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6.ジャック・オー・ランタン
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八巻さんの初っ端の『お嬢様』具合は、なかなかのものだった。よくまぁ、この『お嬢様』を会社で働かせる気になった、と、つくづく思う。
俺がパソコンに向かっていると、小笠原との打ち合わせを終えた八巻さんのところに、佐藤さんたちが近寄って話しかけた。彼女たちを見て、さっそく引継の話になるか、と、ホッとして自分の仕事に戻ろうとした時。八巻さんのハキハキした声が聞こえてきた。
「私、巽君とのお仕事をするために来たんです。そんなお仕事、やるつもりありません』
見た目の可愛らしさを、完全に裏切って、見事に強気なお嬢様だ。小笠原との打ち合わせの内容をちゃんと聞いていなかったのか、と、思わず、小笠原のほうを見ると、小笠荒のほうも驚いた顔をしている。
せっかく、佐藤さんと丹野さんが頑張って用意してくれたマニュアルを受け取りもせず、彼女は自分の用意された席ではなく、遠藤の隣……野原の席に座ったかと思ったら、携帯を弄りだした。その様子に顔を真っ赤にして怒り出したのは、佐藤さんたちではなく、ちょうど野原とともに席を外していて戻って来た遠藤だった。
「八巻さんっ」
めったに怒らない遠藤が、珍しく怒鳴ったのには、周囲も驚きが隠せない。
「いい加減にしてください。ちゃんと任された仕事をやってくれないと、他の方達に非常に迷惑ですっ」
「巽君……」
遠藤のあまりの剣幕に、八巻さんはもう泣きそうな顔になっている。その様子を見て、本来怒る側の佐藤さんたちが、間に入って遠藤を宥めようとしている始末。
「佐藤さんたちも、甘やかさないでください」
そう言うと、皆が見ている前で、懇々と説教を始めた。最後に「こんなんじゃ、さっさとおじい様にお伝えして、引き取ってもらったほうがいいですね」と言い放った途端、八巻さんは号泣し始めてしまった。
その様子を見かねたのは、まさに佐藤さんたち二人で、彼女を連れ立ってフロアを出ていった。
けして長くもないその間、俺はあまりの剣幕に口を出せずに傍観してしまった。
「すみません、本当に……」
項垂れた様子で遠藤が席につく。俺のほうも「ああ、なんだ……うん、お疲れ」と労いの声をかけてやることしかできない。
「そういえば、そのおじい様とやらと連絡はとれたのか?」
「あ、いえ。やはり、お忙しい方なんで、なかなか」
「そうか……しかし、あの様子じゃ、完全にお前狙いだな」
俺の言葉に、遠藤は机に突っ伏し、周囲は完全に同情の眼差しで見つめている。
「冗談じゃないですよ……俺に、普通に仕事をさせてくれ……」
切実なその言葉に、俺も苦笑いするしかなかった。
俺がパソコンに向かっていると、小笠原との打ち合わせを終えた八巻さんのところに、佐藤さんたちが近寄って話しかけた。彼女たちを見て、さっそく引継の話になるか、と、ホッとして自分の仕事に戻ろうとした時。八巻さんのハキハキした声が聞こえてきた。
「私、巽君とのお仕事をするために来たんです。そんなお仕事、やるつもりありません』
見た目の可愛らしさを、完全に裏切って、見事に強気なお嬢様だ。小笠原との打ち合わせの内容をちゃんと聞いていなかったのか、と、思わず、小笠原のほうを見ると、小笠荒のほうも驚いた顔をしている。
せっかく、佐藤さんと丹野さんが頑張って用意してくれたマニュアルを受け取りもせず、彼女は自分の用意された席ではなく、遠藤の隣……野原の席に座ったかと思ったら、携帯を弄りだした。その様子に顔を真っ赤にして怒り出したのは、佐藤さんたちではなく、ちょうど野原とともに席を外していて戻って来た遠藤だった。
「八巻さんっ」
めったに怒らない遠藤が、珍しく怒鳴ったのには、周囲も驚きが隠せない。
「いい加減にしてください。ちゃんと任された仕事をやってくれないと、他の方達に非常に迷惑ですっ」
「巽君……」
遠藤のあまりの剣幕に、八巻さんはもう泣きそうな顔になっている。その様子を見て、本来怒る側の佐藤さんたちが、間に入って遠藤を宥めようとしている始末。
「佐藤さんたちも、甘やかさないでください」
そう言うと、皆が見ている前で、懇々と説教を始めた。最後に「こんなんじゃ、さっさとおじい様にお伝えして、引き取ってもらったほうがいいですね」と言い放った途端、八巻さんは号泣し始めてしまった。
その様子を見かねたのは、まさに佐藤さんたち二人で、彼女を連れ立ってフロアを出ていった。
けして長くもないその間、俺はあまりの剣幕に口を出せずに傍観してしまった。
「すみません、本当に……」
項垂れた様子で遠藤が席につく。俺のほうも「ああ、なんだ……うん、お疲れ」と労いの声をかけてやることしかできない。
「そういえば、そのおじい様とやらと連絡はとれたのか?」
「あ、いえ。やはり、お忙しい方なんで、なかなか」
「そうか……しかし、あの様子じゃ、完全にお前狙いだな」
俺の言葉に、遠藤は机に突っ伏し、周囲は完全に同情の眼差しで見つめている。
「冗談じゃないですよ……俺に、普通に仕事をさせてくれ……」
切実なその言葉に、俺も苦笑いするしかなかった。
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