ALL MY THINGS 〜耳鳴りが止まるまで〜

はいとく

文字の大きさ
12 / 21

それぞれの夜 2

しおりを挟む
ー “よーすけ”の夜 ー

「さてと、シャワーも浴びたしヤるか!」
と、さっきまで思っていたのだが、疲れで、そんな気も失せていた。
「1人って、こんなに退屈だったっけ...」
大体いつも独りでいたし、特にそれに不満を感じたりした事も無かった。
(漠然と、彼女が欲しいとは思っていたが)
思えば今まで、学校に行けば友達はいたし、仲間外れにされたりした事だって無い。
仲間外れ?仲間って何だ?今まで仲間って呼べるヤツいたか?
多分、”あずき”が初めてだ...
オレは自分の中で、どれだけ”あずき”の存在が大きなものになっていたのかに気づいた...
「ヒマだな」

~ 屋台にでも行くか... ~

オレは、いつもの屋台に行って飲み直す事にした。”あずき”も今日は疲れただろうから、誘う事はしなかった。

「ビールと大根ください。あと、コンニャク」
「はいよ。兄さん今日は1人かい?」
「はい」

~ ん?NPCが世間話? ~

「オジサン?店長?大将?」
「オジサンは酷えなぁ。せめてオヤッサンくらいにしてくれよ。」
「あれ?だって、NPC...」
「おー!ゴメン、ゴメン!」

そう言ってオヤッサンはその場にしゃがみ込んだ。

「あーーーっ!」

驚いた。今まで屋台の屋根に隠れていて見えなかったが、頭の上にプレイヤーネームが表示されている。”やすお”さんか。

~ ん?称号は付いて無いな ~

「オレな、このゲーム始めたばっかりだったんだよ。だから狩りに行く事も出来ないし、路頭に迷っていたらアッチで焼き鳥の屋台やってる人が教えてくれたんだよ。屋台なら材料買って来ればプレイヤーも商売出来るって。」

~ 焼き鳥の屋台もあるのか。ココからは見えないな... ~

「でも屋台買うお金とか...」

「装備とか整える為に最初に20万持ってるだろ?ホントに始めたばっかりだったから手付かずで持ってたのよ。」

~ そんな事も出来るんだ ~

「それにしても、NPCだと思われちゃうんなら、少しフレンドリーにした方がイイかなぁ?」
「その方がイイと思いますよ。」
「おっ!いらっしゃい!兄さん、1人かい?」

オレの他に、もう1人お客さんが来た。
オヤッサン、早速フレンドリーになってる。笑

「はい。焼酎のウーロン割りと、つくね下さい。この街にも屋台あるんですね。」

~ 他の街から来たのか... ~

「どこから来たんだい?」
「昭和からです。さっき着いたところなんです。昼から食べて無いから、お腹空いちゃって。」
「そうかい、沢山食べてってくれよ!そう言やぁ、いつも公園のベンチで寝てた若いカップル、昭和の街に行くって言ってたなぁ。昨日だったか..」

~ あの2人の事だ。昭和に行ったのか... ~

「こんばんは」

オレに話し掛けてきた。えっと名前は..”H・しういち”

~ “しういち”?!変な名前だなぁ ~

「こんばんは、えっと、”H”って..?」
「あぁ多分ボク、ヒーラーです。」

~ なるほど! ~

「仲間の人は宿ですか?」
「ボク、ソロなんです。」
「え!?ソロで昭和から来たんですか?よく無事でしたね?!」
「昭和とココ(令和)の間って、脇に逸れなければ、追い剥ぎ紛いの”落武者”しか居ないんですよ。」

~ そうか! ~

落武者はアンデッド系モンスターなのでレベルの低い回復魔法でも面白い様に倒せるらしい。攻略サイトで見た事がある。

~ と、かなり夜も更けてきたし、結構酔ったなぁ。”しういち”さんともう少し話したい気もするけど、そろそろ宿に戻るか。 ~

「”しういち”さん、オヤッサン、いろいろ為になる話ありがとうございました。そろそろ戻って寝ます。”しういち”さん、また一緒に飲みましょうね。」
「うん。宜しくね。」
「ありがとなぁ。また来てくれよー」
「はい。それじゃあ」

宿屋までの帰り道、確かに公園にあの2人の姿は無かった...
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

その掃除依頼、受けてやろう

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者パーティー「明るい未来」のリックとブラジス。この2人のコンビはアリオス王国の上層部では別の通り名で知られていた。通称「必要悪の掃除屋」。 王国に巣食った悪の組織を掃除(=始末)するからだが。 お陰で王国はその2人をかなり優遇していた。 但し、知られているのは王都での上層部だけでのこと。 2人が若い事もあり、その名は王都の上層部以外ではまだ知られていない。 なので、2人の事を知らない地方の悪の組織の下のその2人が派遣されたりすると・・・

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

万物争覇のコンバート 〜回帰後の人生をシステムでやり直す〜

黒城白爵
ファンタジー
 異次元から現れたモンスターが地球に侵攻してくるようになって早数十年。  魔力に目覚めた人類である覚醒者とモンスターの戦いによって、人類の生息圏は年々減少していた。  そんな中、瀕死の重体を負い、今にもモンスターに殺されようとしていた外神クロヤは、これまでの人生を悔いていた。  自らが持つ異能の真価を知るのが遅かったこと、異能を積極的に使おうとしなかったこと……そして、一部の高位覚醒者達の横暴を野放しにしてしまったことを。  後悔を胸に秘めたまま、モンスターの攻撃によってクロヤは死んだ。  そのはずだったが、目を覚ますとクロヤは自分が覚醒者となった日に戻ってきていた。  自らの異能が構築した新たな力〈システム〉と共に……。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

処理中です...