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5.ネクタイ
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遅い昼飯を食べるのに向かうのは、会社の裏にある定食屋。定食屋、というには、もう少し洒落た感じの店で、俺くらいの年代のサラリーマンだけではなく、若いOLもよく見かけたりする。時には土方の兄ちゃんたちもいたりと、なかなか客層のバリエーションが豊かだ。
引き戸を開けると、1階はすでに満席だった。こんな時間でも混んでいるのは、ランチの時間の設定が17時までだからかもしれない。俺はカウンターの中の女将さんと目を合わせると、彼女のほうも、にっこりと笑いかけてきた。
「あら、山本さん、遅いのね」
よく通っているせいもあって、すっかり顔馴染みになっている俺は、名前まで憶えられている。
「ああ、今日は何?」
カウンターの並んでいるおかずに目を向ける。
メインは肉と魚の2種類だが、今日は魚な気分。白身魚の餡かけが旨そうだ。付け合わせは、いつも同じ和風な物を頼んでしまうんだが、夏野菜のラタトゥイユなんていうハイカラなのに目がいってしまった。それは若い濱田くんがいるせいだろうか。
俺の後ろに隠れるように立っている濱田くんは、注文の仕方がわからないのか、少しオドオドしている。
「濱田くん、ここは先払いなんだ。サンプルがここにある。どれを選ぶ?」
声をかけてやると、ああ! という顔をして、俺の後ろからカウンターの前に出てきて、並んでいる料理に目を輝かせていた。そんな彼の姿に、フッと笑みをこぼし、俺は最後の1品を決めると女将さんに頼むメニューを伝えた。
「あと、彼の分も払っとくよ。足らなかったら、帰り際にでも声かけて」
「はいはい」
俺は二人分の金を払うと、「先に上に行ってるよ?」と声をかけて2階へと向かった。
上がってみると、俺以外の客はもういなかった。階段を上がったところにあるお茶のカウンターで湯呑二つに麦茶をそそぐと、窓際の大き目なテーブルへと向かう。窓ガラス越しに、白い日差しが差し込んでくる。あまり広くもないフロアなせいか、エアコンがしっかり効いていて、少し肌寒いくらいだ。
濱田くんが慌てたように階段を駆け上がってくる。
「あ、あの、ここの代金……」
「ん? 気にするな」
「でも」
「おっさんでも、それなりに稼いでるから。濱田くんの飯くらいは奢れる」
「そういうわけじゃ」
困ったような顔をする濱田くん。まぁ、それほど親しいとはいえない相手、それもずっと年上の人間から奢られるなんてことは、学生の彼には馴染みがないかもしれない。だから交換条件をつけてみた。
「じゃあ、今度、百均の店で何か商品を奢ってくれよ。ここと同じ値段だと、10種類くらいになるかな」
「え、あ、はい……」
そう返事をすると、さっそく彼は考え出したようだ。眉間に皺を寄せながら、天井あたりに目線を向けている。彼がどんな物を選ぶのか、少しばかり興味がわく。そして、百均といえば、今日はあちらの仕事はいいんだろうか、と、心配になった。
「今日は、百均の仕事はないのかい?」
「あ、いえ。あります。ここが終わったら、行く予定になってます」
「へぇ、その格好で?」
ネクタイに半袖ワイシャツ姿の彼がエプロンをしながらレジに入っている姿を想像する。普通なら、まるで社員みたいに見えそうなのだろうけれど、やっぱり、高校生のバイトに見えてしまいそうだな、と思いながらジッと見つめる。あんまり見つめすぎたのだろうか。彼の顔が恥ずかしそうに俯きながら、真っ赤になってしまった。
「はい、お待たせしました~」
タイミングよく、女将さんが二人分のトレイを持って現れてくれた。俺たちは、そのまま会話をするでもなく、食事に集中することになった。
引き戸を開けると、1階はすでに満席だった。こんな時間でも混んでいるのは、ランチの時間の設定が17時までだからかもしれない。俺はカウンターの中の女将さんと目を合わせると、彼女のほうも、にっこりと笑いかけてきた。
「あら、山本さん、遅いのね」
よく通っているせいもあって、すっかり顔馴染みになっている俺は、名前まで憶えられている。
「ああ、今日は何?」
カウンターの並んでいるおかずに目を向ける。
メインは肉と魚の2種類だが、今日は魚な気分。白身魚の餡かけが旨そうだ。付け合わせは、いつも同じ和風な物を頼んでしまうんだが、夏野菜のラタトゥイユなんていうハイカラなのに目がいってしまった。それは若い濱田くんがいるせいだろうか。
俺の後ろに隠れるように立っている濱田くんは、注文の仕方がわからないのか、少しオドオドしている。
「濱田くん、ここは先払いなんだ。サンプルがここにある。どれを選ぶ?」
声をかけてやると、ああ! という顔をして、俺の後ろからカウンターの前に出てきて、並んでいる料理に目を輝かせていた。そんな彼の姿に、フッと笑みをこぼし、俺は最後の1品を決めると女将さんに頼むメニューを伝えた。
「あと、彼の分も払っとくよ。足らなかったら、帰り際にでも声かけて」
「はいはい」
俺は二人分の金を払うと、「先に上に行ってるよ?」と声をかけて2階へと向かった。
上がってみると、俺以外の客はもういなかった。階段を上がったところにあるお茶のカウンターで湯呑二つに麦茶をそそぐと、窓際の大き目なテーブルへと向かう。窓ガラス越しに、白い日差しが差し込んでくる。あまり広くもないフロアなせいか、エアコンがしっかり効いていて、少し肌寒いくらいだ。
濱田くんが慌てたように階段を駆け上がってくる。
「あ、あの、ここの代金……」
「ん? 気にするな」
「でも」
「おっさんでも、それなりに稼いでるから。濱田くんの飯くらいは奢れる」
「そういうわけじゃ」
困ったような顔をする濱田くん。まぁ、それほど親しいとはいえない相手、それもずっと年上の人間から奢られるなんてことは、学生の彼には馴染みがないかもしれない。だから交換条件をつけてみた。
「じゃあ、今度、百均の店で何か商品を奢ってくれよ。ここと同じ値段だと、10種類くらいになるかな」
「え、あ、はい……」
そう返事をすると、さっそく彼は考え出したようだ。眉間に皺を寄せながら、天井あたりに目線を向けている。彼がどんな物を選ぶのか、少しばかり興味がわく。そして、百均といえば、今日はあちらの仕事はいいんだろうか、と、心配になった。
「今日は、百均の仕事はないのかい?」
「あ、いえ。あります。ここが終わったら、行く予定になってます」
「へぇ、その格好で?」
ネクタイに半袖ワイシャツ姿の彼がエプロンをしながらレジに入っている姿を想像する。普通なら、まるで社員みたいに見えそうなのだろうけれど、やっぱり、高校生のバイトに見えてしまいそうだな、と思いながらジッと見つめる。あんまり見つめすぎたのだろうか。彼の顔が恥ずかしそうに俯きながら、真っ赤になってしまった。
「はい、お待たせしました~」
タイミングよく、女将さんが二人分のトレイを持って現れてくれた。俺たちは、そのまま会話をするでもなく、食事に集中することになった。
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