100均で始まる恋もある2

三森のらん

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3.エアプランツ

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 今日は小島と遠藤を残して、俺の方が先にフロアを後にした。いつもの金曜日なら、この二人は確実に退社している時間だ。しかし今日は、毎度のごとくミスした小島の面倒を、遠藤がみるはめになったのだ。
 俺も何か手伝えることはないかと思ったが、遠藤が「甘やかさないでください」と、いつになく厳しい顔つきだったので、そのまま任せて会社を出てきてしまった。週明け、どうなっているのか心配ではあるが、遠藤がいるから、たぶん、大丈夫だろう。 

 会社を出ると、すっかり日は落ちていたが、昼間の熱気がまだ居座っている。いつの間にかに梅雨が明けてくれたのはありがたいことなのかもしれないが、外回りをする身の上としては、もう夏かと思うと、げんなりする。
 半袖だと寒いくらいだった会社の中から、熱い空気に触れたせいなのか、ジワリと額に汗が滲んでくる。俺はいつも通りにつまみを買いに百均に向かった。

 駅ビルの中は、会社の中と同じくらいにひんやりとしていた。建物に入った最初は気持ちいいのに、一気に冷やされるせいで、すぐに寒いと感じてしまう。さっさとつまみを買って帰ろうと、つまみの棚で適当にアーモンド小魚、さきいかを手に取った。
 もう一品を何にしようかと悩んでいると、後ろで、母親とその子供なのか、親子連れが缶詰の前で言い合いとしていた。

「さば缶、飽きた」
「は? 何言ってるの。身体にいいのよ」
「えぇぇぇ」

 確かに、さば缶はたまに食べると旨い。味噌煮もいいが、俺は水煮のほうが好きだ。
 チラリと振り向いてみると、味噌煮と水煮と両方置いてある。久しぶりに水煮でも買って帰るか、と思ったら、その母親が棚に残っていた水煮をカゴの中に入れていく。
 子供が母親の腕にしがみつく。

「そんなにいらないよー」
「みんなで食べたら、すぐなくなるんだからいいの」

 結局その母親は、棚にあったさばの水煮の缶詰をありったけカゴの中におさめると、親子そろって別の商品の棚のほうに消えていった。
 何人家族なんだ、と呆れながら、再び棚のほうを見ると、味噌煮だけが残っていた。しかし、なんとなくそれに手を伸ばす気は起きず、俺の目はその隣の棚にあったアンチョビの缶詰のほうに向いた。
 そういえば、缶詰を火にかけて食べるっていうのを、前に何かで見た気がした。テレビだったか、雑誌だったか。たまにはスマホででも調べて、やってみるのもいいかもしれない。俺はアンチョビの缶詰を手に取ると、レジに向かった。
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