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3.飼うならかわいい猫がいい
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***
「専務、そういや家政婦さんどうですか? 代わりの人、見つかったんすか?」
「いや。家政婦は当分いらん」
「ふぅん、そうすか」
ため息をつきながら八雲が置いたカップを覗けば、案の定――なんだこれ、見るからに薄いだろ。
「まずっ」
予想を覆さない味に、がっかりを通り越してあきれるしかない。
「えっ、ほんとッスか」
「飲んでみろ。ったくお前も、どうやったらコーヒーメーカーでこんなにまずくできるんだ」
「壊れてんですかね」
「んなわけねぇ、粉の分量くらい真面目にいれろ」
八雲はコーヒーを淹れるのが下手だ。というよりも、まったくやる気がない。
公認会計士の資格は持っているし、頭のいいやつだが、コーヒーを淹れるという作業が嫌なのだ。
まだ八雲が尻の青い下っ端だった頃、質の悪い兄貴分にコーヒーの淹れ方が悪いと何度もぶちまけられた経験がある。それを思い出すのかもしれない。
「はぁーい。ってか、臨時でもいいから女の子置いてくださいよぉ。秘書課のミキちゃんじゃダメなんですかぁ。美人だし気が利くしいいじゃないですか」
「お前知らないのか、あいつ常務の女だぞ」
「マジすか! あんな爺と?」
「爺だって何だって金はあるからな」
嫌そうに顔を歪めながら八雲は肩をすくめる。
「ミキちゃん、がっかりだなぁー。清純派っぽいのに」
「ぽいだけだ」
目つきでわかるだろ。
常務は次期社長の座を狙っている。いわば俺の敵。
敵のネズミを、このオフィスで唯一、俺が素でいられる専務室に入れるわけにはいかない。
俺や八雲は今でこそ澄まして仕事をしているが、もとは極道だ。隠さなきゃいけないことも多い。
組の名は『昇竜会』といった。
すでに跡形もないが、堅気になった今でも残っているものはあるし、裏社会とまったく付き合いがないわけじゃない。
龍崎組は堅気の俺の親父が一代で築き上げたゼネコンだ。
極道のフロント企業ではないが、俺たちの過去を掘り出し、足を掬おうとするやつらは後を絶たない。
側近はどうしても慎重に選ばざるをえない。
そんな中、家政婦と秘書が辞めた。
退職した女性秘書は交際相手がもと昇竜会のやつだから安心できたし、口が堅くて頭のいい女だった。家政婦も秘書も、結婚という祝い事なので快く見送ったが、代わりを見つけるのに予想以上に手間取っている。
「専務、そういや家政婦さんどうですか? 代わりの人、見つかったんすか?」
「いや。家政婦は当分いらん」
「ふぅん、そうすか」
ため息をつきながら八雲が置いたカップを覗けば、案の定――なんだこれ、見るからに薄いだろ。
「まずっ」
予想を覆さない味に、がっかりを通り越してあきれるしかない。
「えっ、ほんとッスか」
「飲んでみろ。ったくお前も、どうやったらコーヒーメーカーでこんなにまずくできるんだ」
「壊れてんですかね」
「んなわけねぇ、粉の分量くらい真面目にいれろ」
八雲はコーヒーを淹れるのが下手だ。というよりも、まったくやる気がない。
公認会計士の資格は持っているし、頭のいいやつだが、コーヒーを淹れるという作業が嫌なのだ。
まだ八雲が尻の青い下っ端だった頃、質の悪い兄貴分にコーヒーの淹れ方が悪いと何度もぶちまけられた経験がある。それを思い出すのかもしれない。
「はぁーい。ってか、臨時でもいいから女の子置いてくださいよぉ。秘書課のミキちゃんじゃダメなんですかぁ。美人だし気が利くしいいじゃないですか」
「お前知らないのか、あいつ常務の女だぞ」
「マジすか! あんな爺と?」
「爺だって何だって金はあるからな」
嫌そうに顔を歪めながら八雲は肩をすくめる。
「ミキちゃん、がっかりだなぁー。清純派っぽいのに」
「ぽいだけだ」
目つきでわかるだろ。
常務は次期社長の座を狙っている。いわば俺の敵。
敵のネズミを、このオフィスで唯一、俺が素でいられる専務室に入れるわけにはいかない。
俺や八雲は今でこそ澄まして仕事をしているが、もとは極道だ。隠さなきゃいけないことも多い。
組の名は『昇竜会』といった。
すでに跡形もないが、堅気になった今でも残っているものはあるし、裏社会とまったく付き合いがないわけじゃない。
龍崎組は堅気の俺の親父が一代で築き上げたゼネコンだ。
極道のフロント企業ではないが、俺たちの過去を掘り出し、足を掬おうとするやつらは後を絶たない。
側近はどうしても慎重に選ばざるをえない。
そんな中、家政婦と秘書が辞めた。
退職した女性秘書は交際相手がもと昇竜会のやつだから安心できたし、口が堅くて頭のいい女だった。家政婦も秘書も、結婚という祝い事なので快く見送ったが、代わりを見つけるのに予想以上に手間取っている。
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