100均で始まる恋もある

三森のらん

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6.ジャック・オー・ランタン

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 学園祭がいよいよ明日となった金曜日。昼休みに調べものをしに行った大学の図書館で、久しぶりに湯浅さんと出会った。
 ちょうど階段を降りようとしてた僕と、昇ってきた彼女。二人とも一人きりで、軽く会釈をして通り過ぎようとしたのだけけれど、彼女が急に腕を捕んできた。

「な、何?」

 静かな図書館で、僕の声は思いのほか響いた。周囲の視線が一気に集まってしまって、慌てて僕は彼女と一緒に、もう一度階段を駆け上り、書架の間に逃げ込んだ。

「ど、どうしたの?」

 少しばかり、ドキドキしながら声を抑えながら彼女に言うと、彼女も耳まで真っ赤になっていた。

「す、すみません、あんなところで腕つかんじゃって」
「あ、う、うん」
「こ、この前のバイトのお礼を言いたかったんです。だけど、濱田さん、行っちゃいそうだったから、つい」

 だからといって、階段の途中で腕つかまれると、僕だって驚いて声をあげてしまう。

「ああ、そう」
「あの、ほんと、ありがとうございました。なんか濱田さんが作業してくださったおかげで、しばらく私、あんまりすることがなくて、なんかバイト代もらうのが申し訳ない感じになっちゃってて」

 そう言われると、逆に彼女の仕事をとってしまったみたいで、申し訳なくなる。

「あ、そ、それで、お礼したいなと思ってて」

 彼女は大きな肩掛けタイプのコットンバックの中から、一本の缶を取り出した。

「これっ、会社で流行ってて」

 それは忘れもしないシュークリームの缶。山本さんにもらって、家に帰ってすぐに飲んだ。きっとまた会ったら感想を聞かれるかもしれないからって思ったのに、実際にはなかなか話できていないけれど。

「ああ、これ」
「え? 濱田さん、知ってるんですか?」

 キョトンとした顔で僕を見上げてくる。

「ああ、うん」
「そうなんですね! これ、思ったより美味しいですよね?」

 目をキラキラさせながら、僕を見る彼女。どうも夢中になると、彼女は距離感がおかしくなるのかもしれない。何せ、妙に彼女の顔が近いのだ。

「そ、そうだね」
「ずっとバッグの中に入れてたから、今飲むと温いと思うんで、帰って冷やしてから飲んでください」

 そう言うと僕の手に缶を渡すと、じゃ、失礼します、と、にっこり笑ってから頭を下げて僕の前から去っていった。
 僕は呆然としながら、手の中にある温い缶を見つめた。彼女の言うように、確かに、思ってたよりも美味しいと思ったのは事実だ。しかし、また飲むことになるなんて想像もしていなかった。とりあえず、もらった缶をバッグにしまうと、僕は図書館をあとにした。
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