あの恋人にしたい男ランキング1位の彼に溺愛されているのは、僕。

十帖

文字の大きさ
32 / 36

やっと愛してると伝え合えるね

しおりを挟む
 バスルームに立ちこめる湯気が喉に優しい。断続的に響く要の嬌声を、シャワーの音がかき消そうとする。が、それに要がほっとしたのを見抜いたのか、泉は要の弱い場所を責めたてた。

「ん、ぉ……あ……」

「立ってるのが苦しいなら掴まれ」

 泉の一回り大きな手が、要の手を泉の肩へ導く。子供のようにしがみつこうとしたが

「それじゃ触れないだろ」

 と優しくたしなめられて要は「くぅん」と子犬のような声を上げた。

「乳首尖ってる。可愛いな」

 シャワーの水滴を滴らせ、桃色の先端がツンと尖る。キスの合間にそこをつねったり捏ねたりされるたび、要はビクビクと腰を震わせ、泉の肩に爪を立ててしまった。

「も、そこばっか……や……」

「そこばっかり? 他のところも触ってやってるだろ?」

「ん……っ」

 もう一方の手で赤く熟れた尻の穴を広げられ、要は身もだえた。男のはずなのに、そこで快感を拾ってしまう自身が恥ずかしい。しかし、指を二本入れられ、前立腺のあたりを刺激されるたびに目の前がチカチカして尻の穴を狭めてしまうと、泉は

「よしよし、ちゃんと気持ちよくなれて偉いな」

 と褒めてくれるので、罪悪感が薄れてしまう。ただ褒められるたびにキュウキュウと喜んで泉の指を締めつけてしまうのが恥ずかしかった。

「あ、泉……もう……いいよ、挿れても……」

 むしろドロドロにほぐされ、恥知らずなくらいにそこが泉のものに穿たれるのを待っている。真っ赤になって要が訴えると、泉が要の粘膜から指を抜いた。

「……やっと、本当に繋がれるのか?」

「泉……?」

「嫌じゃないんだよな?」

「いずみ……」

 泉は長雨に打たれたような顔をしていた。不安で仕方ないと、要を傷付けることが不安で仕方ないという顔をしている。

 それが愛しくて、要は泉の鎖骨に一つキスを落とし、彼の胸元に額を預けた。

「君がいいよ」

「……っ」

「あ……っ!?」

 すごい力で持ち上げられ、壁に背中を預けられる。ふと鏡を見ると、泉に軽々と抱き上げられて、足が浮いていた。背中には壁、目の前には泉で逃げ場がない。

 一瞬の出来事に息を詰めていると、尻の狭間に火傷するほどの熱を感じた。限界まで張りつめた泉の雄がピタリと擦りつけられている。そして――――……。

「あ、ああ……っ」

 太い雁首が、要の粘膜を潜ってくる。大きな質量に身体を貫かれ、それだけで要は射精してしまった。泉の割れた腹に、要の白濁がかかる。

「何だ、挿れただけでイッたのか?」

「わ、分かんな……何で……」

 香の催淫効果のせいか。太い杭を打たれた要は、哀れな罪人のようだ。前にも後ろにも逃げ場がない。足の自由も利かない中では、快楽を拾うことしかできない。

「あ、ま、待って、泉」

「好きだ。要」

「あ、お、オレも、だけど……っ」

 ズルリと太い雄を引き出され、電流のような気持ちよさが要の背中を走り抜ける。とんでもないことだ。想いが通じ合った性交は、こんなにも気持ちいいのかと怖くさえなった。

「あうっ」

 パチュンッと要の尻たぶと泉の太ももが当たる音がバスルームに響く。ギリギリまで抜かれてから押し込まれるたびに、要はひっきりなしに喘いだ。

「あ、や、ねぇっ、奥、トントンしないで……待って……」

「要、要……気持ちいい。絡みついてくる……」

「あ、うぅ……激し、息、苦し……」

 バチュバチュと恥ずかしい音が響くほど激しく突かれ、喉元まで貫かれている気がして要は上手く息が出来ない。けれど抱っこされたことで高くなった視線から泉を見下ろせば、彼の瞳が気持ちよさそうに伏せられていて、また繋がった場所を締めつけてしまった。

 達しかけたのを寸でのところで堪えた泉が、犬歯を剥きだして笑った。その表情が凄絶で、要は自身の陰茎からタラタラと蜜が零れるのを感じた。

「……悪戯するなよ」

「ちが、違う……オレ、っぁむ……」

 ニヤリと笑った泉が要の口から零れた唾液を舐めとり、舌を絡ませてくる。必死でそれに答えていると、抱っこしなおされ、さらに深いところまで泉の雄が要をえぐった。

「あ、あうっ」

 角度が変わったことにより、より鋭敏に快感を拾ってしまう。もうダメだと思うのに、泉が要を抱きなおしたのは、片手で要を抱っこするためだった。そして空いた片手が、二人の間でフルフルと健気に揺れていた要の雄に伸びる。

「あ……っだ、ダメぇ……っ! 同時、やぁっ!」

「やじゃない。気持ちいいだろ」

 泉の温かい手に雄をしごかれ、ガツガツと直腸を穿たれる。その上またしても舌を伸ばしてキスをされ、同時に三か所を責められて要は意識が朦朧としてきた。

 身体が爛れたみたいに熱い。奥を突かれるたびに目の前に星が散る。強弱をつけてしごかれ、口内の弱いところを責めたてられては、もうダメだった。

「あ、ぁあー……」

「一緒にイこうな」

「う、ん……。あ……っぁああああっ」

 キスしながら囁かれ、最奥を突かれた瞬間――――要の眼前で白い光が爆ぜる。薄くなった精液が泉の手を汚したのと同時に、腹の中に熱い飛沫が散った。

 ドクドクと注がれる熱に溺れ、ひたすら痙攣を繰り返す。敏感になった要の唇を、泉がもう一度愛しげに吸った。





 一泉を怒らせるものじゃない、と要が痛感したのは事件があって一週間経った時だった。

「セクシー女優が激白! 美作監督の歪んだ性癖。性奴隷と呼ばれる葛藤……」

 木漏れ日が眩しい真昼には似つかわしくないタイトルを読みあげたのは佐和社長だ。

 なまめかしい生足を組んだ社長は、今日は真っ白なスーツを着ている。短いタイトスカートが目に毒で、視線をどこに合わせればいいか迷い要はモジモジしていたのだが、ソファにふんぞり返った泉はあからさまに渋面を作った。

 社長曰く、今日はエロティックな家庭教師風の格好らしい。訳知り顔の社長は、磨きあげられた机越しに流し目を送った。

「美作監督の性癖を雑誌にリークしたのは誰かしらねん?」

「さあね」

 泉は涼しい顔で別の雑誌をめくる。要は社長室をせわしなく歩き回ったり社長机の前で青くなったりしながら言った。

「泉ですよ……! 泉が、例の事件の夜に美作監督が呼んだ女性たちを後日呼び出して、虜にさせちゃって……美作監督の不利な情報を吐き出させたんです……! それをそのまま雑誌社に提供して……」

 最後には泉のかけるソファの隣に沈みこみ、この世の終わりのような呻きを上げる。

「美作監督は泉にリークされたスキャンダルで降板。泉の映画も白紙ですよ……」

「別にいいだろ。あんな下種と映画を撮り続ける気なんてなかったんだから」

「そうだけど……でもいざ現実として突きつけられると……」

 美作と一緒に仕事を続けると思うだけで足がすくむ。あの湿った手が肌を這う感触を思い出すだけで吐きそうだ。が……泉の映画のためなら我慢してもいいと思い始めていた。それほどまでに、要は泉にもう一度彼の時代を取り戻してほしかったのだ。

 肩を落とす要の鼻を、不意に泉が白い歯で噛む。突然噛みつかれた要は、瓶底メガネをずり下げて驚いた。

「う、あっ。何!?」

「俺のそばに要がいる限り、俺はスターであり続けるって言っただろ。映画が白紙になったって、また別の仕事とってきてくれよ。そのためなら俺だって努力する」

 日本人離れした美しい顔で、泉が真っすぐに訴える。魅惑的なグリーンアイズはどうしてこうも、力強さと安心感を兼ね備えているのだろうと要は不思議に思った。

「ちょっとぉ? このアタシを置いて二人の世界に入らないでちょうだいよ?」

 真っ赤なグロスが引かれた唇を尖らせ、社長が言う。

 それから社長は組んだ指に顎を載せ

「それに、チャンスは意外に引き寄せられてるかもしれないわよ?」

 と悪戯っぽく笑った。

「どういうことです……?」

 要が首を傾げたのと、社長室にノックが響いたのはほぼ同時だった。来客に反応して泉が居住まいを正したのを確認してから要がドアを開ける。

 そして、そこに立っていた人物に要は目を見開いた。

「目が、落ちてしまうのではないか」

 蚊の鳴くような声は健在だ。竜胆のMVの監督を務めた五条が、独特のテンポで言った。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

借金のカタで二十歳上の実業家に嫁いだΩ。鳥かごで一年過ごすだけの契約だったのに、氷の帝王と呼ばれた彼に激しく愛され、唯一無二の番になる

水凪しおん
BL
名家の次男として生まれたΩ(オメガ)の青年、藍沢伊織。彼はある日突然、家の負債の肩代わりとして、二十歳も年上のα(アルファ)である実業家、久遠征四郎の屋敷へと送られる。事実上の政略結婚。しかし伊織を待ち受けていたのは、愛のない契約だった。 「一年間、俺の『鳥』としてこの屋敷で静かに暮らせ。そうすれば君の家族は救おう」 過去に愛する番を亡くし心を凍てつかせた「氷の帝王」こと征四郎。伊織はただ美しい置物として鳥かごの中で生きることを強いられる。しかしその瞳の奥に宿る深い孤独に触れるうち、伊織の心には反発とは違う感情が芽生え始める。 ひたむきな優しさは、氷の心を溶かす陽だまりとなるか。 孤独なαと健気なΩが、偽りの契約から真実の愛を見出すまでの、切なくも美しいシンデレラストーリー。

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

初夜の翌朝失踪する受けの話

春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…? タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。 歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け

イケメン後輩のスマホを拾ったらロック画が俺でした

天埜鳩愛
BL
☆本編番外編 完結済✨ 感想嬉しいです! 元バスケ部の俺が拾ったスマホのロック画は、ユニフォーム姿の“俺”。 持ち主は、顔面国宝の一年生。 なんで俺の写真? なんでロック画? 問い詰める間もなく「この人が最優先なんで」って宣言されて、女子の悲鳴の中、肩を掴まれて連行された。……俺、ただスマホ届けに来ただけなんだけど。 頼られたら嫌とは言えない南澤燈真は高校二年生。クールなイケメン後輩、北門唯が置き忘れたスマホを手に取ってみると、ロック画が何故か中学時代の燈真だった! 北門はモテ男ゆえに女子からしつこくされ、燈真が助けることに。その日から学年を越え急激に仲良くなる二人。燈真は誰にも言えなかった悩みを北門にだけ打ち明けて……。一途なメロ後輩 × 絆され男前先輩の、救いすくわれ・持ちつ持たれつラブ! ☆ノベマ!の青春BLコンテスト最終選考作品に加筆&新エピソードを加えたアルファポリス版です。

処理中です...