10 / 21
9
「ユウナ様、少しお時間よろしいですか?」
「え?」
「折り入ってお話したいことがあって」
屋外演習の翌日、教室内でシュゼットに声をかけられた。
同じクラスにいながら今まで何の接触もなかったので無意識に避けられてるのかな、と思ってたんだけど。どういう風の吹き回し?
「いいけど。話って何?」
「それが……ここではちょっと」
と言いながら私と一緒にいるセシリアをチラ見する。
「私が側にいると話しにくい内容なのですか?」
「いえ、そんなことはないんですけど。出来ればユウナ様と二人でお話したくて」
困ったように笑うシュゼット。と、突然数名のクラスメイトが割り込んで来た。
「ユウナさん、ちょっとくらい何とかなりますよね」
「ここまで頭を下げてお願いしてるんだから聞いてあげるのは当然だと思うわ」
「そうよそうよ!」
出た、シュゼット親衛隊。というか、いつ頭を下げたのか是非とも教えて欲しい。
「皆さん、偏った主観でものを言ってはいけませんわ」
見かねたセシリアがやんわりたしなめるも、聞く耳を持たないクラスメイト達。
「えー、でも元はと言えば……ねえ?」
「そうよ、むしろユウナさんから頭を下げて貰いたいくらいなのに」
親衛隊が結託し始めた。あー、あの噂についてだろうな……
「ただの噂を鵜呑みにするのも感心出来ませんね」
「セシリアさんには関係ないでしょ! 部外者は引っ込んでいてください」
「そうよそうよ!!」
未来の王太子妃に向かって何と強気な……シュゼットに魅了されると怖いもの知らずになるんだろうか。
「そうですか」
「……あなたたちも部外者ですよね」
小さく呟く声が聞こえたと思ったら、私の隣からどす黒い空気が漂い始めた……ヤバい、このままではセシリアが悪役令嬢verに戻ってしまう!
「分かった」
「本当ですか、ありがとうございます!」
手を取り合って喜ぶシュゼットと親衛隊。
「ユウナ」
「ありがとうセシリア。ちょっと行って来るね」
「では早速。お時間は取らせません!」
「え、ちょ、ちょっと……」
勢いよく手を引かれるがまま、教室の隅っこまで連れて行かれる。
「そういえば体の調子は如何ですか?」
「え?」
「昨日随分と魔力を消耗されていたようなので」
「ああ、うん。もう全然」
「それは良かったです。あ、それと……保健室ではゆっくり休めましたか?」
え、何で私が保健室に行ったことを知っている? もしかして覗き見してたとか……怖っ!
「私、回りくどいのが苦手なのでストレートに聞きますね。ユウナ様はカイル様のことをどう思っているんですか?」
「は!?」
「ちなみに私はカイル様のことをお慕いしています。なので、ユウナ様も同じ気持ちなら今ここではっきり聞かせて欲しいんです」
いきなりの先制攻撃に思わず怯んでしまった。
「わ、わたしは別に」
「そうなんですね!!」
食い気味にそう言って私の言葉を遮るシュゼット。
「あー、良かった。じゃあ何の問題もないですね」
「は?」
「ユウナ様はカイル様のこと何とも思ってないんですよね? なら私がカイル様と親しくなってもユウナ様やセシリア様からいじめられることもないだろうし」
ヒロイン思考だとそうかもしれないけど、何で私やセシリアがいじめる前提で話をする?
「落ちぶれた元ヒロインでも聖なる乙女として唯一無二のユウナ様にしゃしゃり出……ライバルとして登場されるとちょっと面倒かなーと思っていたので」
言葉遣いは丁寧なのに、言ってることは結構酷いな。
「あ、ユウナ様」
文句の一つでも言ってやろうと口を開いた途端、先を越された。
「今後カイル様には必要以上に近づかないでいただきたいんです。噂の件はご存知だと思いますけど、傍から見て誤解されるような行動は慎んで欲しくて……だって、同じ土俵の上にあがる度胸もない癖に美味しいところだけ持って行く人とか意味分からなくないですか? 勿論二人きりで会うなんてもっての外です。私の邪魔にならないよう節度をわきまえてくださいね」【身の程を知れって言ってんの、旧作ヒロイン風情が】
ん? 今何かボソッと聞こえたような……
「私からは以上です。では、戻りまーす!」
「ちょ、ちょっと!!」
呆気にとられたままの私を残し、シュゼットは満面の笑顔で親衛隊の元へと戻って行った。
*****
「あれって絶対マウント」
夜になっても今日の出来事がずっと頭に引っかかって離れない。
そもそも思い返してみたら、カイルが護衛に決まったころ私に向けていた視線や、私が見ている前でカイルに抱き着いた行為も……全部マウントじゃん!
もう結構前から牽制されていたのに気づかなかったとは何たること。
「あー、ムカムカする!」
ごろごろしていたベッドから反射的に起き上がった私はあることに気づいた。
「でもあんな初期から私にマウントを取っていたということは」
>あ、よくあるあれかな。引き続き登場はするけど今作では新ヒロインを助けるチュートリアル的な立ち位置、もしくは単純に友人ポジとか
なんて思っていたけど違う。チュートリアルでも友人枠でもない、続編での私の役目は……
ライバルポジションだ!!! ←カイルを選んだ場合の
そこにきちゃったかぁ……それにしても、こっちの言い分も聞かずに人の気持ちを勝手に決めつけた挙句マウント取って牽制するとか勘違いも甚だしい。
>「えー、でも元はと言えば……ねえ?」
>「そうよ、むしろユウナさんから頭を下げて貰いたいくらいなのに」
>「今後カイル様には必要以上に近づかないでいただきたいんです。噂の件はご存知だと思いますけど、傍から見て誤解されるような行動は慎んで欲しくて……だって、同じ土俵の上にあがる度胸もない癖に美味しいところだけ持って行く人とか意味分からなくないですか? 勿論二人きりで会うなんてもっての外です。私の邪魔にならないよう節度をわきまえてくださいね」
……ていうか何で私が頭下げなきゃいけない訳? 誤解されるような態度も慎まなきゃいけないような行動も身に覚えないし! 同じ土俵の上にあがる度胸って何? 誰もあがりたいなんて言ってないでしょ、意味分かんないのはあなたの方なんですけど!!
あ、思い出したら怒りがぶり返して来た。それと同時にあれだけ言われて何も言い返せなかった自分の不甲斐なさにも腹が立ってきて、
「あ~~~~~もう、悔しいいいい!!」
怒りが収まらない私は暫くベッドに寝転がったままバタバタと暴れていた。
とりあえず……今度絡まれたら絶対文句言ってやる!!!
「え?」
「折り入ってお話したいことがあって」
屋外演習の翌日、教室内でシュゼットに声をかけられた。
同じクラスにいながら今まで何の接触もなかったので無意識に避けられてるのかな、と思ってたんだけど。どういう風の吹き回し?
「いいけど。話って何?」
「それが……ここではちょっと」
と言いながら私と一緒にいるセシリアをチラ見する。
「私が側にいると話しにくい内容なのですか?」
「いえ、そんなことはないんですけど。出来ればユウナ様と二人でお話したくて」
困ったように笑うシュゼット。と、突然数名のクラスメイトが割り込んで来た。
「ユウナさん、ちょっとくらい何とかなりますよね」
「ここまで頭を下げてお願いしてるんだから聞いてあげるのは当然だと思うわ」
「そうよそうよ!」
出た、シュゼット親衛隊。というか、いつ頭を下げたのか是非とも教えて欲しい。
「皆さん、偏った主観でものを言ってはいけませんわ」
見かねたセシリアがやんわりたしなめるも、聞く耳を持たないクラスメイト達。
「えー、でも元はと言えば……ねえ?」
「そうよ、むしろユウナさんから頭を下げて貰いたいくらいなのに」
親衛隊が結託し始めた。あー、あの噂についてだろうな……
「ただの噂を鵜呑みにするのも感心出来ませんね」
「セシリアさんには関係ないでしょ! 部外者は引っ込んでいてください」
「そうよそうよ!!」
未来の王太子妃に向かって何と強気な……シュゼットに魅了されると怖いもの知らずになるんだろうか。
「そうですか」
「……あなたたちも部外者ですよね」
小さく呟く声が聞こえたと思ったら、私の隣からどす黒い空気が漂い始めた……ヤバい、このままではセシリアが悪役令嬢verに戻ってしまう!
「分かった」
「本当ですか、ありがとうございます!」
手を取り合って喜ぶシュゼットと親衛隊。
「ユウナ」
「ありがとうセシリア。ちょっと行って来るね」
「では早速。お時間は取らせません!」
「え、ちょ、ちょっと……」
勢いよく手を引かれるがまま、教室の隅っこまで連れて行かれる。
「そういえば体の調子は如何ですか?」
「え?」
「昨日随分と魔力を消耗されていたようなので」
「ああ、うん。もう全然」
「それは良かったです。あ、それと……保健室ではゆっくり休めましたか?」
え、何で私が保健室に行ったことを知っている? もしかして覗き見してたとか……怖っ!
「私、回りくどいのが苦手なのでストレートに聞きますね。ユウナ様はカイル様のことをどう思っているんですか?」
「は!?」
「ちなみに私はカイル様のことをお慕いしています。なので、ユウナ様も同じ気持ちなら今ここではっきり聞かせて欲しいんです」
いきなりの先制攻撃に思わず怯んでしまった。
「わ、わたしは別に」
「そうなんですね!!」
食い気味にそう言って私の言葉を遮るシュゼット。
「あー、良かった。じゃあ何の問題もないですね」
「は?」
「ユウナ様はカイル様のこと何とも思ってないんですよね? なら私がカイル様と親しくなってもユウナ様やセシリア様からいじめられることもないだろうし」
ヒロイン思考だとそうかもしれないけど、何で私やセシリアがいじめる前提で話をする?
「落ちぶれた元ヒロインでも聖なる乙女として唯一無二のユウナ様にしゃしゃり出……ライバルとして登場されるとちょっと面倒かなーと思っていたので」
言葉遣いは丁寧なのに、言ってることは結構酷いな。
「あ、ユウナ様」
文句の一つでも言ってやろうと口を開いた途端、先を越された。
「今後カイル様には必要以上に近づかないでいただきたいんです。噂の件はご存知だと思いますけど、傍から見て誤解されるような行動は慎んで欲しくて……だって、同じ土俵の上にあがる度胸もない癖に美味しいところだけ持って行く人とか意味分からなくないですか? 勿論二人きりで会うなんてもっての外です。私の邪魔にならないよう節度をわきまえてくださいね」【身の程を知れって言ってんの、旧作ヒロイン風情が】
ん? 今何かボソッと聞こえたような……
「私からは以上です。では、戻りまーす!」
「ちょ、ちょっと!!」
呆気にとられたままの私を残し、シュゼットは満面の笑顔で親衛隊の元へと戻って行った。
*****
「あれって絶対マウント」
夜になっても今日の出来事がずっと頭に引っかかって離れない。
そもそも思い返してみたら、カイルが護衛に決まったころ私に向けていた視線や、私が見ている前でカイルに抱き着いた行為も……全部マウントじゃん!
もう結構前から牽制されていたのに気づかなかったとは何たること。
「あー、ムカムカする!」
ごろごろしていたベッドから反射的に起き上がった私はあることに気づいた。
「でもあんな初期から私にマウントを取っていたということは」
>あ、よくあるあれかな。引き続き登場はするけど今作では新ヒロインを助けるチュートリアル的な立ち位置、もしくは単純に友人ポジとか
なんて思っていたけど違う。チュートリアルでも友人枠でもない、続編での私の役目は……
ライバルポジションだ!!! ←カイルを選んだ場合の
そこにきちゃったかぁ……それにしても、こっちの言い分も聞かずに人の気持ちを勝手に決めつけた挙句マウント取って牽制するとか勘違いも甚だしい。
>「えー、でも元はと言えば……ねえ?」
>「そうよ、むしろユウナさんから頭を下げて貰いたいくらいなのに」
>「今後カイル様には必要以上に近づかないでいただきたいんです。噂の件はご存知だと思いますけど、傍から見て誤解されるような行動は慎んで欲しくて……だって、同じ土俵の上にあがる度胸もない癖に美味しいところだけ持って行く人とか意味分からなくないですか? 勿論二人きりで会うなんてもっての外です。私の邪魔にならないよう節度をわきまえてくださいね」
……ていうか何で私が頭下げなきゃいけない訳? 誤解されるような態度も慎まなきゃいけないような行動も身に覚えないし! 同じ土俵の上にあがる度胸って何? 誰もあがりたいなんて言ってないでしょ、意味分かんないのはあなたの方なんですけど!!
あ、思い出したら怒りがぶり返して来た。それと同時にあれだけ言われて何も言い返せなかった自分の不甲斐なさにも腹が立ってきて、
「あ~~~~~もう、悔しいいいい!!」
怒りが収まらない私は暫くベッドに寝転がったままバタバタと暴れていた。
とりあえず……今度絡まれたら絶対文句言ってやる!!!
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
中身は80歳のおばあちゃんですが、異世界でイケオジ伯爵に溺愛されています
浅水シマ
ファンタジー
【完結しました】
ーー人生まさかの二週目。しかもお相手は年下イケオジ伯爵!?
激動の時代を生き、八十歳でその生涯を終えた早川百合子。
目を覚ますと、そこは異世界。しかも、彼女は公爵家令嬢“エマ”として新たな人生を歩むことに。
もう恋愛なんて……と思っていた矢先、彼女の前に現れたのは、渋くて穏やかなイケオジ伯爵・セイルだった。
セイルはエマに心から優しく、どこまでも真摯。
戸惑いながらも、エマは少しずつ彼に惹かれていく。
けれど、中身は人生80年分の知識と経験を持つ元おばあちゃん。
「乙女のときめき」にはとっくに卒業したはずなのに――どうしてこの人といると、胸がこんなに苦しいの?
これは、中身おばあちゃん×イケオジ伯爵の、
ちょっと不思議で切ない、恋と家族の物語。
※小説家になろうにも掲載中です。
誘拐された公爵令嬢ですが、なぜか皇帝に溺愛されています』
富士山麓
恋愛
舞踏会で王太子から婚約破棄を告げられそうになった瞬間――
目の前に現れたのは、馬に乗った仮面の皇帝だった。
そのまま攫われた公爵令嬢ビアンキーナは、誘拐されたはずなのに超VIP待遇。
一方、助けようともしなかった王太子は「無能」と嘲笑され、静かに失墜していく。
選ばれる側から、選ぶ側へ。
これは、誰も断罪せず、すべてを終わらせた令嬢の物語。
【完結】悪役令嬢はおねぇ執事の溺愛に気付かない
As-me.com
恋愛
完結しました。
自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生したと気付いたセリィナは悪役令嬢の悲惨なエンディングを思い出し、絶望して人間不信に陥った。
そんな中で、家族すらも信じられなくなっていたセリィナが唯一信じられるのは専属執事のライルだけだった。
ゲームには存在しないはずのライルは“おねぇ”だけど優しくて強くて……いつしかセリィナの特別な人になるのだった。
そしてセリィナは、いつしかライルに振り向いて欲しいと想いを募らせるようになるのだが……。
周りから見れば一目瞭然でも、セリィナだけが気付かないのである。
※こちらは「悪役令嬢とおねぇ執事」のリメイク版になります。基本の話はほとんど同じですが、所々変える予定です。
こちらが完結したら前の作品は消すかもしれませんのでご注意下さい。
ゆっくり亀更新です。
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
すみっこ婚約破棄同盟〜王子様による婚約破棄のすみっこで〜
まりー
恋愛
ある夜会で王子とその側近達の婚約破棄が行われた。腕に恋人をぶら下げて。所謂、王道断罪劇である。
でもこのお話の主役は麗しのヒロインでも、キラキラ王子でも、学園一の秀才や騎士団期待のホープでもない。これは王道のすみっこで行われた、弱小貴族と商人の子息たちの婚約破棄のお話である。
_ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _ _
「もう俺ら、恋なんてしない!」と言う小学生の息子の話を参考に書きました。登場人物の男子たちの頭は小学生レベルだと思って読んでください。
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
成功条件は、まさかの婚約破棄!?
たぬきち25番
恋愛
「アリエッタ、あなたとの婚約を破棄する……」
王太子のアルベルト殿下は、そう告げた。
王妃教育に懸命に取り組んでいたアリエッタだったが、
それを聞いた彼女は……?
※他サイト様にも公開始めました!