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6.ジャック・オー・ランタン
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それからの八巻さんは、遠藤の説教が効いたのか、我儘も言わず、佐藤さんたちの仕事を熱心にこなしていった。それでも遠藤には遠慮なく絡みに行き、その度に、手酷く断られて泣きそうになっている。
ほどほどにしてやればいいのに、と思って見ていると、急に俺の方を見た遠藤が、「甘やかすと痛い目に合うんですよ」と、座ったような目でそう言った。
俺は何も言ってないんだがなぁ、と思いつつ、彼女との過去にそういったことがあったのかもしれない。それぐらい説得力のある言い方に、俺は顔を強張らせながら頷くだけだった。
この遠藤と八巻さんの攻防のお陰で、部内の雰囲気が落ち着かない。遠藤が八巻さんの相手をしているからか、小島がやたらと俺に絡んでくる。
今も、俺の席まで来て書類の確認を頼みに来たかと思ったら。
「山本課長! 今日こそは、ご飯食べに行きましょう!」
「あー、すまん。今日は小笠原と約束があってな」
「えぇぇぇ。この前も言ってませんでした?」
書類を見ながら返事をする俺。毎回、小笠原の名前を出すせいで、小島は誤魔化されてくれない。
「いや、本当だって」
そう言いながら小笠原の席を見ると、肝心の小笠原は席を外してる。援護射撃がないままに、小島が続けて文句を言おうとした時。
「小島さ~ん、お電話です~」
丹野さんがタイミングよく声をかけてくれた。一瞬、ムッとした小島は「はーい」と、いつになく低い声で返事をして自分の席へと戻っていく。彼女が離れたところで、大きくため息をつく。
なんだか、疲れた。
ふと、頭の中に、濱田くんの笑顔が浮かんだ。なぜ急に彼のことが思い浮かんだのか、自分でもわからない。しかし、そういえば最近、彼と話をしてないことを思い出す。百均に行くたびに、レジでの姿は見かけるのだけれど、いつも隣のレジになってしまって、彼と話をする機会がなかなかない。目が合えば、互いに会釈をする程度でしかない。
「山本課長、よかったら飲みます?」
いつの間にか傍に立っていた丹野さんが俺に差し出したのは、あのシュークリームの缶ジュース。
「え?」
「なんか、お疲れのようなんで……甘いの飲んだら少しはいいかな、と思って」
俺は素直に、青い缶におじいさんの顔が描かれている缶を手にする。そういえば、濱田くんから、これの感想を聞いていない。感想を聞く前に、俺自身が飲んでしまうのも、なんだか違う気がした。
「いや、気持ちだけいただくよ。そんなに甘いモノ、得意じゃないんでね」
それは嘘ではない。しいて言えば率先して食べないというだけではあるが。申し訳ないと思いつつ、受け取った缶をそのまま彼女へと返す。
「あ、そうなんですね。すみません。あ、じゃあ、ビターチョコとかなら大丈夫です?」
そう言って自分の席に戻って持ってきたのは、カカオ70パーセントと書いてあるチョコレートの箱。その中から一粒だけを俺の机の上に置いてくれた。
「ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
ニッコリ笑って離れていく丹野さんを、小島が電話をしながら睨みつけているのに気が付いてしまった俺は、顔が固まってしまった。これ以上、何も起こさないでくれよ、と切に願わずにはいられなかった。
ほどほどにしてやればいいのに、と思って見ていると、急に俺の方を見た遠藤が、「甘やかすと痛い目に合うんですよ」と、座ったような目でそう言った。
俺は何も言ってないんだがなぁ、と思いつつ、彼女との過去にそういったことがあったのかもしれない。それぐらい説得力のある言い方に、俺は顔を強張らせながら頷くだけだった。
この遠藤と八巻さんの攻防のお陰で、部内の雰囲気が落ち着かない。遠藤が八巻さんの相手をしているからか、小島がやたらと俺に絡んでくる。
今も、俺の席まで来て書類の確認を頼みに来たかと思ったら。
「山本課長! 今日こそは、ご飯食べに行きましょう!」
「あー、すまん。今日は小笠原と約束があってな」
「えぇぇぇ。この前も言ってませんでした?」
書類を見ながら返事をする俺。毎回、小笠原の名前を出すせいで、小島は誤魔化されてくれない。
「いや、本当だって」
そう言いながら小笠原の席を見ると、肝心の小笠原は席を外してる。援護射撃がないままに、小島が続けて文句を言おうとした時。
「小島さ~ん、お電話です~」
丹野さんがタイミングよく声をかけてくれた。一瞬、ムッとした小島は「はーい」と、いつになく低い声で返事をして自分の席へと戻っていく。彼女が離れたところで、大きくため息をつく。
なんだか、疲れた。
ふと、頭の中に、濱田くんの笑顔が浮かんだ。なぜ急に彼のことが思い浮かんだのか、自分でもわからない。しかし、そういえば最近、彼と話をしてないことを思い出す。百均に行くたびに、レジでの姿は見かけるのだけれど、いつも隣のレジになってしまって、彼と話をする機会がなかなかない。目が合えば、互いに会釈をする程度でしかない。
「山本課長、よかったら飲みます?」
いつの間にか傍に立っていた丹野さんが俺に差し出したのは、あのシュークリームの缶ジュース。
「え?」
「なんか、お疲れのようなんで……甘いの飲んだら少しはいいかな、と思って」
俺は素直に、青い缶におじいさんの顔が描かれている缶を手にする。そういえば、濱田くんから、これの感想を聞いていない。感想を聞く前に、俺自身が飲んでしまうのも、なんだか違う気がした。
「いや、気持ちだけいただくよ。そんなに甘いモノ、得意じゃないんでね」
それは嘘ではない。しいて言えば率先して食べないというだけではあるが。申し訳ないと思いつつ、受け取った缶をそのまま彼女へと返す。
「あ、そうなんですね。すみません。あ、じゃあ、ビターチョコとかなら大丈夫です?」
そう言って自分の席に戻って持ってきたのは、カカオ70パーセントと書いてあるチョコレートの箱。その中から一粒だけを俺の机の上に置いてくれた。
「ありがとう」
「いいえ、どういたしまして」
ニッコリ笑って離れていく丹野さんを、小島が電話をしながら睨みつけているのに気が付いてしまった俺は、顔が固まってしまった。これ以上、何も起こさないでくれよ、と切に願わずにはいられなかった。
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