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8.クリスマスツリー
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店の前で待っていた山本さんは、僕の顔を見るとフッと小さく笑って歩き出した。
僕は何も言わず、ただ後を追いかける。後ろから見る山本さんの背中は、やっぱり少し猫背で、僕はなぜだか笑みを浮かべてしまう。
見覚えのある街並みに、山本さんの家に向かってるのがわかる。時期が時期だけに、クリスマスのライトアップをしている家も少なくない。
あの僕の突然の告白以来、初めての山本さんの家。この先の展開にドキドキしながらも、山本さんの奥さんと娘さんの写真が頭を掠める。もう、この世に存在しない人たちでも、僕の中には、やっぱり少しの遠慮というか、どこか申し訳ない気持ちが湧いてしまってる。
モヤモヤした思いを抱えながら歩いていたせいで、キィー、という門扉の開く音を聞くまで、山本さんの家の前についていたことに気が付かなかった。隣の家のライトアップがかなり激しいせいか、山本さんの家の真っ暗さが際立って見えて、寒々しく感じる。
僕が静かに門扉を閉めている間に、山本さんは玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
振り向きながら、優しく微笑む山本さんは、少し頬が赤くなっていた。たぶん、寒さだけではなく、中華料理の店でビールを飲んだせいもあるのかもしれない。
「お、お邪魔します……」
山本さんの前を、身をかがめながら玄関に入る。暗い玄関先に、一番に目がいったのは、下駄箱の上に置かれていたはずのエアプランツ。だけど、今は何も置かれていない。まさか枯れてしまったのだろうか。ふと、少しだけ不安になる。
玄関のドアが閉まり、カチリと鍵がかけられた。僕のすぐ後ろに山本さんが立っている。そう思うだけで、緊張してしまうのに、山本さんが後ろから急に抱きしめてきた。
「や、山本さん!?」
僕は思わず声をあげ、後ろを振り向こうとした時。微かなタバコの匂いと、強烈なアルコールの匂いに、お酒を飲んでないのに酔いそうになる。そして、山本さんの唇が僕の耳を掠めた。
「ふわぁっ!?」
つい変な声が出てしまった僕に、山本さんはクスクスと笑いだした。その振動が心地よくて、文句を言いたかったのに、何も言えなくて、むしろ僕もクスクスと笑いだしてしまった。
「なんか、やっと濱田くんをちゃんと抱きしめた気がする」
その温かい声がじんわりと僕の心にしみ込んでくる。
「濱田くん」
ため息のような山本さんの声は、僕の下半身を直撃する。思わずかがみこみそうになるのを、背中から抱え上げるように僕を抱きしめなおしたかと思ったら、山本さんのスッと通った鼻筋が、僕の耳を撫で上げた。その感触にゾクッとして「んあっ」と甘い声が漏れる。つい、僕を抱きしめてる山本さんの腕をぎゅっと握りしめる。
「や、山本さん、酔ってます?」
「んー、少し……」
「パーティで、どれだけ飲んだんですか……」
ため息をつきながら、チラリと山本さんの顔を覗き込む。ビール1本くらいでは、ここまで酔う人ではないのは、今まで食事をしてきた間でわかってる。いつも、食事のたびに頼むビールくらいでは、ほとんど顔にも出ないし、普段とあまり変わらなかった。それなのに、今の山本さんは、思い切り僕の背中に体重をのせ始めてる。
「ちょ、ちょっと、重いです……う、うわっ」
体重を支えきれそうになくて、下駄箱に片手を置く。すると、山本さんも「おっと」といってようやっと自分の足で立ってくれた。
「や、山本さん、玄関あがりましょう?」
倒れそうになったせいで、体勢を変えて真横に立った山本さんは、僕の肩に腕を回して立っている。下を向いて目を瞑ってる姿に、今、この人を支えてるのは僕なんだ、と思ったら、僕は山本さんへの愛しさがこみあげた。
僕は何も言わず、ただ後を追いかける。後ろから見る山本さんの背中は、やっぱり少し猫背で、僕はなぜだか笑みを浮かべてしまう。
見覚えのある街並みに、山本さんの家に向かってるのがわかる。時期が時期だけに、クリスマスのライトアップをしている家も少なくない。
あの僕の突然の告白以来、初めての山本さんの家。この先の展開にドキドキしながらも、山本さんの奥さんと娘さんの写真が頭を掠める。もう、この世に存在しない人たちでも、僕の中には、やっぱり少しの遠慮というか、どこか申し訳ない気持ちが湧いてしまってる。
モヤモヤした思いを抱えながら歩いていたせいで、キィー、という門扉の開く音を聞くまで、山本さんの家の前についていたことに気が付かなかった。隣の家のライトアップがかなり激しいせいか、山本さんの家の真っ暗さが際立って見えて、寒々しく感じる。
僕が静かに門扉を閉めている間に、山本さんは玄関のドアを開けた。
「どうぞ」
振り向きながら、優しく微笑む山本さんは、少し頬が赤くなっていた。たぶん、寒さだけではなく、中華料理の店でビールを飲んだせいもあるのかもしれない。
「お、お邪魔します……」
山本さんの前を、身をかがめながら玄関に入る。暗い玄関先に、一番に目がいったのは、下駄箱の上に置かれていたはずのエアプランツ。だけど、今は何も置かれていない。まさか枯れてしまったのだろうか。ふと、少しだけ不安になる。
玄関のドアが閉まり、カチリと鍵がかけられた。僕のすぐ後ろに山本さんが立っている。そう思うだけで、緊張してしまうのに、山本さんが後ろから急に抱きしめてきた。
「や、山本さん!?」
僕は思わず声をあげ、後ろを振り向こうとした時。微かなタバコの匂いと、強烈なアルコールの匂いに、お酒を飲んでないのに酔いそうになる。そして、山本さんの唇が僕の耳を掠めた。
「ふわぁっ!?」
つい変な声が出てしまった僕に、山本さんはクスクスと笑いだした。その振動が心地よくて、文句を言いたかったのに、何も言えなくて、むしろ僕もクスクスと笑いだしてしまった。
「なんか、やっと濱田くんをちゃんと抱きしめた気がする」
その温かい声がじんわりと僕の心にしみ込んでくる。
「濱田くん」
ため息のような山本さんの声は、僕の下半身を直撃する。思わずかがみこみそうになるのを、背中から抱え上げるように僕を抱きしめなおしたかと思ったら、山本さんのスッと通った鼻筋が、僕の耳を撫で上げた。その感触にゾクッとして「んあっ」と甘い声が漏れる。つい、僕を抱きしめてる山本さんの腕をぎゅっと握りしめる。
「や、山本さん、酔ってます?」
「んー、少し……」
「パーティで、どれだけ飲んだんですか……」
ため息をつきながら、チラリと山本さんの顔を覗き込む。ビール1本くらいでは、ここまで酔う人ではないのは、今まで食事をしてきた間でわかってる。いつも、食事のたびに頼むビールくらいでは、ほとんど顔にも出ないし、普段とあまり変わらなかった。それなのに、今の山本さんは、思い切り僕の背中に体重をのせ始めてる。
「ちょ、ちょっと、重いです……う、うわっ」
体重を支えきれそうになくて、下駄箱に片手を置く。すると、山本さんも「おっと」といってようやっと自分の足で立ってくれた。
「や、山本さん、玄関あがりましょう?」
倒れそうになったせいで、体勢を変えて真横に立った山本さんは、僕の肩に腕を回して立っている。下を向いて目を瞑ってる姿に、今、この人を支えてるのは僕なんだ、と思ったら、僕は山本さんへの愛しさがこみあげた。
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