月城副社長うっかり結婚する 〜仮面夫婦は背中で泣く〜

白亜凛

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◆.アレキサンドライトの指輪

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「何が言いたい?」

「姉と結婚した本当の理由を聞かせてくれませんか。姉には――。やっぱりおかしいです」

 姉には――?

 そうか。あの男に、何か吹き込まれたわけか。
 幼馴染というからには、一俊も名波と親しいはず。

「それは、わざわざここに来て聞くようなことなのか? 聞きたければうちに来るといい」
 有無を言わさず席を立った。

「でも、姉の前では聞けないです」

 振り返って念のために聞いた。

「それで。聞いてどうする?」

 一俊は答えに窮している。開きかけた口を閉じて唇を噛む。

 呆れたもんだ。
 答えを用意せずに来たのか?

「君はどれだけ子供なんだ。俺は君の姉さんに無理を言った覚えはない。離婚したほうがいいならいつでもするぞ?」

 一俊は目を丸くして唖然とする。

「えっ? そ、それはどういう意味ですか」

 姉も姉なら、弟も弟だ。
 俺にどうしろと?

「じゃ失礼。二度と来るなよ、ここは会社だ」

 何か言いたそうな一俊を置いてそのまま背を向けた。


 エレベーターに乗りエントランスに向き直ると、うつむいたまま通りへ出ていく一俊の後ろ姿が見えた。

 視線を右にずらすと受付カウンターから、さっきの派遣社員が一俊を心配そうに見つめている。

 一俊は文武両道な上にビジュアルがいい。
 中学までは青扇に通い、父親の事業の失敗を機に高校からは公立の有名進学校に進んでいる。

 弥衣に似て愛嬌もあるので、いずれの学校でも人気者だったようだ。

 滲み出る好感度。
 女性にはまんべんなく好かれるに違いなく、受付の彼女が断り切れなかった理由もそこにある。

 あれで医者になればどれだけモテることやら、世の中ちょろいものだと勘違いしないか。わが弟ながら心配になるが。

 あと先考えずに会いに来るあたり、真っ直ぐな心を持っているんだろう。


 それにしても。
 分別はあるだろうに、いきなり会社に押しかけてくるとは。

 どこまでシスコンなんだ、お前は。
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