100均で始まる恋もある

三森のらん

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6.ジャック・オー・ランタン

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 また涙が浮かびそうになったのを、グッとこらえると、カゴの中身を確認する。

「ん~、全部で9個か。あと一つ、何かないかな……」

 あと1個、あと1個、と呟きながら、カゴを持ちながらレジのほうに向かう。

「濱田くん、そろそろいいかなぁ」

 もう自分のレジを締め終わっている尾賀さんが、途中になってた僕のレジに立って作業を始めてる。

「す、すみませんっ」

 僕は慌ててレジに戻ろうとした時、レジ前に置いてあったかぼちゃのお化けの柄のチョコレートの袋に気が付いた。

「これって、もう、これだけなんでしたっけ?」

 そこにはあと2個だけしか残っていなかった。

「うん、これで終わり~。何、買ってくれるの?」

 山本さんが甘いもの買っていく姿を見たことはなかった。でも、これが最後なら。

「2個とも買います」

 一つは僕が記念に。いつか、この気持ちが昇華されたら食べよう。そう思いながら僕はカゴの中に2個とも入れた。それを尾賀さんは受け取って、バーコードを読んでいく。僕は小銭入れからお金を取り出すと、尾賀さんに渡した。

 レジ締めを終えると、事務所に売上のお金をA4サイズのメッシュのビニール袋に入れて持って行く。小銭が多いからずっしりと重い。長机に置くと、壊れるんじゃないか、って思うくらいだ。

「このかぼちゃのお化けって、何っていうんですっけ」

 片手にかけていたレジ袋から、チョコレートの袋をを一つだけ取り出す。

「ん? ジャック・オー・ランタンだっけかな」
「へぇ」

 僕は、これで、このオレンジのかぼちゃのお化けの名前を忘れることはないだろうな、と思った。

「お? これ以外に美味しいね」

 金庫を開けている尾賀さんにお金の入ったビニール袋を渡していると、背後から店長の矢島さんの声が聞こえた。その声に、振り向いてみると、矢島さんの手には、あのシュークリームの缶。

「ええぇぇっ!?」
「な、何!?」
「それ、僕のですっ」

 すっかり、冷蔵庫に入れていたのを忘れてた。休憩のタイミングを見て、とか思ってたのに。

「名前書いてな書いてなかったからって、勝手に飲んでいいわけないでしょ」
「いいじゃん、どうせ濱田くん、飲むの忘れてたんでしょ?」
「忘れてたとしても、勝手に飲まないでくださいよ。それ、人からもらったやつだったのに」

 そう言ってる僕の目の前で、一気飲みした矢島さん。ひどい。

「もう、飲んじゃったもーん。今度買ってあげるからさぁ。許してよぉ」

 矢島さんは、そう軽く言うけれど、あのシュークリームの缶、山本さんの会社の自販機で売ってるのしか聞いたことがないし、コンビニとかでも見たことがないんだけど。

「それ、人からもらったヤツだったのに」

 もう一度未練がましくそういいながら、ジトッと睨むと、慌てて尾賀さんの手伝いをしに行く店長。逃げた、と思ったけど、もう空になってしまっているのは仕方がない。しかし、せっかく飲もうと思ってたのを飲まれてしまうとか、今日は、本当に運が悪いかも。

「あれ、なんか金額合わないんだけど」

 尾賀さんのイラついた声が聞こえて、僕はもう帰ってしまいたい、と、痛烈に思った。
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