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「じゃあ、現時点で分かっていることを整理するわね」
「うん」
数時間後。ぐっすり眠るレイチェルの横で前世組のセシリアと私は作戦会議をしていた。
「周囲の盲目具合からしてシュゼットの魅力数値は今MAXだと思う」
「だよね」
ヒロインあるある。とりあえず魅力と好感度をあげておけばOKという短絡思考。
ごめんなさい私もそうでした。
「今でも信者だらけで鬱陶しいのに、ユウナの時みたいに調子に乗って裏スキルまで使われると面倒だからその前に先手を打ちましょう」
やはりあるのか裏スキル。そしてその言葉、何気に刺さるよセシリア。
「先手って?」
「今から二週間後、乙女祭があるでしょ。それにカイルと一緒に参加するの」
「え、私が?」
「そう。そのイベントが個別シナリオへの分岐になるから、そこを抑えればルートを乗っ取れる筈よ」
乙女祭とは魔法学園が一年に一回秋に開催している一大イベント。
元々は聖なる乙女を称え祝うために設けられた行事なんだけど、学園ではプロムパーティーの意味合いで行われる。
参加は基本男女のペア。パートナーは当日までに自分たちで見つける。もし見つからなかった場合は、当日会場で探すことになる。
セシリアはアイスランと、レイチェルはジュラルドと参加することが決定済。ちなみに私は未だボッチ。
「ユウナはまだピンと来てないかもしれないけど、これ、結構大事なイベントなの」
「個別シナリオの分岐でしょ、それ位分かってるよ」
「それだけじゃないわ。ここでシュゼットがハーレムルートを選択しないで個別のルートに入ると誰を選んでも終業式前に告白イベントが起こるの。それまでは最後の追い込みとして恋愛絡みのイベントがこれでもか! と目白押しなのよ」
「そうなんだ……」
これは分岐の段階で別のキャラクターを選択したいプレイヤー向けのヘルプらしい。
それまでハーレムルートを進めていた場合は問題ないけど、途中から「あ、やっぱりアイスランが良かった」とキャラ替えをしたくなった時、分岐からいきなり変更すると好感度が足りなくてハッピーエンドが迎えられないかもしれないので、それを補うための救済。
全イベントが見たいとか全スチル集めたいなら最初からやり直してね、でもキャラごとのエンディングが見たいだけならここからでも巻き返せるよ、みたいな。
「いい? もしこの分岐を取られた場合、カイルのベクトルがシュゼットに傾いて好感度がぐんぐん上昇する可能性だってあるわ。今ならユウナだって負けてない筈だから、行動するなら今しかないの」
確かに前作でもラストスパート凄かったもんね、むしろ今まで頑張って重ねた好感度って何だったの? ってほど爆上げ出来た気がする……あ、何かクソゲーのにおい。
「プレイしてた時から思ってたけど、この後から爆上げシステムってどうなの?」
「あ、それは私も思った」
「だよね! 分岐の前だってキャラの根幹に関わる大事なエピソードがあるし、それを見ないで個別シナリオに行くなんて信じられないんですけど」
「そう、アイスランルートの醍醐味は最初あんなに冷たくてつれない態度だった殿下が少しずつ心を開き始めた時の表情や声色の変化を直に感じられるところなのに。途中から個別に入っていきなり爆上げしたんじゃそのちょっとずつ氷が溶けて甘々になる過程が見られないんだよ! 私……そんなの耐えられない!!」
「私もそうだよ! むしろカイルの推しポイントは前半にぎゅっと詰まってるんだから、そこを割愛するなんてありえないし!!」
それまで全く私に興味ないでしょ、むしろ嫌いですよね? という態度しか取っていなかったキャラクターから途中経過をすっとばしていきなり「愛してる」と言われても……こっちが興ざめする。
「でも世の中にはそこまでやりこまなくてもいい、サクッと各キャラのエンディングだけ見られれば、っていうソフトプレイヤーもいるのよ」
「そんなもんかなぁ」
「そんなもんよ」
と、思わずやり込み側の意見交換をしてしまった。話を戻して……
「でも、私から誘って受けて貰えるかな」
防御されたとはいえ私は元セシリアに仇なす外敵。それに護衛をしている都合上、当日もシュゼットと行動を共にする可能性の方が高い訳で。
この期に及んでまだ煮え切らない私に呆れたのか、セシリアがため息をつく。
「シュゼットって行動派よね」
「……いきなり何?」
「やり方は間違ってるけど少なくとも行動を起こすという点ではシュゼットの方が今一歩も二歩もリードしてる。カイルが鈍いから気づいてないだけでね。このまま手をこまねいていたら確実に取られちゃうわよ。ユウナも分かってると思うけど、ここは私達にとってもう現実なんだから」
そうだ、ざまあの一件で思い知った筈なのに私はまた繰り返す所だった。
ここはゲームの世界だけど現実。攻略キャラクター達だって個々に感情を持って動いている。選択肢なんかないんだから私自身がカイルと向き合うしかないのだ。
「分かった……私、頑張ってみる」
「そう、その意気よ!」
「まずは乙女祭に誘う。あといつもより素直になる!」
「もうひと声! いっそのこと乙女祭で告白するくらいの根性を見せなさい!!」
「それは絶対に無理!!!」
「ううーん……」
寝返りを打つレイチェル。しまった、つい大声を……
『レイチェルを起こしちゃ悪いから、もう寝ましょうか』
『うん』
うつ伏せだった体を仰向けにして布団をかけ直す。
腐っても元ヒロイン。それ位の気概を見せなければ!
私は固い決意を胸に目を閉じた。
「うん」
数時間後。ぐっすり眠るレイチェルの横で前世組のセシリアと私は作戦会議をしていた。
「周囲の盲目具合からしてシュゼットの魅力数値は今MAXだと思う」
「だよね」
ヒロインあるある。とりあえず魅力と好感度をあげておけばOKという短絡思考。
ごめんなさい私もそうでした。
「今でも信者だらけで鬱陶しいのに、ユウナの時みたいに調子に乗って裏スキルまで使われると面倒だからその前に先手を打ちましょう」
やはりあるのか裏スキル。そしてその言葉、何気に刺さるよセシリア。
「先手って?」
「今から二週間後、乙女祭があるでしょ。それにカイルと一緒に参加するの」
「え、私が?」
「そう。そのイベントが個別シナリオへの分岐になるから、そこを抑えればルートを乗っ取れる筈よ」
乙女祭とは魔法学園が一年に一回秋に開催している一大イベント。
元々は聖なる乙女を称え祝うために設けられた行事なんだけど、学園ではプロムパーティーの意味合いで行われる。
参加は基本男女のペア。パートナーは当日までに自分たちで見つける。もし見つからなかった場合は、当日会場で探すことになる。
セシリアはアイスランと、レイチェルはジュラルドと参加することが決定済。ちなみに私は未だボッチ。
「ユウナはまだピンと来てないかもしれないけど、これ、結構大事なイベントなの」
「個別シナリオの分岐でしょ、それ位分かってるよ」
「それだけじゃないわ。ここでシュゼットがハーレムルートを選択しないで個別のルートに入ると誰を選んでも終業式前に告白イベントが起こるの。それまでは最後の追い込みとして恋愛絡みのイベントがこれでもか! と目白押しなのよ」
「そうなんだ……」
これは分岐の段階で別のキャラクターを選択したいプレイヤー向けのヘルプらしい。
それまでハーレムルートを進めていた場合は問題ないけど、途中から「あ、やっぱりアイスランが良かった」とキャラ替えをしたくなった時、分岐からいきなり変更すると好感度が足りなくてハッピーエンドが迎えられないかもしれないので、それを補うための救済。
全イベントが見たいとか全スチル集めたいなら最初からやり直してね、でもキャラごとのエンディングが見たいだけならここからでも巻き返せるよ、みたいな。
「いい? もしこの分岐を取られた場合、カイルのベクトルがシュゼットに傾いて好感度がぐんぐん上昇する可能性だってあるわ。今ならユウナだって負けてない筈だから、行動するなら今しかないの」
確かに前作でもラストスパート凄かったもんね、むしろ今まで頑張って重ねた好感度って何だったの? ってほど爆上げ出来た気がする……あ、何かクソゲーのにおい。
「プレイしてた時から思ってたけど、この後から爆上げシステムってどうなの?」
「あ、それは私も思った」
「だよね! 分岐の前だってキャラの根幹に関わる大事なエピソードがあるし、それを見ないで個別シナリオに行くなんて信じられないんですけど」
「そう、アイスランルートの醍醐味は最初あんなに冷たくてつれない態度だった殿下が少しずつ心を開き始めた時の表情や声色の変化を直に感じられるところなのに。途中から個別に入っていきなり爆上げしたんじゃそのちょっとずつ氷が溶けて甘々になる過程が見られないんだよ! 私……そんなの耐えられない!!」
「私もそうだよ! むしろカイルの推しポイントは前半にぎゅっと詰まってるんだから、そこを割愛するなんてありえないし!!」
それまで全く私に興味ないでしょ、むしろ嫌いですよね? という態度しか取っていなかったキャラクターから途中経過をすっとばしていきなり「愛してる」と言われても……こっちが興ざめする。
「でも世の中にはそこまでやりこまなくてもいい、サクッと各キャラのエンディングだけ見られれば、っていうソフトプレイヤーもいるのよ」
「そんなもんかなぁ」
「そんなもんよ」
と、思わずやり込み側の意見交換をしてしまった。話を戻して……
「でも、私から誘って受けて貰えるかな」
防御されたとはいえ私は元セシリアに仇なす外敵。それに護衛をしている都合上、当日もシュゼットと行動を共にする可能性の方が高い訳で。
この期に及んでまだ煮え切らない私に呆れたのか、セシリアがため息をつく。
「シュゼットって行動派よね」
「……いきなり何?」
「やり方は間違ってるけど少なくとも行動を起こすという点ではシュゼットの方が今一歩も二歩もリードしてる。カイルが鈍いから気づいてないだけでね。このまま手をこまねいていたら確実に取られちゃうわよ。ユウナも分かってると思うけど、ここは私達にとってもう現実なんだから」
そうだ、ざまあの一件で思い知った筈なのに私はまた繰り返す所だった。
ここはゲームの世界だけど現実。攻略キャラクター達だって個々に感情を持って動いている。選択肢なんかないんだから私自身がカイルと向き合うしかないのだ。
「分かった……私、頑張ってみる」
「そう、その意気よ!」
「まずは乙女祭に誘う。あといつもより素直になる!」
「もうひと声! いっそのこと乙女祭で告白するくらいの根性を見せなさい!!」
「それは絶対に無理!!!」
「ううーん……」
寝返りを打つレイチェル。しまった、つい大声を……
『レイチェルを起こしちゃ悪いから、もう寝ましょうか』
『うん』
うつ伏せだった体を仰向けにして布団をかけ直す。
腐っても元ヒロイン。それ位の気概を見せなければ!
私は固い決意を胸に目を閉じた。
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