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6・止められない
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そして迎えたゴールデンウィークの初日。
男友達を紹介してもらうべく、私は叔母夫婦と一緒に出掛けた。
仔犬のような銀行マンとは、ホテルのレストランでランチタイムに会う予定になっている。待ち合わせの場所まではアキラ叔父さんの車で行って、紹介だけしてもらうのだ。
「真面目な好青年だぞ。それについては俺が保障する」と、アキラ叔父さん。
「はーい」
「友達とはいっても、本当に気にいったらでいいぞ? 安売りする必要はないからな、小恋はかわいいんだからいくらだって他にいる」
「あはは、またまたぁ」
「そうよ小恋、少なくとも一回断ったくらいで引き下がる男もダメ。強気でいきなさい」
「はい。がんばるー」
叔母夫婦の話を聞いていると、まるで私が引く手あまたのお嬢様みたい。
田舎の祖母や母は今を逃したら一生結婚できないぞという勢いでお見合いを薦めてきたというのに、この違いはなに?
都会と田舎の違いなのか、頭の固さの問題なのか。
いずれにしても叔母夫婦の気遣いのおかげで、すっかり気持ちは楽になった。
なにしろ結婚を前提にとか恋人じゃなくて、友だちでいいというお墨付きなのだから。
叔母夫婦と一緒に到着した待ち合わせ場所には、写真で見た通りの、笑顔が素敵な男性がいた。
「小恋、こちら高村さん」
「はじめまして」
高村さんは、すらりとしていて普通にイケメンだった。
私よりも二歳年上のはずだけど、スーツではないぶん写真よりもさらに若々しく見える。
「じゃあな」
実彩子ちゃんと叔父さんが行ってしまうと、私たちは予約してあるホテルのレストランに向かった。
「ご迷惑じゃなかったですか? 僕が強引にお願いしちゃったから」
「いいえ、どうせ暇なんで。あの、強引にっていうのは?」
「小恋さんは覚えていないでしょうけど、以前お見かけしたんですよ。毛利さんの会社にいらしていることがありましたよね?」
毛利さんとはアキラ叔父さんのこと。叔父さんの会社には専務の家政婦を契約した時に行っている。社会保険の関係もあって、いったん私は叔父さんの会社と契約して、派遣されるという扱いになっていたからだ。
「年明けの頃に一度だけ行きましたけど、そのときでしょうか?」
「はいはい、たぶんそうです。綺麗な人だなぁってずっと気になっていて。今は龍崎組にお勤めとか?」
「はい。まだまだ慣れなくて」
うまいなぁと思う。初対面で綺麗な人と言われたら、女性なら誰もがうれしいはずだ。たとえそれがお世辞だとしても、やっぱり気持ちは浮き立つ。
「食事、苦手なものとかあります?」
「いいえ、好き嫌いもアレルギーもないんです。高村さんは?」
「僕もクサヤとか豚足は手がでませんが」
「あはは。どっちも食べたことがないです」
明るい人なので会話はポンポンと弾む。叔父さんの話とか、休みの日になにをしているとか。まるで以前からの知り合いのよう。
話をしながら、ホテルのロビーに入り――。
と、その時だった。
あっ!
ロビーに龍崎専務がいた。
男友達を紹介してもらうべく、私は叔母夫婦と一緒に出掛けた。
仔犬のような銀行マンとは、ホテルのレストランでランチタイムに会う予定になっている。待ち合わせの場所まではアキラ叔父さんの車で行って、紹介だけしてもらうのだ。
「真面目な好青年だぞ。それについては俺が保障する」と、アキラ叔父さん。
「はーい」
「友達とはいっても、本当に気にいったらでいいぞ? 安売りする必要はないからな、小恋はかわいいんだからいくらだって他にいる」
「あはは、またまたぁ」
「そうよ小恋、少なくとも一回断ったくらいで引き下がる男もダメ。強気でいきなさい」
「はい。がんばるー」
叔母夫婦の話を聞いていると、まるで私が引く手あまたのお嬢様みたい。
田舎の祖母や母は今を逃したら一生結婚できないぞという勢いでお見合いを薦めてきたというのに、この違いはなに?
都会と田舎の違いなのか、頭の固さの問題なのか。
いずれにしても叔母夫婦の気遣いのおかげで、すっかり気持ちは楽になった。
なにしろ結婚を前提にとか恋人じゃなくて、友だちでいいというお墨付きなのだから。
叔母夫婦と一緒に到着した待ち合わせ場所には、写真で見た通りの、笑顔が素敵な男性がいた。
「小恋、こちら高村さん」
「はじめまして」
高村さんは、すらりとしていて普通にイケメンだった。
私よりも二歳年上のはずだけど、スーツではないぶん写真よりもさらに若々しく見える。
「じゃあな」
実彩子ちゃんと叔父さんが行ってしまうと、私たちは予約してあるホテルのレストランに向かった。
「ご迷惑じゃなかったですか? 僕が強引にお願いしちゃったから」
「いいえ、どうせ暇なんで。あの、強引にっていうのは?」
「小恋さんは覚えていないでしょうけど、以前お見かけしたんですよ。毛利さんの会社にいらしていることがありましたよね?」
毛利さんとはアキラ叔父さんのこと。叔父さんの会社には専務の家政婦を契約した時に行っている。社会保険の関係もあって、いったん私は叔父さんの会社と契約して、派遣されるという扱いになっていたからだ。
「年明けの頃に一度だけ行きましたけど、そのときでしょうか?」
「はいはい、たぶんそうです。綺麗な人だなぁってずっと気になっていて。今は龍崎組にお勤めとか?」
「はい。まだまだ慣れなくて」
うまいなぁと思う。初対面で綺麗な人と言われたら、女性なら誰もがうれしいはずだ。たとえそれがお世辞だとしても、やっぱり気持ちは浮き立つ。
「食事、苦手なものとかあります?」
「いいえ、好き嫌いもアレルギーもないんです。高村さんは?」
「僕もクサヤとか豚足は手がでませんが」
「あはは。どっちも食べたことがないです」
明るい人なので会話はポンポンと弾む。叔父さんの話とか、休みの日になにをしているとか。まるで以前からの知り合いのよう。
話をしながら、ホテルのロビーに入り――。
と、その時だった。
あっ!
ロビーに龍崎専務がいた。
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