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1章:勇者誕生
3話:私がヒロインポジションっ?!
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彼に駆け寄った瞬間、あまりの美しさに彼自身が放っているかのように強い光が目を突き刺した。
(……こんなイケメン、現実じゃありえない)
テレビで見かける芸能人やモデルだってここまでカッコいい人はなかなかいないだろう。
当然、私の身の回りには1人もいなかった。
かつて付き合っていたクズ男と比べると天と地。月とスッポン。雲泥の差。
「エイミー、今日は起きられたんだね。いつもお寝坊さんだから」
彼は柔らかい笑みを浮かべ、まるで王子様のような爽やかな声に胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
(な、なにそれ……反則でしょ……)
無類のRPG好きの私だが、恋愛シュミレーションゲームは不得意だ。
モンスターやドラゴンの方がまだ対処できる気がする。
こんなだから、現実世界でクズ男と付き合い、最終的には浮気されて逆ギレされて殺されるんだ。
イケメン君は、背が高く、体格はしっかりしているのにどこかまだ幼さの残る顔立ち。
村人の質素な服でさえ、彼の顔立ちがまるでパリコレの衣装に格上げしていた。
(……きっと、いや、絶対主要キャラね)
エイミーとは、どういう関係性なのかは分からない。
けれど、この様子だと顔見知り以上の距離感らしい。
(お寝坊さん、だって……ふふ…)
まだ心の傷は癒えていないはずなのに、胸の奥で嬉しさが大きく膨らんでいた。
「……ほら、成人の儀式が始まるみたいだよ」
彼が村長の方へ視線を向け、その仕草に促されるように私も慌てて同じ方向を向いた。
岩の前に立つ村長は、長い顎ひげを風になびかせながら口を開いた。
「よくこの日まで健康に育ってくれた。この成人の儀式が終われば、君たちは立派な大人として認められるのじゃ」
その声は穏やかで、少し眠たくなるほどゆったりとしていた。
周囲を見渡すと、ここに集まっているのは10人にも満たない若者たち。
私の知っている成人式と比べると、あまりにも規模が小さい。
それだけこの村が小さな共同体である事を表している。
「この儀式が始まったのは、はるか昔。この地に魔王を倒した勇者が訪れたのだ」
村長は青空を仰ぎながら、ゆっくりと語り出す。
「勇者は、500年前にここ『始まりの祠』に剣を残した。いつか再び現れる勇者のために。それ以来、成人を迎える若者はこの剣に触れ、もし抜くことができたなら、勇者として旅立つ事が出来る。こうして、この儀式が生まれたのだ」
(なるほど、チュートリアルの長ゼリフですね!)
頭の中でつい突っ込んでしまう。
だけど、心のどこかで期待しているのも確かだった。
(……絶対、私の隣のイケメンが勇者でしょ。だってキャラデザがもう違うもん。このビジュアルで村人Aだったら詐欺だよね)
きっと彼が剣を抜き、勇者として冒険に旅立つのだ。
そして、幼馴染ポジションにいるのが、この私。
(……え、待って!まさかのヒロインポジションだったりしない?!)
そう思った瞬間、私の脳内ではお決まりのイベントムービーが始まる。
画面の周りには花びらが舞い、BGMはしっとりしたピアノ。
イケメン君がゆっくりとこちらを振り向く。
風に髪がなびき、表情は切なげ。
「……エイミー、僕は勇者に選ばれてしまった。僕は旅立たなければならない」
「やっぱり、勇者はあなただったのね!? だってその顔面偏差値、村人じゃありえないもん!!」
彼は少しだけ視線を落とし、優しく笑った。
「でも、約束してくれ。僕が魔王を倒して帰ってくるまで、待っててくれるか?」
「……待つよ!何年だって待つよ!!」
叫びながら、私は全力で頷いていた。
彼はそんな私に手を伸ばし、そっと手を握る。
「ありがとう、エイミー。君がいるから、僕は強くなれる」
……はい、優勝。完全にこれから起こるイベント。
『幼馴染ヒロイン、別れの丘で約束』パターンじゃん。
はい、確実にメインヒロイン確定。
私の死は無駄じゃなかった。
クズ男の事なんか忘れて、イケメンの帰りをひたむきに待っていればいいんでしょ?
その間のスローライフも満喫します!
「……さあ、順番に剣を抜きたまえ!」
夢のような妄想は一瞬で吹き飛び、現実に引き戻された。
妄想が膨らんで、思わず頬が熱くなってしまった。
村長の声に従って、若者たちが一人ずつ台座へ進んでいく。
けれど、誰が挑戦しても剣はびくともしない。
「……っ、くそ……全然動かねぇ!」
「ダメか!やっぱり、そう簡単には抜けないな」
「今年も、勇者は現れないか……」
次々と挑戦しては肩を落として戻ってくる。
気づけば、残るは私とあのイケメン君だけになっていた。
「さあ、エイミー。先にどうぞ」
彼が優しく微笑みながら手を差し出してくる。
その声に背中を押されるように台座を登る。
(どうせ抜けないですよ。最後にイケメン君が颯爽と抜いて、村長が腰抜かすシーンね。完全に王道展開)
そう心の中で結末を予想しながら、私はそっと剣の柄に手をかける。
ひんやりとした感触が手のひらに伝わる。
「……よいしょっ!」
力を込めて引っ張った、その瞬間。
――すぽんっ。
あまりにあっさりと、剣は岩から引っこ抜かれた。
「え……?」
私の口から間抜けな声が漏れる。
周囲も、しんと静まり返っていた。
「……なななな、なんと!お主が、勇者だったとは……エイミーよ!」
村長は腰を抜かし、地面にぺたんと座り込んでしまった。
(……こんなイケメン、現実じゃありえない)
テレビで見かける芸能人やモデルだってここまでカッコいい人はなかなかいないだろう。
当然、私の身の回りには1人もいなかった。
かつて付き合っていたクズ男と比べると天と地。月とスッポン。雲泥の差。
「エイミー、今日は起きられたんだね。いつもお寝坊さんだから」
彼は柔らかい笑みを浮かべ、まるで王子様のような爽やかな声に胸の奥がぎゅっと苦しくなる。
(な、なにそれ……反則でしょ……)
無類のRPG好きの私だが、恋愛シュミレーションゲームは不得意だ。
モンスターやドラゴンの方がまだ対処できる気がする。
こんなだから、現実世界でクズ男と付き合い、最終的には浮気されて逆ギレされて殺されるんだ。
イケメン君は、背が高く、体格はしっかりしているのにどこかまだ幼さの残る顔立ち。
村人の質素な服でさえ、彼の顔立ちがまるでパリコレの衣装に格上げしていた。
(……きっと、いや、絶対主要キャラね)
エイミーとは、どういう関係性なのかは分からない。
けれど、この様子だと顔見知り以上の距離感らしい。
(お寝坊さん、だって……ふふ…)
まだ心の傷は癒えていないはずなのに、胸の奥で嬉しさが大きく膨らんでいた。
「……ほら、成人の儀式が始まるみたいだよ」
彼が村長の方へ視線を向け、その仕草に促されるように私も慌てて同じ方向を向いた。
岩の前に立つ村長は、長い顎ひげを風になびかせながら口を開いた。
「よくこの日まで健康に育ってくれた。この成人の儀式が終われば、君たちは立派な大人として認められるのじゃ」
その声は穏やかで、少し眠たくなるほどゆったりとしていた。
周囲を見渡すと、ここに集まっているのは10人にも満たない若者たち。
私の知っている成人式と比べると、あまりにも規模が小さい。
それだけこの村が小さな共同体である事を表している。
「この儀式が始まったのは、はるか昔。この地に魔王を倒した勇者が訪れたのだ」
村長は青空を仰ぎながら、ゆっくりと語り出す。
「勇者は、500年前にここ『始まりの祠』に剣を残した。いつか再び現れる勇者のために。それ以来、成人を迎える若者はこの剣に触れ、もし抜くことができたなら、勇者として旅立つ事が出来る。こうして、この儀式が生まれたのだ」
(なるほど、チュートリアルの長ゼリフですね!)
頭の中でつい突っ込んでしまう。
だけど、心のどこかで期待しているのも確かだった。
(……絶対、私の隣のイケメンが勇者でしょ。だってキャラデザがもう違うもん。このビジュアルで村人Aだったら詐欺だよね)
きっと彼が剣を抜き、勇者として冒険に旅立つのだ。
そして、幼馴染ポジションにいるのが、この私。
(……え、待って!まさかのヒロインポジションだったりしない?!)
そう思った瞬間、私の脳内ではお決まりのイベントムービーが始まる。
画面の周りには花びらが舞い、BGMはしっとりしたピアノ。
イケメン君がゆっくりとこちらを振り向く。
風に髪がなびき、表情は切なげ。
「……エイミー、僕は勇者に選ばれてしまった。僕は旅立たなければならない」
「やっぱり、勇者はあなただったのね!? だってその顔面偏差値、村人じゃありえないもん!!」
彼は少しだけ視線を落とし、優しく笑った。
「でも、約束してくれ。僕が魔王を倒して帰ってくるまで、待っててくれるか?」
「……待つよ!何年だって待つよ!!」
叫びながら、私は全力で頷いていた。
彼はそんな私に手を伸ばし、そっと手を握る。
「ありがとう、エイミー。君がいるから、僕は強くなれる」
……はい、優勝。完全にこれから起こるイベント。
『幼馴染ヒロイン、別れの丘で約束』パターンじゃん。
はい、確実にメインヒロイン確定。
私の死は無駄じゃなかった。
クズ男の事なんか忘れて、イケメンの帰りをひたむきに待っていればいいんでしょ?
その間のスローライフも満喫します!
「……さあ、順番に剣を抜きたまえ!」
夢のような妄想は一瞬で吹き飛び、現実に引き戻された。
妄想が膨らんで、思わず頬が熱くなってしまった。
村長の声に従って、若者たちが一人ずつ台座へ進んでいく。
けれど、誰が挑戦しても剣はびくともしない。
「……っ、くそ……全然動かねぇ!」
「ダメか!やっぱり、そう簡単には抜けないな」
「今年も、勇者は現れないか……」
次々と挑戦しては肩を落として戻ってくる。
気づけば、残るは私とあのイケメン君だけになっていた。
「さあ、エイミー。先にどうぞ」
彼が優しく微笑みながら手を差し出してくる。
その声に背中を押されるように台座を登る。
(どうせ抜けないですよ。最後にイケメン君が颯爽と抜いて、村長が腰抜かすシーンね。完全に王道展開)
そう心の中で結末を予想しながら、私はそっと剣の柄に手をかける。
ひんやりとした感触が手のひらに伝わる。
「……よいしょっ!」
力を込めて引っ張った、その瞬間。
――すぽんっ。
あまりにあっさりと、剣は岩から引っこ抜かれた。
「え……?」
私の口から間抜けな声が漏れる。
周囲も、しんと静まり返っていた。
「……なななな、なんと!お主が、勇者だったとは……エイミーよ!」
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