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六、短くも長い、二週間
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しおりを挟む「副社長、夕食はどうしましょう?」
秘書の加々美がテイクアウトメニューを差し出した。
「今日もこんな時間か」
腕時計を見れば、夜の八時を回っていた。昨日は鰻重、一昨日は寿司。その前は――
メニュー表を見たところで食べたいものは浮かばず、一番簡単に食べられそうなハンバーガーを頼んだ。
「ポテトは大でいいですね?」
「いらない」
「え? ポテト、頼まないんですか?」
「君は頼んだらいい。なんだか楽しそうだな?」
レセプションパーティーの次の日から一週間余り、渡米する準備もあり毎日残業が続いている。それは秘書の彼女も同じだ。疲れているだろうに定時で帰っていた時よりも溌剌として見えた。
「ええ、私は忙しい方が性に合っていますから」
「ありがたいが、残業続きで喜ぶのは君くらいだぞ」
にやりと笑みを浮かべた加々美は「失礼します」と執務室を出て行った。
一人になった隼人は、背もたれに体を預けて大きくため息を吐いた。
目を閉じて目頭を抑えると、美咲の笑顔が瞼の裏に浮かぶ。
今頃は食事の片付けも終わって、風呂に入る準備をしている頃か――
背もたれから上半身を起こし、スマホを取ってメッセージを書く。
【おにぎりおいしかったよ。ありがとう。今夜も帰りは遅くなりそうだ】
画面を見つめているうちに既読のマークがつき、返信が来る。
【お疲れ様です。無理せず頑張ってくださいね】
君の笑顔の写真を貼ってくれよと返したかったが、ため息混じりにスマホをテーブルの上に置く。
昼食用の弁当は今も毎日作ってもらっている。出先でそのまま外食する日もあるが、そういう場合は後で弁当を広げる。今日は銀ダラの西京漬けと大葉で挟んで焼いたつくねが入っていた。ここ数日はおにぎりがメインだったが、最近の隼人の食事事情を心配して食べやすいおかずを多めに入れてくれている。一つひとつ口にする度に彼女の存在を感じながら食べる。そのひと時が、唯一ホッとできる時間だ。
ここ数日、隼人の帰宅は日付が変わる深夜に近い。基本的に早寝早起きの美咲は、十時には寝てしまうので寝顔しか見られない。起こしてしまうのも忍びなく自分の寝室で寝ている。
とにかく今は、仕事を優先しなければ……
気を取り直して執務室にあるカプセルタイプのコーヒーを淹れた。コーヒーを片手に書類を一つ整理したところでハンバーガーが届き、加々美が持ってきた。
「冷める前に食べよう」
「そうですね」
打ち合わせがてら加々美ともう一人の秘書を交えて食べる。彼女は分厚いトマトが挟んであるいかにもヘルシーなバーガーを頼んだようだ。それでもプライドポテトは外せないらしい。もう一人の秘書は隼人の一回り年上の男性で隼人と同じくダブルチーズバーガーを頼んでいた。
「二人とも、丹下大臣のパーティーは頼むな。俺は大臣と心当たりがある知人にあたってみる」
丹下大臣とは絵梨花の父親である外務大臣だ。
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