音よ届け

古明地 蓮

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いつも幸せは最後に訪れて

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教室に行くと、みんながいったんの休憩を味わうように、伸びをしていたりあくびをしていたりとみんなそれぞれ違うことをしていた。
僕はそこに交じりながら、ロッカーにしまわれているお弁当を探り出した。
そして、それを手に取ると、教室に山縣と水上さんがいないことを確認してから、教室を出た。

教室を出ると、クラスの人たちにいろんな視線を投げられた。
僕はかなりのスピードで走っていたからか、周りの人からしたら、休み時間にダッシュしている変人だったんだと思う。
僕自身も、走る必要なんて一切ないのに、なんで走っているのか良く分からなかった。
それでも、とにかく階段を全力で駆け下りた。

何度も走ったせいで、かなり慣れた足取りで階段を何段飛ばしかで降りていく。
もちろん休みだから、階段にはほとんど人はいない。
いるのは、せいぜい生徒の保護者か、見回りをしている先生方ぐらいだった。
それでも、そのほぼ全員から痛い視線を向けられるのは、なかなかにつらいものだった。

どれだけ痛い視線を向けられようとも、どれだけ先生に怒られるかのすれすれを走っていても、どうしても早くいくべきところがあったんだ。
きっと、みんなそこに集まっているんだろうし、僕だけ遅くいくのはただただ申し訳ない。
だから、少しでも早くその場所につかなくちゃいけないんだ。
そうして、走り続けて、よぅやく着いた場所は、いつも見ていた部室の前の廊下だった。

部室の前の廊下に着くと、やっぱりみんなが揃っていて、そこに座ってみんなでご飯を食べていた。
昨日喧嘩してたとは思えない様な面持ちで、諒一と山縣が並んで座っていて、反対側に水上さんがいた。
僕が付いたことにみんなが気が付くと、各々手を振ったり、声をかけてくれた。
僕は、その全部にまとめて返すかのように一言言った。

「遅くなってごめん
 それじゃあ、いただきます」

と言って、僕もお弁当箱を開いて、お弁当を食べ始めた。
今日は、お昼から集まって、軽く話しながら本番に向けて調整する予定だった。
だから、みんなが先に来ているであろうと予想が付いた瞬間から、全力でこっちに向かってきたんだ。
一人だけ遅れるのは、さすがに申し訳なかったから。
まあ、僕の場合は、多分水上さん以外の二人は許してくれると思うけど。

冷蔵庫にあった最後の残り物を詰めたご飯は、あんまりおいしいと呼べる代物ではなかった。
できることだったら、少しでも料理の腕を上げて、もう少しおいしい物を作れれば良かったなって思う。
でも、不器用な僕には、まあこれが限界だから我慢するしかないんだろう。
野菜の味がぐずっていたり、味付けがうまく混ざっていなかったりで、ハチャメチャなご飯だけど、自分で作ったものって思うと食べられないものではなかった。

なんでか、みんなご飯を食べていると、ものすごく静かになっている。
いつもの僕らではありえないぐらいの、異様な雰囲気だった。
だから、一番遅くに来て、一番食べるのが遅い僕が、みんなに軽く話を振った。

「みんなはいつ頃にここに来たの?」

すると、ほとんどのご飯を食べ終えていた諒一が最初に答えた。

「六コマ目が終わったあたりで来てたかな
 少し触っておかないとと思ってね」

と、後ろにあるギターを指さしながら言った。
六コマ目ってことは、お昼前の最後のコマより一つ前のコマってことだ。
だから、七コマ目を全部練習に使っていたってことなんだろう。
他の人のことも気になったので、あからさまに山縣に視線を振ると、山縣も答えてくれた。

「僕は七コマ目の中盤あたりで来たよ
 七コマ目は空いてたから、いつでもこっちにこれたんだけど、少し遊んでから来たんだ」

あれ、確かに山縣も七コマ目じゃ見ないと思ってたら、こっちに来てたんだ。
なんか、僕一人だけ置いて行かれている感じなんだろうか。
最後の一人の、水上さんに視線を振ろうと思ってから、水上さんには声が届かないことを思い出した。
急いで、メモ用紙にさっきみんなに聞いたことと同じことを書いて渡した。
すると、水上さんは、自前のタブレットを出して答えてくれた。

「私は、六コマ目が終わってからかなぁ
 ちょうど諒一君と一緒になったからね」

やっぱりそうだったんだ。
僕以外のみんなは、お昼のもっと前にここに来ていたから、僕だけ取り残されていたんだ。
何かみんなに申し訳ないことをしてしまった気がして、急いでご飯を食べた。
折角、最後のお昼ごはんなんだから、ゆったり食べればいいものを、すぐに全部食べて、ドラムのセットをした。

まだ山縣と水上さんが食べ終わる前に、僕と諒一だけでパートごとに区切りながら弾いた。
僕ら二人だけで合わせることも少なくなかったため、二人だけでやってもある程度聴きごたえのある演奏ができる。
まあ、この二人だけの練習でも、かなりいろいろあったから、何というか微妙な気持ちだけど、少し懐かしく思った。
まだ、人がいなかったころ、山縣と諒一が喧嘩して、僕と諒一だけで演奏していたあの日を。
あの日は、山縣は帰り道に風邪をひいて、次の日に山縣の家に直接会いに行ったんだったけな。
だから、すごい思い出深いコンビなんだ。

二人だけで演奏していると、あとから山縣は言ってきた。
この三人でやると、なんだかまだ水上さんが来ていない時代のことを思い出す。
気が付けば、このバンドも水上さんがいないと何にもできないバンドになってしまったような気がする。
それでも、やっぱりこの三人でも、一体感が十分にあるし、演奏していてかなり楽しい。
ただ、物足りなさがたくさん残ってしまうのが現状だ。

そうこうしているうちにに、水上さんがキーボードー持ってやってきた。
これでカルテット全員が集合した。
これがうちのバンドだなっていう、新しい輪が生まれたのが目に見える気がする。
それぐらい、この四人でやると、ちゃんとまとまっていてしっくりくるんだ。
まあ、この曲がカルテット用だから、四人そろわないとまとまらないっていうのもあるかもしれないけど。

僕らは、特に何を話すわけでもなく、誰かが歌うわけでもなく淡々と演奏し続けた。
特に何かミスが起きるわけでもなければ、どこか特段凄いところがある風にも聞こえない。
悪く言えば淡々としている、よく言えば安定しているっていう感じだ。
なんでこうなってしまったんだろうか。

いや、その原因は簡単なことでわかりきっているんだ。
それは、この曲では諒一が歌わないことだ。
僕らの演奏の良しも悪しも全部諒一の歌のせいでもおかげでもあるわけで、その諒一の歌が抜ければ安定感は増すのかもしれないけど、盛り上がりに欠けてしまう。
その先を考えて、僕はにやりと笑みをこぼした。
他の三人が見ていたら、変な奴だと思ったかもしれないな。

僕らが練習していると、チャイムが鳴り響いた。
それと同時に、放送が行われた。

「昼休み終了まで、あと五分となりました
 各団体は準備を始めてください」

と、とうとうお昼休みが終わりを告げようとしているらしい。
と言っても、まだ僕らには関係がないから、安心していられる。
僕らの演奏は、お昼休みすぐの八コマ目ではなく、九コマ目に入れさせてもらったんだ。
八コマ目は他のバンドに譲ったというか、押し付けた感じで九コマ目に入れさせてもらったから、まだゆったりと練習していられる。
とはいっても、そろそろ移動の用意とかしたほうがいいんじゃないだろうか。
と思って、諒一に視線を振ると、やっぱり諒一は僕の思いを汲み取ってくれた。

「それじゃあ、軽く荷物をまとめておこうか
 八コマ目の途中に、すぐに移動できるように」

と言ってくれた。
僕は、あんまり使わないドラムのセットをまとめておいて、必要な三つぐらいだけで練習することにした。
他の人たちは、大体楽器が一つしかないから、特にまとめるってこともなさそうだった。
だから、わざわざ言う必要もなかったかななんて思うのだった。
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