100均で始まる恋もある2

三森のらん

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9.酒のつまみ、再び

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 新年らしくない朝に、いつも通りの時間に目が覚める。会社があるわけでもない。それでも、いつまでも横になっている気分ではない。今年の正月休みは三日まで。テルくんがいないからといって、だらだらしてると、あっという間に時間が過ぎてしまう。
 ゆっくりと起き上がるとすぐ、グレーのジャージの上に黒のパーカーを羽織る。ベッドの脇に置いてあったスマホを手に階下へと降りて行こうとした時、手の中のスマホが震えた。急に震えたものだから、焦ったように画面を見る。テルくんの名前の表示に、急いで通話ボタンを押した。

「おはよう」
『お、おはようございますっ』

 なぜだろう。少し押し殺したような彼の声なのに、俺には優しい囁き声に聞こえるのは。

『えと、あけましておめでとうございます』
「ああ、あけましておめでとう」
 
 わざわざ、新年の挨拶のために電話をくれたのか、と思うと、普通ににやけてしまう。新年最初の声がテルくんだったことに、俺の胸の奥が熱くなる。

『崇さん、ごめんなさい』


 急にテルくんが少し辛そうな声で謝ってきた。何かあったのだろうか、と心配になる。

「何? どうかしたの?」
『ほ、本当は、今日帰るつもりだったんですけど……初詣で幼馴染に会ってしまって……飲み会に誘われてしまったんです……今日の夕方には帰るつもりだったのに』


 どこか拗ねたような声が、可愛いと思ってしまう。普段は、どこかおっとりした感じで、あまり感情の起伏がある子ではない。それが、こんな風に拗ねている。この可愛らしさは、俺に向けられていると思うと、自分でも愚かだと思うくらいに、喜びで溢れそうになる。
 しかし、それを素直に出すことはできないのは、俺がオッサンになってしまったがゆえだろうか。そして同時に、俺が言ってあげないといけない言葉がある。

「それは、せっかくだから行ってきたらいいよ」
『……崇さん』

 年に何度も戻るわけでもない彼に、地元の友人と会うなんていうのは貴重なことに違いない。本当は『帰っておいで』と言いたいところだが、ぐっと、その言葉を飲み込んだ。

『……明後日、崇さんの家に行ってもいいですか?』

 縋るような言葉に、身体が反応しそうになる。電話越しじゃ、テルくんにわかるわけがないけれど、いい年をして、少しばかり恥ずかしい。
 それでも、明後日にはテルくんに会える。そう思うだけで、期待が膨らむ。

「……いいよ」

 俺の期待に満ちた想いが、彼に伝わったかはわからない。それでも、テルくんの嬉しそうな『また、連絡します』という声に、笑みがこぼれた。
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