100均で始まる恋もある

三森のらん

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8.クリスマスツリー

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 クリスマスイブもバイトを入れている僕は、いつものように、店のレジに立つ。
 日曜日というだけでなく、イブぎりぎりに色々と買いに来るお客さんがいるせいで、昼間から店内はかなりの混雑。だけど、店の中のクリスマスグッズは、すでにお正月グッズに場所を追い込まれてきている。
 午前中はパーティー系の商品が動いていたけれど、午後になってからは、今更のようにカードだとか、ラッピング用の商品が動き出した。そんなの、早いうちから用意すればいいのに、と、思ってしまう。
 さばいてもさばいても切れないレジの列に、僕も、そろそろ接客する感覚が麻痺しかけていた。

「いらっしゃいませ」
「……」

 惰性で出た声に、無言でカゴを出しながら、スマホをいじる女性。僕は顔も見ずに、商品のバーコードをよんでいく。この人、パーティにでも行くんだろうか。サンタのコスプレ用品は、すでに売り切れてるせいなのか、トナカイの角のカチューシャに、大きな赤い靴下の袋を買い込んでる。

「880円です」

 金額を伝えた時、そこでようやく、目の前にいたのが小島さんだということに気が付いた。だけど、彼女のほうは、僕には気が付いていないみたいで、財布を取り出しながらスマホを耳に押し付けながら、不機嫌そうに誰かと電話をしていた。

「……だからぁ、遠藤さんからも誘ってくださいって言ってるじゃないですかぁ」

 僕の顔を見ずに財布から差し出された千円札を受け取る。

「ほら、場所は会社のそばの店なんだし、出てきやすいと思うんですぅ」

 僕は、小島さんの会話の相手が、あの遠藤さんじゃないか、と想像してしまう。そして、今話しているのは、昨日のメールのクリスマスパーティのことなんじゃないか、とも、容易に想像できてしまうわけで。

「私のメールじゃ、断られちゃったんです」

 ……やっぱり。
 僕が、つり銭を差し出された手のひらにのせると、小島さんはチラリとも見ずに、電話をしながらレジ袋を受け取って立ち去って行った。
 どうしよう。今日も崇さんの家に行く、なんていう約束はしなかった。しなくても、行くつもりだった。昼間の休憩時間にようやく買えたクリスマスプレゼントを渡すつもりだったから。だけど、小島さんからの誘いは断っても、遠藤さんからとかだったら、もしかしたら、顔だけでもだしてくる、みたいに、行っちゃうんじゃないか。そう思ったら、とっても嫌だって思ってしまった。子供みたいなことを言うんじゃない、と、崇さんは言うかもしれない。

 ――だけど、すごく、嫌だ。

 胸の中が、なんだか真っ黒な気持ちで溢れそうになって、僕は思わずしゃがみこんで口を両手で抑え込んだ。

「濱田くん、大丈夫?」

 隣のレジに入っていた店長の矢島さんが、焦ったように僕に小さく声をかけてきた。

「あ、はい、すみません」
「あと、もうちょっとだから」
「は、はい」

 矢島さんは、僕が体調を悪くしたとでも思ったのかもしれない。心配させちゃったかも、と思ったら申し訳なくて、大きく息を吐き出すと、すぐに立ち上がった。
 そうだ。もう少しで、僕のシフトの時間は終わるんだ。
 今朝、崇さんの家を出る時、当たり前のように「いってらっしゃい」と微笑んで見送ってくれた姿を思い出す。僕に向けてくれた、優しい笑顔。

 「いらっしゃいませ」

 僕はなんとか笑顔を浮かべて、並んでいたお客さんのカゴを受け取った。
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