのでは?」
「神様なら亡くなった人の魂とも話せるからね
神様と仏様の会話だよ」
神様と仏様の会話って、凄いとしか言えないです。
「それで、私は何をしたらいいんですか?」
「体を貸してくれる許可が欲しいんだ
僕が体を借りている間、代わりに君にここに居てもらうよ
多分今から行けば1時間もかからないと思うからさ」
体を貸すですか。
もう人間の私には分からないことだらけです
でも、この優しい神様ならいいと思えてしまうのでした。
「いいですよ
きっと早く行った方がいいでしょうし」
すると、神様はすごい喜んだ顔をして
「ありがとう
それじゃあ、悪いんだけど君の体を借りるね」
と言うと、私の何かを押しました。
体を押された気がしましたが、体は動いていません。
直接心を切り離された感じです。
すると、彼の姿は見えなくなっていて、代わりに私の体が見えました。
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