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8.クリスマスツリー
82★
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思わず小さく口元が緩んだ瞬間、山本さんがパチリと目を開けて、僕の顔を見た。そして、ニヤリと笑う。
「何、嬉しそうな顔してるんだ?」
「え? あれ? 酔ってないんですか?」
「いや、酔ってる……濱田くんに匂いに酔ってる……」
そう言うと、今度は前から僕を抱きしめると、僕の首筋に顔を寄せて、スンスンと匂いを嗅いでくる。少し冷たい鼻先が首筋に触れるたび、ゾクッと快感が背中を走る。
「な、何してるんですっ……僕、何もつけてないないですよ……」
むしろ、僕のほうが山本さんの匂いにクラクラしてきていた。何も言わず、匂いを嗅ぎ続ける山本さん。僕は彼の背中に回した手をゆっくりと撫ではじめたら。
「……んあっ!?」
急に、山本さんの熱い舌先が僕の首筋を撫で上げて、僕の耳を食んだ。たったそれだけのことなのに、中途半端に形をかえつつあった下半身は完全に勃ちあがってしまう。
ヤバイ。こんな玄関先でなんて。
「こら、逃げるな」
「で、でも、山本さっ……んっ、ふんん!」
慌てて、彼の腕の中から逃れようとしたら、顎を捕まれ、強引に唇を奪われた。また、あの腰が抜けるようなキスに、僕は翻弄されてしまう。
暗くて静かな玄関に、僕と山本さんの唇で奏でられる淫らな水音と、無意識に漏れる甘いため息が響く。熱くて甘美で蕩けるようなキスは、僕の意識を完全に飛ばし、山本さんの腕を必死につかむのだけで精一杯。
「ふんっ……んはぁ、んんんっ」
「んっ……、んん、はぁっ……」
ゆっくりと、離れていく唇は、暗がりの中でもわかるくらいに艶やかで、銀色に光る細い唾液の糸がプツリと途中で切れた。
僕はそのまま、玄関先でエッチなことになるのかなって、陶然とした頭の中で思ってたけど、山本さんは意外に冷静だったみたい。
濃厚なキスで蕩けかけてた僕に、もう一度軽くキスをすると、家にあがるように促した。
コートを脱ぐと、やはり玄関先はかなり冷え込んでいる。そのせいか、一気に冷静な気分になって恥ずかしくなった。山本さんは無言で僕のコートを受け取ると、コートハンガーにかけてくれた。そして真っ暗な廊下を先に歩いていく山本さんを、僕はゆっくりと追いかけた。
リビングの明かりが灯る。久しぶりに見たその場所は、前に見た時とあまり変わりはなかった。違いと言えば、出窓に置かれていたエアプランツ。玄関先に見当たらなかったから、枯れてしまったのかと少しだけ心配だったから、ホッとした。
そして再び、亡くなられた奥さんと娘さんを思い出してしまう。
「濱田くん……今日は……帰らなくていいんだよね?」
ネクタイを緩めながら、確かめるように問いかける山本さん。その仕草ですら、カッコいいって見惚れてしまう。
僕は、もう、そのつもりで来てたから、顔を真っ赤にしながら頷いた。
「じゃあ、風呂、沸かしてくるから、その辺、座ってて」
スーツのジャケットをソファに放り投げて、エアコンをつけると、リビングを出ていこうとする山本さん。僕は慌てて声をかけた。
「あ、あのっ」
ワイシャツの袖を捲りながら、振り向く山本さん。
「……お線香、あげてもいいですか」
僕の口からついて出たのは、そんな言葉だった。
これからしようとしていることを考えたら、奥さんと娘さんに、謝らないといけないような気がしたのだ。だって、この家は、山本さん家族の家なのだから。
「……かまわないよ」
そんな僕の気持ちがわかったのか、山本さんは困ったような複雑そうな顔をしてそう言うとバスルームのドアを開けて入っていった。
玄関そばの和室に入る。普段から、閉めきっているのか、ふわりと線香の残り香を感じる。部屋の明かりをつけると、仏壇の前に座り、線香をあげた。
仏壇に飾られた二人の笑顔を見て、両手を合わせながら僕は「ごめんなさい」と小さく呟く。
「でも、僕……山本さんが好きなんです」
その時、僕の目の錯覚かもしれないけれど、二人がちょっと笑ったように見えた。
自分勝手な解釈かもしれない。だけど、そう思えただけで、許されたような気がしたのだ。
「何、嬉しそうな顔してるんだ?」
「え? あれ? 酔ってないんですか?」
「いや、酔ってる……濱田くんに匂いに酔ってる……」
そう言うと、今度は前から僕を抱きしめると、僕の首筋に顔を寄せて、スンスンと匂いを嗅いでくる。少し冷たい鼻先が首筋に触れるたび、ゾクッと快感が背中を走る。
「な、何してるんですっ……僕、何もつけてないないですよ……」
むしろ、僕のほうが山本さんの匂いにクラクラしてきていた。何も言わず、匂いを嗅ぎ続ける山本さん。僕は彼の背中に回した手をゆっくりと撫ではじめたら。
「……んあっ!?」
急に、山本さんの熱い舌先が僕の首筋を撫で上げて、僕の耳を食んだ。たったそれだけのことなのに、中途半端に形をかえつつあった下半身は完全に勃ちあがってしまう。
ヤバイ。こんな玄関先でなんて。
「こら、逃げるな」
「で、でも、山本さっ……んっ、ふんん!」
慌てて、彼の腕の中から逃れようとしたら、顎を捕まれ、強引に唇を奪われた。また、あの腰が抜けるようなキスに、僕は翻弄されてしまう。
暗くて静かな玄関に、僕と山本さんの唇で奏でられる淫らな水音と、無意識に漏れる甘いため息が響く。熱くて甘美で蕩けるようなキスは、僕の意識を完全に飛ばし、山本さんの腕を必死につかむのだけで精一杯。
「ふんっ……んはぁ、んんんっ」
「んっ……、んん、はぁっ……」
ゆっくりと、離れていく唇は、暗がりの中でもわかるくらいに艶やかで、銀色に光る細い唾液の糸がプツリと途中で切れた。
僕はそのまま、玄関先でエッチなことになるのかなって、陶然とした頭の中で思ってたけど、山本さんは意外に冷静だったみたい。
濃厚なキスで蕩けかけてた僕に、もう一度軽くキスをすると、家にあがるように促した。
コートを脱ぐと、やはり玄関先はかなり冷え込んでいる。そのせいか、一気に冷静な気分になって恥ずかしくなった。山本さんは無言で僕のコートを受け取ると、コートハンガーにかけてくれた。そして真っ暗な廊下を先に歩いていく山本さんを、僕はゆっくりと追いかけた。
リビングの明かりが灯る。久しぶりに見たその場所は、前に見た時とあまり変わりはなかった。違いと言えば、出窓に置かれていたエアプランツ。玄関先に見当たらなかったから、枯れてしまったのかと少しだけ心配だったから、ホッとした。
そして再び、亡くなられた奥さんと娘さんを思い出してしまう。
「濱田くん……今日は……帰らなくていいんだよね?」
ネクタイを緩めながら、確かめるように問いかける山本さん。その仕草ですら、カッコいいって見惚れてしまう。
僕は、もう、そのつもりで来てたから、顔を真っ赤にしながら頷いた。
「じゃあ、風呂、沸かしてくるから、その辺、座ってて」
スーツのジャケットをソファに放り投げて、エアコンをつけると、リビングを出ていこうとする山本さん。僕は慌てて声をかけた。
「あ、あのっ」
ワイシャツの袖を捲りながら、振り向く山本さん。
「……お線香、あげてもいいですか」
僕の口からついて出たのは、そんな言葉だった。
これからしようとしていることを考えたら、奥さんと娘さんに、謝らないといけないような気がしたのだ。だって、この家は、山本さん家族の家なのだから。
「……かまわないよ」
そんな僕の気持ちがわかったのか、山本さんは困ったような複雑そうな顔をしてそう言うとバスルームのドアを開けて入っていった。
玄関そばの和室に入る。普段から、閉めきっているのか、ふわりと線香の残り香を感じる。部屋の明かりをつけると、仏壇の前に座り、線香をあげた。
仏壇に飾られた二人の笑顔を見て、両手を合わせながら僕は「ごめんなさい」と小さく呟く。
「でも、僕……山本さんが好きなんです」
その時、僕の目の錯覚かもしれないけれど、二人がちょっと笑ったように見えた。
自分勝手な解釈かもしれない。だけど、そう思えただけで、許されたような気がしたのだ。
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