お針子の魔法使いと悪魔の弟子

蛾脳シンコ

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第20話『小説家の悪魔とそのしもべ』

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 ダンプリングの本を手に入れたレンリエッタは早速読んでみるも、案の定洗脳されてしまい…眠る事も無く一晩中ヘリクツ本を読み続ける羽目となってしまった。一気に三巻分を読んでみた感想は…

「あ、ああぁあ…!全部読んじゃった……あぁ!つ、続きがほし、ぃい!」

 レンリエッタは心の底から沸き起こる凄まじいほどの渇望感に襲われた。もはや眠気など微塵も湧いていない。
 その代わりに『一秒でも早く続きが読みたい!』『本が手に入るなら何を差し出しても良い!』『内容はどうでも良いから本が読みたい!!』という欲求が後から後からどんどん沸いて来る…
 まるで何日も食事していないように飢えていた、そしてその飢えは食ではなく文字を求めている…

 そんなレンリエッタの様子をエラフィンとグリスは透明魔法で隠れながら伺っていた。グリスは苦しむレンリエッタの姿を見て、彼女以上の苦しさに襲われた…

「お嬢様……な、なんて苦しそうに…私は…」
「待つんだよグリス。レンはきっと街へ行こうとする、その後を追ってどうなるか見てみようじゃないか。」
「…はい……」

 ぐがーッともだえ苦しむレンリエッタの下へ姿を現わしたエラフィンはそーっと囁くように話しかけた…

「レンリエッタ、ちょっと街にでも行ってみないかい?」
「が、ががが!…え!?街!?行く行く行く!絶対行くよ!!早く行こう!!」

 エラフィンが街へ行ってみないかと提案すれば案の定レンリエッタは物凄い勢いで喰い付いて来た。まるで光へ急ぐ羽虫のように急ごうとする彼女を見てグリスはなんとも言えない気持ちになった…
 大人しいレンリエッタがここまで豹変するとは本の力も恐ろしいものである…

「まぁまぁ落ち着いて…せっかくだし三人で行こうじゃないか、カフェで朝食でも…」
「もう!早く行こうよ!!ねぇもう!!早く~!!」
「お嬢様、少しはお上品な振舞いを…」
「私はもう充分上品だよ!上品過ぎて私以外ぜんぶクソみたいなもんだよ!!」
「…これは重症ですね…」

 エラフィンの服を掴み、ギューッと引っ張るレンリエッタはギャーギャーと喚きながら血走った目で早く行こうと騒ぎ立てた。完全に洗脳がエスカレートしている…このままでは間に合わない、というかもう手遅れのようなものである…
 だがエラフィンはあえて急ごうとするレンリエッタをイラつかせるように遅くゆっくりと振舞い始めた。そーっと杖に手を伸ばし、ゆったり歩いて玄関へ向かい、財布を忘れたと言って一度中へと戻ってみせた。

「ぎゃぁあああああ!!先生が遅いぃ~!!」
「あっはははは~、悪い悪い!財布を忘れちまってねぇ…ほうら、さぁ行こうじゃないか!」
「早く早く!!」
「では私は帽子の中に納まりますので、エラフィン様…お頼み出来ますか?」
「ま、レンがこの調子じゃしょうがないね。」

 死にかけの虫のようにジタバタと暴れるレンリエッタをさておき、グリスは帽子を脱いで、地面に置いてからその中へ入り込んだ。そしてエラフィンはその帽子を拾い上げて被ると…まぁ似合わない…
 だがレンリエッタがこの状態では途中で頭上から落下しても不思議ではないので贅沢は言えない。

「ほらほら、さっさとお乗り。」
「はいはいはい!乗った乗った乗った!!早く行こ!!」
「言っとくが飛行中に暴れるんじゃないよ?安定魔法は掛けてあるが何かの間違いで落ちるかもしれないんだから。」
「……はい」
「(根っこまでは浸食されてないのかね…)」

 というわけでレンリエッタはエラフィンの操縦する杖に乗っかって、サタニズム街へと向かうのだった。一見話を聞かないように思えたが、案外通じるので根っこの部分まえは洗脳され切っていない様だ。
 もしかしたら次の本で洗脳が最高段階に上がるのではとエラフィンは推測しながら杖を飛ばすのだった…


 言い付け通りレンリエッタは暴れたり急かしたりする事が無かったのでスムーズに三人はサタニズム街に到着した。グリスが帽子から出る間、エラフィンは広場を眺めたが…道行く人々の大半が疲れているようにトボトボと歩いているのに気が付いた……昨日の騒ぎぶりから見るにおそらくレンリエッタも時間が進めば同じようになるだろう。

「ふぅ…お手数をお掛けしまして申し訳ございませんね…」
「さーてと、まだ朝は早いし軽く散歩でも…」
「あの!私ちょっと行くところあるから!また後でね!!」

 そう言い、レンリエッタはビュンッとその場から逃げ去ってしまった。

「あぁお嬢様!!…どうしましょう、行ってしまいましたよ…」
「慌てるんじゃないよ、さっさと後を追うよ。」
「は、はい……あぁ、心配で堪りません…」

 もちろん逃げ出す事など想定内だったエラフィンはグリスと共にすぐさまその後ろを追って行った。向かう先は言わずもがな、昨日…人でごっちゃになっていたダンブストーン書店であった。
 書店の周りにはレンリエッタと同じく新作本を待ち侘びる人がちらほらと居たが、昨日のような熱狂は無く、みな他と同じく脱力気味に立ち尽くしたり座り込んでいた…あるいは倒れている者も居た…
 そのような光景などまるで気にせず、レンリエッタは真っ先に書店の店主へ聞きに行った。

「あの!!ダンプリング先生の新作、置いてますか!?」
「またか…悪いが無いよ、発売は明後日だ。」
「明後日…よ、予約とかは…」
「悪いが予約分は売り切れてるよ、当日に店頭に並ぶ分を買ってくれ。」
「そんな!こんのド×××野郎がッ!!」

「あぁ!そんな!ひど過ぎます!!お嬢様が汚い言葉を!!」
「ははー!言うじゃないか!!」

 だがもちろん本が置いてあるわけもなく、手に入らないと知ったレンリエッタは酷い言葉で店主を罵倒した。その様子を見ていたグリスもあまりに酷い言葉に悲しんだが、エラフィンはどこか感心したように笑った…
 いや、笑っている場合ではない。

「あぁもう!!どうしよう…がぁぁああ!!あ、頭がムシャクシャするぅー!!」
「ムシャクシャ?お前さんは良い方だぜ、俺なんて…もう歩く体力すら湧かねぇよ…」
「私なんてもう瞬きすらしんどいのよ…」
「僕なんて……ぼ、僕なんて…あぁ、喋るのもだるぃ~…」

「まずいね、他の奴等もどんどん弱ってる…次の本が出たらトドメを刺されちまうよ。」
「なんとしてでも止めなくてはいけません…エラフィン様そろそろお嬢様の洗脳を解いては?」
「あぁそうしよう。レンもだいぶ参ってるからねぇ…ってあぁ!」

 他の人々もどんどん弱っているのを見たエラフィンはそろそろレンリエッタの洗脳を解こうと近付いたが、それに気づかないまま彼女はどこかへ走り去って行ってしまった。
 二人は慌てて追うも、幸いにも少し走ったところでレンリエッタはドスンッと誰かにぶつかった事で止まった。
 レンリエッタがぶつかったのは……あのインチキ商売に身を励む双子であった…

「あがッ!?」
「あいたッ!?どこ見てんのよ!…って、レンリエッタじゃない」
「こんなところで奇遇じゃんよぉ」
「私はちっとも元気じゃないよ!本が読みたくてたまらないの!!あぁもう!」

 コギアとミミクは元気そうなレンリエッタを見て安心したらしいが、直ぐにその安心は吹き飛んだ。どうやら二人は小説の魔力に気付いているらしく、直ぐに彼女が洗脳されていると気が付いた。

「げっ…レンリエッタもやられちゃったんだ…」
「そんな…良い友達になれるかと思ったのに……もうダメだ、救えないよ…」
「うぅううう!本が、ほ、本が読みたいよぉ…!」
「凄く苦しそう……どうするミミク?例のアレ、売ってあげる?」
「餞別ってことで、売っちゃえば?」

 だが二人は少しだけ悲しむと、直ぐにいつものようにいやらしい笑顔を浮かべてレンリエッタに商品を売ろうと企て始めた。やっぱり二人は二人なのだ…
 ウガウガと苦しむレンリエッタにコギアは懐から『ある物』を取り出した……二冊の本だ。

「じゃじゃーん!今日の商品はこれ!J.D.ダンプリング先生の新作、ヘリ―クッツーと昨日のオムレット上下巻セット!極秘入手に成功した超レア品よ!」
「え゛ッ!?なんで!?なんで持ってるの!?」
「ふふーん!私達を舐めないでほしいわね、ぶっといコネで手に入れたのよ!」
「まぁバイト先の書店からパクッた物だけどね。」

 なんとコギアの持っていた本はまだ発売されていないはずのヘリ―クッツーシリーズ最新作であった。薄紫色の表紙に書かれているサブタイトルは『昨日のオムレット』…すごくつまらなそうだが、レンリエッタは涎を垂らしながら欲しがった。
 今にでも飛びつきそうなレンリエッタを抑えつけ、コギアは一旦本を懐に仕舞い込むと彼女に詰め寄った。

「落ち着いて!ステイステイ!まずはお金を払ってもらわないと…レンリエッタは友達だし半額でも良いよ、それにツケたって良いし…」
「払う払う払う!!絶対払うよ!!いくら!?」
「今なら特別価格でたったの10モナスよ。でも友達価格で2モナスにしても良いけど…」
「なんなら無料でも良いんだけどコギアはケチだからねぇ…」
「もちろん払うよ!マジ本の為なら強盗だって…」

 そう言ってレンリエッタは財布を取り出すと、中から金貨をじゃらりと掴んで見せつけた。流石にこんな大金を持っているとは知らなかったコギアとミミクはギョッとして引いた。

「ちょっとちょっと!アンタどうしたのよその大金!?どっから盗んで来たのさ!?」
「そんなの怖くて受け取れないよ…今ドキ金貨なんてマネーロンダリングにも使わないのに…」
「受け取ってよぉー!!おねがいだから…」

「そこまでだよレンリエッタ、今すぐ財布と金貨を仕舞いな。」
「お嬢様…もう止めてください…」
「うぐっ!?先生…とグリス…」

 金貨を掴んで逆に詰め寄るレンリエッタ…コギアとミミクはすっかり怯えていたが、そこへエラフィンとグリスが割って入って彼女を止めた。
 レンリエッタはギクッとしたが言われた通りに金貨を仕舞い込み、財布の紐を閉めた…

「ねぇこの子大丈夫なの!?こんな大量の金貨…どこから…」
「まぁそれはさておいて……まずはレンリエッタ、そろそろ目を覚ましてもらおうか…」
「へ?…あぎぎぎぃッ!?」
「うわぁあ!?レンリエッタが殺された!?」
「殺さないよ!まったく、人を何だと思ってるんだか…」

 エラフィンはレンリエッタの頭に手を置き、呪文を唱える事も無く魔法を掛けるとバチバチッと電気が彼女の全身を包み込んだ。
 コギアは処刑したのだと勘違いしたが、紛れもなくこれは洗脳を解く呼び覚まし呪文であった。レンリエッタは口からフシュ―ッと煙を吐きつつも、すぐに正気を取り戻した…

「けほっ!かほ……あ、あぁれ?何してたんだろう…わたし…」
「あぁお嬢様!正気を取り戻されたのですね!!本当に良かった…」
「うぐぶ!?わ、わけがわからないよ…何が起きてるの?なんで私街に……それにコギアとミミクも居るし…」
「うわ!レンリエッタが正気に戻った…」
「呼び覚まし呪文だ……は、初めて見た…上級魔法なんて…」

 正気を取り戻したレンリエッタはグリスに抱き上げられつつも現在の状況に大いに困惑した。十数時間ほどの記憶がまるで頭から抜けており、本を開いて読んだ瞬間から何一つとして覚えていなかった。
 かなり眠いし、グリスは喜んでいるし、コギアとミミクがなぜか居るし…まるで意味が分からない…
 ほどなくして解放されたレンリエッタは開口一番、エラフィンに事情を聞いた。

「エラフィン先生?何があったの?」
「あの本は呪われてたのさ、ダンプリングが呪いを仕込んでたんだ。それもエルヘルドっていうヤバイ奴の呪いをね…」
「そうなんだ…やっぱりあの本って呪われてたんだ…」
「私…本嫌いで良かった…もし見てたら呪われてたんだ…」
「ただ夢中になる魔法だとばかり…」

 事情を聞いたレンリエッタは納得したように落ち込み、コギアとミミクは戦慄した。どうやら二人とも本が呪われていたとは知らず、単に催眠状態に陥っているだけだと思っていたらしい。
 しかし、本嫌いが生き残るとは昨今の教育機関が困惑する事態である。

「一応その本は没収だよ、渡しな。」
「はーい…あぁ~あ、残念…せっかく儲けようとしたのに呪いじゃなぁ…」
「流石に俺達も呪いなんて嫌だよ…」
「ふふん、最近の子にしては良い子じゃないか。今度アイスを奢ってやるよ」
「えぇ!?ホントに!?やったー!」
「誰かに奢ってもらうなんて数年ぶりだぁ!」

 呪いを嫌うという点で気が合う二人に約束を取り付けたエラフィンは没収した本を手の内でボッと燃やし尽くし、コギアとミミクに家へ帰るように説得すると、満を持してレンリエッタへ聞いた。

「そんで、私はこれからダンプリングの所へ殴り込みに行くが…一緒に来るかい?」
「もちろん!こんな酷い事するなんて許せないよ!絶対に止めなきゃ!」
「私めも加勢しましょう、このような事態は見過ごせません。」
「よし!そんじゃあ準備をしてから悪魔の巣窟に向かおうじゃないか!」

 人々を洗脳して操るなんて絶対に許してはおけないとレンリエッタとグリスはエラフィンと共に元凶であるダンプリングの下へ殴り込みに行くことにした。
 そして三人は一度邸宅へと戻ると各々で準備を始めた。エラフィンは魔力増強の魔術書を腰に携え、レンリエッタはポーションと杖を持ち、グリスは魔法道具を一式揃えた…

 目指すはダンプリングの屋敷……地図は無くとも、つい数日前の『週刊:語り穴』にて掲載されていた『お宅拝見!売れっ子小説家の大豪邸は凄かった!』の特集に住所が載っていたので特定は実に簡単だった。
 三人は王国城下の一流街へと向かい、飛んで行った…



「あれ?ここで降りちゃうの?」
「一流街の上空は無断飛行をするとちょっとヤバいのよ、こっからは面倒だけど徒歩で行くよ」
「城に近付くわけですから警備もそれなりに厳しいのです。」
「なるほど…でも、この街も三つのエリアに分かれてるなんて案外似てるところがあるんだなぁ…」

 一流街へと到着する寸前にて、エラフィンは杖の高度を落として着地した。これより先の一流街は王族や貴族などの上流階級の人間が集う場所なので無許可で飛行すると撃ち落とされてしまうのだ。
 そしてこの一流街と二流街を隔てる高い壁と水堀もレンリエッタのよく知るクークラン公国のそれとよく似ていた。あちらも上流と中流で分かれていたのだ。
 懐かしいようでそうでもない昔の世界を思い出しながら、レンリエッタは二人に付いて行き、直ぐ近くの一流街へ続く門へと向かった…やはり一流街とだけあって立派な門だ。警備兵も鎧を着込み、白いマントを翻すという重装備だった。

「ここから先は一流街です、入るには許可書を拝見します。」
「許可書だって?そんなの必要ないね、私を誰だと思ってるんだい?王宮魔術師だよ?」
「存じません、許可書をお持ちでないならお引き取り願います。」

 エラフィンは王宮魔術師なので顔パスで入れるかと思っていたらしいが、意外にも警備は強情だった。なので仕方なくエラフィンは呆れ顔のレンリエッタとグリスが見守る中でポーチをガサゴソと漁り、身分が証明できる物を取り出す羽目となった…
 エラフィンが取り出したのは金色のバッジだった。二重の六芒星が模ったもので中央に不思議な文字が橙色で浮かんでいる…

「ほうら!これで良いだろう!R.O.Wの身分証明バッジだ!」
「……大変失礼しました、王宮専属魔法使いのエラフィン・ファングステン様でございますね。どうぞお入りください。」
「まったく!いい仕事するじゃないか!さぁ行くよレンリエッタ、グリス!」
「は、はーい!…お邪魔しまーす………う、うわぁ…!」

 警備兵はバッジを見ると、ただでさえ真っ直ぐな背筋をさらにビシッと反る勢いで正してエラフィン達を通した。王宮魔術師は国でもかなりの地位を持つ存在であるが、やっぱり身分を証明すべき物は必要なのである。
 それはそうと、レンリエッタは大きな門を抜けた先に広がる景色に息を呑んだ。サタニズム街のような賑やかな繁華街とは打って変わり、煌びやかで優雅…というより上品な街景色が三人を出迎えた。
 広々と整備された敷石の道、華麗な彫刻が飾られた広場、並ぶ屋敷のような大きな建物の数々……行き交う人々の数は少なかったが、とても静かで良い場所だ。

「こ、ここ…すごくいい場所だね…」
「そうかしら?私はどうにも好かないね…物価はアホみたいに高いし、唾を吐き捨てると罰金を取られるんだ。」
「でも静かでゆったりしてる…って言うより、お上品な感じ…」
「確かに…此処は良い場所でございますね、昔を思い出しますよ…」
「あぁもう!私達は観光客かい!?違うだろう!さっさと奴の所へ向かうよ!」
「う、うん…そうだったそうだった…」

 この住宅街…というよりお屋敷街にやって来たのはダンプリングの正体を暴くのであって、観光に来たわけでは無いのだ。エラフィンはこの『上品な空気感』がどうにも嫌いなので猶更急いで目的の館まで向かった。
 一方でレンリエッタは道中で高級魔法用品店やオバードール女学園の生徒達が気になって仕方がなくなったが、今は集中せねばとエラフィンに付いて歩いた。
 ちなみにグリスはともかく、他二人の服装はどうにもこの場の雰囲気に合わなかったので、ちょっと浮いていた…

「さて、ここの角を曲がってすぐの……おぉっと!まずい、隠れろ…」
「どうしたの先生?」

 目的の館がすぐそこまで迫って来た時、エラフィンは慌ててレンリエッタとグリスへ隠れるように命じて自身も角に身を隠した。
 一体何事かとレンリエッタが顔を出して見てみると、ダンプリング邸の門前にて数人の者達が何やら話し合っていた。門を背に立っている黒い服の屈強な二体のヘルドは屋敷の警備だろう、そしてその警備と睨み合うように立つ二人の兵士……白いローブが目立つ、なんとも派手な二人組だった。
 その正体をエラフィンは憎むくらいによく知っていた…

「霧籠の魔法使いだよ…今更になって動き出したようだね…」
「あれが…霧籠…」
「遅いと言わざるを得ませんが、仕事を始めたとなれば頼もしい限りですよ…」

 その二人組は王国の魔法精鋭部隊『霧籠の魔法使い』に属する魔術師であった。おそらく事態を重く受け止めた王国側が動き出したのだろうとエラフィンは考え、彼らの会話を盗み聞く事にした。

「イアウル…」

 エラフィンが彼らに向かって【イアウル】の呪文を唱えると、杖から彼らの会話が薄く聞こえて来た。盗聴呪文だが、相手が相手なので強力なものは使えないのだろう。
 三人は耳を澄まして会話を聞いた。

『何度も言わせるな、お前等の主人に会わせろ。』
『申し訳ございませんがお引き取り願います』
『こっちには令状があるのよ!さっさと退かないと公務執行妨害でしょっ引くわよ?』
『申し訳ございませんがお引き取り願います』
『クソ…こいつら傀儡みてぇに定型文ばっかり言いやがって…』
『あぁもう!この仕事嫌い!あのクッソババァ!私達に面倒事押し付けやがって…!』

「なんか随分と荒れてるね…」
「どうやら新人みたいだねぇ、はは!いい気味だ!」
「言ってる場合ですか…」

 どうやら霧籠の二人は家宅捜査で訪れたは良いものの、中々に退かない警備に手こずっているらしい。だとしたらお得意の暴力で黙らせれば良いのでは…と思ったが、新人はあんまり気合が無い様だ。
 それにたった二人でこの仕事を押し付けられているあたり、組織内でも無能なのだろうとエラフィンは察した。
(こんな仕事を新人に押し付けるとは霧籠もアレだが…)

「どうするの先生、勝手に入っちゃう?」
「ははー!良い考えだねぇ!ちょうどアイツ等が警備の気を引いている事だし…ここからこっそり行っちまおうか。」
「こっそり…ですか……鉄柵を吹き飛ばすのはこっそりとは言えませんよ?」
「吹き飛ばすのも良いが後片付けがちょっと面倒だし…アレが良いねぇ……ちょっと下がりな…」

 せっかくなので霧籠の二人組が警備を相手しているのでこの隙にエラフィン達は侵入する事に。雑に爆破魔法で吹き飛ばせば早く済むが、そんな事せずとも違う方法があるらしい。
 エラフィンはレンリエッタとグリスを後ろに下がらせると、鉄柵に向けて杖を構えた。

「ゴストム…!」
「……?ねぇ、なんか変わったの?」
「見た目はそのまんまさ、この呪文は無機物に伸縮性を与えるものでね。」
「伸縮性?」

 【ゴストム】と呪文を唱えるエラフィンだったが、鉄柵は変わらず佇んでいる。
 鋭く尖った柵を登れるほど器用じゃないのでレンリエッタは不安になったが、エラフィンが鉄柵の一部を掴んでみると…なんと、ぐにゃりと粘土のように曲がり、手を離すとバシッと元に戻った…まるでゴムのようになっている。
 これこそが伸縮の呪文、ゴストムの力である。

「うわ!す、すごい……なんか、ゴム紐みたい…」
「面白いもんだろう?さて、こうなりゃ後はこういう風に…ふんぬ!!…引っ張って隙間を作るから中へ入りな…!」
「う、うん!…うわぁ、なんか不思議な感じ…」
「私が抑えてますのでエラフィン様がお先にどうぞ。」
「おっと悪いね……よし!侵入成功だ!」

 柔らかくなった柵を引っ張り、なんとか通れるくらいの穴を作ると一人ずつ庭へ侵入して行き、最後に入ったグリスが手を離すと柵はまたしてもグニャンッと元に戻った。そしてエラフィンが呪文を解けば柵は元通りカチカチになってしまった。
 さて、いよいよ侵入に成功したダンプリング邸だが、やはり立派な屋敷であった。広大な庭にはよく手入れされたバラ園やジグザクの低木、小さな噴水から鳥の巣箱まで揃っていたし、屋敷自体も白い壁に青い屋根と清涼感が漂う素敵なものだ……レンリエッタちょっとばかり羨ましくなった…

「いいなぁ、こんな豪邸住んでみたいよ…」
「なんだい私の屋敷じゃ不満かい?言っとくがその気になれば魔法で何百倍も大きく増築出来るんだよ?」
「お二人とも……ひとまず移動しましょう…ここは長居するには危険です…」
「そうだったそうだった……裏庭へ一旦回るよ、そこから中に入ってやろうじゃないか。」

 このままではいつバレてもおかしくない上に既に道行く何人かが見て見ぬふりをしているので、三人はすぐに移動する事にした。そっと裏庭の方へと回り込み、そこから内部へ侵入してやろうとしたのだが…
 またしても豪華な裏庭が現れた……なんと大きな池がある上に池の真ん中に浮かぶ島には小綺麗な東屋が建っている…思わずレンリエッタは感心した。

「ねぇ見てよ!こんなおっきい池…ちょっと大げさじゃない?」
「あぁそうだね、こんなデカい池を作って何を飼おうって言うんだか…」
「人食いナマズが百匹泳いでても不思議じゃないよ。」
「それに加えてヘルシャークも飼えるねぇ…うちの池を改造してみようしら…」

「お二人とも!!言ってる場合ですか!」
「ごめんねグリス……私ちょっとテンション上がっちゃって…」

 こんな事をしている場合では無いとグリスは二人を叱りつけ、さっさと裏口から屋敷の中へ入ろうとした。だがその時……一人の少女が屋敷から出るのを見て、レンリエッタはアッと声を出した。
 その少女には見覚えがあった……昨日本を押し付けて来た少女だった。

「おっと!まずいですね、誰かが屋敷から出てきました…」
「うーん?ダンプリングかい?それにしては若い様な…」
「あぁ!あの子知ってるよ!昨日、私に本をくれた子だ!」
「なんだって!?あの子がかい?」

 レンリエッタはもう一度、池を眺める少女の横顔を見た。
 ………間違いなく昨日であった少女だ、他人の空似では無かったのだ。おそらく彼女はダンプリングの娘だろう。
 三人は隠れるどころか、話を聞くべくその少女の下へと向かった。幸いにも近くに護衛の類は見られない…

「……はぁ…」
「ねぇちょっと!あなた、昨日の…!」
「え!?だ、誰!?……あぁ!昨日の銀髪…なんで此処に…」

 レンリエッタが威勢よく話しかけると相手はギョッとしながらも振り向き、少し相手を確認すると直ぐに昨日の事を思い出した様だった。
 何から話せば良いのか分からないレンリエッタがあたふたしていると、エラフィンがズバッと聞いた。

「アンタ、ダンプリングの娘だね?」
「うっ…はい、そうです……ジョシュ…ダンプリングです…あの、此処に来たのは…」
「娘なら察しくらい付くだろう?エ~?」
「うぅうう……ごめんなさい…でもわたしも分からなくて…本が呪われているのは知ってるけど…どうしようも出来なくて…」
「全部話してもらおうじゃないか……でもまぁ、知ってる範囲で構わないよ。母親に何かあったのか知りたくてね。」
「怖がらずとも私達はあなたに危害を加える気は一切ありませんよ。」

 どうやら本について困っているのは娘であるジョシュ・ダンプリングも同じらしい。
 エラフィンが知っている範囲でも良いから話を聞かせてくれと言えば、彼女は渋々と話し始めた。とても怯えたような声で…

「母は…元々普通の小説家として活動していました……性格も優しくて…子供向けの児童書を書いてました……でも、父と離婚してからどんどんおかしくなって……変な話を書いたり、急に怒るようになったんです…」
「ふーん……それから何があったんだい?」
「私は母に元に戻ってほしくて、何か良い方法が無いか探したんです……そしたら、半年前に市場で古い本を見つけて…」
「本?それってどんな本なの?」
「鎖が掛かってて、表紙が金属製でした…題名も何も書いて無くて怪しかったけど、なぜか頭の中で声が聞こえた気がしたんです……悩みを解決してやるって…」
「エルヘルドの封印書だね…何も知らないバカが市場で売ろうとしたんだろう。」

 どうやらジョシュはすっかり人が変わってしまった母親を元に戻したい一心で本の声に耳を貸してしまったらしい。だがその本は特徴を聞く限り、間違いなくエルヘルドの封印書であった。
 随分と昔の品なので事情を知らない誰かが出品したのだろうとエラフィンは考えた。

「購入した本を母へ渡したら、なぜか急に性格が元に戻ったんです……一晩で…それからずっと書斎に籠って本を書き続けました…それがその…」
「ヘリークッツーシリーズとかいうものですか?」
「…うん……母が書いた本は飛ぶように売れて、私は喜んだけど…ある日、部屋を見たら……そ、その…声が聞こえて…誰かと話してたんです……最初はただの独り言だと思ったんだけど…明らかに違う声が聞こえて…」
「アンタの母親は異形の悪魔と話してたって?」
「そ、そうなんです!見たことも無いくらい…変な奴で、子供みたいな喋り方をしてました……本を書けばどんどん吸われて行くとか、みんなが夢中になるとか…」

 ジョシュの買い与えた本は確かにダンプリング氏を変えたが、悪い方向に変えてしまったらしい。封印を解かれたエルヘルドが彼女と契約して、今に至る…

「母は何度も私へ本を読むように言って来たけど…怖くて何度も捨ててました…それで、この前も捨てようとしたら…」
「私に会ったんだ…それで…」
「本当にごめんなさい…私のせいで……でも、なんで平気でいられるの?」
「実は平気じゃ無かったんだよ、私ってば洗脳されてたみたい。」

 とりあえず一連の原因が分かったので、三人はダンプリングをどうするかと話し合った。エラフィンの策ではとっ捕まえて悪魔もろともセルカトラズ刑務所へ送り込むというものだ。
 グリスは悪魔を始末してからダンプリングのみを刑務所へ送ると提案したが…レンリエッタは…

「悪魔を退治して二度と本を作れないようにする、そしてジョシュのお母さんを元通りにしてあげる。ってのは…どうかな?」
「うーん…甘っちょろいねぇ……世間はきっと許さないよ。」
「悪魔に操られてたって言えば良いんだよ、どうせみんなエルナントカってのは知らないんでしょ?」
「お願いします……お母さんを元に戻してください…もう嫌なんです…もう…」
「……しょうがないねぇ、とりあえず…まずはエルヘルドをどうにかしないとね。…悪魔退治を引き受けようじゃないか!」
「ほ、本当ですか!ありがとうございます!」

 とりあえず三人は野望を阻止するべく、エルヘルドを退治する事にした。もし新刊が発売されてしまえば、洗脳段階がまたもや上昇して、(厳密には分からないが)かなりマズイ事になるだろう…早く止めねば。
 だが、エラフィンはタダで悪魔退治を行うほどお人好しでは無かった…

「だが条件がある……報酬として資産の五割を渡して貰おうじゃないか。」
「ご、五割ですか?」
「先生ってば!そんな事言ってる場合じゃないよ!」
「あなたそれでも王宮魔術師ですか!?」
「うるさいね!いいかい、エルヘルドは危険なヤツだ。私だって対峙するまで相手の事が分からないし、死ぬかもしれない…そんな危険にタダで乗るなんて出来ないよ。」

 エラフィンはなんとダンプリングの資産の五割を要求した。
 こんな小娘になんの権限があるのかと思うかもしれないが、エラフィンは金の為なら法律を破る事など容易く行うので多少ヤバイ手段を使っても回収するだろう。
 ジョシュは五割と聞いて妙にそそっかしく慌てたが…キッパリと言った。

「分かりました!資産の五割でも何でも差し上げますよ!だからあの悪魔を…やっつけてください!」
「それを聞きたかったのよ。さぁレンリエッタ行くよ!老害退治だ!グリスは此処で子守でもしときな!」
「え!?……ま、まぁ承知しました…どうかお嬢様、エラフィン様…無理はなさらず…」
「無理するしか無いよ…私、戦闘能力無いし…」
「いいや、あるさ!そのポーションと杖があれば無敵の魔法使いだよアンタは。」
「無敵の魔法使い…」

 というわけでグリスはジョシュの護衛を行う事になり、エラフィンとレンリエッタは古代悪魔を退治するべく勇み足で屋敷の内部へと侵入した。二人を見送るグリスは……どうすれば良いか分からなかったので、ピクニックセットを帽子から取り出し、ジョシュをティータイムに招く事しか出来なかった…彼女は大層困惑しながらも茶席を受けた…

 一方で裏口から屋敷の内部へと侵入したレンリエッタとエラフィンは異様な光景にゾッとしていた。と言うのも屋敷の通路は何処を見てもおびただしい数の紙が散乱しており、壁はもちろん床や天井にまでも釘やテープで固定されているのだ。
 オマケに全ての紙にはびっしりと文字が書き潰されており、遠くから見れば黒い紙だと錯覚しそうになるくらいだった。内容もどこかおかしい…『今日は今日は今日は今日は』と同じ単語が並んでいるものもあれば、『どかチだめ度お卯るロろお』など意味のなさそうな文字列がひたすらに続いているものもあった。

「まさかここまでポンキチになってるとはねぇ…レンリエッタ、紙に書かれてる文章は極力見るんじゃないよ。設置型のトラップかもしれないからね。」
「う、うん……でも、なんでこんな事をするんだろう…」
「あの子を洗脳するためだろうねぇ、或いは…私達みたいな侵入者を始末する為かもね…」
「怖い事言わないでよぉ……うぅう…」

 狂気に満ちた光景にレンリエッタは早くも足がすくみそうになったが、エラフィンが付いているせいかどこか安心したように進むことが出来た。
 それにしても本当に不気味な場所である。こんなに広い屋敷だと言うのに使用人は見つからず、物音ひとつしない。ただパラパラと足元の紙を踏んで進む二人の足音だけが聞こえる…

「進むにつれて紙の量が多くなって来たね…どうやらこっちで間違いないみたいだ…」
「一体何を根拠にそんな事を…うっ、歩きづらい…」
「ま!長年の勘ってやつさ!あはははは!」
「すっごく頼りになる勘だね、ほんと…ははは…」

 進み続けると、それに比例するかのように紙の量は多くなって行った。窓にまで貼られているせいで暗く、足元に積もった紙は雪のように二人の足を重くさせた。
 そして……ついにエラフィンとレンリエッタは悪魔が居ると思わしき部屋の前までやって来た。夥しい数の張り紙は張られた両開きのドア…紙には『入るな!バーカ!!』や『入ったら殺すぞ!!』と書かれている…子供の脅し文句みたいだ。

「さて、此処だね……準備は良いかい?」
「う、うん……私の魔法だけで戦えるかな…」
「ポーションがあるから大丈夫さ。それとも杖に魔法を込めてやろうか?」
「……おねがいするよ…」

 ドアを開く前に、レンリエッタは杖ポケットから杖を取り出すと、エラフィンに魔力を充填してもらった。これで最低限戦う準備は出来ている。例のポーションもしっかりと懐に持っている…
 二人はドアを押すように開き始めた。ビリビリと紙が破ける音が響き……次の瞬間、バンッとドアは開いた…
 とても広い部屋だった……部屋の真ん中には机に向かってペンを走らせるダンプリング氏の姿があり……そしてその頭上には…ヤツが居た。

【アーッハッハッハッハ!!書け書け書け!もっと書け!!お前は世界一の小説家だぞーっ!!】
「はぁ…!はぁ…!!あたまが…冴える!!どんどん…どんどん文字が溢れて来る…!!」

「あ、あれが古代悪魔…」

 ダンプリング氏の頭上でフワフワと浮きながら妙に舞うヤツこそがエルヘルドで間違いないだろう。確かにその姿は異形だった、手足と胴体は妙に細く、肌は橙色だったしそれと同じような燕尾服を着ていた。
 そして黒一色の瞳に額と側頭部に生やした4本の鋭いツノ…奇妙な姿にレンリエッタはしばらくポカンと眺めていたが、こちらから先に仕掛けるよりも相手が二人の存在に気付いた。

【ウーン?誰だぁ?誰だお前等は!!不法侵入だぞー!!ドロボーだぁーッ!!】
「泥棒だって?じゃあアンタは何者だい?神とでも言うんじゃないだろうね?」
【アーッハッハッハ!ボクはエルヘルドのベータボリス様だぞぉ~ッ!お前等も本を読め!そしてぜーんぶボクにさ捧げるのさ!!アハハハハ!!】

 エルヘルドの正体はベータボリスという名らしい。彼はフワフワと浮きながら二人の前へやって来ると挑発しながら名乗った。
 レンリエッタは今にでも殴りかかりたい衝動に駆られたが、グッと堪えた。

「今すぐ本を書くのを止めさせて!それとみんなを元に戻して!!」
「大人しく手を引くなら滅多な事はしないでやるよ。」
【エェ~?やめろってぇ?……やーだねぇー!!ボクはぜんぶ手に入れるまで止めないよぉー!!みーんなが本を読めばみーんなボクに全てをくれるんだ!お金も魔力も命すらもねぇー!!だーかーらぁ…邪魔するヤツはぁ…】
「レンリエッタ…こっちに来な…!」
「う、うん…!」
【死ねッ!!】

 その瞬間、ベータボリスは部屋の壁一面に貼られた紙を操って鳥の大群のように飛ばし始めた。ぐるぐると螺旋状に回る紙束の大群はパキパキと折り紙のように折られて行き、鳥のような形になった。
 レンリエッタは様子を伺いながらエラフィンの傍へ近寄ると、次の瞬間、紙鳥の大群は一斉に二人目掛けて突撃し始めた…

「ウェバリアッ!!」
「きゃぁあ!!?」

 だがエラフィンが防御壁を張ったおかげで紙束は二人に直撃する事なく弾かれ、床へ落ちた。
 その様子を見ていたベータボリスは凄まじく腹を立て、怒り始める…

【なんだよぉ~!!もう!!魔法使いなんて聞いて無いよぉー!!】
「こう見えても有名な方だけどね、私は。」
【なら…そのまま押し潰してやるッ!!ほうらぁー!!】
「うわぁあ!!ま、また紙が動き出した…!」

 彼が腕を振り回して合図すると、紙鳥の残骸は再び動き出し、今度は一枚の紙となって防御壁を覆い始めた。おそらくこのまま潰して圧死させるつもりなのだろう。
 紙はベタベタと次から次へとドーム状の防壁に貼り付いて行く…

「どうしよう!このままマズいよ…!」
「安心しな……全部吹き飛ばしてやるさッ!!ウェブリスッ!!」
【ぎゃぁぁああ!!ぐえーッ!?】

 エラフィンがウェブリスの呪文を唱えると、瞬く間に防御壁を覆っていた紙は四方八方に吹き飛んでしまった。それどころかベータボリスも吹き飛ばされて壁に激突した。

「レン!今よ!!あのクソッタレに炎をお見舞いしてやりな!!」
「う、うん!!ええい!ポーション一気飲み…!ごくっ…ごくっ…!!ぶはッ!!」
【お、おのれぇ~…よくもボクにこんな酷い事を…うぅっぐ…】

 今がチャンスだと言わんばかりにレンリエッタは持ってきた薬を一気に飲み干した。先日調合した火付け薬だ……だがもちろんただの火付け薬ではない…枝多めの特別性である。
 すぐにレンリエッタは腹の底が(感情以外で)煮え滾るような感覚に襲われた。それと共にやって来るのは胃からせりあがる熱気……たまらず口を開けば、ボォーッと激しい炎が噴き出した!

「おげぇええええ!!」
【あぎゃぁぁああぁぁぁああ!!?あぢぃいいいゃぁぁあ!!!】
「あはははははは!よーく燃えてるよ!!あははは!!」

 レンリエッタの口から吹き出た青い炎は瞬く間にベータボリスを包み込み、彼は全身が焼け焦げる感覚を壮絶に味わう事となった。しかも炎は中々止まらず、止まったかと思えば二度三度も追い打ちが吹き出た。
 炎が完全に収まる頃にはベータボリスは真っ黒こげになってしまい、ダンプリング氏も気絶していた…

「はぁ…!はぁーっ!!…げほっ…ガスぎれ…」
【あが、あぁがが……あぎぎ…あづ…ぃぎぎ…】
「よくやったじゃないか。見てみな、アイツの情けなさと来たら…傑作だねぇ!」
「うぅ、喉が丸焼けになりそうな感じ…」

 さて、後はこの悪魔をどうしてやろうかと企みながらエラフィンはベータボリスへ近付いた。このままトドメを刺せば殺せるし、そうなれば本の魔力も無くなるだろう。
 だがレンリエッタがそんな事を望まないと思い、殺すことはしなかった。

「さーてーと…大人しく封印されて貰おうじゃないか。元の本に帰りな。」
【うぐぐ……わ、わかったよぉ……ぐすっ…】

 ベータボリスは泣きべそ掻きながら本を一冊手元へ取り寄せた。金属性の大きな本だ、チェーンは無いが古代悪魔封印用書籍のだいぶ古い型番のものだ。
 後はこのまま大人しく封印されてくれれば良いが……もちろん、そんな事は無かった。

【そんなわけあるかーっ!!よくもボクを丸焦げにしてくれがったなぁー!!】
「おやおや、困ったねぇ…これ以上痛めつけたくは無かったんだけど…」

 彼は本に閉じこもると、再度紙を操り出した。この部屋のみでは無い、屋敷中の紙がバラバラと飛んでベータボリスの下へ集まり始めた…
 そして紙同士が繋がって大きな塊となって行くのを見てレンリエッタは焦ったが、エラフィンは余裕そうだ。

「ど、どうしよう先生!?」
「安心しな。私がアイツをぶっ飛ばしてやるさ、相手がどんな恐ろしい姿になろうともね。」
【ほほう~?じゃあ、こんな姿でも言えるのかーっ!!見ろ!!紙のドラゴンだぞー!!グォオオオオオ!!】

 なんとベータボリスは数え切れない量の紙を繋げ、巨大なドラゴンとして身に纏ったのだ。紙製とは言えども地団駄を踏めば館が揺れ、大きく鳴けば恐ろしい感覚に襲われた……レンリエッタはドラゴンに関しては浅いが、声を聴いただけで戦意を喪失させてしまった…

「ぎゃぁあああああ!!こ、殺される…みんな…殺されちゃう…」
「情けない声出すんじゃないよレンリエッタ。」
【ハーッハッハッハ!楽には殺さないよー?まずは手首、足首、腕、太ももって順番で体を噛み千切るからねぇ!!そしたら僕の魔法で紙に変えてやるよぉー!!アハハハハハ!!】
「笑う暇があったら少しはやってみたらどうだい?まさか口だけなんて言わないだろうねぇ?」
【むむーッ!!生意気な女!!まずはお前からだーっ!!死ねぇーっ!!】
「あ、危ない!!」

 紙のドラゴンは鋭い紙製の牙が生え揃う口を大きく開くと、真っ先にエラフィンを捕食しようとした。
 レンリエッタは思わず目を手で覆ってしまったが、エラフィンは動じることなく言ってみせた。

「レンリエッタ!ちゃんと見ときな!!こいつが上級魔法だよッ!!」
「…え?」
「はぁあああ……キゲリカッ!!」
【はぁ?……ぐぎゃぁぁあぁぁぁぁああああ!!!】

 エラフィンがキゲリカを唱えると、何処からともなく炎の巨大な柱がグォオウ!!と現れてはドラゴンをあっという間に燃やし尽くしてしまった。レンリエッタは唖然としたままその様子を眺める事しか出来なかった…
 炎の柱は天井のみならず屋根すらも突き破り、館に大きな穴を開けてしまい、天高くまでその熱は届いた。
 一連の魔法攻撃が済む頃にはもう部屋は滅茶苦茶な状態となっており、天の穴から注ぐ光がエラフィンと黒焦げになった金属製の本を照らした…

「ふっ……久しぶりに使ったけど案外イケるわね…」
「す、すごい……」
「まぁこんなもんよ!アンタの師匠様は凄いだろ?」
「うん……」

 レンリエッタはあっという間にベータボリスを倒してしまったエラフィンを見て、強大な力を恐れると同時にいつか彼女のようになりたいと心の底から思うようになった。

 さて、本も黒焦げになったのでいよいよベータボリスはお陀仏かと思われたのだが…

「ねぇ……死んじゃったの?」
「どうだろうねぇ、加減しなかったから……たぶんね…」



【死んでたまるかぁーっ!!】
「うわぁ!!?まだ生きてる!しぶとい!!」
「まずい!アイツが逃げるよ!!」

 なんと彼はまだ生きており、本に収まりながらも宙に浮いてそのまま飛んで逃げようとした。
 てっきり殺したと思っていたエラフィンはうっかり取り逃してしまい、レンリエッタにも当然ながら捕まえられるはずも無かった…

【ギャハハハハ!捕まえてみろーっ!!】
「あぁそんなッ!!(捕まえないと…!みんなが!!)」

 レンリエッタは本を取り逃した瞬間、強い感情に襲われた。ベータボリスが逃げる……そう考えると彼に狂わされた人々の事で怒りが沸々と湧き上がり…未だかつてない憎しみのような感覚を覚えた…
 その瞬間に頭に思い浮かんだのは、間違いなく糸魔法だった。ここであの魔法が使えれば……彼を捕まえられるかもしれない…と。
 すると…

 シュルルルッ!!

「あぁッ!!」
「なんだって!?糸魔法!?」

 バシィッ!!

【あぎぎぃッ!?バカなぁー!!】

 なんと、驚くことにレンリエッタの持つ杖の先端から緑色に光る糸がシュルッと勢いよく飛び出し、瞬く間にベータボリスの本へ巻き付いて捕えてしまった。突然の事にレンリエッタもエラフィンも唖然としてしまい、しばらくボーっとしていたが…

「……はッ!…えい!!」
【あぎゃぁぁあ!!】
「おぉっと!!」

 ハッとしたレンリエッタが杖を引っ張ると、釣り竿に釣られた魚のようにベータボリスはこちらへ引き寄せられ、エラフィンがバシッと掴めば糸はシュルシュルと杖の中へ戻って行ってしまった。

「……えっと…捕まえたの…?」
「あ、ああ……そうだけど…アンタ今、使ったよね…?糸魔法…」
「分からない、なんで使えたのか全く分からない…」
「はは、ははは!あはははは!!すごいじゃないか!!レンリエッタ!!アンタは訓練無しで糸魔法を使ったんだ!私が見た中で一番の天才だ!」
「え?え?…そ、そうかなぁ…?」

 ひとまず落ち着くと、エラフィンは嬉しそうに笑いながらレンリエッタを称えた。習得が難しい糸魔法を、それも初級呪文すら全く使えなかった子供が訓練も無しに途端場で使ってみせたのだ。
 ハッキリ言えば異常が過ぎるほどの天才ぶりだった。しかし当の本人であるレンリエッタはどうにも納得できず、本当に自分の力なのかと疑いが晴れず、微妙な気持ちになった…

「やっぱりアンタはフォーメンの息子だよ!もしかしたらヘイルホーン家最高の魔法使いになれるかもね…」
「もう!やめてよ…そんなこと……よく分からないし…」

「う、う~ん…」
「あっ!ダンプリングさん!すっかり忘れてた!」
「あら、何か忘れてるかと思ったら…」

 さて、一旦レンリエッタの魔法は置いておくとして、意識を取り戻したダンプリングを見て二人はようやく彼女の存在を思い出した。
 慌てて駆け寄ったが、意外にも傷は見当たらず元気そうだった。

「あの、ダンプリングさん…大丈夫ですか?」
「よく…思い出せないわ……何かあったの?…頭がすごく痛いわ…」
「アンタと取引していた悪魔は私達が預かったよ。理由はもちろん分かるだろうねぇ?」
「あぁ……ベータボリスは…もう……使えないのね…」
「そんなもの使わなくても小説は書けるよ…」

 ダンプリングはベータボリスを失ってとても悲しそうな顔を浮かべた。彼女からすればやり方はどうあれ自身の窮地を救ってくれた存在だったのだ、失えば悲しむのも無理はない。
 エラフィンがダンプリングへ念のために治癒魔法を掛けていると、そこへ娘のジョシュとグリスがやって来た。騒ぎを聞きつけて来たようだ。

「お母さん!!」
「ジョシュ……」
「良かった…無事で……アイツはもう居ないんだよね?」
「ああばっちり捕まえたよ。うちの弟子がね!」
「お嬢様、お怪我はありませんか!?大丈夫ですか!?」
「大丈夫だよ、怪我なんて全然ないよ…」

 とりあえず各々が無事を確認すると、一同はベータボリスをどうしようかと相談し合う事にした。彼はエラフィンの防御壁と糸魔法を合わせた拘束魔術で捕らえられ、ジタバタと跳ねまわってはうるさく喚いた。

【わぁー!!やめてよー!!もう悪いことはしないからー!!】
「まずは本の魔力と洗脳を解くんだ、良いね?」
【もうやってるよぉ!みーんなボクの事をきらいになっちゃったよぉ…】
「それで…どうするおつもりで?もしよろしければ私が始末しますが…」
【うわぁ!!やめろー!!】

 レンリエッタはベータボリスを捕まえた瞬間の事を思い出しながら彼を手に取った。ジタバタと暴れるので何度か落としそうになったが、こうしてみると結構可愛く思えて来るではないか。
 鈴を付ければ音が鳴るおもちゃとして30分くらい楽しめるかもしれない。

【そ、そうだ!お嬢さん!ボクと契約してみない?売れっ子小説家にしてあげる!どんなにひどい作品でもボクの力があれば瞬く間にミリオンセラーだよ!】
「うーん…そう言えば私、書いてみたい話があるんだよねぇ~…」
「ほほう、レンリエッタ、どんな話だい?」
【ぜ、ぜひ聞かせておくれ!素晴らしい本にしてあげる!!】

「私が考えたお話は、悪い悪魔が本に閉じ込められて海の底でずーっと過ごすっていう話だよ。悪魔は自分がした事をずっと後悔しながら長い時間を過ごすの。」

【は、ははは……それって…ボクの事じゃ…ないよネェ?】

 どれだけ誘惑しようともレンリエッタは彼を許すつもりなど毛頭も無かった。ひょいっとエラフィンに投げ渡すと、本は瞬く間に大量の魔法を掛けられ、いよいよベータボリスは声も出せず、暴れる事も出来ないくらいに固く封印されてしまった…

「これにて一件落着…こいつは後でレンの言う通り、石で固めて海の底にでも沈めておくよ。とびっきり寒い北の海域が良いかもねぇ。」
「あ、あの……エラフィン…さんですよね?その、報酬の事ですが…」
「もちろん受け取るよ。ダンプリング、アンタの娘はアンタを助ける為に資産の五割を渡すって約束したんだ。ちゃんと支払ってくれるんだろうね?」
「えぇ?資産?困ったわねぇ……たぶん全然無いと思うわ…」
「なんだって!?本がバカ売れしてたんじゃないのかい!?」

 さて、今度は報酬の話になったわけだが……なんとダンプリング曰く資産はもうほとんど残っていないらしい。それもそのはず、此処へ引っ越して来た時にほぼ使い切ってしまったのだ。
 そりゃあこんな素晴らしい庭園付きの巨大な屋敷を買えばいくら人気作家でもスッカラカンになるのも無理は無いだろう。
 レンリエッタとグリスは納得したように笑い、エラフィンは雀の涙程度の金を受け取るほかなかった…

「さて……事も済んだが、最後に言っておくよダンプリング。」
「は、はい…なんでしょうか…」
「アンタがしでかした事は只事じゃないし、これから数々の重罪で王国総議会の裁判に掛けられるだろうね。だが何があっても余計な事は喋らず、こう言えば良い…」
「な、なんて?」

「何も覚えてません、操られてました…ってね。もし証人や弁護人が欲しけりゃ私の名前を出しな、そん時は出来るだけ手助けしてやるさ。」
「何から何までありがとうございます…本当に……」
「ありがとうございます皆さん!このご恩は絶対に忘れません!」
「忘れて良いわよ別に、大したことじゃ無いし。さぁ行くよ二人とも、霧カスが来る前にトンズラだ。」

 最後にそう言って、エラフィンはレンリエッタとグリスを連れてその場から去った…
 この先をどう生きるかは本人達次第だろう。



 帰り際、道中でレンリエッタは自分が糸魔法を使った事がまだ信じられずに杖を眺めた。たしかエラフィンが魔力を注いでくれたのだが、彼女の反応を見るにオマケで入れてくれたわけでは無い様だ。
 だとしたらなぜ?……レンリエッタは不思議に思うばかりだった…

つづく…
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