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1章:勇者誕生
4話:500年の時を経て、
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いの一番に震える声で叫んだ村長は持っていた杖を高く天に突き上げた。
すこしの沈黙の後、どよめき、ざわめき、祠の前に集まった全員の視線が一斉に私へと突き刺さる。
驚愕と期待と興奮が混じり合った目。
その視線に晒されるだけで心臓がバクバクと暴れ出し、頭の中が真っ白になった。
不意に、壇上の下にいるイケメン君と目が合った。
彼もまたみんなと同じように目を丸くし、心配している様子で私を見上げる。
はっと我に帰り、剣を岩に戻そうとするもヒビが入り、上手く戻せない。
「……ちょっと!なんで戻せないのよ!!」
諦めて壇上から慌てて降り、私は村長へと駆け寄る。
興奮し息が上がった様子の村長の肩を掴み、揺さぶる。
「ちょ、ちょっと待ってください! 無理です! 私が勇者とか!」
今まで数多くのRPGの世界を救ってきたが、私自身がやるのは全く別の話。
「そういうのはあそこのイケメンの彼にお願いします! ほら、見てくださいよ、あの見た目! 彼こそが『勇者』でしょ?!」
興奮してしまい思わず指さしてしまった。
彼はすごく困惑しているが、今はそんなの関係ない。
(彼が村人Aで、私が勇者だなんて、ありえない!!)
普通に考えれば絵面的にも彼が適任。
ゲームの登場人物は華やかな存在であるべき。
社畜あがりの一般人に務まる役割じゃない。
「エイミー……」
イケメン君は困ったように眉を下げたが、すごく優しい笑顔で微笑んだ。
「いけ…めん……が、何かわからないけど。君が選ばれたんだよ。きっと、意味があるんだ!」
「こんなカッコいい顔で言われても……!」
必死で抵抗する私をよそに、村長の興奮は治らずそれはもう、決められていたセリフでどんどん話を進めていく。
「勇者が現れた時、この祠は開かれる!そこに示された道筋を辿れば、やがて魔王の地へ導かれるのだ!!500年前の言い伝えからついに勇者が誕生した!さぁ、剣と共に、世界を救うのじゃ!!!」
村長が握っていた杖に強く力が籠る。
このセリフを自分の代で言えた事が本当に嬉しいのだろう。
余韻に浸っている表情がやけに腹が立つ。
そして、村長が足早に祠へと向かった。
(……あんたが行くの!?)
持っていた杖を使わずに小走りで中へ入って行った。
ここにいる全員が村長の俊敏な動きに、心の中で突っ込むも、ただただ見ている事しかできなかった。
(あんなに早く走れたんだ……)
そんなこともお構いなしに古びた紙を手に戻ってきた。
村長を取り囲むように私含めて全員で覗き込む。
その羊皮紙に描かれていたのは地図だった。
思っていた以上に細かく、いくつもの村や街、山や川が記されていた。
それは単なる地図ではなく、誰かが歩んだ足跡そのものだった。
「これは……」
私は、指先で印の一つをなぞった。
赤い丸印が点々と描かれており、それぞれの村や街を意味しているようだ。
その道筋の先につながる大きなバツ印。
そこが示すのは、ただの森の様だが、炭で汚したみたいに黒いモヤがかかっている様にも見える。
「きっとここが、魔王のいる場所なんだ」
そう口にすると、背筋がぞわりと冷たくなった。
ゲームなら「魔王の城」とか「ラストダンジョン」と呼ばれる場所。
「勇者エイミーよ!どうか、この村の、いやこの世界の未来を背負い、旅立ってほしい!」
村長の言葉に、周囲の村人たちも次々と声をあげた。
「エイミーならきっとやれる!」
「うちの村から勇者が出るなんて!」
「頼んだぞ、エイミー!」
期待に満ちた視線。
その温度が熱すぎて、抗う言葉を飲み込んでしまう。
(勇者なんて嫌だ、怖い、無理……)
私が渋っていると、噂を聞きつけたのか村の方からゾロゾロと人が集まっていた。
真っ先に今朝会ったばかりのお母さんが目に入り、私は無意識に彼女へと駆け寄った。
「大丈夫かい?エイミー?」
そして、私の手にある伝説の剣を見て、目を見開く。
「あんたが抜いたのかい?あんたが勇者なのかい?」
私の半泣きの顔を見て、何かを察したお母さん。
他の人は嬉しそうに口々に勇者の誕生を喜んでいるが、お母さんは私の背中をさすってくれた。
「エイミー、もちろん無理にとは言わない。か弱いあんたには冒険なんて無謀だろう」
その言葉を聞いて周りのみんながハッとした様子だった。
村の人たちの反応からエイミーは普段は大人しい子なんだと察する。
「確かに……。細い腕であんなを大きな剣を?」
「あの子は村から出たことないんだよ!」
「森にいる小さいスライムにだって勝てないよ…」
そうだ、私が魔王を倒すなんて出来っこない。
何かの間違いでうっかり剣が抜けてしまったのだ。
私の不安を察したお母さんは深刻そうに話を続ける。
その村に住む全員が話に耳を傾ける。
「ただ、ね…。あんたが生まれてすぐに、私とあんたのお父さんが同じ夢に見たんだ。突然、神様が現れて『あの子は選ばれし子、17歳まで健康に育てろ』って言われたのよ」
(何そのバックボーン?!絶対勇者じゃん!生まれた時から決まってる運命じゃん!)
形成逆転し、村の人たちは一変。口々に私を称え始める。
「やっぱり、エイミーが勇者だったのね!」
「昔から何かある子だと思っていたのじゃ!」
「エイミーお姉ちゃん、すごい!!」
本当に無理だ。
ゲームでコマンドを選んでいるだけでは済まない。
怪我もするし、絶対に死ぬ。
死んでもなお、教会で復活して、死ぬ。
「絶対無理です!!」
私の揺るがない決意に、お母さんも困った様子だった。
こんなにか弱いエイミーがここまで言っているんだ。
これで諦めてくれるだろうーー。
「ただ、ね…。あんたが生まれてすぐに、私とあんたのお父さんが同じ夢に見たんだ。突然、神様が現れて"あの子は選ばれし子、17歳まで健康に育てろ"って言われたのよ」
「やっぱり、エイミーが勇者だったのね!」
「昔から何かある子だと思っていたのじゃ!」
「エイミーお姉ちゃん、すごい!!」
お母さんも村の人たちも先ほど聞いたことを全く同じことを言っている。
(……なんだこれ)
『はい』って言うまで繰り返すやつ?
リアルでされるのこんなにムカつくんだ……。
「……わかりました」
小さな声でそう答えると、どっと歓声が上がった。
村中が祝福の渦に包まれる。
でも私の胸の中は、不安と恐怖でいっぱいだった。
(どうしよう……本当に旅立たなきゃいけないの?)
その時、不意にイケメン君と目が合った。
イケメンだから1番に目が行くみたい。
私と同じ様に不安そうな顔でこちらを見ている。
私は考えるよりも先に言葉を発した。
「……条件があります!!」
私の提案にここにいる誰もが動きを止めた。
「ひとりで旅立つなんて無理です!?魔王をひとりで倒すなんて無謀です!勇者ってパーティー組むのがRPGの基本よね?」
勢いよく振り返り、私はイケメン君の両手をがしっと掴んだ。
「君!一緒に来て!」
「えっ……?」
「お願い!君のその顔…いや、君がいてくれたら……きっと、どこへでも行ける!」
私の提案にイケメン君はさらに困惑した表情をしている。
巻き込んで申し訳ないが、絶対そのビジュは平民なわけがない。
きっと、何か特別な存在のはずだ。
彼の美しい顔がそれを物語っている。
「僕は、ただの農家の息子だよ?そんな勇者様にお供するなんて、畏れ多いよ」
「何言ってるんだい!ウィル」
「母さん…」
あなた、『ウィル』っていうのね。
「勇者様が選んでくれてるんだよ!こんな光栄なことはないよ!エイミーちゃんがあんたを必要としてるんだよ!」
「そうだぞ、ウィル。小さな村の小さな農家の息子が勇者御一行に加わるなんで、我が家の誇りだ!日々、農作業で足腰鍛えているのは、この日のためだろ?」
私の必死の訴えに、ウィルは一瞬目を丸くしたが、すぐに顔をほころばせた。
「……わかった。俺もエイミーと一緒に行くよ。俺が、勇者エイミーを守る戦士になるよ!」
何だこの甘酸っぱいセリフをさらっという人たらしは。
罪作りな男。
顔が熱くなるのを感じながらも、私はぎゅっと彼の手を握りしめた。
「本当にありがとう!!」
ウィルは嬉しそうに、どこか照れ臭そうに感謝の言葉を受け入れた。
「よし、決まりじゃ!勇者エイミーと戦士ウィル。ここに誕生じゃ!!」
村人たちから再び歓声が上がる。
それは祝福と希望に満ちた音。
だけどその裏には、確実に背負うべき重圧があることを、私は理解していた。
「エイミー、出発は明日だね」
隣に立つウィルが、優しく微笑む。
「冒険は大変だけど、俺が一緒だから安心して」
「うん……。ありがとう、ウィル」
その笑顔に勇気をもらいながら、私は決意を固める。
勇者としての冒険が、今まさに始まろうとしていた。
すこしの沈黙の後、どよめき、ざわめき、祠の前に集まった全員の視線が一斉に私へと突き刺さる。
驚愕と期待と興奮が混じり合った目。
その視線に晒されるだけで心臓がバクバクと暴れ出し、頭の中が真っ白になった。
不意に、壇上の下にいるイケメン君と目が合った。
彼もまたみんなと同じように目を丸くし、心配している様子で私を見上げる。
はっと我に帰り、剣を岩に戻そうとするもヒビが入り、上手く戻せない。
「……ちょっと!なんで戻せないのよ!!」
諦めて壇上から慌てて降り、私は村長へと駆け寄る。
興奮し息が上がった様子の村長の肩を掴み、揺さぶる。
「ちょ、ちょっと待ってください! 無理です! 私が勇者とか!」
今まで数多くのRPGの世界を救ってきたが、私自身がやるのは全く別の話。
「そういうのはあそこのイケメンの彼にお願いします! ほら、見てくださいよ、あの見た目! 彼こそが『勇者』でしょ?!」
興奮してしまい思わず指さしてしまった。
彼はすごく困惑しているが、今はそんなの関係ない。
(彼が村人Aで、私が勇者だなんて、ありえない!!)
普通に考えれば絵面的にも彼が適任。
ゲームの登場人物は華やかな存在であるべき。
社畜あがりの一般人に務まる役割じゃない。
「エイミー……」
イケメン君は困ったように眉を下げたが、すごく優しい笑顔で微笑んだ。
「いけ…めん……が、何かわからないけど。君が選ばれたんだよ。きっと、意味があるんだ!」
「こんなカッコいい顔で言われても……!」
必死で抵抗する私をよそに、村長の興奮は治らずそれはもう、決められていたセリフでどんどん話を進めていく。
「勇者が現れた時、この祠は開かれる!そこに示された道筋を辿れば、やがて魔王の地へ導かれるのだ!!500年前の言い伝えからついに勇者が誕生した!さぁ、剣と共に、世界を救うのじゃ!!!」
村長が握っていた杖に強く力が籠る。
このセリフを自分の代で言えた事が本当に嬉しいのだろう。
余韻に浸っている表情がやけに腹が立つ。
そして、村長が足早に祠へと向かった。
(……あんたが行くの!?)
持っていた杖を使わずに小走りで中へ入って行った。
ここにいる全員が村長の俊敏な動きに、心の中で突っ込むも、ただただ見ている事しかできなかった。
(あんなに早く走れたんだ……)
そんなこともお構いなしに古びた紙を手に戻ってきた。
村長を取り囲むように私含めて全員で覗き込む。
その羊皮紙に描かれていたのは地図だった。
思っていた以上に細かく、いくつもの村や街、山や川が記されていた。
それは単なる地図ではなく、誰かが歩んだ足跡そのものだった。
「これは……」
私は、指先で印の一つをなぞった。
赤い丸印が点々と描かれており、それぞれの村や街を意味しているようだ。
その道筋の先につながる大きなバツ印。
そこが示すのは、ただの森の様だが、炭で汚したみたいに黒いモヤがかかっている様にも見える。
「きっとここが、魔王のいる場所なんだ」
そう口にすると、背筋がぞわりと冷たくなった。
ゲームなら「魔王の城」とか「ラストダンジョン」と呼ばれる場所。
「勇者エイミーよ!どうか、この村の、いやこの世界の未来を背負い、旅立ってほしい!」
村長の言葉に、周囲の村人たちも次々と声をあげた。
「エイミーならきっとやれる!」
「うちの村から勇者が出るなんて!」
「頼んだぞ、エイミー!」
期待に満ちた視線。
その温度が熱すぎて、抗う言葉を飲み込んでしまう。
(勇者なんて嫌だ、怖い、無理……)
私が渋っていると、噂を聞きつけたのか村の方からゾロゾロと人が集まっていた。
真っ先に今朝会ったばかりのお母さんが目に入り、私は無意識に彼女へと駆け寄った。
「大丈夫かい?エイミー?」
そして、私の手にある伝説の剣を見て、目を見開く。
「あんたが抜いたのかい?あんたが勇者なのかい?」
私の半泣きの顔を見て、何かを察したお母さん。
他の人は嬉しそうに口々に勇者の誕生を喜んでいるが、お母さんは私の背中をさすってくれた。
「エイミー、もちろん無理にとは言わない。か弱いあんたには冒険なんて無謀だろう」
その言葉を聞いて周りのみんながハッとした様子だった。
村の人たちの反応からエイミーは普段は大人しい子なんだと察する。
「確かに……。細い腕であんなを大きな剣を?」
「あの子は村から出たことないんだよ!」
「森にいる小さいスライムにだって勝てないよ…」
そうだ、私が魔王を倒すなんて出来っこない。
何かの間違いでうっかり剣が抜けてしまったのだ。
私の不安を察したお母さんは深刻そうに話を続ける。
その村に住む全員が話に耳を傾ける。
「ただ、ね…。あんたが生まれてすぐに、私とあんたのお父さんが同じ夢に見たんだ。突然、神様が現れて『あの子は選ばれし子、17歳まで健康に育てろ』って言われたのよ」
(何そのバックボーン?!絶対勇者じゃん!生まれた時から決まってる運命じゃん!)
形成逆転し、村の人たちは一変。口々に私を称え始める。
「やっぱり、エイミーが勇者だったのね!」
「昔から何かある子だと思っていたのじゃ!」
「エイミーお姉ちゃん、すごい!!」
本当に無理だ。
ゲームでコマンドを選んでいるだけでは済まない。
怪我もするし、絶対に死ぬ。
死んでもなお、教会で復活して、死ぬ。
「絶対無理です!!」
私の揺るがない決意に、お母さんも困った様子だった。
こんなにか弱いエイミーがここまで言っているんだ。
これで諦めてくれるだろうーー。
「ただ、ね…。あんたが生まれてすぐに、私とあんたのお父さんが同じ夢に見たんだ。突然、神様が現れて"あの子は選ばれし子、17歳まで健康に育てろ"って言われたのよ」
「やっぱり、エイミーが勇者だったのね!」
「昔から何かある子だと思っていたのじゃ!」
「エイミーお姉ちゃん、すごい!!」
お母さんも村の人たちも先ほど聞いたことを全く同じことを言っている。
(……なんだこれ)
『はい』って言うまで繰り返すやつ?
リアルでされるのこんなにムカつくんだ……。
「……わかりました」
小さな声でそう答えると、どっと歓声が上がった。
村中が祝福の渦に包まれる。
でも私の胸の中は、不安と恐怖でいっぱいだった。
(どうしよう……本当に旅立たなきゃいけないの?)
その時、不意にイケメン君と目が合った。
イケメンだから1番に目が行くみたい。
私と同じ様に不安そうな顔でこちらを見ている。
私は考えるよりも先に言葉を発した。
「……条件があります!!」
私の提案にここにいる誰もが動きを止めた。
「ひとりで旅立つなんて無理です!?魔王をひとりで倒すなんて無謀です!勇者ってパーティー組むのがRPGの基本よね?」
勢いよく振り返り、私はイケメン君の両手をがしっと掴んだ。
「君!一緒に来て!」
「えっ……?」
「お願い!君のその顔…いや、君がいてくれたら……きっと、どこへでも行ける!」
私の提案にイケメン君はさらに困惑した表情をしている。
巻き込んで申し訳ないが、絶対そのビジュは平民なわけがない。
きっと、何か特別な存在のはずだ。
彼の美しい顔がそれを物語っている。
「僕は、ただの農家の息子だよ?そんな勇者様にお供するなんて、畏れ多いよ」
「何言ってるんだい!ウィル」
「母さん…」
あなた、『ウィル』っていうのね。
「勇者様が選んでくれてるんだよ!こんな光栄なことはないよ!エイミーちゃんがあんたを必要としてるんだよ!」
「そうだぞ、ウィル。小さな村の小さな農家の息子が勇者御一行に加わるなんで、我が家の誇りだ!日々、農作業で足腰鍛えているのは、この日のためだろ?」
私の必死の訴えに、ウィルは一瞬目を丸くしたが、すぐに顔をほころばせた。
「……わかった。俺もエイミーと一緒に行くよ。俺が、勇者エイミーを守る戦士になるよ!」
何だこの甘酸っぱいセリフをさらっという人たらしは。
罪作りな男。
顔が熱くなるのを感じながらも、私はぎゅっと彼の手を握りしめた。
「本当にありがとう!!」
ウィルは嬉しそうに、どこか照れ臭そうに感謝の言葉を受け入れた。
「よし、決まりじゃ!勇者エイミーと戦士ウィル。ここに誕生じゃ!!」
村人たちから再び歓声が上がる。
それは祝福と希望に満ちた音。
だけどその裏には、確実に背負うべき重圧があることを、私は理解していた。
「エイミー、出発は明日だね」
隣に立つウィルが、優しく微笑む。
「冒険は大変だけど、俺が一緒だから安心して」
「うん……。ありがとう、ウィル」
その笑顔に勇気をもらいながら、私は決意を固める。
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