100均で始まる恋もある

三森のらん

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3.エアプランツ

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 駅ビルを出た途端、むわっとした熱い空気が僕を包む。直射日光が当たるわけでもないけれど、この空気の熱だけで、クラッとしそうになる。
 僕は斜め掛けの小さなバッグを背に、駅の反対側に向かった。大きな階段を降り切ると、広いタクシー乗り場のロータリーが広がる。白っぽい景色の中、見上げると山本さんの会社の名前のあるビルが、少しだけ建物と建物の隙間に見えた。

 僕はキョロキョロと周りを見渡しながら、そのビルを目指して歩き出した。

 ――それにしても熱い。

 直射日光が痛いほど突き刺さる。普段はあまり汗をかかないような僕ですら、額にジワリと滲んでいるのがわかる。そんな暑さの中を歩くのは、ほんとに数人くらい。僕も内心バカみたいだ、と思いながらも、足は止まらない。

 この辺にしては大きなビルだったから、すぐに見つかると思ったのに、意外に入り組んだ道路のせいか、正面玄関がある場所に着くまでに、思ってたよりも時間がかかった。
 そしてこの周辺には、すぐに入れそうなカフェらしきものもないことにも気づいた。たぶん、駅前まで戻らないと、その手に店は見つかりそうもなかった。
 そしてその頃には、ジワリと滲んでた汗が、僕のもみあげあたりから流れ落ちるくらいになっていた。

 わかってはいたものの、下から見上げたら随分と大きなビルだったことに改めて驚く。
 駅ビルから見えた時はそれほどと思わなかった。山本さんがここで仕事してるのかあ、と感慨深く思ってると、自動ドアが静かに開いた。
 ここの男性社員らしき人たちが足早に出て行く。この暑いのに外回りなのかな、と思うと、あの疲れ切った山本さんの姿が目に浮かんだ。山本さんも外に出てるのかな、と思った時、再び自動ドアが開いた。
 そこから、僕に今のバイトを紹介してくれた先輩、平川先輩と女性社員らしき人が並んで出て来た。平川先輩は半袖のワイシャツにグレーのスラックスと、大学生というよりはすっかり社会人みたいな様子で足早に目の前を通り過ぎていく。
 僕は驚いて平川先輩の姿を目で追ったけれど、先輩は先輩で僕のことに気づかずに、女性社員の人と楽しそうに話しながら出て行った。

「え。まさか、平川先輩の就職先って、ここ?」

 僕は唖然としながら、二人の背中を見送る。
 まさか山本さんと一緒に働いてなんていないよね? と、チラリと思ったけれど、そこまで偶然は重ならないだろうとも思った。
 しばらく立ち尽くしていた僕は、日差しが少し傾いてきたことに気づいて、バイト先に戻ることにした。
 この暑さで体力は消耗しつつあったし、ただちょっと、この建物が気になっただけだし、と、自分の中で言い訳をしながら、その場を離れた。
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